エターナルフレイム   作:泰丸B

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各国の思惑が交錯する円卓。守るべきは正義か、利益か——少女の運命が、静かに揺らぎ始める。


第22章 作戦会議

 

ミラルが、庁舎の最上階ラルブの執政室に着くと、

主だった国の首相、国王たちがテーブルについて座っていた。

も今は、国をギエスに占領され、その祖国を追われ、

逃げ延びてきた人たちだ。

 

「ミラル大佐、到着早々すまないね。」

 

「いいえ、私はかまいません、むしろ早くご報告を

申し上げたく思っておりました。」

 

ラルブは、首脳たち向かい話しかけた。

 

「では、皆さん、ここにプロラ王が居られないのが残念ですが、

作戦会議を始めましょう。

では、大佐、君は現在の状況をどう考えているのかね。」

 

「はっ、ギエスの警察軍の執拗な追跡の様子から、

彼らにはかなりの焦りがあるように思われます。

また、ギエスの戦線は今延びきっており、拠点を補給路で繋ぐことで

何とか維持している状態かと思われます。

各国の抵抗部隊がギエス軍に、大きな負担を課している効果が

現れています。」

 

かつての、エザワイスの同盟国パトク王国の首相が口を開いた。

 

「情報によると、ギエスは現在かなりの兵員不足に陥っている。

抵抗部隊の掃討に汲々としている今が、

反撃を開始する好機かと思うが。」

 

列席者全員が、そうだそうだと同意を表す。

ラルプが訊ねた

 

「大佐は、どう考える。」

 

「情勢としては、好機かと思えますが、問題があります。

ギエスは兵員の不足を補うために新型のヒューマノイドの生産に

乗り出す可能性があると思います。」

 

出席者たちが、当惑気にざわつきだす。

みながそんなばかなとか、ギエスには無理だとか言い出した。

 

「皆さん落ち着いてください。ミラル大佐、君はなぜそう思うのかね」

 

「はっ、われわれはこちらへ向かう間に、2度ギエスのヒューマノイドとの

戦闘を強いられました。

その性能は、従来のヒューマノイドのそれを大きく上回り

実戦投入可能な段階に達しているものと思われます。

あとは、それの量産体制を整える時間がどのくらいかという問題です。」

 

パトク王国の首相が、声を上げた。

 

「ならば、なおさら早期に反撃を開始すべきだ、

そのヒューマノイドとやらが大量に出てくる前に。」

 

「そうですが、急いで十分な軍備を整えられますか、

相手は、巨大な軍事国家です。

生半可な装備で挑めば、また、叩き潰されます。」

 

パトク王国の首相がやや興奮気味に語りだす。

 

「その心配には及ばん、装備、物量の確保はすでに済んでいる。

しかしだ、ヒューマノイドについてエザワイスは、その分野の最先端を

行っていたのではなかったのか?その技術をも上回るものを

ギエスが作ったというのか」

 

ラルブが、たずねる。

 

「君たちはそのヒューマノイドと2度にわたって戦ったといったが、

どうやって撃退したのかね」

 

「始めは、われわれの戦闘ヒューマノイド、エルがその身を挺して

損害を与え退けました。2度目は、少し事情が異なります。

ここから先は、レリ王女の護身プログラム、クーがお答えします。」

 

「僕は、クー。レリ王女護身プログラム、A111。

当時の状況をホログラムで再現します。」

 

会場の中央に昨日の襲撃の様子が映し出される、

レリが岩陰から走り出しギエスの兵士が近づいた時

映像が真っ白になる。

すぐに映像は戻るがその様子は一変していた。

 

「クー、これは・・・なんだと思うのかね」

と、ラルブが、重苦しい声でたずねた。

 

「レリ王女の潜在能力の覚醒が始まったんだと思う。」

 

議場の中から問う声が上がる。

 

「それは、一体何なんだ?。潜在能力とは。」

 

クーがラルブを見つめる。

ラルブが、いっそう沈痛な表情になり、語りだす。

 

