それは突然だった。
「■■■■■」
目を開ければ目の前に美女。
そんなシチュエーションに憧れたことはある。
こちとら、元気な男子高校生だ。大いに結構、存分にやってくれ。
とはいえ
「■■? Ahー■ー」
相手と言葉が通じないのは、あまりよろしくない。いや、結構悪い。なぜなら残念なことに、国産の言語以外は生暖かい目線を受け取ったことしかないからだ。
何より。
「■ん■■のか。こんなものかな?」
全然寝起きでもないのに、瞬きを1つで真っ白な部屋に変わってる、というのはどう考えても別のシチュエーションに巻き込まれてるよね?今からお姉さんとイイことしよっか的なものじゃなくて、今からお姉さんと善い事しにいこっか的なサムシングだよね?
こちとら、元気な男子高校生なので確かに憧れたことはあるけど……。
「ねぇ、聞こえてる?おーい。おかしいな、言語は合ってるはずなんだけど 」
目の前で手を振る美女をまじまじと見る。
白い空間に負けない輝く美貌が、自分の眼前まで迫っている光景に思わずたじろいでしまうが、男なら目は離せないだろう。陶磁器のように白くなめらかな肌、粒子でも流しそうな美しい銀髪。顔は一目で日本人でないとわかるもののどの国籍の男子も認めるほど神秘と圧倒を全面に押し出している。
視線を下げていけば、そこにはパラダ
「おい、本当は聞こえてんだろ」
「はい」
現実逃避と浮世離れに意識を飛ばしていたがどうやらここまで。
目の前の上位存在はご立腹のようだ。
「お、僕のことわかるの?」
「だいたいこういうことをなさるのは神様だと、別世界の常識では決まっています」
「すごいな別世界、こっちの世界の住人だと結構驚くのに」
ぱちぱちと長めのまつ毛が上下に動く。
なんだか妙に人間臭いのと人間離れが混じっている。
「じゃあ、これから言われることも何となくわかるわけだ」
「ええ、まぁはい」
これもまたこちらの世界の常識。多少パターンがあるから予想はしづらいけど、大枠は合ってるはず。
「ま、だいたい予想どーり。
ついでに、特別な力をあげちゃうのも同じく合ってるよ。
本人の資質によるから、自由に好きな物あげることができないのだけ、予想外しちゃってるかな?」
そういうと神様(仮称)はこちらに手を差し出した。
こちらが戸惑っていると、にっこりと笑う。
「ほら、これが力だよ。」
もう一度、彼女の手を見るとそこには手のひらサイズの歯車が収まっていた。謎の力で発光している。
恐る恐る手を伸ばしてみると、それは溶けるようにこちらの手に入り込んで消えた。
「おおー、異世界初体験……血中濃度上がったりしないですよね?」
「なんの心配してるか分からないけど、健康被害は全くないよ。
その辺は他の人達にもお墨付きさ」
「他の人達??」
「まあね、世界の危機だし呼べるリソースは呼んでおきたいなって」
合理的……なのか?
異世界管理事情が分からないが、そういうのって呼びすぎると逆に神様パワーが薄まっちゃう!みたいなのないんだろうか。
「そりゃもちろん、僕の力は削がれるけどこの世界で生きてる人達の危機には変えられないじゃん?」
「……人間思いなんですね」
「もちろん。……それに、人間だけじゃないよ」
彼女の瞳は、その時だけ別の誰かを写しているかのようだった。
ここに来るまでにその美貌に一体どれほどの出会いと別れがあったのだろうか。そんな疑問が口からついて出そうだったが直前で堪えた。
それに世界の運営に対しても僕が気にすることじゃないだろう、結局。
彼女の態度にどうすればいいか、固まっているとその様子に気づいたのか少し微笑む。
「うん、それじゃそろそろあっちに移ってもらおうかな。
ここ維持するのも無償じゃないし。後の事情は、向こうの人達に聞いてね」
そういうと、こちらの返事は待たずに空間全体が、眩く光を放ち始めた。不思議と目に痛くはないのに、目は開けてられない。
このままだとすぐにあちらに飛ばされてしまうんだろう。
ならせめてと、前方に手を伸ばす。自分でも分からない、衝動に突き動かされたとしか言いようがない。迷いは数秒、出た言葉は。
「また___会えますか!」
自分でも必死すぎる声だったと思う。でもこれを逃せばきっともう会えない、という予感があった。その予感に従ったのがなぜか、分からない。
それに、返事は聞こえなかった。
そういう仕様なのか、それとも。
後の英雄、アキラ-シキ、異世界に現着。
記念すべき第一声は。
「おおおおお、手に柔らかいものが!!!?」
周囲の人間には分からないものだったという。