昼近く
焼塩大公の統治している都市
「は?見知らぬ集団が都市の端っこに倒れていたから保護した?」
「はい、大公殿下。陸軍の哨戒部隊が発見いたしました。数は50名です。いかがいたしますか?」
大公である
この集団はおそらくこの新大陸の住民だ。保護すれば新大陸に関して情報を聞き出せるかも知れない。ただし問題もある。それは
「(その一団に我々の言葉が通じるのかね)」
そう、日本語が通じるか分からないのである。これが前世の地球の言語ならそこで生活をしたことがある転生者を連れてくればいい。ただしここは異世界である。言葉が違う、文字・文法が全く知らないものである可能性がある。
「(日本語が通じるなら万々歳なんだけどね)その集団は今も眠っているの?」
「はい、起きる様子はありません。どうやら栄養失調のようで。倒れていたのはそれが原因でしょう」
「そう。で、その集団の写真ある?」
「はい。こちらに」
そう言って部下は彼らの顔写真を差し出す。
「……これってあの黒い石の中にあった知的生命体のデータと同じ存在?」
「はい。姿形は少し違いますが、同じ種族でしょう」
そこに写っていたのは様々な角、様々な獣耳が頭から生えている老若男女が写っていた。
「データで見てファンタジーだなとは思ったけど、こうやって生きているのを見るとファンタジーさが増すな」
「はい。ちなみに尻尾などもありました。背中から羽などは生えてません」
「他は?」
「意識を失っている間に身体検査(精密検査も含む)をしましたが我々の害になるような病原体は発見されませんでした」
「ふむ」
「あと気になることが」
「え?何?」
「彼らの体に黒い石のようなものが」
そういって部下は資料を出してきた。
その資料には確かに体に黒い石のようなものが付いているのが写っていた。
「これついて何かわかっていることは」
「これと言って。ただこの黒い石は体の内側から表出していることと一人一人に表出場所が違うようです。それと造影検査で分かったのですが、体内にも黒い石らしきものもがあるようです。写真はその資料の中に」
そう言われて資料を読み続ける。
「そうか。他は?所持品とか」
「それも調べました。彼らの所持していた品は、衣服、寝袋、テント、証明、リュック、水筒、携帯食、救急セット、ナイフ、コンパス、電子機器、そして武器と地図です」
「おお!地図があったか!すぐに持ってきてくれ!」
「そういうと思って持ってきてます」
「そうかそうか!では広げてくれ!」
部下は地図を広げた。
「…………へえ。見る限りこの大陸は円形らしいね。さて地名とかは……掠れていたり手書きで書かれていたりでわからないな。ここから一番近いところは、ライム?ビルトン?変な名前だな。他は、ヤン?カデル?シラーサ?テラーロ?イリア?と近辺はこれくらいか。他もあるが今覚える地名はこれでいいだろ。正しい読みは彼らが起きてから聞くしかないな」
「読めないところが多いですね。しかも複数人が書き足していてさらに読めなくなってます」
「これは後回しだな。次は武器か。どんなものを所持してたんだ」
「その場所に案内します」
「そうか。頼む」
焼塩は部下に連れられて武器の保管場所に向かった。
「ここです大公殿下。武器は事前に並べてあります」
「手際がいいな、ご苦労。さてどんなものか………ボウガン?刀?ハンマー?槍?剣?ええ?銃とか無いの?え?これだけ?」
焼塩は困惑した。集団の所持していた武器類が古臭いものだったからである。
「(こんなもの持って荒野を歩いていたのか)にしても長らく使っていたのかどれもボロボロだな」
焼塩は武器の一つを手に取りながら言った。
その武器は今にも壊れそうながらもそこに刻まれた傷は数々の修羅場を潜り抜けて来たことを物語っている。
「所持品だけでわかるのは限界があるな。彼らが起きるのを待つしか無いか」
焼塩はそう呟いて武器を置いて保管場所から出ていく。
「そういえばもうすぐ昼だったな。食べにいくか」
と思い出して焼塩は昼飯を食べに行った。
2日後
この日は
訪問目的はお互いの統治している都市の利害調整と50名の難民の視察である。
それを伝えられた時は前者はともかく後者はどうしようかと悩んでいた時、難民たちが目を覚ましたとの報告が入ったのである。
聞く限り難民たちは意識に問題はなさそうである。
難民たちもおとなしいらしい。
これを聞いて焼塩大公は工藤大公と一緒でも大丈夫そうだと判断した。
焼塩大公は訪問を了承した。
そして今日、工藤大公は来訪した。
2人はまず都市間の交易の調整や近況報告をした。
お互いの話し合いが終わる頃に
「焼塩大公殿下、工藤大公殿下、難民たちと会う準備ができました」
と焼塩大公の部下が報告してきた。
焼塩は報告してきた部下に向かって言った。
「わかりました。では私たちを彼らのところに案内しなさい」
「了解しました」
2人は部下を連れて難民たちのいる部屋に向かう。
「で、どうする?何から話す?というか言葉通じるの?」
歩いているときに工藤はそう聞く。
それに対して焼塩は
「わかりません。彼らが日本語を話すのか、外国語を話すのか、全く未知の言葉を話すのか。ですから前世で11ヶ国語を話せる転生者を派遣してもらってます」
と対応策を話した。
そのまま歩いて行くと1人の人物が部屋の前に立っていた。
「先に来てましたか。あ、工藤さん、彼が先ほど私が言っていた11カ国語を話せる前崎さんです。前崎さん、此度はよろしくお願いします」
「勿論ですよ焼塩大公殿下。そして初めまして、工藤大公殿下。わたくし、今回の通訳をさせていただく前崎と申します。以後お見知りおきを」
「初めまして前崎さん。工藤裕子大公です。今回は通訳よろしく。たとえ通じなくても気落ちしないでね」
「構いませんよ。むしろわたくしは異世界の未知の言語に興味がありますので。それを生で見聞きできるのですから通訳ができなくて何ですか」
「それよかったです。では入りましょうか。彼らが待っているでしょうから」
そう言って焼塩が入室を促す。
「おお、そうですな」
「そうだね〜〜」
「私たちの身だしなみは……大丈夫ですね。では開けてください」
部屋のドアが開く。
まず護衛が先に入ってその次に焼塩、工藤、前崎の順に入っていく。
そこにはまさに「異種族」と言えるヒトが35名もいた。
彼らは一様に不安の色が顔に出ていた。
そんな彼らに焼塩大公が一歩前に出てこう言った。
「みなさんこんにちは!私はこの大和市の市長を務めている焼塩葵大公です!よろしくお願いします!そしてこちらが」
「建部山市の市長を務めている工藤裕子大公でーす。よろしくお願いしまーす」
2人は自己紹介をした。
難民たちは困惑の色を浮かべた。
「(さて、どう出るか。日本語か外国語か未知の言葉か。もうちょっと言ってみるか)みなさん質問があったらどうぞ!」
そう言うと、一番近くにいた山羊の角?を頭から生やしている青年が口を開き
「mwoi,[[@*~=eo;r:[.」
と言ってきた。
焼塩大公は前崎を見た。前崎は首を横に振った。
焼塩大公は上を向いて手で目を覆って、工藤大公は顔を下に向けて揃って重いため息を吐いた。
「「((未知の言語か〜〜))」」
王暦21年2月1日、日本人と異世界人との初接触はディスコミュニケーションから始まった。
50名中15名は子供です。ですので大公たちが会うのは大人に限定しました。