「オイ。お前らさっさと席に着け」
1-Aでは担任、相澤消太の声とともにいつもの朝を迎えようとしていた。しかし、今日は少し違う。
「さて。早速だが雄英体育祭が迫っている」
「クソ学校っぽいの来たあぁ!!」
相澤は話し始める。この前、雄英はヴィランによる襲撃を受けた。しかし、開催することで危機管理が盤石だと示すらしい。更に色々話を終えた後、
「転校生が来ます」
「またクソ学校っぽいの来たああぁ!!!」
相澤は騒ぐクラスを鎮め声をかける。
「入ってこい」
ドアが開き、入ってくる。ピンクの長髪に天使の翼、それだけでもインパクトが充分なのだが二本のツノに仮面をつけた奴が来れば誰だってこう思うだろう。
『『『『『キャラが濃い!!』』』』』
「じゃ、自己紹介して」
チョークを取り黒板に向き合い、一つ一つ時間をかけてゆっくりと名前を書いていく。
『『『『『お、遅い』』』』』
書き終え再び皆に向き直る。
……………………
……………………
『『『『『何も言わないんかい!!!!』』』』』
「えー彼は個性の影響で喋れない。ま、仲良くしてやれ」
1-Aは新たなる仲間を迎え、体育祭に向け、各々孤軍奮闘するのであった。
『騎士 銀河』という銀河最強の英雄を迎えてーー
和歌山県の山奥にある群訝山荘。ここには先の未来、ヴィラン連合に吸収され日本を脅かす【異能解放軍】と呼ばれる組織がある。構成員は11万6516人と巨大な組織は今、
「き、きさまら…どういうつもりだ…」
花畑孔腔は血だらけになり床に伏せ
「どういうつもりだと〜」
街の住人の一人が花畑孔腔の目の前に出てきた。まるで薬物中毒者のような顔をして、黒いモヤを出しながら話を続ける。
「我々はこの星が随分と気に入った。だから手始めにお前らの組織をもらう。動きやすいようにな〜」
「クッ!!こんな横暴、リ・デストロが黙ってはないぞ!」
「ほ〜そうか〜」
間延びした声をしながら後ろから何かが運ばれてくる。それは、花畑孔腔にとって見覚えがあった。
「ッ!!気月、近属、外典!」
血だらけになった自分の仲間が無造作に放り投げられたことに怒りを感じたがそれ以上に花畑は疑問を抱えていた。
『おかしい…気月と近属はともかくあの外典がこいつらにやられるはずがない。どういうことだ』
そんな事を考えていると遠くから知った声が聞こえた。
「どうした、花畑。何が起こった」
「ッ!リ・デストロ!」
それは自分にとって正に救世主の如く現れた。花畑は心から安堵し、大声で伝えた。
「リ・デストロ!ここへきては行けません!反乱が起こりました!気月、近属、外典がやられました!どんな手を使ったのか分かりませんが、ここは危険です!一刻も早く」
避難を。そう言おうとした瞬間に全身が悪寒を伝った。待て。こんな状況をリ・デストロが知らないはずがない。そもそもこんな暴動が起きればそれこそ一目散に耳に入るはずだ。
近属が連絡をして。
『まさか…私がやられる前に既にやられていた?!では連絡は
「しておらんよ。そんなもの」
知らない声が響き、目を向けた。暗い廊下から蛇がゆっくりと獲物を狙うように四ツ橋力也ことリ・デストロが現れた。
全身がぐちゃぐちゃに捻じ曲げられた状態で。
「!!ハッ……ハッ……そんな……リ・デストロが……」
絶望という波が彼を襲った。花畑の呼吸はだんだんと荒くなっていく。目の前の状況を信じないと思うもそのあまりの
「こんなこと……認めない…認めて……たまるか…私は…私は……」
その静かな叫びが彼の最後だった。彼は隙を見せてしまったのだ。その隙を見抜かれ彼の心は粉々に砕け散ったのだ。
他ならぬ悪夢の王の手によってーー
「ふん。この程度のものか。やはり思った通りこの世界は我々がいた世界とはあまりにも差があるようだ。軍事力に個々が保有する能力。そして科学力。まさに蟻と恐竜だ」
