ドラの子   作:ニコさん

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推しの子の主要メンバーがドラゴンクエストⅢの勇者パーティーになったらという話
基本亀更新ですが良かったら見てあげてください。


ドラの子1

 

アリアハンと五人のスーパースター

 

 

アリアハン王城の玉座の間。

天井は高く、陽光はステンドグラスを通って虹色に床へ落ちている。

そんな荘厳な空間の真ん中で、場違いなほど平凡な青年が直立不動で立っていた。

 

彼の名は――

 

ぴえヨン。本名はない。

 

もちろん前世の記憶はフルである。

だが今は普通の冒険者風の服装で、着ぐるみ要素は一切ない。

王の前であの格好はさすがに色々アウトだろう。

 

 

「勇者ぴえヨンよ。まこと、汝が魔王バラモスを討たんとする覚悟、しかと受け取った。」

 

「……あ、はい。どうも。」

 

ぴえヨンはそれしか言えなかった。

まさか転生したら勇者に任命されるとは聞いてない。

 

(え……ほんとに俺? アクアじゃないの?なんでよりによって俺??)

 

王は立ち上がり、重々しい声で続ける。

 

「されど、そなた一人では魔王の軍勢を相手取るは難しかろう。仲間を募り、アリアハンの外の世界へ旅立つのだ。」

 

「仲間……ですか。」

 

「うむ。城下の“冒険者ギルド酒場”ならば、良き者が集まろう。」

 

(酒場……そういえばドラクエって大体そういう導線あったな……)

内心で頷きつつ、ぴえヨンは深呼吸した。

 

「わかりました。とりあえず行ってきます。」

 

「うむ、勇者よ。世界の命運、そなたに託す。」

 

(いや、荷が重いんだが!?)

 

そんな心の叫びを胸の奥へ押し込みつつ、

ぴえヨンは城を後にした。

 

 

 

アリアハンのギルド酒場は朝から賑やかだ。

樽を叩く音、クエストを読み上げる声、騒がしい冒険者たちの怒号と笑い。

 

そこで運命の再会が始まっていた。

 

石畳の酒場裏。

夕陽が差し込み、空気がほんのりオレンジに染まっている。

 

そこへ──五つの影が、ひとり、またひとりと歩み寄った。

 

最初にルビーが息を呑む。

 

「……アクア……?」

 

その声にアクアが振り返った瞬間、時間が止まった。

 

アクアはいつも通り無表情に近いが、わずかに目が揺れる。

ルビーは両手を口元に当て、泣きそうな顔で震えていた。

 

そして声が溢れた。

 

「アクアぁぁぁぁぁ!!!」

 

弾丸のように飛びつくルビー。

アクアは「おっと」と言いながらも受け止め、体勢を崩して尻もちをつく。

 

「相変わらず勢いだけは変わんないな……」

 

「だって…だって、生きてたんだよお兄ちゃん……!」

 

涙ボロボロ。

アクアは苦笑してその頭をぽんと撫でた。

 

そこへ、かなが目を丸くして歩み寄る。

 

「……あんた、本当にア~くんなの?」

 

「偽物ならもっと機嫌よく愛想振りまいてるよ」

 

「うわ本物だわ!! その嫌味っぽさ!!」

 

そう言いながら、堪えきれずに抱きつくかな。

 

「はぁ……ほんとバカ……ずっと心配してたんだから」

 

「お前に心配されたくて消えたわけじゃないけどな」

 

と口では言いつつも、アクアは優しく彼女の背を叩いた。

 

MEMちょが両手で頬を押さえながら、目をうるうるさせて声を震わせる。

 

「ちょ、ちょっとみんな…先に抱きつくのズルくない!?

