エターナルフレイム   作:泰丸B

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敵を欺き、仲間を守る。ふたりのヒューマノイドが選んだのは、逃げることではなく、立ち向かうことだった。


第14章囮たち

ギエス警察部隊副長官 ニトス・パゴレは、

 移動中の車の中でエルカトの偵察員からの報告を受けていた。

今回は、野戦任務とあって、さすがに戦闘服に身を包んでいる。

「レリ王女の所在は明らかなの」

「はっ、この町に潜伏しているのは間違いありません。    

 現在王女の護衛と 思われるものをマークし、

 監視中です。まもなく、 

 所在も判明するかと思われます。」

「潜伏地域を絞っておきなさい。」

「了解」

ニトスは、後ろのトレーラーに目をやる、

 そこにはジン13が待機している。

「これが、どれほどの能力か、はっきりするわね。」

そう思うと同時に、昨日の痴態が頭を掠める・・・

 思い返すだけで体の芯があつくなる。

「まったく。天才ってのはよく分からないわね。

 本当に。普通には楽しめないんだから・・・。

 ふふふ・・・」

やがて前方に城壁めいた壁が目に入ってくる。

城砦都市エルカト、

 過去の亡霊、いまじゃ落伍者の巣窟、

 何をやっても正当化するのはたやすいこと。

向こうがルール無視なら、こちらはその上をゆくまで。

 ニトスは久しぶりに気持ちが高揚するのを感じた。

「ここなら、何人殺そうがかまわない。」

 彼女の残虐な嗜好が頭をもたげて来る。

良識も、良心も心の中の悪魔に、がりがりと噛み砕かれてゆく。

 彼女にとってそれは、底なしの闇へ向かっての、開放。

 瞳は、暗い光を増し、口元に残忍そうな笑みが浮かぶ。

そのころ、スラム街のエルは、尾行を引きつれ

 付かず離れず移動していた。

内部通信機で

「ケイ、連中はどう思っているか、わかる。」

「あなたを、王女の直属の護衛官と信じてうたがってないようよ。

 状況は順調に推移していると言っていいわね。」

「そろそろ、レリ王女の替え玉にご登場願おうか。」

「そうね、かわゆ~い女の子になるからね。

 ・・・惚れちゃあだめよ。・・・ふふ・・・」

「ばか言ってないで。スラム街東部の隠れ家で待機して。」

「了解、早くむかえにきて」

「まったく、作戦行動中よ!」

 

ミラルは、森林の中をエアロバイクを最高速で駆っていた。

休憩を取りつつも、走り続けすでに日も落ちてきているが、

 その姿は、疾風のごとく、木々の間を駆け抜ける。

それは、軽やかなリズムを刻むように、優雅で、

 スピーディなダンスを見ているようだ。

後ろにはレリがしがみついている。

「ミラルー・・・ちょっと怖いよ、凄く速いし。」

「もう少し我慢して下さい、レリ。

 一刻も早くこの森林地帯を抜けたいので。」

クーの不可視の天蓋があるとは言うものの、 

 センサーにかかる可能性がゼロと言うわけではない。

内蔵通信機にジェイからの通信が入る。

「エルカトに、ギエスの警察部隊本隊が到着。

 われわれも、エルカトを離れます」

「了解、まもなく内部通信機の通信可能範囲を超える。

 追いつき次第報告を入れるように」

「了解、エル、ケイの任務解除を通達しますか」

「いいでしょう。解除許可します」

「了解 通信終了」

ミラルは考える。

もう少し時間を稼げるかと思ったが

 ギエスの動きも思いのほか素早い。

しかし、山岳地帯へ入り込めば

 姿をくらましやすくなるだろうし

 センサーもレーダーも思うに任せないはずだ。

「あと少し、みんながんばって。」

後に残してきた、部下たちの顔が頭をよぎる。

 

