エターナルフレイム   作:泰丸B

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仲間との絆、祖国への想い、そして初めての戦い。
レリが踏み出す一歩は、運命に抗う決意の証。
雪嵐の中、静かに始まる脱出作戦――
それは、希望への第一歩だった。


第24章 サレンからの離脱

ノックの音とともにジェイの生真面目そうな声が響いた。

「大佐殿、山岳特殊部隊の返答です。」

「入れ」

 ジェイは姿勢を正しミラルの前に立った。

「カルス少佐の部隊は、要請を承諾。作戦を実行する。との事です。」

「そうか。軍曹、今夜全員を集めておくよう。」

「アイ、マム。・・・いよいよ始まるのですね。」

「そうだ。困難を極めるだろうが、なんとしてもやり遂げるのだ。」

 ジェイはびしっと敬礼をし、きびすを返して隊員のもとへと向かって行った。

午後から、サレン周囲では、天候が悪化しブリザードが吹き荒れていた。

 凍てつく寒さの中ギエスの部隊は忍耐強く、監視を続けていたが、

 センサーには何の変化もなく、事態は益々膠着の様相を強めていた。

 警察部隊副長官ニトス・パゴレの苛立ちも募ってきていた。

「一体いつになったら動き出すつもりなの。それとも、

 サレンの居心地のよさに腑抜けにでもなったのかしら」

 常に、追う側で思考してきため、

 苛立ちが冷静さを削ぐことも有る。

カルス少尉は、この悪天候の中サレンを取り巻くギエス軍の偵察を敢行していた。

 軍曹は赤外線双眼鏡を覗き込みながら、カルス少尉に話しかけた。

「あれじゃ、サレンから蟻一匹外へ出られそうにもありませんな。

 見事なもんです。」

 カルス少尉が、同じく双眼鏡覗きなら答える。

「確かにな、指揮官の能力の高さが窺えるが、あまりに執拗過ぎる配置だな。

 サレンに向いている面には隙が無いが、逆はどうだ?」

「背中はがら空きだと・・・?」

「それほどひどくは無いが、しかし、あの南東の谷の面はそういえるな。」

「まさか、谷を登攀して攻撃しては来んだろうと思ってますかな?」

「あいつら、山岳専門部隊が、いないのかも知れんな。」

「あの谷を登攀するに、困難はありませんなあ」

「まあ、そういうことだ・・・。」

「やれやれ、・・・ですなあ。」

 軍曹は、雪焼けした顔をゆがめ不敵な笑みを浮かべた。

夕食後に、ミラルは全員に今後の作戦計画を説明しだした。

 その、傍らにはレリとクーも座っていた。

「われわれは、明日2400時を持ってサレンを出る。

 その方法についてだが、カルス少尉の部隊がギエス軍へのけん制攻撃を仕掛け、

 動きを封じる。その間に、サレンの第六地下道を経て街の外へ出る。

 ギエス軍の背後に出られるはずだ。出口にはギエスの守備隊がいるだろう。

 われわれは、迅速に彼らを排除し東部の下山ルートを経てパトルカへ向かう、

 当面は以上だ。質問は?」

 カイが声を上げる。

「守備隊の兵力は?」

「カルス部隊の偵察報告では、兵員一個小隊、

 アンドロイド3ないし4名ということだ」

 ケイが立ち上がり尋ねる。

「アンドロイドって・・・あいつですか?」

「いや、そうではないようだ。予備機体らしい、

 タイプは1世代ほど前のものだろう」

ミルが、楽観的な口調で話す。

「それなら、われわれの敵ではないわ。

 十分対処可能ね」

 サキが質問を発した。

「下山後の移動手段はどうなりますか」

「サレンの手により車両を手配してある。

 サキが全員を担いで走る必要はなさそうだ」

 みんなから笑いがこぼれる。

 アルが声を上げる。

「サキなら、その車を背負って走れるよ」

「私でも、出来ればそれは避けたいぞ、アル」

 再び、笑いがこぼれた・・・。

 レリはそんな隊員たちを見てミラルに言った。

「みんなすごいのね、これから大変なのに。笑顔が出るくらい平気なんて。」