アっくん久しぶり〜〜〜!!」

 

「MEMも相変わらずテンション高いな」

 

「違うの! 高いんじゃなくて溢れてるの! 感情が!!あぁ〜アっくん推し活再開できる〜〜〜!!」

 

アクアは「推すな」と言いつつ、肩に抱きつかれるのを拒まなかった。

 

そして最後に──あかねが静かに歩み寄る。

 

アクアより半歩下がる位置で立ち止まり、ゆっくりと、

けれど確かな声で告げる。

 

「……アクア。ずっと探してたよ」

 

その一言が、アクアの胸の奥深くを刺す。

 

他の誰よりもその痛みを知っている少女。

嘘も演技も見抜く少女。

 

アクアはほんの一瞬だけ、彼女から視線をそらした。

 

「……心配、かけた」

 

「かかったよ。でも……今は、戻ってきてくれたってことが、全部の答えだから」

 

彼女の目尻から一筋、涙が落ちる。

その涙をアクアはそっと指で拭った。

 

五人は自然と集まり、押し合いへし合いしながら、結局ひとつの固まりになった。

 

泣いて、笑って、抱きしめあって、前世の姿のままで、出会った頃の距離感のままで──

 

「また、みんなでいられるんだね……!」

 

ルビーのその一言で、泣き声が笑い声に変わった。

 

その姿を見て、店内の冒険者たちはひそひそ話す。

 

「なんなのあの子たち……」

「泣いて笑ってまた泣いて……忙しいな……」

「若いっていいわねぇ……」

 

五人はまだ気づかない。

酒場の隅の陰で、誰かがじっとこちらを見ていることに。

 

酒場の外側の柱の影。

そこに 勇者ぴえヨン が立っていた。

 

(……よかったな、お前ら。)

(ルビーも……アクアも……かなも、あかねも、MEMちょも……前の世界では背負うものが多すぎたけど……ここでは、ただ笑って泣ける仲間でいられるんだな。)

 

胸の奥がじん、と熱くなる。

 

(……しばらくは邪魔しないでおこう。仲間同士で、ちゃんと泣いて笑って……この瞬間を味わわせてやりたい。)

 

そうしてぴえヨンは、五人の“再会の時間”を静かに見守り続けた。

 

一通り泣いたのち、かなが手を叩いた。

 

「よし! そろそろ泣くの終わり! 目が腫れる!」

 

「うん……でもね、なんか……生き返った気分……」

 

「生き返ったんじゃなくて転生なんだけどね」

 

「細かいことはいいのー!!」

 

アクアは深く息をつき、少し落ち着いた表情で言った。

 

「……それで、これからどうする?」

 

「冒険とかする感じ……?」

 

「みたいね。どうもこの世界、魔王がいるとかいないとか……」

 

「でもさ……私たちだけで大丈夫?」

 

「そうだな、俺たちには……“仲間”が必要だ」

 

「誰!? いつ来るの!? イケメン!? スポンサー!?」

 

「スポンサー欲しいって言うな!」

 

「……やっとだな、みんな」

 

涙を流し笑い合う五人を見て、彼はふっと微笑んだ。

 

情に厚いのか冷静なのか分からない表情。

けれど、声だけは優しかった。

 

「再会ってのは……こうでなきゃな」

 

アクアたち五人は涙もひと段落し、店の前で円になって話し込んでいた。

 

ルビーが目を拭きながら拳を握る。

 

「これからどうするの? せっかく全員そろったんだし、みんなで冒険とか?」

 

「いいね〜! パーティ名決めよ! “推しの子旅団”とかどう?」

 

「それメタいからやめて」

 

「私は、こうしてまた一緒に動けるだけで嬉しいよ」

 

そんな柔らかい空気の中。

 

アクアがふと首を傾げた。

 

「……さっきから、誰かに見られてる気がするんだけど」

 

五人が「?」と周囲を見渡す。

 

すると──

 

ちょっと離れた石壁の角から、“どう見ても隠れる気ゼロ”の旅人がひょこっと顔を出した。

 

普通の服、普通の装備。しかし漂う異質な空気だけは、普通じゃない。

 

ぴえよんだった。

 

ぴえよんは、なぜか“黄昏てる感じ”を出そうとして壁に寄りかかりつつ、足を組む。

ただし角度が悪くてフラつく。

 

