兄妹共に仲良し殺し~伝説の殺し屋に憧れた俺、妹に仕事を奪われる~   作:新田トニー

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第19話

「ガッ……!」

 

 弾はホワイトノイズの胸にまともに当たって倒れた。しかし先程とは違い、呻き声を上げながら苦しそうに喘ぎ、まともに立ち上がれる様子は見られなかった。

 

「12ゲージのスラッグ弾だ。お前のそのケブラーとチタン、そして衝撃を分散させるゴムを織り交ぜた三層アーマーでも流石にキくだろ?」

「おま……なんで知って……」

 

 ホワイトノイズは胸に手を当て、声を出すのもやっとな状態で掠れた声を出す。

 

「俺はお前のファンだからな。それも熱烈なファンだ。スパチャが来なくて疑問に思ってたろ?」

 

 一の言葉を聞いてホワイトノイズは「まさか……」と何か答えに辿り着いたかのように呟く。

 

「察しが良いな。俺がワンだ。二年前のあの日から、俺はお前のチャンネルを登録し、投稿する度食らいつくように見た。お前の使っている銃、装備、戦い方、お前は警戒心は高いが金にはがめついからな。金をばら撒くスパチャの機能を使ってお前からマル秘情報を抜き出して対策を立ててたのさ。ベラベラ喋ってくれて助かったぜ」

 

 一は空になった薬莢を排出し、レミントンを肩に置く。

 一はホワイトノイズの回りを歩きながら、自身のこれまでの恨みつらみを語り始めた。

 

「俺があの後どれだけ恥をかかされたか分かるか?尊敬する人には気を使われ、仲介人にはしょっちゅうネタにされ、同業者には後ろ指刺されて笑われる。俺にとってこの二年は地獄そのものだったよ。だがな、それも今日この日を以って終わる。お前の死によってな」

 

 一は途中でぴたりと足を止め、再びレミントンをホワイトノイズへと向ける。

 

「最後に言い残すことはあるか?俺はプロだからな。遺言くらいは一応聞いてやるよ」

 

 一はそう言ってホワイトノイズの返事を待つ。

 どれだけ憎くとも最後に彼はどんな言葉を遺すのか知りたかった。

 みっともない命乞いか、意地汚い罵倒か、それとも別の何かか。

 一は彼の言葉を待つ。

 

「ハァ…ハァ…ふ、ふふ。最後の遺言ね。そうだな、それじゃあ──…」

 

 ホワイトノイズは絶体絶命の状況だと言うのに、ヘラヘラと呑気に笑いながら言葉を紡ぐ。

 

 そして──

 

「もっと気分を上げて行こうか?」

 

 ホワイトノイズは自身のアーマー層の薄い太ももの部分に注射器の針を挿し込んだ。

 

「ハァ……!」

 

 ホワイトノイズはビクン!と一瞬大きく身体を震わせた。

 注射器に刹那の間気を取られた一は対応に遅れ、急ぎ彼の頭に照準を向ける。

 

 しかし、少し遅かった。

 

 一はホワイトノイズが何を注射したか気づいたのは、一がレミントンの銃身を掴まれ、ホワイトノイズが立ち上がり顔面を殴られた後だった。

 

「クソ、アドレナリンか!」

「ご明察ッ!まぁもう遅いけどォ!」

 

 ホワイトノイズはアドレナリンの作用により、興奮していた。

 ゆらゆらと動き、凡そ常人が取るとは思えない行動を取っていた。

 

「まさか、アンタがあの高額スパチャしてくれてたワンさんだとはねぇ。それもこれも俺を殺すためにチャンネル登録もして、動画も見てコメントもして、配信も見てくれてたわけだ。やっぱり俺の事好きなんだろ?」

「ああうるせぇな、とっとと死んでくれ」

 

 レミントンで今度こそ仕留める為、再び銃口を上げホワイトノイズを狙う一。

 だがホワイトノイズはさっきよりもさらに数段早い動きで加速する。

 一はスラッグ弾を撃ち放つが、彼の高速かつ不規則なその動きに照準で狙いを定められず、接近を許してしまう。

 ホワイトノイズは両手でレミントンを掴む。

 しかし一は離さない。だがそんなことはお構いなし、と言った風にホワイトノイズはレミントンごと一をヌンチャクみたいに振り回し、壁に何度も叩きつけた。

 

「ぐうッ…!」

 

 一は壁に叩きつけられた衝撃でレミントンを掴む握力が緩んでしまい、手を離してしまう。

 ホワイトノイズは奪い取ったレミントンを一に向かって撃つ──ことはなく、両手で水平に以って彼自身の膝に叩きつけ、破壊した。

 

「な、うそだろ……!?お前の膝は鋼鉄で出来てるのかよ!?」

「牛乳を飲めば皆こうなるって。俺成長期だからさ」

 

 その言葉に、一は刹那の瞬間違和感を抱いた。しかし直ぐに思考を切り替え、態勢を立て直そうとする。

 

「ここからは漢と漢の勝負!ステゴロだよ!」

 ホワイトノイズはそう言って一の顔面を殴った。

 マスク越しだったためダメージは少ないものの、彼の一撃は重かった。

 そしてその一撃は次から次へと一を襲う。拳の一つ一つが早く重く、一はそれを完全には防ぎきれず、ダメージは積もり続け、遂には、

 

「そこだァ!」

 

下からアッパーを決められ、一瞬空に持ち上げられた。

 

「がァッ……!」

 

 一は地面に沈み、身動きが取れなくなる。脳震盪を起こし、前後左右の間隔が不明瞭になり、ついでに意識も朦朧としていた。

 

「さて視聴者の皆さん!迫力ある映像を楽しんでいただけたでしょうか?お次はデザート、チャレンジャーの素顔です!どんな顔をしてるか気になりますよね?それでは晒していきましょう!」

 

 ホワイトノイズはマスクの向こう側にいる動画配信の視聴者に語り掛け、一に近づく。

 一は彼が何を言っているのか聞き取れず、地面に横になったままだ。

 

「イケメンかな?それともブサメンかな?視聴者の皆にアンケート!結果は……ブサメンが多い!二年前の事をいつまでも気にしてるみみっちい男には相応しい結果かな!?」

 

 ホワイトノイズはそう言って一に馬乗りになり、彼のマスクを掴む。白一色だった一のマスクには血が滲み、汚れていた。

 そしてホワイトノイズは、一のマスクを少しずつ、かと思いきや一気に彼のマスクを剥した。

 

「一体どんな顔をしてるんだァ!?イケメンであってく…れ……?」

 

 ホワイトノイズは一のマスクを剥がす。

 だがその瞬間、今までの快活だった声が小さくなる。

 呆然した表情で一の顔を見ていた。

 

「この野郎!俺のマスク剥ぎやがって!お前もそのブサイクなツラ晒せ!」

 

 そう言って一もまたホワイトノイズのヘルメット型のマスクの仮面を無理やり脱がせようと彼の頭を掴んだ。

 ホワイトノイズが抵抗して取ることは困難かと思っていた一だが、予想に反して彼は全く暴れず、抵抗もしなかったおかげでマスクはあっさりと取れた。

 地面にかしゃんと音を立てて地面に落ち、主人を失った空のマスクは一とホワイトノイズを見つめる形で転げ落ち、着地する。

 

「……」

 

 一はホワイトノイズと同じような呆けた面をして、固まった。口を開けたまま愕然とした表情で彼、いや、彼女を見た。

 

「…お前……愛海、か?」

 

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