レリは、柔らかなベッドの中で目覚めた。
身を起こし、ベッドに腰掛けぼんやりと周りを見回す。
「 ここは、どこ??
・・・かあさん・・・?」
「きゃっ・・・」
突然、殴られるようにショックが襲い、
「う・・・っ、うう・・・うっ」
目の前が真っ白になる。
「はうっ・・・うう!」
レリが頭を抱え込み苦悶しだす
「 あっ・・・ああああああうっ!」
津波のように、ここ3日間の記憶が襲い掛かる。
「い・・・いやあああああ・・・・・・!」
それは、猛烈なフラッシュバックとなって頭の中を駆け巡る。
叫びだしそうになる口元を
こぶしを握り締め、
押さえ込む。
ばらばらに飛び散ってしまいそうな
自分自身を強く抱きしめる。
「こわいよ・・・苦しいよ・・・すごく悲しいよお!」
歯を食いしばり、
吐き気をこらえる。
全身に汗がふきだし、
目になみだがにじむ。
「い・・・息が・・・あ・ああ・・・、誰か、・・・助けて・・・・」
クーがレリの異変を察知し近寄る。
「レリ、レリっ、!、しっかりして、僕を見て、僕を見るんだ!」
レリが苦痛にゆれる瞳を開くが、
視線は定まらず
あらぬものを追いかけているように見える。
「レリ、僕はここだよ。わかるかい?」
「クー?」
「レリ、大丈夫だよ、君はもう安全だよ
怖がらないで」
クーは、そういいながら、レリの前で紋章を刻む、
「快癒の風琴、今その恵みを示さん。」
さやかな風と、柔らかな光がレリを包む。
荒れ狂う海原のようだったレリの心が徐々に静まり
明かりが差し込んでくる。
レリの周りの世界が落ち着きを取り戻し、
実態が把握出来るようになってきた。
レリは荒い息を継ぎながらも、
「クー、ありがとう・・・、
もう落ち着いたよ。
私・・・、どうしちゃったのかな。
こんなの危ない人だよね」
「大変な経験のあとだもの、
それでちょっと不安定な
精神状態になっただけだよ。
誰だってそうなっちゃうよ。
レリのせいじゃないよ。」
ミラルが部屋に戻ってきた。
レリの様子をみて、その傍らに腰を下ろす。
「レリ、お目覚めですか・・・」
レリはそれには答えず、
腕を伸ばしミラルにすがりつくように
顔をその胸にうめる。
肩が小刻みに震えていた。
「レリ、
苦しいですか?
悲しいですか?
怖いですか?
その思いすべてこのミラルにぶつけてください。
私が、そのすべてを飲み干しましょう」
やさしく、包み込むように腕を回す。
「ありがとう、ミラル。もう 大丈夫
震えてたけどもう、平気」
そう言ってレリが顔をあげる。
少し寂しげだが
柔らかな微笑が浮かんでいる。
「えへ・・・。朝から心配掛けてごめんね」
ミラルは一瞬にして心を奪われた。
それは、さわやかな朝日の中
きらめく金髪
ま白い肌
澄んだ青い瞳
たおやかな肢体
・・・至高の形。
「私が守るべきは・・・」
「ミラル・・・?」
陶然として、レリを見つめていたミラルが、はっと我に返る。
ほほを朱に染めて。
「あっと・・・、そう、朝食にしましょう
今日も1日元気で過ごすためにも・・・」
なんとなくギクシャクしながら食事の準備をするミラル。
「私は、何を考えているの?
これから大変な日々が始まると言うのに・・・もう。
しっかりして自分!!」
1階ロビーのジェイの元に連絡が入る。
「ケイです。ギエスの偵察員との接触に成功。
エルをおとりとしての誘導に取り掛かります」
「了解、こちらも出発を急ぐ。
任務完了後は速やかに撤退すること。」
「了解。これより、開始します。」
「大佐、ジェイです」
ミラルが通信に応じる
「始まったのね。」
「はっ。ケイ、エルが敵の誘導を開始します。」
「敵偵察員を完全に掌握出来次第エルカトを離れます」
「はっ。われわれも警護に当たります。」
午後なり、ミラルは言った。
「レリ、そろそろ出発の準備に取り掛かりましょう。」
「はい、今度はどこへ行くの?」
「自治都市サレンよ、少し長い旅になるわ、
北部の山を越えていかなきゃならないから」
「いいわよ、私、ミラルとクーと一緒ならどんなことも平気、がんばる。」
「そうね。みんな力をあわせて、乗り切りましょう。」
ミラルは武器保管庫から、装備品を取り出し
手際よく身に付けてゆく。
表に現われる武器はほとんどない。
彼女の意思に応じて
それぞれの防具、武器が具現化する。
唯一現われているのは、
頑丈そうな一対のナイフのみだ。
服装は軽快で運動能力を阻害するようなものは一切付いていない。
結果、かなりセクシーなスタイルになる、
豊な胸にぴったりした、ノースリーブの短い上着、
マイクロミニのスカート。ソックスに頑丈そうなブーツ。
それを見ていたレリが、
「ミラル・・・なんかすごい」
「そう?大変機能的で行動しやすい服装よ」
「寒くないの?」
「大丈夫、保温に心配はないわ」
ミラルは自分の内臓通信回路を開く
「第一小隊各員へ、レリ王女はエルカトを離れる。
警護を開始。エル、ケイお願いよ。」
「ケイです、作戦は順調に進行中・・・お気をつけて、
後は私たちが始末します」
「じゃ、後刻会いましょう」
全員からレスポンスがある。
「了解」
いよいよ、動き出すようですが、ヒロインの精神的なトラウマが半端なさそうでどうなることやら。