王暦27(1092)年2月22日 日本王国 ヴァーリア本部
1人の女性がヴァーリア本部のとある部署に向かっていた。
「うんうん、時間内だね。ヨシヨシ、今回は遅れなくてよかった」
ヴァーリアの統括、ステファニーは腕時計を見ながら頷いた。前の会議の時に朝寝坊で遅れてしまって怒られてしまったのだ。なので今後はしっかりと早寝早起きをしてちゃんと時間を見て余裕を持って出発した。
「にしてもなんだろうね。いきなりメールで『歴史に残る大発明を発表します!!至急エンジニア部の研究所に来られたし!! エレナ・アトリー、マオ・クラン』だけ送ってきて。しかもエレナちゃんとマオさんの連名なんて。何の発表だろ」
そして余裕を持った時間で目的地ーーエンジニア部の研究所ーーに到着した。
目的地の扉を開けるとそこには大きな台があり、その前に数十人の人がいた。
「あれ?みんななんでここに?もしかしてあなたたちもエレナちゃんたちに呼ばれた?」
「おお、統括もでしたか。てっきりあなたが我々をお呼びしたのかと」
「私じゃないよボリスさん。メールにもあったでしょ。今日はエレナちゃんとマオさんの合同発表会があるって。それにしても結構な人物がきてるね。何人いるの?」
ステファニーはそう言って周囲をキョロキョロと見回した。
「25名でございます統括」
「そうなの!?クリスちゃんありがとう!にしてもそんなにいるんだね〜〜。こんなに集めて何を発表するつもりなんだろうあの2人は?」
「ええそうですね。それにここにいる人たちは誰もがヴァーリアの人間で部長や課長などの管理職についてる人物です」
「そうだよね。そんな人たちを招集したってことはよほど重要な発表をするようだね」
いきなり大勢を集めたことに驚くと同時に思案するステファニー。
「(今回はなにがあるのかな〜〜。前は自転車の空気入れで動く空気自動車だし、前の前は生身のように動く義手義足や人工内蔵だったし。でも今回は普段は呼ばない幹部たちを呼んでるし、よっぽど重要な発表なんだろうな)」
今までにない呼び出しに内心ウキウキと緊張が介在しているステファニー。
その時研究室の奥にある大扉が開いた。そこからエンジニア部部長のエレナ・アトリー、医療部部長のマオ・クラン両名とその部下たちが布がかかってる何かを引いて現れた。彼女たちはそのまま台へ上がって色々と準備してるとエレナが一歩前に出て声を上げた。
「えー本日皆さんにお集まりいただき感謝いたします。皆さんをここに集めた理由はメールの本文にあるように歴史に残る大発明をなしたからです。ではどうぞ!!」
エレナはそう宣言すると早速布を勢いよく捲り上げた。
「これが医療部との共同開発で発明した我々先民の夢!『鉱石病の予防薬』です!!!!」
そこには青色に輝く液体が注射器に入っていた。それが10本ある。
それを見たステファニーたちは信じられないという目で見た。
「エレナちゃん、これ本当?偽物じゃないよね!?」
「なにを世迷言言ってるんですか統括。これは紛れもなく本物ですよ。正真正銘『鉱石病の予防薬』です!」
ステファニーは他の職員を代表して震えながら聞くがエレナからは自信満々な返答が返ってきた。それでようやく目の前にある現実を認識できた。これは本物だと。
「…………………すごい………すごいすごいすごいすごいよエレナちゃん!!大発明だよ!!!これさえあればテラの鉱石病にいつ感染するかわからない恐怖から解放されるよ!!」
「「「「「「おおおおおおおおおお〜〜〜〜〜!!!!!」」」」」」
ステファニーたちは狂喜乱舞した。この場に酒があればそのまま宴会を開いてラッパ飲みしそうな勢いである。そこでかろうじて理性を保っていた職員が質問する。
「え、エレナ部長!この薬の効果はどのくらい続くのでしょうか!?」
「う〜〜〜ん一回で3年と言ったところですね。それ以上は保証できません。ですので一回打ったら2年半したらまた、という感じですかね」