「それはね、全員がお互いを信頼してるから。」

「私も、ミラルやみんなを信じてるよ。」

「そうね、私たちは、お互いを守りあってるの。レリもその大切な仲間よ」

「私も、同じ仲間・・・うん!」

ミラルはレリに笑顔を向けそれから、再び隊員を見て言った。

「祖国復興へ向け、第一歩となるだろう。エザワイスとその栄光に誉れあれ」

翌日は、出発の準備に追われた。

レリも自らの装備を与えられ初歩的なレクチャーを受けた。

ケイがアーマーの使用法を説明している。

「この、小さなパックから魔法プログラムで

アーマーが展開してくの、試してみる?」

「うん」

「こうして胸に当てて、防具をイメージするの、

出来るだけはっきりと」

「えっと、できるかな?」

「最初は、難しいけど、コツをつかめばすぐよ」

「うん、じゃ、・・・・・・えいっ!」

レリの体に沿ってアーマー・・・っぽいものが形成された。

「なんか、かわいい!レリのアーマーって!」

「こんなで、いいのかなあ」

「最初はね、私なんて初めはもっとひどかったから」

「それって、私のはちょっと、ひどいってこと?」

「いいや・・・、 その、・・・慣れればもっとかわいく出来るわ」

「えっ、そういう事なの・・・・・・」

その後何度か繰り返し、全身を包むアーマーが出来上がった。

「うん、これなら使えそうね」

「でも、なんかかわいいのがいろいろ残ってるけど、いいのかな・・・?」

「これは、外見によらない概念装甲だから、強度は見た目と関係ないの」

「そうなんだ」

「相手の攻撃を受けると破損するけど、

それは精神的ダメージの表れでもあるの、

気持ちが負けるとより大きく壊れるって事」

「じゃあ、精神にまったくダメージが無ければ壊れないって事?」

「そうはいかないけど、再生する可能性はあるって聞いたことがあるわ」

「ケイは出来るの、再生って」

「私じゃ、無理ね。」

そこへ、ミラルがやってきた。

「レリ、うまく出来るようになったわね」

「これでいいのかな?」

「十分身を守れますよ。」

その後、アーマーも解いて、装備のパッキングを始める。

その中にある 王家の銃、スタイラーを使って

ホルスターをつくり腰に固定するようにした。

この銃、よくよく見るとリボルバーのような形である。

自らの姿を部屋の鏡で見てレリは思った。

「なんか、いかにもって感じかなあ。でも

これでミラルの力になれれば・・・」

休息の後、いよいよ出撃時間が迫ってきた。

小隊全員が第六地下道の前に集まっている。

そこへ、サレン首長ラルプが現れた。

「いよいよ、出発かね?」

それにミラルが答える。

「はい、ギエスを目指します。あとは、よろしくお願いします。」

「うむ、必ず力になることを約束する。」

それから、レリに歩み寄り声をかけた。

「レリ、大変だとは思うが、十分気をつけて行くのだよ」

「はい、おじ様」

ラルプは、レリの瞳をじっと見つめ語った。

「私は、君が自らの、の・・・いや、運命に負けない強さがあると信じている。

未来を掴み取るんだ。定めに負けてはいけないよ」

「はい、私、みんなと一緒なら困難にも負けないって信じてます」

「そうか、それなら安心だ」

そのころ、カスル少尉は、氷壁を登攀し終え

ギエス部隊の背後に部下を配置した。

そして、彼らは、無駄のない訓練された正確さで行動し、

渓谷を渡る風ほどの静けさを保ち、爆薬を仕掛けてゆく。

「少佐、設置完了、所定の位置まで後退します」

「よし、2400時か、・・・爆破せよ。作戦を開始する、

 派手にやれ」

夜の静けさに包まれていた山間を切り裂く火柱が立ち、爆発音が轟いた。

閃光は重なり轟音が連打される。

副長官ニトスは指令所の簡易ベッドから跳ね起きた。

そこへ副官が血相を変え飛び込んでくる、

「敵襲です」

「敵は何者だ?」

「山岳部隊のようです」

「サレンの部隊か・・・、いや、エザワイスか!