ニトスはエルカト到着後、即座に行動を起こしていた。

「町の出入り口すべてを封鎖、

 後、スラム街を包囲、抵抗するものはかまわないから

 排除しなさい。生死は問わない。

 偵察員からの情報では、ターゲットは、

 スラム街に潜伏していることが判明している。

 そこに指令所を設けるから、建物をひとつ確保しなさい。

 ヒューマノイドのトレーラをその指令所に移動すること。以上」

チーフコマンダーが、矢継ぎ早の命令を

 復唱するまもなく、ニトスはスラム街へ向かった。

エルが、ケイの待機している隠れ家に現われた。

 エルはケイのゴシックロリータ姿に

一瞬気をとられたかのように

 呆然と見つめたが、すぐ我に返る、

 しかし、ほほが朱に染まってしまった。

「ケイ、ギエスの部隊が、とこちらへ向かっているわ。」

「相手の司令官どんなやつか分かった。」

「ええ、遠距離からの観測だけど、やな女。」

「じゃ、そろそろ外へ出て、お披露目しようかな。

 ・・・かわいいでしょ?これ」

くるりとターンをすると、踝丈のスカートがふわりと広がり、

 すそのフリルが宙を舞い

 腰のリボンがゆれ、指先が優雅な弧を描く。

そして、両手でスカートの中ほどを軽く摘み上げ

 少しひざを折り、小首をかしげて微笑み

 軽く会釈をする。

「レリ様とはえらい違いねぇ。品がないわよ。」

 批判めいた口調で返すが、その目は好まし気に潤んでいる。

「んもうー!。一緒じゃまずいでしょ。」

ケイの瞳も、いたずら気に微笑んでいた。

「それもそうね・・・・。とにかく、

 姿をさらしたらあとは素早く逃げ回る。

 交戦は極力避ける。

 その後、町の西側から脱出。

 そのまま北部山岳地帯をめざす。

 いいわね」

「ええ、了解エル・・・エル」

「ケイ・・・」

二人は手を取り合い、

 瞳は、 熱を帯びたかのように潤み、

 見つめあい、

 そして、彼女たちは、

 その唇を重ね合わせ、

 お互いの存在を味わうように

 舌を絡めあった。

「護衛官が、王女と思われる少女を連れ出し

 移動を開始しました。現在スラム街を西へ移動中」

「監視継続。まだ手を出すなよ。」

「了解」

「いかがされますか、ニトス指令」

「包囲網をそのポイント中心に絞り込みなさい。

 外へ出さないようけん制すること。

 後、ジン13をつれてきなさい。」

 

囮の二人は、入り組んだ路地を移動し、

 追っ手が確実についてきているのを感じていた。

エルが、

「かなり、集まってきたみたいね。

 完全に包囲されるとまずいわ。

 そろそろ離脱するわよ。」

二人は、いきなり駆け出し、

 次いでジャンプすると、

 建物の壁を足場に屋根の上へ一気に上がり

 ついで脱兎のごとく駆けてゆく。

「ターゲット逃走!、ありゃ人間業ではありません。

 現在屋根の上を移動中。」

ニトスが、命令を発する

「全銃器使用を許可します。

 建物を破壊してでも止めなさい。」

「エル、連中躍起になって発砲しているみたいね。」

銃撃の中疾駆しながらも、語りかける。

通信機越しでもケイの危機感が伝わる。

「これは、折込済みの事態よ、

 あせることはない、

 人間は、私たちに追いつけはしない」

「でもこれじゃ、町が崩壊するわよ。

 重火器まで引っ張り出して」

地対地ミサイルが頭を掠めるようにして飛び

 建物の屋根を吹き飛ばす。

 二人はジャンプし爆風を避け走り続ける。

 破片がケイの衣類を引き裂き肌を刺す。

「ケイ!」

「うっ・・・大丈夫よ・・・

 もう・・・この服結構気に入ってたのに・・・」

 

モニターを観察していたジン13は、

 この有様を見て、

「あれは、 行動パターンからして

 ヒューマノイド。

 それも一体は戦闘に特化しているようだ。

 もう一体小型のは、そう、情報戦用といったところか。」

ニトスは、うすうすは感ずいてはいた。

ルゴルはまたも裏をかかれるだろうと。

「しかし、現地指揮官はこの私、

コケにされたまま

 終わりはしないわ・・・。

 ジン13、あの女大きいほう、

 殺すことは出来る。?」

「殲滅することは、可能だ。問題ない」

「では、護衛役を始末しなさい。」

「了解した。」

言うなりジンは、文字通り目の前から消えた。

日の落ちた街の屋根伝いに淡い航跡を引き遠ざかる。

それは、まさに放たれた矢のように、

的を射抜くまでとまることを知らないかのようだ。

エルと、ケイの目の前に西の城壁あらわれ、

森林地帯は目の前だった。

ケイが、背後の変化を察知しエルに話す。

「ギエスの砲撃が止まったわ、

 それに高速で接近するものが1体あるわ。

 人間ではないし、・・・アンドロイド・・・

 ヒューマノイド・・・。」

「まずいわね、このままレリ様を追いかける

 わけにはいかない。

 まず、追跡者を迎撃する。

 あなたは、このまま街を離れて、

 この事態を大佐に報告すること。」

「私も、一緒に戦うわ、エル!」

「だめよ、戦闘は私の専門分野、

 あなたは自分の任務を果たすのよ。

 戦闘データは、継続してあなたに送るから、

 敵の戦闘能力を解析して。」

「エル・・・。了解したわ、必ず後から追いついてよ。」

「了解よ。」

二人は、しばし見詰め合い、口付けをかわした。

エルは、向き直り追跡者に向かった。

ケイは、城壁を飛び越え

暗い森林地帯の奥へ姿をけした。




残された二人の選ぶ道は、そして、その結末はどうなる。
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