ステファニーたちは驚いた。この奇跡の薬が3年も持つのである。3年
「この薬の値段はいかほどにするつもりで?」
「そうですね。…………一回100万円としようかと思います」
「100万円?日本人だと問題ありませんけど国外だとレートで厳しくありませんか?」
「そうなんですよね。どうしましょうか?」
「「「「「う〜〜〜ん」」」」」
金額について頭を悩ませる一同。そうしていると
「と言うかこれ公表したら金どころか物理的な奪い合いになりますよ」
「あ、そっか。なら公表しなくていいか。公表するにしても時期は国と話して決めたほうがいいだろうし」
そうしてステファニーが決定すると営業部長の大島が
「確認ですがこの薬は量産できないのですか?」
「生産そのものはできるのですが大量生産と行くと……。ナノマシンを作るのが難しくて」
「そこ以外は大して問題はないので?」
「はい、問題ありません」
「ナノマシンだけですか…………ならばエレナ部長、国王陛下に頼ってみてはいかがですか?」
大島が突票もなしにそう提案してきた。
「へ、陛下ですか?」
「ええ。国王陛下は特殊な工場をお持ちです。そこに委託して量産してもらうのはいかがでしょうか?」
「そ、それはありがたいですが。い、いやでも大丈夫でしょうか。ご迷惑では?」
エレナが不安そうに言ってくる。
「陛下は迷惑とは感じないと思います。むしろよく頼ってくれたと喜んでくれるでしょう」
「そ、そうだといいのですが。やっぱり恐れ多いです。でもなぜあなたが陛下の性格をご存知なのですか?」
「なに、色々伝がありまして。この件私に任せてはくれないでしょうか」
大島はエレナたちの疑問にそう答える。嘘は言ってない。実際彼には
それを知らないエレナたちは不安に思いながらも「なら、お願いします」と任せた。
「任されました。それとこの予防薬の名前はどうするので?」
エレナが答える。
「そうですね………………。では『フェイブル』と名付けます。“伝説”という意味で、“鉱石病を伝説にする第二歩目になる”という願いが込めています。第一歩目は〈アフナーメ〉と〈ペヴニー〉です」
名前とそこに込められた意味を聞いたヴァーリア幹部(先民)は感嘆した。
「うんうんいいよいいよ〜エレナちゃん。このお薬は《石ころ計画》完遂までの大きな一歩であることは確実だよ」
「そうですね。一緒に開発した甲斐がありました」
「素晴らしいことですでは早速陛下に量産を委託します。よろしいですか?エレナ部長」
「はい!!ぜひ!!!!」
「それとこの報告を受けて陛下からお褒めの言葉があるでしょう」
「ほんとですか!?」
「ええ、あるでしょう」
「そうですかぁ。うへへへへへへへ」
エレナは国王から褒められると聞いて顔を蕩けさせた。その表情は人前には絶対に晒してはいけないものになっていた。そして彼女は股に手を伸ばし
「ハイ、エレナちゃんストップ。そういうのは自分の部屋でやりさない」
そうになったところをステファニーに(割と全力で)止められた。
「は!!申し訳ございません統括!つい」
「はぁ……。いいわエレナちゃん。今日のお仕事はこれでおしまい。部屋に戻って
「はいわかりました。ではみなさん、帰ります」
そう言ってエレナは一足早く返っていった。
「はぁ。アレさえなければエンジニアとしては完璧なんですけどね」
誰かがため息をつきながら呟いた。
「エレナちゃんは竹前船団で恋人見つけたって言うけど」
「見つけてますよ。それと陛下への敬愛は違うんでしょう」
「まあそこは置いておいて今日は宴会ですね!冷ましてきたエレナを入れてどっかいいところでお祝いしましょうよ」
「お!そうだねえ。お祝いしましょう。金は全部統括の奢りで」
「ちょっと待って!!私今月金欠だから!みんなの奢りなんてすると私はこれから水しか飲めなくなるから嫌だ!!!!」
