エターナルフレイム   作:泰丸B

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夫の死をも乗り越え、走り去る車。操縦する妻ムメの心に去来する思いは?
愛する娘レリをただひたすら守り抜こうとする、母の願いは?
叶えるには、何を捧げればいい?


第4章 激走

ムメは、通信機を介してダクの死を知った・・・。

 

   全ての感情が無くなったはずの心に、

   僅かだが静かに悲しみが込み上げてきた。

 

カウントダウン終了!

 

メインエンジン点火!

 

車は爆音を上げ、納屋を突き破り柵をへし折り発進した。

 

バックヤードには人影は無かった。

 

 車の最大加速度は4Gに達する、

後部座席でレリがうめき声をあげる。

加速度に対応し座席が変形しているのだ。

 

「レリ様、大丈夫ですか。」

 

ムメが声をかけるが、

息がつまり返事が出来ない。

 

「クー、どんな様子?」

 

いきなりクーが実体化した。

もとよりプログラム体であるから、物理的な加速度など感知しない。

平然とした様子で答える。

 

「高Gだから苦しいのも無理ないよ。

でも生命に危険と言うほどでもないよ」

 

生命維持装置はその能力をフルに発揮しだした。

レリの苦痛が和らいでゆく。

 

「どうなるの?」

 

 不安に刈られレリがたずねる。

 

「心配ないよ、レリ。

ムメは優秀なバトルパイロットでもあるんだ。

そのテクニックは完璧さ。」

 

 しかしムメはそれほど楽観はしていなかった。

先ほどから盾グループからの連絡が途絶えていたから。

感情は消えたはずだ。

なのに不安と恐怖の入り混じった気持ちが頭をもたげてきた。

レリを最後まで守りきれないかも知れないと言う思いとともに。

 

突然、後方警戒レーダーが警報を発しだした。

 

追跡者がいる!!。

 

「やはりあの南の車はダミーだったか」

「はい、ターゲットは発見できません。」

「処分して、本隊に合流しろ」

 

そこへ、対地レーダーからの報告が入った。

「チーフ、東5キロに高速の移動物を発見。」

それを聞いた、チーフコマンダーは、一瞬背中に冷や汗が流れるのを感じた。

 

「くそっ。裏をかかれたか。そいつがターゲットだ。エアロバイク部隊に追跡させろ。」

 

前方に森が迫ってくる。あと10キロで中に入れる。

ムメはエンジンを全開にした。

秒速は300メートルを超える。・・・そしてついに音速を超えた。

激しい音とともに、すざまじい衝撃波が発生し、

地表をえぐり、周囲のものをなぎ倒す。

追跡者たちとの間隔がじわじわ広がる。

 

ギエス警察部隊チーフコマンダーの指揮車両に連絡が入る。

その音声は派手な破壊音を伴い、引きつった声を伝えている。

 

「ターゲットの車は音速を超えています!!」

「危険で近寄れません。わーっ!!」

 

チーフコマンダーは、その様子をかんがみしばし黙考する。

隣に腰掛けてる副官に相談するとも無く話す。

 

「ドライバーは、人間ではないな」

「はっ。おそらくアンドロイドかと」

 

地図を現している画面をにらみながら、敵の逃走経路たどり予測を立てようとする。

 

「確か、東側には森林地帯が広がっていたなそこへ逃げ込むつもりか。」

「やっかいですね。」

「いやそうでもない。森の中を音速で飛ばすことなど出来るものか。

そうすれば追いついて生け捕りにしやすくなる。」

 

 ムメは考えた。

森に入ってからも音速で走行できるだろうか。

衝撃波で木立はなぎ倒されてしまう。

すると帰って追跡しやすくなるだろう。

得策ではない。音速以下の最高速度でいこう。

そろそろ日が翳りだしてきた、このまま夜陰にまぎれることが出来れば。

 

 暮れなずむ森の中、ムメは、必死に車を駆る。

追いすがるいくつかのライト、閃光、銃声。

立ち木の間をすり抜ける速さは、人間の反応速度を

はるかに超えている。

 