「……お前ら。いい再会シーンだったじゃねぇか」

 

アクアたち(ぽかーん)

 

ルビーが小声でささやく。

 

「……だれ?」

 

「知らない、旅人じゃない?」

 

「あ、でもなんか……既視感ある気が……?」

 

怪しまれながらもぴえよんは軽くアクアの肩を叩く。

 

「良かったな、アクア。お前の人生にも、ついに陽が差したようでよ」

 

「……本格的に誰ですか?」

 

「ア~くんにタメ口ってことは、同級生設定? いやでも服ダサ……」

 

「旅人……? いや、でも妙に距離感近い……」

 

「お兄ちゃん、隠し兄弟とかじゃないよね?」

 

「隠し兄弟って何だよ?…いや本当に知らねぇよ」

 

全員が「誰このおっさん」みたいな顔で、ぴえよんを見る。

 

ぴえよんはガシガシと頭をかき、「しゃーねぇな」という顔になる。

 

そして。

 

突然、裏声になった。

 

高い。やたら高い。しかも妙に通る声。

 

「ボク、年収1億だよ?」

 

一瞬の静寂。

 

そして──

 

五人の目が同時に限界まで見開かれた。

 

「……その声……まさか……」

 

「うそっ……え、ちょ、えぇぇぇ!?」

 

「 もう完全にあの人じゃん!!」

 

「うそでしょ……この世界に転生してんの!?」

 

「ぴえ……よん……さん……?」

 

五人、同時に叫ぶ。

 

「「「「「ぴえよん!!???」」」」」

 

ぴえよんは両腕を広げて満面の笑みを浮かべた。

 

ぴえよん「イエス! オレが、みんなの心のアイドル!天上天下ぴえよん様だぁ!!」

 

普通の服なのに、なぜか後光が差した。

 

アクアが額を押さえる。

 

「……マジで来てたのかよ、ぴえよん」

 

「どうしてこんな世界にいるの!?」

 

「てかなんで裏声は健在なの!?」

 

「え、え、これ配信していいやつ!?」

 

「落ち着いて、順番に聞こう」

 

ぴえよんはサムズアップしたまま言い放つ。

 

「まぁ細けぇことはいいだろ。どうせこれから冒険すんだろ? だったらオレも乗るわ」

 

五人「巻き込む気満々じゃん……」

 

それでも彼は、何食わぬ顔で再会の輪に入り混むと

 

「そしたら再会を祝って祝杯だぁ~!」

 

酒場には明るい笑い声と僅かな啜り泣きが夜遅くまで響いていた。

 

翌朝

 

石畳の冷たい空気が漂うアリアハン協会──白い壁、高い天井、そして淡い光が差し込む静かな空間。

 

扉を開けた瞬間、ぴえよんが両手を広げた。

 

「ふぉぉぉ……今日からいよいよ旅立ちだ!まずは冒険の書に記録っと!」

 

ルビーが目を輝かせながら周囲を見渡す。

 

「なんか、めちゃくちゃ“冒険始まる”って感じするよねココ!」

 

かなが腕組みしながらため息。

 

「テンション上がるのはいいけど、寝不足の顔はやめなさいよ。昨日の打ち上げで全員はしゃぎすぎなんだから」

 

あかねが微笑む。

 

「まぁ……久しぶりの再会だったんだから、仕方ないよ」

 

MEMちょが頷きながらスマホ風の魔導端末を構える。

 

「さぁ今日から“冒険”は本格スタートだよ〜!テンションは大事!」

 

アクアだけが無表情で言う。

 

「……あの、協会でそのテンションはやめろってさっきも注意されただろ」

 

「えっ、そうだった?」

 

「忘れたのルビーかMEMちょかどっちだ……?」

 

 

静かな足音と共に、白衣の神父が現れる。柔らかい微笑みを浮かべ、手を合わせる。

 

「ようこそ、旅立つ者たちよ。まずは“冒険の書”への記録を致しましょう。

――そして、その前に説明しておくべき大事なことがひとつあります」

 

