ギエス兵器研究所は、戦術戦略兵器の開発を主眼とした施設で
ギエス首都ガンドの郊外に広大な敷地を要し
存在している。
その所長 ジン・ネルブは、今まさに
自らの研究の集大成とも言えるマシンの
最終調整に余念がなかった。
現在までに、実験機を12台試作し
失敗のくりかえしだったが、
エザワイスのノウハウを取り入れ
一気に成功を収めた。
この13台めで全てが完成する。
「素晴らしい、完璧そのものだ。
これで世界はわれわれのものだ ・・・」
制御パネルの表示が全てグリーンを示す。
「所長、プロトタイプ13ボディの整合完了しました。」
いよいよ最終段階だ。
「よし、神経回路の起動に移る。」
多くの所員たちが各コンソールに向う。
「運動制御神経網・・・同期中・・・3・2・1・・・コンタクト・・・オン
視覚情報コントロール・・・オン
聴覚周波数識別・・・オン
触覚、熱感知・・・オン
人格モジュール、戦術モジュール、メモリー、バッファ・・・オン
オールグリーン ・・・システムオンライン」
「ふふ・・・ははは・・・あっははは!!
いよいよだぞ
尻をひっぱたいて目を覚ましてやる。
全同期パルスオン!!!」
一気に神経が覚醒する、
作業ベッドの上の体躯がゆっくり起き上がる。
「バグは、発見されません」
ジンは、おもむろに近づき
「どうだ、気分は」
「・・・私は戦士、気分に何の変化もない」
妙な人間味を持った声だ。
「味気ないやつだな、お前は私の13番目の娘だ
ジン13・・・ハッピイバースデイ」
ジン13は、その正確無比な視覚を向ける。
そこには、自らのモデルとなった顔があった。
警察部隊長官ルゴルは、
緊張した面持ちで執務室の前に立った。
「いきなり来いとは一体何なんだ?
先日の捕獲作戦の失敗については
報告を出したが、お咎めなしだった。
不気味といえば、そうなんだが。
それにしても・・・」
ドアのロックが解除され、開いた。
「入れルゴル」
内務大臣の声が響く。
それを聞きルゴルは思った。
「くっ、偉そうに言いおって
一気に出世したせいで
口まで横柄になりおったわ」
部屋に入ると、踝まで沈み込むだろう
豪勢な絨毯が敷き詰められている。
ギエス総督はドアに背を向け
優雅なつくりのいすに腰掛け
高い天井にまで届き穏やかな陽光の差し込む、
大きな窓から市街を眺めている
大臣イベアス・ビエトがその右側で
ドアを向き立ち、そしてその前には
金ぴかの、豪華なレリーフの入った
レスリングでも出来そうな
ばかでかい執務机がある。
ルゴルは、30歩以上歩いて
その机の前に、やっとたどり着いた。
イベアスが口を開いた。
「今日来てもらったのは、
警察部隊の兵員強化についてです。」
いかにも頭の切れそうな風貌、
切れ長の目と、薄い唇
ほっそりとした顔立ちの男だ。
「ニトス副長官からお聞きとは思うが、
兵員の不足を補うため
今後戦術型のヒューマノイドを生産し
活用する予定です。
そこでテストケースもかね
プロトタイプの完成品を
レリ・プロラ捕獲チームに加え
作戦に従事させることとします」
ルゴルは、イベアスの慇懃なそれでいて
見下したような口調が気に入らなかった。
「お言葉ですが、たった1体でどうしろと
おっしゃるるつもりですかな。
それでなくとも、人員が不足していると言うのに、
のんびりテストに付き合えとでも。」
イベアスは冷徹な視線を投げかけた。
ルゴルは獰猛な目でそれを見返す。
二人の間に緊張が走る。
そのとき、椅子がゆっくり回り総統が前を向いた。
まだ、若者といっていい顔立ち、以外とやさしそうな 目、
品のよさそうな口元、もちろんひげなどは無い。
「まあそう言うなルゴル。これはわが国の国策なのだ。
ゆくゆくはこれで最強の軍隊を構築できる。」
澄んだ良くとおる声だ。
オペラなど歌えばすばらしいだろう。
しなやかそうな指を組み、豪勢な机にひじを置き
やや身を乗り出して、
「プロラ王女を捕らえるのはたやすくは無い。
先日の失敗がいい例だ。そうは思わんか?」
「はあ、しかしあれは計算外の・・・」
ギエス総統はさらに静かな口調で
「私は、是非にでもプロラ王女を捕らえたい。
それがこの世界を手中に出来るかどうかの
分かれ目・・・」
イベアスが
「そのためにもこれはぜひ・・・」
ひじを机から離し、
再び椅子にゆっくりともたれかかる。
・・・・・・空気の流れが変わる。
抑えた口調だが鋭さを秘めた声で、
「良いか、二人に命じる
必ずあの小娘を捕らえるのだ。
これに関し最終的な失敗は
・・・許さん!」
この瞬間差し込む陽光は青ざめ
空気は流れるのを止め、
広大な部屋の中に
氷のような緊迫感が
張り詰めた。
イベアスは凍りつき、
ルゴルは背中にじっとりと
冷や汗が流れるのを感じた。
恐るべき沈黙が流れる・・・。
「以上だ。二人とも下がってよろしい。」
ルゴルは、自室の椅子に倒れこむように腰掛けた。
「ギエス総督・・・何というお人だ・・・」
新兵器、ヒューマノイド ジン13 めちゃくちゃ強いんですけど、どうするこれ。
ギエス総統の、冷え冷え感も半端なさそうですし。