 極限の走行、

 

木立にボディをこすり

バンバーは、吹き飛び

フェンダーは剥がれ

ライトも割れ

バックミラーはかろうじてボディにぶら下がっている。

 

障害物との激しい接触、衝撃音。

 

 その直後車の窓から卵のような何かが落とされた。

車は速度を落としながらも走行、

そして不意に右の茂みに入り込んだ。

追跡していたエアロバイクのライトに

卵型のものが浮かび上がった。

 その時、強烈な閃光と共に爆発、

大音響と共に大量の煙があたり一帯を覆い尽くした。

追跡者たちの間に声が飛び交う。

「銃撃止め!」

「先頭の1台が、やられました。」

「目標を見失った模様」

 

チーフコマンダーは、すばやく命令を下した。

思わず保身を考えてしまう。

ここでもたついて取り逃がしては、本国でどんな処分をされるか分かったもんではない。

 

「半径1キロの封鎖線を敷く。C小隊は南、D、E小隊は

それぞれ東、西からそれぞれ展開せよ」

「我々は、このまま南進する。」

「レーダーに反応は?」

「金属反応が消えました。」

「なんだと?」

「あのガスのせいかとおもわれます。」

「くそ~、厄介な。」

「各班に告ぐ、レーダー反応が消えた。慎重に肉眼で確認せよ。味方を撃つなよ。」

「しばらく根競べですね。」

「うむう・・・。」

 

指揮官は、いやな予感と、焦りを感じ始めていた。

 

 濃密な煙幕の中、茂みに入り込んだ車の中で二人の人影と小さな影。

ムメは集中制御コンソールを脱ぎ捨てた。

 

そのとたん、押さえ込まれていた感情が一気に噴出す。

 

  ダクを失った悲しみ、

  レリを思う気持ち、

  ギエスに対する怒り、恐怖が

  ムメを苦しめる。

 

 しかし、今はそれらに拘泥している場合ではなかった。

一刻も早く次の行動を起こさなければ。

彼女はすべての思いを振り払うようにして、

シートベルトをはずし

後部座席のレリの元へ急ぐ。

 

「レリ様、さあ早く降りて。」

「お母さん・・?」

「このまま、エルカトへお逃げ下さい。後のことはクーが心得ております。」

「私、どうなるの、お母さんはこないの?」

 

ムメは不安と恐怖に揺れるレリの瞳を見つめ、心締め付けられる思いをする

 

手早く、座席の拘束を解きレリ抱きしめる。

その華奢な少女の体をいとおしむかのように。

 

「レリ様、・・・レリ・・・ 私もお父さんも、

あなたを愛しているわ。どんなことになっても

決してレリを忘れたりしない。

だけどお願い、今は、早く逃げて。・・・・クーお願いね。」

「わかったよ、心配しないで。ぼくが必ず逃がしてあげるから。」

「お父さんは?」

「・・・レリ様、私たちは・・全てを掛けて追手を食い止めます。

どんなことがあっても、あなたをお守りします。

それが私たちにできる全てなのです。」

 

車の外へ、放り出されるようにして降り、

その場に呆然として座り込むレリ。車は再び走り出す・・・。

 

 

 

 集中制御コンソールを装着しても、もはや、感情が消え去ることは無かった。

ダクへの思い、彼をうしなった悲しみ、

レリを思う心・・・それが、いまムメの気持ちをかき乱そうとしていた。

 

 しかし、今こそ冷静な、勇気ある決断が必要だった。

 

そして、ムメは感情を押さえつけ、コクピットの中で、めまぐるしく考えていた。

 

いかにしてレリから敵を引き離すか。

午後からの、連続した非常事態に体の各機能は

オーバーロードに軋みをあげ始めている。

このままでは後いくらも持ちそうにもない。

彼女の中にある決意が形作られて行く。

 