「皆さんは、前文明崩壊の原因について聴かれたことがあると思うが。」

 

「伝説のエターナルフレイムのことかね、世界を焼き尽くしたとか言う。」

 

「さよう、改変の業火とも言われるエネルギー爆発。かつて起こった惨劇だ。

国々が崩壊し、文明も失われ、多くの人間が死んだ。

そのため世界は大きく疲弊した。

その惨事の記録を保持していたエザワイスでは、

この出来事の原因の研究を進めていた。

その結果、意外なことが分かった。

この出来事は、たった一人の人間が故意に引き起こした

惨劇だったと言う事実だ。

その人物が、エネルギーを開放し世界を業火に包んだ。

何のためにそんなことをしたのかは分かっていないが。」

 

パトク王国の首相が再び声を上げる。

 

「レリ王女がその力を使えるとでも言うのかね。エターナルフレイムを」

 

クーが答える。

「まだ完全じゃないよ。でもレリが、

法具王家の銃を手にすれば、力を制御できるはずだよ。」

 

首相は、立ち上がり身を乗り出して語る。

 

「ならば、それはわれわれにとって大きな戦力になるではないか」

 

ミラルがそれを制するように、声をあげる。

 

「レリ王女を前線におくなど出来ません。

王女は兵士、人々の精神的支えなのです。それを危険にさらすなど

賢明とは思えません」

 

「しかし、それでヒューマノドも倒せるのだろう。

ならば、王女にも参加していただく。」

 

ラルブが、議場を見渡し語りかける。

 

「皆さん、レリ王女は未だ、年端も行かない少女ですぞ。

そんな子供を戦争に利用するおつもりですかな」

 

さすがに、異をさしはさむものは出なかったが、

不満の意をそれぞれの国主たちが表している。

 

ラルブは自らの言葉の裏の秘密を悟られぬよう

落ち着いて振舞おうとしていた。

 

心中に思いを深くしまいこんで。

 

『プロラ王よ、あなたは慈悲深く、聡明で・・・残酷だ・・・』

 

ミラルに向き直り、問うた。

 

「君なら、次にどうするかね。」

 

「はっ、まず、ギエス本国のヒューマノイド開発機関の機能を停止、

あるいは破壊します。

次にギエス軍に全土で奇襲をかけます。

これは、かく乱のためで命令系統を混乱させれば成功です。

敵全軍の末端が機能を失えば大きく後退せざる得ないでしょう。

同時にギエス本国への攻撃を開始します。

世界に散っているエザワイスのヒューマノイドを集約し一斉に行います。

次いで、連合軍の本隊をギエス本国に進駐させ、

制圧を行います。

序盤の作戦がうまくゆけば、

敵残存ヒューマノイドの数は多くは無いでしょう。

強力な敵とはいえ、われわれが協力すれば、

殲滅もそれほど難しくはありません。

問題は、十分な軍備を整えられるかどうかです。

長期の戦いは不利なものとなるでしょう。

短期間に集中して実行する必要があります。

以上が私の考えです。」

 

ラルブは、立ち上がり居並ぶ首脳たちに向かい語りかけた。

 

「わが、サレンはいかなる国とも、直接戦火を交えることはしない。

それがこの都市を守る方法だからだ。

しかし、皆さんに助力は出来るだろう。

戦略的支援、負傷者の手当てなど協力は惜しまないことを、

お約束しよう。」

 

ラルブがミラルに向き直り。

 

「大佐、われわれは、これから開戦に向け本格的な準備に取り掛かる、

ギエス本国の施設の破壊をお願いしたい。」

 

「もとより、そのつもりです。お任せください。」

 

そこへ、サレンの秘書官が入ってきて、ラルブになにやら耳打ちをする。

彼が下がった後、ラルブが再び首脳たちに説明をしだした。

 

「現在、サレン周辺にギエスの警察部隊が展開しているようです。

彼らがここに押し寄せるようなことは

ありえないと考えますが、この町から外へ出ることは控えていただきたい。

もし、あなた方がギエスに捕らえられようともわれわれは、

一切手出しができないことを明記していただきたい。」

 