 直ちに、反撃せよ、予備機体のアンドロイド全機投入せよ」

「はっ、」

副官は命令をマイクにがなりながら飛び出していった。

ニトスは、足早に地下道の熱量監視班の車両へ向かう。

「変化は無いか」

班長が緊張した面持ちで答える。

「今のところは・・・」

そこへ、監視オペレータから報告が入る。

「熱量感あり、東地下です」

ニトスは直ちに攻撃部隊を向かわせようとしたが、

カルス部隊の攻撃を抑えるのかやっとだった。

とても、他へまわせる人員はいなかった。

「なんてこと、こんな絵に描いたような戦術にはまるなんて」

ニトスは指令無線を使う。

「東守備隊」

「はい、東第6小隊」

「そちらへ、レリ王女が向かったと思われる、

なんとしても取り押さえなさい」

「はっ、了解」

東第六小隊の隊長は、部下の顔を見渡し命令を発した。

「地下道の出口を固めろ、こちらへ出てくるぞ

・・・あの狂戦士・・・タギが・・・、

アンドロイドを前面に出せ、守備体型を取れ」

部下たちの顔が一斉に引きつった。

もうすぐ、歩く恐怖が、あの悪魔がやってくる。

レリたちは地下道の出口へ到達した。

 頑丈な鋼鉄製の扉は内側からしか開けられない。

 ミラルが尋ねた

「クー、敵兵の配置は分かるか?」

「うん大体だけど、アンドロイド3体が出口正面、

 あとは散開して取り囲んでいるよ」

「全員武器以外の装備は取り外せ、アーマー展開、接近戦に備えろ、

 私と、ジェイで正面アンドロイドを引き受ける。

 カイ、アル、サキ、ミルは散会している敵兵を掃討する、

 ケイはレリと地下道出口を確保」

「アイ、マム」

「よし、3、2、1、GO!」

彼らは、なんのためらいもなく、

開かれた扉から一気に飛び出す、

月明の元、彼我の姿が視認される。

すぐさま銃撃にさらされるが銃弾は

削り取られるアーマーとともに火花を散し跳ね返される

ミラルが目の前のアンドロイドに迫る、

彼女の片腕に水晶のような輝きの直刀が表れ、

きらめきを放ちながら、振るわれる。

敵は盾を構え打撃をかわそうとする。

しかし、ミラルの剣がまばゆい閃光を放ち盾を破壊する、

さらに、太刀を翻し再度の打撃を加えに行く。

敵は身をかわしながら、剣を突き出し前進するミラルの体を貫こうとする、

彼女は信じられぬ速さで、その頑丈なナイフをもう片手にし、

敵の太刀を払い、直刀を敵の体に叩き込んだ。

その、爆発的な力は敵の体をほぼ2分してしまった。

その間にもう1体のアンドロイドが迫る。

ジェイは、当面しているアンドロイドに

銃剣を備えたハンドガン2丁で戦い、敵の執拗な剣戟を銃剣でしのぐ。

ついで、踏み込み、振るわれた太刀を受けずにかわす。

敵は思わず剣を振りぬいてしまった。

ジェイは、そのわずかな体勢の崩れに乗じ、敵の体に銃剣を突き立て

引き金を引く。ついで、ナイフをひねり、敵の体を大きく引き裂いた。

ミラルは背後に迫るアンドロイドに、体を回転させ直刀を振るいナイフを構える。

敵は振るわれる太刀の速さに圧倒され一歩引いた。

ミラルの攻撃が始まる。

直刀とナイフの距離感の違いにわずかに幻惑された敵は

すばやくジャンプし頭上からの攻撃を試みた。

盾を構え、剣で頭部を狙うが、ミラルの速さは敵を圧倒していた。

振るわれた剣はミラルの直刀に阻まれ、ナイフが月光を反射し鈍くのど元に光った。

出口のレリは、始めて目の当たりにした戦闘の光景に

ミラルたちの無駄のない動きと、敵を打ち倒す速さ

けれんみのなさに、圧倒された。

ケイが、もう1体のアンドロイドを発見した。

それはまっすぐレリに向かっていた。

「レリ、ここを動いちゃだめよ」

そお、言い置いて、迫ってきたアンドロイドを迎え撃ちにいく。

レリの周りでは、次々とギエスの兵士が倒れていった。

ふと、アルの姿が目に入ってきた。

小さな体に不釣合いな大振りな剣を振り回し敵兵と渡り合っていた。

その剣にはかわいいマスコットがぶら下がっている。

アルが敵兵をまさに倒そうとしたとき、

その背後にギエスの兵士姿があった。

レリはとっさに法具を抜き構える。

照準ホログラムが浮かび瞬時にギエスの兵にロックオンする。

レリはためらう間もなく発射した。

ビームは違わず敵兵の胸を貫きとおし、

敵兵はばたりと倒れた。

アルは驚いたように振り返り、ついでレリを見、

そして、にっこり笑い、手を振った

ケイが、敵アンドロイドを倒し戻って、心配げに尋ねた。

「レリ、大丈夫、それ使って・・・」

「うん、平気、それより、

 ちょっとでも仲間を守る手伝いができたのが

 うれしいの!」

 ケイは、ちょっと複雑な笑顔を浮かべたが、

