レリ一行は、翌日、無事サレンのゲート前に到達することが出来た。
その町はまさに標高4000メートル超える高地にある、天空の都市。
基礎部分は全体が一つのメタルで覆われビル10階分ほどの高さがあり、
台地から立ち上がっており、その上に眼もくらむほどの高層建築郡が並ぶ。
そして、都市全体が、巨大なシールドにおおわれ、
外界の気候変動から保護されている。
高度な魔法科学に支えられた、奇跡の楽園のような町、サレン。
そこは、周囲の岩と、氷の世界からは隔絶したオアシスだった。
これほどの都市でありながら、入り口ゲートは一箇所しかない。
門を通過できないものは、都市へはいることが叶わないということだ。
基礎部分にある凍てついた唯一のゲートのインターフェイス前で、
ミラルが入国手続きをはじめる。
「レリ、こちらに来て、そしてこのDNAリーダーに触れてください。」
レリが、門の中央にある赤い球体に触れると、それは緑色に輝きだし、
巨大なゲートが左右に開きだした。
その先に都市への通路がトンネルのように続いていた。
このトンネルは、セキュリティシステムが満載のようだ
レリたちがそのトンネルを抜けると目の前に高度な技術力で築かれた
都市景観が広がった。
そして、そこにはすでに、幾人かの人たちが待ち構えていた。
一人の壮年の礼服を着た人物が進み出て、レリに話しかける。
「よく来てくれたね、レリ。私は、君の母君の兄、イダヤ・ラルブ、
君の叔父に当たるな。今は、このサレンの首長をしている。
レリ王女、大きくなったな、以前あった時は未だ赤ん坊だったのにな。」
レリは、はじめてみる親戚にやや緊張した面持ちだった
「はじめまして、叔父様。」
「疲れているだろう、部屋を用意させたからそちらでまずは
休息をとるといい。今後のことはその後話すとしよう。」
ラルブが、一人の人物に目配せする。
すると執事服の彼は、進み出て丁寧にお辞儀をする。
「皆様のお部屋へご案内いたします。
こちらの、リムジンにお乗りください。」
見ると、一隻のゴンドラのような船が
地上わずかな高さに、浮かんでいる。
側面の扉が開きステップが降りてきた。
それを上り乗り込んでみると、
内部は、豪華な調度品が並ぶ、サロンのような室内があった。
壁面には、グラスや、銀食器を納めた棚があり、奥のカウンターバーには、
幾種類かの酒、ジュースなどが並んでいる。
窓は大きく、明るい日が差し込んでいる。
床には、華麗な絵を描かれた豪勢な厚手の絨毯が敷かれており、
その上にふかふかの、真紅のクッションを置いた大きな赤いソファがあり、
テーブルの上にはフルーツが山盛りにさられたカットガラスの器。
照明は、シャンデリアのようなランプが輝き、
正面にはエザワイスとの友好を示ように、
サレンとプロラ王家の紋章が並んで掲げられている。
「このリムジンは、プロラ王がご来訪の際に
ご利用になられていたものです。どうぞ、皆様おくつろぎください。
上層部にあるお部屋までしばしお時間を頂戴いたしますので。」
そういい残し、執事が階上へとつながる階段に姿を消した。
ジェイがやや不安げな様子でミラルに話しかける。
「われわれ全員が、ひとつの船に乗ってしまうのは
警備上感心できませんが。」
「軍曹、ここはサレンだ。あらゆる国家に対して中立を保っている
自治都市だ、同時にいかなる国家もサレンの主権を脅かすことは出来ない。
エザワイスといえどもな。ここは、サレンを信じよう。」
ソファに座り込んでいたレリが、はーっとため息をついた。
「なんだか、緊張しちゃうなあ、これ、ものすごく豪華な船だし、
叔父様も立派な人みたいだし、今までの、私の生活とぜんぜん違うし。」
クーがレリの前に現れ、
「心配することは無いさ、すぐに慣れるよ。
もともとレリはこんな世界の人なんだから。」
「そうかな、私は、今までのままのほうが良いな。」
ミラルがそんなレリを見て話しかける。
「レリは、未だ今のレリのままでもいいですよ。
エザワイスが復興するまでは私たちとともに、
行動していかなければなりませんからね。」
「うん、そうだよね、私がもっと大人になるまで。」
その後、レリたちは中央庁舎にある、来賓用の宿泊施設に通された。
「では、こちらでゆっくりとおくつろぎください。」
そう、言い残して執事が出てゆく。
しかし、大きな部屋である。むしろ一軒の家と言ったほうがいいだろう。
内部は10ほどの部屋に分かれ、中央におおきなリビングがある。
ここもまた、リムジンに劣らぬ豪奢なつくりだった。
。
「ジェイ、各自の部屋割りを。全員の疲労の回復と、
身体のメンテナンスをしておくといい。」
ジェイが、びしっと姿勢をただしミラルに答礼する。
「アイ、マム。ミル、身体メンテナンスベッドの調整を頼む。」
「了解です」
ミラルがレリに向き直りひざを落として話しかける。
「レリは、私と同室でもいいですか?」
レリが、ぱあーと笑いかける。
「うん、いいよ、そのほうが、」
ミラルも少し微笑んでうなずいている。
そして、少し真顔になりレリに語りかける。
「私は、ラルブ首長と少し話があるので、出かけます。
先に休んでいてね。それからクーも一緒に来てもらいますから。」
「はい、ミラル」
ドアに向かい進みながらケイに向かって、
「ケイ」
「はい、大佐」
「レリをよろしくね。」
「了解しました。あの・・・先に服装を整えてもいいでしょうか」
「そうだったな、許可します。」
「はい、」
ケイは早速スタイラーに向かい、服のデザインを呼び出し
調整などを始めた。
魔法実体化プログラムは、武器や、アーマーなど
機能性具体性の高い物は自在に実体化できるが、
洋服などの、感性や抽象的概念を多用するものには適用が難しく、
どうしてもスタイラーなどの装置の手を借りなければ、
作り出す事が出来ない。
ケイは、お気に入りのデザインの服を作り上げた。
目的地サレンに入ったヒロイン、一息つけるといいんですが。