首脳たちは、一瞬ざわめき立ったがやがて落ち着きを取り戻した。

 

「彼らが去ってしまえば問題は、ありません、

それまでは慎重に行動していただきたい。」

 

ミラルは、その後の会談を聞くことはなく、執政室を後にした。

 

ギエス警察部隊副長官ニトス・パゴレは、サレンを目の前にし苛立っていた。

レリ王女の引渡しの申し入れをしているが、一向に埒が明かない。

この事態は、もとより分かっていたことではあるが。

「レリ王女が、ここへ逃げ込んだのは間違いない。いっそ踏み込んで町ごと

吹き飛ばしてやりたいわ。」

しかし、それが不可能なことは百も承知だ。

これ以上うかつに近づくことさえ危険だ。

サレンは、中立を宣言しているが侵略しようとするものには容赦がない。

敵対的に近寄ったものは間違いなくその場で抹殺されるだろう。

それが、この都市を巻き添えにする大破壊になろうとも。

「ニトス指令、都市ゲートの監視装置が整いました。」

「よろしい、トンネル、地下通路、の熱量監視を強化するように。

外へ出てきたものは誰だろう直ちに拘束しなさい。

抵抗するものは抹殺を許可します。」

「はっ、」

ニトスは、腰をすえて待ち構える覚悟を決めた。

出ていらっしゃい。その笑顔を切り裂いてあげるから・・・。

 

 

ミラルが部屋へ戻る途中に、背後から秘書官が声を掛けた。

 

「エザワイス軍ミラル大佐殿、ラルブ首長からのメモをお受け取りください。」

 

ミラルは、メモにしてはしっかり封かんした手紙を受取った。

彼女は部屋に入る前にそれを開き眼を通す。

 

「ミラル大佐、各国首脳たちのあせり具合は会議で、ご覧の通りだ。

彼らはギエスとの対決を速く行い速やかな終結を望んでいる。

そのため、戦前はギエスに対し団結して抵抗できなっかた国々が、

手を結び合おうと、しているが、その利害は複雑だ。

彼らは勝利を確実なものにするためには手段を選ばないだろう。

そのため、レリ王女を利用しようと、動き出すことは間違いない。

また、戦争終結後自国の利益を図るためにもレリ王女の

力を手に入れようと画策もするだろう。

まったく、政治ってやつは節操が無いからな。

結論を言うと、レリ王女一人がここに残るのは

今の情勢では賢明な判断では無いということだ。

君らと一緒に行動を続けたほうがいいだろう。

私には、各国首脳を押さえ込むことは難しいだろうからだ。

すまないと思う、レリ王女に十分な保護を与えられない。」

ミラルは、そのメモをやぶり、焼却した。

 

ドアを開け、宿舎となっている部屋に戻る。

ミラルは考え続ける。

 

今後、しばらくの間はサレンに滞在できるだろう。

連合軍側の準備が整うまでの間だが。

しかし、いずれにしろレリ王女とともにギエスへ向かうことになるだろう。

その時まず、この町を包囲している警察軍の網を潜り抜けないといけない。

あまり悠長に構えるわけにも行かない。

あの、ヒューマノイドの補充が完了してまうと、厄介だ。

また、その間レリの安全を確保しなければならない。

北部山脈での出来事を繰り返すわけにはいかない。

 

「ここは、ひとつあいつに働いてもらうか。

ギエスにあまり手の内をさらしたくは無いが、この際やむおえない」

 

「ジェイ、カルスの部隊との連絡を取りたい。現在の時点で可能か?」

 

「はっ、サレンの通信システムを利用できれば傍受されずに連絡可能です。」

 

「早速、取り掛かってくれ。」

 

「了解」

 

時は、新たな時代へと向かいまわり始めていた。

しかし、その扉を開くには眼前の敵ギエスを打ち破り

進まねばならない。

困難な挑戦の時は間近に迫っていた。




ホットしたのもつかの間、新たな戦いの場へと踏み出すのか
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