クールビューティーでサイエンティストな先輩は実験がしたい。 作:赤瀬 涼馬
理緒は夢を見ていた。それは自分が幼い頃に母親にせがんで、実験を子供向けの実験をしたいと言っている場面だった。
そんな理緒に母は、優しい笑みを浮かべて、一緒にやろうと言ってくれた。
そもそも理緒自身が、〝実験〟というものに興味を示したのは、この時からだった。きっかけは理系大学の教授をしていた父親に影響を受けたからだ。その父から幼児向けのテレビ番組で、おもしろ実験特集というものを見てから本格的に実験に興味を持つようになった。
「ねえ、お母さん………この実験、やってみたい」
「良いわよね。やってみましょう」
と、一緒に番組を観ていた母親にそう言って、子供向けの実験を手伝ってもらったことでさらに実験が好きになっていった。
それからちょこちょこと子供でも出来る実験をやっていくうちに好きになっていき、中学生になったことには科学部に所属して活動をしていく。
そして、天野ヶ原高等学校に入学して科学部に入って。
とある男子から告白をされて。
この出来事が理緒が『なぜ、人は恋をするのか』ということを科学的に証明しようと思ったのもこの出来事が始まりだった。
あれは、理緒が二年生に進級してから半年が経った十月頃だった。
いつものように科学実験室に行こうと廊下を歩いていたところで声をかけられた。
振り返ってみると、理緒と同じ制服を着た、緑色のネクタイを締めた爽やかな雰囲気を醸し出した男子生徒が立っていた。
端正な顔立ちと爽やかな雰囲気からさぞ異性からモテそうだなと理緒は直感で思った。
「新見先輩ですか?」
「そうだが、キミは………?」
「俺は一年の加賀森って言います」
「そうか。それで何だい?」
「俺、先輩に言いたいことがあって」
「それは今じゃないといけないのか」
「はい」
「悪いが、私は暇じゃないんだ」
「待って下さい。新見先輩」
「何だい?」
「俺、どうして先輩に言いたいことがあるんです。少しでいいので時間を下さい」
「だったら早くしてくれないか」
「ここではちょっと………」
「だったら、もういいかい」
「待って下さい」
「だったらここで話してくれ。心配しなくてもこの時間なら誰も来ないさ」
「分かりました」
と、覚悟を決めたように力強く頷いた彼がすぅと大きく深呼吸をする。
「新見先輩、好きです」
「………!?」
意を決して大きな声でそう言った。理緒は激しく困惑する。
「いま、私のことを好きと言ったのか」
「はい。そうです」
「では、訊くがキミは私のどんなところが好きなんだい」
「それはたくさんありまますが、一番は、凛々しさですかね」
「………凛々しさ」
「そうです。先輩はどんなことを周りから言われても自分の姿勢を曲げずに貫いています。そんな姿を見てあなたを好きになりました」
照れくさそうに鼻頭を掻きながら、そう話す彼に理緒は悶々とした気分になった。
確かにこれまでこういった告白をされてこなかったわけではない。過去にも何回か同じような経験をした。そのたびに、同じよなことを訊いてきた。多くの男が理緒の容姿ばかりに目を向けていた。
だが、今回の彼は違った。理緒の内面を見て、噂など気にしないといった風に感じた。
「………そうか。だがすまないが―――」
「返事はいいです」
「………っえ」
「俺、今日が最後なんです。親の仕事の都合で県外に転校することになりました、だ
から最後に先輩に想いを伝えたかっただけですから」
「そうなのか」
「訊いてくれてありがとうございました」
そう言って爽やかに立ち去っていく後ろ姿を理緒は黙って見送るしかなかった。その翌日、告白した彼が転校したことを風の噂で聞いた理緒であった。