「あぁ。そうだ。ここにはあの星の戦士はいない。だが、厄介なものがいる。星の戦士に引けを取らない程の厄災がな」
「何?それはなんだ」
異能解放軍の本拠地で何者かが話し合っている。一人は全身が光っていると錯覚してしまう程白く、それとはあまりにも対照的に赤く染まった瞳を持つ男。もう一人は高級スーツを着こなし、割れたアゴにイカつく尖ったメガネを掛けている営業者風の男がいた。
「あの銀河最強の暴れん坊さ。奴がこの世界にいる」
「何!それは本当か!!」
「間違いない。私の部下が被害にあった。それに
「チ!!まさかここに来てまでそんなことで悩まされるとは」
営業者風の男、
「しかし、どうやら今回は私たちに運が回ってきているようだぞ?」
ニヤリとゼロはナイトメアに言う。
「ん?どう言うことだ」
「言葉通りさ。どうやらアイツは部下が憑依している人間を殴ったそうだ。もう一度言うぞ?殴ったんだ。部下は憑依が解け人間は気絶した」
「?だから何だ?それがどうしたと言うんだ?」
「まだ分からないか?普通、アイツの一撃はこの世界の人間どころか、私たちでさえ耐えられるか分からないんだ。なのに今回は気絶だけで済んでいる。弱ってるんだよ。相当ね。何があってあれほど弱ってるのか知らないが、私たちが力を合わせれば恐らく奴に勝てる」
「待て待て。力の調整ぐらい奴だってできるだろう。本当にそこまで弱ってるのか?」
「オイオイ分かってないなぁアイツを。英雄と呼ばれてはいるがアイツの本性は戦闘と破壊が大好きなんだぞ。そんな奴が人に手加減をすると思うか?」
「……イヤ、無い。例え殺してヒーロー共から狙われても奴ならば嬉々として向かっていくだろう。そしてこの星を滅ぼす。なるほど。確かにお前の言う通りだ。運が来ているようだ」
「そうだ。だが念には念を入れて準備をしておこう。アイツを徹底的にボロボロにして封印し二度と出てこないようにする。そうすれば1000年ぐらいは大人しく封印されているだろう」
「フッフッフッ。分かった。では早急に準備をしておこう。それとどうやら
ネズミが紛れているぞ」
周囲が上に視線を向け、個性を放つ。天井が崩壊し崩れ、埃が舞う。静寂が辺りを包む。そんなお通夜の様な静寂をぶち壊す笑い声が響いた。
「キヒヒヒヒヒ。やっぱりバレちゃってたか。ま、そんなことはど〜でもいいのサ!」
地面に黒い穴が開きそこから飛び出てきたのは、道化の格好をした子供だった。人によっては小学三年生に見える程、背が小さい。しかしここにいる者たちはこいつがただの迷子の子供だとは思っていなかった。
「なんだキサマは」
「あれ?あーそっか。知らないのか。まぁ自己紹介してやるのサ。僕はマルク。玉乗りピエロのマルクなのサ!」
何処からか青と白の柄が入ったボールを召喚し、その上に器用に乗る。
「マルク?聞いたことない名だな。どこ出身だ」
ゼロはマルクにそう質問する。
「どこってあんたらと同じなのサ。出身はまぁポップスターと言っておこうかな」
「ポップスターだと?あの星の生まれが何故ここに。お前の目的はなんだ」
ナイトメアはマルクにそう投げかける。
「目的なんてないのサ。僕はただ楽しみたいだけサ」
「楽しみだと?」
「そうなのサ!この世界は面白いのサ!誰もかれも面白くて可笑しくてとっても退屈しないのサ!だから僕はこの世界でイタズラして楽しくしたいのさ」
「ふ〜ん。ねぇ君。私たちの仲間にならないか」
「何?!」
「……あ〜ん??」
ナイトメアはゼロの言葉に驚き、マルクは何を言ってんだコイツはといった反応をする。
「私たちの所に来ればそれこそ退屈しない。お前の言うイタズラし放題だ。それにお前はこの世界では戸籍なんてものもないだろう。家はあった方が良いと思わないか」
「戸籍は知らないけど僕は生憎住む所には困ってないのサ。それにアンタらはいずれこの世界を支配するだろう。そんな世界にイタズラなんてできないのサ。ま、要するに入らないと言うわけ。ワガママ言って許してちょ〜よ」