アクアが眉をひそめる。

 

「……話しておくべきこと?」

 

神父はこほんと咳払いした。

 

「はい。最近このアリアハンで、冒険者の間に苦情が絶えず……“魔物を倒してもぜんぜんゴールドが出ない” と」

 

ぴえよんがすかさず頷きまくる。

 

「そうそう! それそれ!俺ら、どうやって旅の資金を稼ぐのか知りたい!」

 

かなが呆れたように呟く。

 

「……ぴえよん、ぴえよんのくせに一番現実的な悩み抱えてるわね」

 

神父は咳払いをして、真顔で告げた。

 

「この世界では、魔物がゴールドを持っているわけではありません。昔は金貨を盗れる時代もありましたが……現在は“冒険者の倫理規定”により、魔物が持つ財産に手を出すことは禁止となりました」

 

全員「…………」

 

ルビーが手を挙げる。

 

「じゃあ、ゴールドはどうやって……?」

 

神父が指を立てた。

 

「冒険者の皆さまは “ルビス様の加護による配信” を使い、視聴数・高評価・投げ銭で収入を得ることになっております」

 

 

MEMちょの目がキラァァァァッと輝いた。

 

「やったああああああ!!これなら私、めっちゃ役立てるじゃん!!配信で稼ぐとか完全に私のホームじゃん!!」

 

かなが眉をひそめる。

 

「……あんた、こういう時だけ有能スイッチ入るわね」

 

MEMちょは神父に詰め寄る勢いで質問攻めに。

 

「ねぇねぇ! 神父さん!冒険配信って“自動ライブ配信”と“録画編集配信”のどっち?もしかして選べたりするの?」

 

神父は少し驚いたように目を瞬くが、すぐににこやかに答えた。

 

「ええ。ルビス様の加護により、“戦闘中は自動ライブ配信”

“戦闘後は編集して投稿も可能”そのどちらでも対応できます」

 

MEMちょ、感激して跳ねる。

 

「すごすぎる!!戦闘中はライブで視聴者稼いで、その後ハイライトを編集してショート動画と切り抜きにして……広告収入も取れる!!えっ、神様優秀すぎん???」

 

ルビーもテンション上がる。

 

「それ最高じゃん! ショート回したらバズるやつ!」

 

アクアは呆れた顔でため息。

 

「……なんでお前ら、冒険より編集の話で盛り上がってるんだ」

 

神父はさらに説明を追加する。

 

「なお、編集は“ルビス編集室”という神殿サーバーにて行いますので、魔力通信が切れても安心です。AI補正も標準搭載でございます」

 

MEMちょの目が完全に職業人のソレになる。

 

「AI補正!?え、じゃあカメラアングルとか勝手に最適化されて……戦闘中の手ブレも補正されて……吹っ飛ばされても画面は安定するの??」

 

「もちろんです」

 

「神の仕事って尊い……!」

 

「いや、それ神父の手柄じゃなくてルビス様でしょ……」

 

冒険の書に名前を書き終えた後──

 

トコトコ歩きながら、MEMちょはまだ語り続けている。

 

「これ、戦闘をライブで見てた視聴者が切り抜いて勝手に拡散するやつじゃん!ルビス様、配信文化完全に理解してるよね!?絶対バズるでしょ!!」

 

ルビーも腕を組んで頷く。

 

「スライム戦をバズらせる配信者なんて私たちくらいだよ! 面白くなってきたぁ!」

 

アクアは肩をすくめる。

 

「……バズらせる前提で話すな。

まずは普通に勝てるかどうかの心配をしろ」

 

ぴえよんが胸を張る。

 

「心配すんな!

俺がが全力で盛り上げてやる!スライム相手でも祭りにしてやるぜ!!」

 

「逆に迷惑かけない程度に抑えてよ……?」

 

「いいのいいの!

多少無茶したほうが切り抜きになるから!!」

 

「……戦い方がどんどん不安になっていく」

 

全員が笑いながら協会を出て、ついに冒険へ旅立つ──。

 

 

 

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