「そう、がんばったのね」

 そういい、にっこり微笑んだ。

ジェイがミラルに報告をした。

「敵勢力の排除終了しました」

戦闘は思いのほか短時間で終わった。ミラルが少し怪訝そうに話す

「ギエスの兵士の抵抗があまりに弱かったな、全員異常ないか」

「はい、大佐」

元気な声が返ってきた。

「よし、移動するぞ」

みんなが地下道出口に戻り装備を身につける。

アルがレリに駆け寄り話しかけた。

「さっきありがとう。うっかり後ろ見るの忘れちゃって」

サキが

「忘れてしまっては、命がいくつあっても足りないぞ」

「むーーー分かってる。もう忘れないもん」

ミラルが、レリに近寄り

「レリ、法具を使ったの?」

「うん、考える間なかったの、気がついたらもう、

 撃ってたの。

 アルが大変だって思ったら、

 自然に体が動いちゃった」

「気分は、大丈夫」

「うん、大丈夫だよ」

「そう・・・、ならいいけど、でも、よくがんばったわね」

「うん、ありがとう、ミラル」

レリは、ちょっと誇らしくうれしかった。

全員が出口から離れ進みだす。

レリも一緒に出て行ったが偶然ににも

アルの背後で銃を撃とうとした兵士の脇を通った。

そのとき、その兵士の顔が目に入り、

レリは、その場に凍り付いた。

目を見開いたまま、凝視した、そして、

心臓をつかまれたようなショックが襲った。

その顔は、自分より少し年上の女の子のようだった。

ヘルメットは外れ、黒髪が月明かりに照らされ、

つややかに広がり、

小ぶりな左手は、

穿たれ朱に染まった胸にあてがわれ、

右手は苦しげに

銃を握り緊め息絶えていた。

レリ、大丈夫かい」

クーが心配げに覗き込んだ。

レリは、目を見開いたまま・・・

震える声で尋ねた。

「私は・・・何をしたの?」

レリは思っていた、

 ギエスは、私から育ててくれた父さん母さんと

 あの幸せの全てを奪っていった。

 だから、ギエスは私にとって、悪なの。憎いの。

 だから、戦った。

私のために、

仲間が傷つくのがもう許せなくて・・・

   力を使った。

だけど、そのせいで、この子は死んだ・・・

憎いギエスの兵士なのに・・・

心が痛い

苦しい

悲しい

なぜ・・・、なぜなの?!

「ねえ、これはいったい何なの!!??」

そばに戻ってきたミラルが言った。

「レリ、これは戦争なの。

ここにいる誰も悪いわけじゃない。

私たちも、このギエスの少女も、

命令に従って戦っただけ。

そして、強いものが生き残った。

それだけのこと」

「私、この子を殺しちゃったんだ・・・」

レリは、自らが起こしたこの結果に苦悶した。

今まで、経験したことのない、罪悪感、恐怖感に苦悩した。

手を硬く握り緊め、血がにじむほど

唇をかみ締める

自分の体を打ち据え罰したいと

言う衝動に駆られる。

傷ついていた心に、さらに追い討ちをかける出来事だった。

「レリ、自分を責めてはいけないわ、

レリが撃たなければこの子がアルを撃っていたでしょう

そうすれば、アルが死んでいたかもしれない。

レリはそれを救った」

レリは、必死な眼差しでたずねた

「私は、仲間が傷つきそうになったら

  また同じことをすると思う。

   ミラル・・・、これは正しいことなの、

     間違ってはいないの?」

「レリ、私たちは、無謀に奪われた祖国と平和と

 自由を取り戻そうとしている。ギエスが引き起こしたこの戦いを終わらせようとしている。

 そのために、多くの人が命を懸けて戦っているの、 

 今のこの戦いが、正しいことか、そうではないのか。

 今は分からないかも知れないわ。 

 でも、世界が再び平和になり光があふれるとき、

 正しい答えが見えてくると思うの。

 私はそれを信じ、仲間を信じて

 進んでいくつもり。それに、レリ、ここにいるみんなも

 レリと同じ苦しみや痛みを抱えているわ」

 レリの周りに、小隊の全員が集まっていた。

レリは彼らの顔を見回し、再びギエスの女の子に目を戻した。

「あなたの死を一生背負っていく・・・。

 そして、こんな悲しい戦いを一刻も早く終わらせる。」

 レリは、ミラルを見、隊員たちを見、そして言った。

「私、みんなを信じて、一緒に進んでいきます」

 そう語ったレリの瞳には決意が宿っていた。

 ミラルがレリにそっと手を差し出し

「さあ、先を急ぎましょう」

「はい、ミラル」




戦争とは、仲間をすくうために手に取った銃、その結末はあまりに理不尽だった。
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