「そうかでは死ね」
どこからともかく弾幕の嵐がマルクを襲った。マルクはそれをヒョイと避ける。
「おっと」
辺りは爆発でボロボロになりナイトメアは頭を抱えた。
「オイ!闇雲にここを壊すような攻撃を出すな!ゼロ・ツー!」
「だが生かしておくわけにはいかない。奴は俺たちの計画を知った。バラさないとは考えられない」
「ヘイヘイへ〜イ。お前は僕の何を知ってるのサ」
マルクはゼロ・ツーと呼ばれる男にそう言い返す。ゼロに似た容姿をしているが違うのは、黒目で天使の輪っかがあり、天使の翼とは思えない形をした翼を持っていた。
「僕はね〜。君たちのことなんてど〜〜〜でもいいのサ」
マルクは続けて言う。
「僕はイタズラ好きな玉乗りピエロ、マルクなのサ。皆んなにイタズラしてそれが面白ければ別にいいのさ」
マルクはボールを消し両手を広げる。その瞬間、ベキベキと音が鳴りマルクの両手はキラキラと虹色に光る翼に変異した。
「それだけが僕の生きがいなのサ。ま、バラさないと思ってこのまま帰してちょ〜よ」
ゼロ・ツーは攻撃をしようとするが、ゼロがそれを納める。
「理解してくれたようだね。じゃ、バイバイなのサ。また会うだろうからその時は遊ぼうね〜。お〜ほっほっほっほっ」
奇妙な笑い声をあげながらマルクは暗い闇の中へ消えていった。
「いいのか」
「いいさ。奴は本当に楽しくすることしか頭にない享楽主義者だ。ほっといても別に問題はない」
ゼロはナイトメアにそう伝える。すると部下の一人が二人のところに来た。
「報告します」
「どうした」
「例の英雄ですが、どうやら名前を騎士 銀河という名前を手に入れ今は雄英高校なるところに身を寄せているようです」
「ほぉ、雄英か。ならば時間はタップリある。確実に詰ませていこうじゃないか」
ゼロとナイトメアはお互いに不適な笑いを奏でた。今、この時、雄英のみならずヴィラン連合、死穢八斎戒そして世界にとっても危険な脅威が少しずつ迫ってきていた。
「ねぇねぇ君何処からか来たの!あ!あたし芦戸三奈!よろしくねー!」
「俺、上鳴電気!よろしく!」
「飯田天哉だ!このクラスで学級委員長をやっている!分からないところがあれば是非!俺に聞いてくれ!」
「オイラ峰田。なぁそのツノ一体何の用途で使ってんだなぁオイ、何の用途で使ってんだぁ」
「聞き方考えて峰田ちゃん」
彼はこの状況を新鮮だと思い柄にもなく楽しんでいた。ホークスから戸籍もない。住民票もないとあまりにもブラックボックス案件だったがこの子をどうにかして平和に過ごさせないと何か大変なことになると直感で感じ取ったホークスは、彼を雄英高校に行かせることにした。転校してきたと言う名目で入れてほしいと。その方が自然であるため。ちなみにこのことは、校長の根津も同意している。あのホークスがわざわざ来てまでここに入れた方が良いと言うくらいなので根津は何か察していた。
彼のポテンシャルを測るため、雄英の試験、ロボット軍の対処を受けさせたが
「これは」
「なんという」
ミッドナイト、ブラドキングはそう口から漏らし、他の人もこの結果を見ていた。目の前のモニターには今まで見たことない光景があったからだ。
「全滅ってマジかよ!!シビィィィーーーー!!アイツ何なんだよ!!ヤバすぎだろ!!」
全滅。点数ではなく全滅という表記は見たことがなかった。
「ホークスさん。アイツ、何なんですか。あの巨大ロボをアッサリと倒していた。いや、一撃だ。明らかに他のヒーロー以上に力も実力もありますよ」
「んーーイヤーーぶっちゃけ俺もねよくわかんないのよ。あの子全く喋らないし、反応は返ってくるから何とか情報は手に入れたんですけどね」
「いわゆる難民っていう子なのかな。こことは違う所に住んでいるのか聞いたら、首を縦に振ったから何処か書いてみて言ったら宇宙の絵描くんですよ。わけ分かりませんよ」