「なに言ってんですか。給料日まであと少しでしょ?我慢してください」
「それまでに死ぬんだよ!!」
必死に抗議するステファニー。
「そうだ!この宴会は全部経費に「は??」あ、いえなんでもありませんよクリスさん。身銭を切ります。切りますからその歯茎すら見える笑顔を見せないでください怖いです」
ステファニーは貯金がなくることを恐れてヴァーリアのお金に手を出そうとしたが、ヴァーリアの金庫番であるクリスに(素晴らしい)笑顔で制され、土下座して許しを乞うた。
「決まりましたね。と言うわけで統括の財布で宴会の費用を賄うと言うことで」
「さんせーーい」
「賛成」
「賛成。と言うわけでどこに行くか決めましょう!」
「そうですね!どこにしましょうか!?」
宴会を行うことが決まり会場はどこにしようかと
日本王国 首都東京 王城
「ん?掲示板が。これはヴァーリアの大島さん?何事?…………………鉱石病の予防薬を完成させた?それはおめでとうございます。だけどそれを量産したいけどできないと。なるほど、それでここに連絡を。わかりました。私の民需工場で量産しましょう」
「ん?ちょっと待ってください。………………これは。なるほどね、これが条件だったのか。細かいところは後で見よう。今は目の前の仕事に集中しよう」
登場人物紹介
【名前:ステファニー・トルーマン】
【性別:女】
【生年月日:1054年8月1日】
【出身地:クルビア】
【種族:ヴイーヴル】
【身長:165cm】
【鉱石病:あり】
【源石融合率:48%→44%→39%】
【備考:相互扶助組織ヴァーリアの統括。クルビアの中流層(と言っても中の下の)出身。仕事を辞めた後に旅をしている時に天災に遭遇して鉱石病に罹患。その後も何回も天災に遭遇して鉱石病が進行。そのため現在の源石融合率は驚異の48%(体表の60%に源石結晶が表れている)になっている(現在は薬によって減少している)。
頭は良いわけではないが、馬鹿ではない。
高いカリスマ性を持っており、難民時代は難民たちを、現在はヴァーリアをまとめ上げている。
現在はその高いカリスマ性(チトーレベル)を買われてヴァーリアの統括をしている。
容姿はおかっぱ頭になって垂れ目になったサリア。
清掃員の服を着ているのでよく誤解される。
史上最初の鉱石病を完治した人物として歴史に名を残す。】
【名前:マオ・クラン】
【性別:女】
【生年月日:1057年2月10日】
【出身地:炎国】
【種族:キャプリニー】
【身長:160cm】
【鉱石病:あり】
【源石融合率:10%→5%】
【備考:炎国出身の薬剤師。1080年にとある実験の成功後に警察に押しかけられ、(彼女の主観では)冤罪をかけられて逮捕され懲役刑と追放刑を下された。
追放され流浪の時に戦闘に巻き込まれ源石爆弾を身に浴びて鉱石病に罹患した。その後は方々を彷徨っているとステファニーたちに会って彼女のグループに加入する。
容姿は「にょたいか!」のチトーに羊の角をつけた姿。
現在はヴァーリアの医療部の部長で、《石ころ計画》の薬学を担当している。
源石融合率を減少させる薬〈アフナーメ〉と、鉱石病の融合を止める薬〈ペヴニー〉を発明した。】
【名前:エレナ・アトリー】
【性別:女】
【生年月日:1072年6月23日】
【出身地:レム・ビリトン】
【種族:コータス】
【身長:152cm】
【鉱石病:あり】
【源石融合率:8%→5%】
【備考:レム・ビリトン出身の少女。両親は採掘会社の現場作業員。8歳の時に両親の借金返済の形に売られた。その後源石鉱山で過酷な重労働を強いられたが暴動が起きた隙を見て脱走。レム・ビリトンからも脱走した。逃げ出して倒れているところをステファニーたちに助けられる。
助けてくれた国王に絶対の忠誠を誓っている(忠誠心がありすぎて変態になりかけているが)。
基本的に敬語で話す。
アトリーという姓は鉱山時代に仲が良かった作業員からもらった姓である。