  それは精巧なアンドロイドの思考の範囲を超えたものになっていった。

 

一方、ギエスの部隊では、動き出した車をやっと補足していた。

追跡の先頭になっていた、部隊の隊長から指揮車両へ連絡が入る。

 

「C小隊よりチーフ。ターゲット発見、現在北進中。速度30%ダウン」

「さすがに、ダメージが大きいようだな。D、E小隊はターゲットとの間隔を詰めろ、

C小隊はそのまま、北進し追撃せよ。

B小隊はわれわれの前方B3-165近辺に迎撃線を敷け。」

チーフは、やや後方で指揮をする体制を整えたところだった。

これで、落ち着いてレリ王女を捕獲できる。

副官がチーフに語りかけた。

「袋のねずみですね。」

チーフは、シニカルな笑みを浮かべながら答える。

「所詮、アンドロイドだ、思考が直線的だ。」

 

 ムメは、ひたすら車を駆っていた。

少しでもレリから遠ざかるために

愛する娘、レリを守るため、遠ざからなければならないと言うことが、

彼女の心を引き裂こうとしていた。

 

  「今すぐにでも、レリの元に駆けつけ抱きしめ、

   混乱と恐怖にさいなまれる心を癒してあげたい。」

 

そう思う思いがさらにムメを苦しめる。

やがてムメの前方に1ダースものライトが見えてくる。

ムメは、全ての思いを振り払うかのように、加速してゆく。

 

「最後の時が来たのね。ダク、私は、使命を果たせたのでしょうか。

 レリを守ることができたのかしら。」

 

彼女は、フルスピードで目前の敵に突っ込んで行く。

 

「チーフコマンダーだ、目標を発見したぞ。全車ポイントB3-163へ向かえ。

B小隊はターゲットを威嚇し停車させろ」

 

彼は、この時点で作戦の成功を確信したが・・・。

 

「はは、自ら方向を失ったか。」

 

 

愚か者を、あざ笑うがごとき笑みを浮かべ、栄光を手にする瞬間を夢想した。

しかし、そんな楽観を打ち砕く報告が入る。

「こちらへ、突っ込んできます。止まりません。わ・・わー!!」

チーフは、この瞬間に自らの読みの甘さを思い知った。

つまり、こいつはおとりだったと、気が付いた時点で、

作戦の失敗が明らかになった。

 

「く・・ばかな。機械人形の分際で」

「B小隊、撃ち落とせ。構わん破壊しろ、」

 

命令を受けた分隊長は、一瞬沈黙した。そして思わず応答する。

「しかし、命令では王女を生け捕りに・・・。」

「構わん、あれにターゲットは乗っておらん、あれは、おとりだ。」

「はつ。」

 

爆音を上げる車は目前に迫っていた。

分隊長は、必死の命令を発した。

 

「うわーっ、ぶつかる。撃てー!ターゲットを破壊しろ。」

 

一斉に銃口が火を噴き、無数の特殊貫通弾が車体にめり込む、

車は構造物を撒き散らしながら大きくバウンドし

地面にたたきつけられた。

さらに二、」三回もんどりを打って大破し

やっと止まった。

 

ムメは、その機能の大半を失っていた。そして、

やがて、彼女は完全にその機能を停止した。

満足気な穏やかな顔で。

 

・・・・・ ムメの体内のタイマーが作動し出す。

 

・・・10・9・8・・・

 

「車にターゲットの手がかりがないかチェックしろ」

各班はこのポイントを始点として周囲の捜索を行え」

「チーフに連絡する。回線を繋げ・・コードナンバーは・・・」

彼は全てを言い終えることはできなかった。

 

 T362内蔵高性能小型気化爆弾が爆発し周囲2平方キロのもの全てを焼き尽くした。

 

 




ダクとムメ、王女をを守るため、そのすべてを捧げて戦い抜いた。
 国のため?任務のため?しれとも、ただ、愛する娘のため?
その思い、犠牲の上に永らえた命、どう守っていけばいい?
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