「そ、そうなのね」
ミッドナイトがホークスの疲れた顔を見て色々察した。
「とりわけ名前が一番困りましたよ。名前を書いてと言ったらギャラクティックナイトって書いたんですよ。何なのあの子?親どんな気持ちで名付けたの?よくあんな長い名前付けたよねもーーーほんっっとに大変だったっすよ」
ホークスは酒に酔ったように次々と苦労話をこぼす。しかしこれはすれ違いにより発生した面倒臭い事案である。彼は確かに別の宇宙から来た。間違ってはいない。名前も彼自身には名前なんてないのだが周囲がギャラクティックナイトと呼ぶのでそれを使っただけで何もおかしなことはない。
そんな世間話をさておき、彼の扱いをどうするか悩んでいた。既に彼は並のヒーロー以上の実力がある。さらには体育祭がもうじき迫っている。いきなり転校生を体育祭にあげるのはどうなのか議論していると
「私は入学して良いと思います」
一人の男が意見をあげた。ガラガラでまるで骸骨のようなこの男は、No. 1ヒーローオールマイト。訳あってこの学校に身を置いている。
「何故ですかオールマイトさん」
「何故と言われても…実はハッキリした理由ないのだが私は、彼には何か言葉には表せないものを感じた。彼はきっと、いえ、絶対に優秀なヒーローとなるはずです。根津校長。誠に勝手な申し付けなのですが彼を転入させても良いに私は賛成です。どうかよろしくお願いします」
周囲の人間は困惑した。あのオールマイトがたった一人を転入させるために頭を下げるなんて見たことがなかった。
「……君がそこまでするということは、あの子に何かとてつもないものを感じたんだね。いいよ。許可しようじゃないか」
「校長、ですが」
「自由な校風がうちの学校の売りなのさ。それに彼がこう言ったんだ。私は彼の意見に賛成だよ」
こうしたこともあり無事転入できた。騎士銀河という名前はホークスがギャラクティックナイトをもじって付けた。
「じゃあ俺は仕事があるので。あとは頼みまーす」
そう言ってホークスは帰っていく。
「あれ?そういえば彼、家無いのよね。さっきの話だと」
ミッドナイトは思い出したように言う。そう彼には家が無い。ホークスの所で面倒を見ればと話が出たが、
「俺のとこ、ここから遠いですよ。わざわざ遠出してまで帰らせるんですか」
と言う話なので騎士は特例として雄英の寮に早く入ることになった。ここは後に緑谷たちが来るのだがそれはまた少し先の未来の話。
そんなこともあって彼は今、クラスメイトに囲まれて質問攻めされていた。何処から来た。個性は。その翼は。そのツノは。何で仮面被ってるの。至極当たり前の普通の質問だが彼は個性の影響で話せないことになっている。そもそも彼は話そうともしていない。
彼は観察していた。このクラスの力を。実力がどれほどのものなのか。その中でも興味を引いたのは三人だった。
赤白の髪をした奴と髪がツンツンしている奴、そして緑のモジャモジャ髪の奴。彼は緑谷を観察していた。正確には彼の、個性に眠る八人の気配、それを感じ取っていた。緑谷は視線に気づき何で見ているのか疑問に思いながら騎士に話しかけた。
「あ、えーと、初めまして、僕、緑谷出久って言うんだ。よろしくね。騎士くん」
手を伸ばしてきた。これは握手というものをしたいのだろうと騎士は感じ取った。
騎士はその手をーー
軽くーー
握り返した。
「よ、よろしくね。個性で話せないから仕方ないよね」
あせあせと緑谷は庇うように言う。だが既に騎士は緑谷に興味は失せていた。もう分かったからだ。あの正体が。騎士はこれから先に起こる楽しい
「気のせいであってほしい」
「あの時の彼、騎士少年のあの目は」
「破壊することを楽しんでいた」
「よもやあの男と同じ気迫をあんな少年から感じてしまうとは」
「そんなことはないはずだ。……だが
何なのだ……この胸騒ぎは」