10歳年下に将来ロドス・アイランド製薬のCEOになるアーミヤという実妹がいる。
母親と感動の再会を果たした(その時自分に妹ができてることを知って
父親が震度聞かされた時には母親と一緒に大いに悲しみ、そして乗り越えた(その時家主とは
容姿は髪と耳を真っ黒にして冷酷な顔になったアーミヤ。
現在はヴァーリアのエンジニア部の部長で、《石ころ計画》のエンジニア担当になっている。
鉱石病の予防薬『フェイブル』をマオと一緒に作り出す。】
【名前:ボリス・ニコラエヴィチ・アンドロポフ】
【性別:男】
【生年月日:1025年3月3日】
【出身地:ウルサス帝国】
【種族:ウルサス】
【身長:185cm】
【鉱石病:あり】
【源石融合率:20%→15%→13%】
【備考:ウルサス帝国の上流階級出身。とある大貴族の寄子のアンドロポフ伯爵家の当主だったが、寄親が権力争いに失脚して巻き添えを喰う。お家取り潰しを免れるために当主の座を息子に譲り孫娘ーータチアナ・ニコラエヴナ・アンドロポフーーを鞍替えした寄親に行儀見習いとして差し出した。自分は責任をとって家督を息子に譲り国を出ていった(その時の鞍替え先はコシチェイ公爵家で、孫の主人はタルラである)。その後各地を流浪しステファニーたちに合流した。
血縁者には孫の1人にアンナ・モロゾワという少女がいる。彼女はもう1人の孫のタチアナと一緒に祖父のせいで大変な目に遭っている(本人は知らない)。
容姿は鋼の錬金術師のアレックス・ルイ・アームストロングにエドワード・エルリックの髪型とクマ耳をつけた姿。
現在は元貴族という経歴を活かしてヴァーリアの外交部の部長を任されている。】
【名前:ローテン】
【性別:男】
【生年月日:1006年1月20日】
【出身地:カズデル】
【種族:サルカズ/ウェンディゴ】
【身長:202cm】
【鉱石病:あり】
【源石融合率:16%→10%→7%】
【備考:カズデル出身の元傭兵。最後の純血にして最年少のウェンディゴ。傭兵のとある仕事で、鉱石病に感染した。ある戦闘の時に自軍が惨敗して(雇用主は死亡)散り散りになってしまい、逃げた先でステファニーたちに出会った。
彼の身長は202cmだが彼がいうには自分はウェンディゴの中では小柄らしい。
実はマオやエレナとかの実験にたまに付き合っている。
容姿は『逃げ上手の若君』の土岐頼遠。
現在はヴァーリアの本部の警備部の部長をやっている。】
【名前:クリス・フランクリン】
【性別:女】
【生年月日:1065年10月1日】
【出身地:カジミエーシュ】
【種族:フォルテ】
【身長:164cm】
【鉱石病:なし】
【備考:カジミエーシュの富裕層(と言っても富裕層でも下っ端の)出身。
父の教育によって書類仕事に長けている。その代わり戦闘能力は皆無。
彼女は日本に入国した後(その時入国管理局で日本語と日本の法律を学んだ)職を探している時にヴァーリアの広告を見て加入。経理部に配属される。
後方支援全般が非常に優れている(その優秀さたるや史実の蕭何に匹敵する)。
容姿はブルーアーカイブの生塩ノアを金髪のポニーテールにしてヘッドセットを取って、OLのスーツに着替えた姿。
現在は後方部の部長に就任している。】
【名前:大島有(おおしまゆう)】
【性別:男】
【生年月日:1065年10月1日】
【出身地:日本王国】
【種族:ホモ・サピエンス】
【身長:174cm】
【鉱石病:なし】
【備考:三回目の転生者で非華族の男性。前世は会社で営業をやっていた。今世でも同じことをして成功や失敗を重ねていた。ある時ヴァーリアの組合員の募集広告を見て興味本位でヴァーリアに加入した。
容姿は日本の実業家で日本マクドナルドの創業者、藤田田(ふじた でん)の青年期の姿そのまんんま。
現在は営業部の部長を任されている。】
登場人物たちの情報は随時更新していきます。