兄妹共に仲良し殺し~伝説の殺し屋に憧れた俺、妹に仕事を奪われる~   作:新田トニー

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第2話

二年前。腕間一は仕事をしている最中だった。

 

仕事と言ってもスーツを着て電車に揺られて会社に到着し、椅子に座ってパソコンを睨みつけたり、自社の商品を買ってもらうために頭を下げに行って働くという物ではなく、公には自慢できない非合法な仕事だった。

 

人の命を扱い、奪う仕事、即ち殺し屋だ。

 

 一はとあるホテルの一室に居た。

 豪華なホテルで部屋がとても広く、高級なベッドや椅子、風呂場、果てにはシャンデリアまで付いてる始末だ。

 

「アンタが山内さん?」

 

 一は確かめるように最後の疑問符の語尾をを上げて言った。一は身バレ防止のために頭全体を白一色の布で覆ったような、側から見れば白いマネキンにも見えるマスクを被っていた。

 

「ひっ…ひっ……堪忍してくれ……」

 山内と呼ばれた男は過呼吸になりながら涙や鼻水を垂らしながら尻もちを地面につけて腕間一を見上げていた。一と山内の回りには黒いスーツを着たSPのような男達の死体がそこかしこに無残に散らばっていた。

 

「山内さんさぁ、アンタ相当酷い人間だったみたいだな。製薬会社の社長さんなのに、脱税するわ会社の女の子にちょっかいだすわ、その他にも職権乱用しちゃって。こりゃ殺害依頼出されちゃってもしょうがないよ」

「お願いだ!たったそれだけで殺されるなんて、あんまりじゃないか!」

 

 一はそれを聞くと耳をピクリと動かし「なんだと?」と静かに怒りを露わにする。

 

「ふざけるな犯罪者!お前は脱税してるんだぞ!この国で生きてて恥ずかしくないのか!?納税は国民の義務だぞこの野郎!」

 

 一は りつけるように山内に向かって叫んで言った。すると山内は困惑した顔で一を見た。

 

「は、犯罪者って……殺し屋も犯罪者だろう!脱税より罪が重いじゃないか!しかも殺し屋も納税なんかしてるのか!?してないだろう!?」

 

 山内がそう言うと一は一瞬黙り込む。

 そして右手に持っていたハンドガンの空の弾倉を床に落とし、新しい弾倉に切り替えて銃口を山内に向けた。

 

「…俺の話はいいんだよ!お前はこれから小便垂らしてアホ面晒して死ぬんだ。良かったな、喪服姿のグラサン掛けたお友達がいっぱい居て。地獄に行っても寂しくないぞ」

「や、やめ──!」

 

 一は山内の頭に二発、心臓に一発撃った。山内は糸が切れた人形みたいにガクンと一瞬動いた後、直ぐに動かなくなった。

 

「くそが、犯罪者のくせに俺に口答えなんかしやがって。職業差別は立派な魂の殺人なんだぞ!」

 

一は苛立ちながら懐からスマートフォンを取り出し、耳元にスマホを当てた。

 

「あぁ俺だ。仕事が片付いたんで掃除係を頼む。名前?言いたくねぇよ。それで場所は……」

 

 一は殺し屋が荒らした場所や死体を綺麗に片づけるサービス、掃除係を電話で呼び、その場を後にした。

 

「今日も楽勝だったな」

 

 一は笑いながら独り言を呟いた。

 時刻は22時を回り、周囲には酔っ払いのサラリーマン、化粧の濃い女、派手なスーツを着たホスト達など、様々な人間達が夜なのにもかかわらず、昼よりも眩しいと思わせるような電光が街を包んでいた。

 さらには街頭テレビジョンやポスターに政治家の名前がでかでかと並んでいた。

 

「私が皆さんの代弁者となります。共に日本を変えていきましょう!」

 

 街頭テレビジョンにはその政治家のはきはきとした言葉が鳴り響いていた。

 それは殺し屋も含まれているのか、と一は頭の中で自虐気味に反芻した。

 

 最近、一は調子が良かった。

 

 10年という長い下積みを経て、殺しの腕は磨きが掛かり依頼される仕事の量も質もどれもがレベルの高い物へと変わっていった。

 一は自分の仕事に誇りを持っている。

 

 殺し屋に成りたての頃は安い報酬に、借金、頭のおかしい依頼人など、苦労してきた場面もあったが、今の彼の殺しのキャリアは立派な物へと昇華している。

 

 ついさっき殺した男は大企業の社長、しかも依頼主はライバル会社の社長で指名依頼だ。

 マンモス級の顧客からいくつもの依頼が入っている。このままいけばいずれ伝説の殺し屋の一人として歴史に名を刻むかもしれない、と一は心を躍らせていた。

 

そんな時、

 

 

「ん?」

 

 一はスーツジャケットの内ポケットから携帯の振動音がするのに気づいた。ポケットから取り出し電話に出る。

 

「もしもし」

『よぉフェイスレス。今暇か?』

 

 電話の向こうの相手は一に仕事の仲介をするデイヴィスだった。

 フェイスレスとは一が仕事で使う時の名前だ。

 電話口から耳をつんざくような派手な音楽が聞こえ、クラブにいるな、と一は推測した。

 デイヴィスは酒を飲んでいるのか、声が陽気で大きかった。

 一は携帯から酒の匂いがこちらにまで匂ってきそうだと顔を顰める。

 

「いや、今日はもう帰ろうと思ってたんだが」

『そんなこと言わずに来いよこっちに!今日もすっげぇ有名な人達が来てるんだぜ?』

「仕事の話じゃないなら切るぞ」

 

 一は即座に通話を終了しようとした。デイヴィスは一に本当に電話を切られると予感し、「待て待て」と一を引き留める。

 

『ちょちょちょ、ちょっと待て!今マジやべぇ有名人が来てるんだよ!武礼渡が来てんだよ!』

 

 デイヴィスの武礼渡という言葉に一は立ち止まった。

 

「なんだと?あの武礼渡さんが?」

『あぁ。しかもだ、さっき武礼渡と喋る機会があったんだけどよ、お前の名前を出したら興味を持ってな、ぜひ会いたいって言ってきたんだ』

「本当か?すぐ行く」

 

 一はそれを聞くなり、その場から急ぎ足でデイヴィスの居る場所に歩き出した。

 

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