ドラの子   作:ニコさん

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ドラの子3

 

カンダタを撃破し、一行が息を整えながら塔の奥へ進み無事に王冠を取り戻す。

歩みを戻して先ほどカンダタが倒れていた“あの通路”大きな柱が立ち並ぶあの場所に戻ると。

そこには、もう誰の姿もなかった。

 

「あれ……?いない……」

 

「気絶してたよな、さっきまで」

 

「足跡も……ほとんど残ってませんね。気配が急に消えた感じ」

 

「いやいやいや、大男が急に消えるって何」

 

足元にひらりと羊皮紙が落ちている。

さらさらとした達筆で、ただ一言。

 

『犯人はヤス』

 

塔の薄暗がりの中でも、その文字は妙に整いすぎており、まるで“書道大会で入選しました”みたいな上品さを放っていた。

 

「……いや誰よ、ヤスって。しかも筆跡だけはプロ」

 

「カンダタ……転生者説が強くなってきたな、これ」

 

「もしそうなら前世がどんなのでも嫌なんですけど」

 

(いや絶対めんどくさいタイプの転生者だろ……ああいうの一番厄介なんだよな)

 

アクア達が話している後ろで、ぴえよんは心の中でそう呟く

 

「とりあえず、金の冠をロマリアに返そ?」

 

「カンダタ、転生者説嫌すぎる」

 

「なんか“ゲーム知識だけはある厄介なおっさん”って感じするよね」

 

「そういえばぴえよん、あんたさっき何もしなかったわよね?」

 

「ビクッ」

 

ぴえよんをいじりながら、一行はロマリア城へ向かう。

 

王に金の冠を返すと王は感極まり、そのまま土下座せんばかりの勢いで叫んだ。

 

「そなたらこそ、この国の王にふさわしい!どうか、このロマリアを治めてくだされ!!」

 

ぴえヨンだけが心の中でツッコむ。

 

(おいおい……軽すぎるだろ王位継承)

 

メンバーで話した結果、順番で王様をやることになった――。

 

尚、ぴえよんとアクアはカット、やろーの王様みても何もおもろくない。

 

一番手ルビー

 

ルビーは胸に手を当て、少しだけ照れながら前に出た。

 

「じゃあ……私が王に、なっちゃおうかな?」

 

広間はざわついた。だが王は一瞬で感涙。

 

「おおおお!女神の生まれ変わりか!?いや女神以上の光を纏っておる!!」

 

その瞬間、臣下たちの目が完全に“推しを見る目”へ変わる。何人かは既にペンライトを取り出していた。

 

「まず最初に――王国の収益を安定させるため、毎日王室ライブを開催します!」

 

「さすがです王女様ああああ!」

 

「それと、王国の旗はピンクに変えます!」

 

「おおおおお!」

 

アクアが小声で呟く。

 

「ルビー……完全に自分の国にしてるな」

 

「まあ似合ってるからいいんじゃない?」

 

ルビー王の政治は、まさかの成功を収めてしまう。

 

視聴者からの投げ銭が税収を超え、財政は空前の黒字。

国民も毎日が楽しいらしく、街には笑顔が溢れた。

だがある日、ルビー王はふと遠くを見る。

 

「……でも、ぴえヨンたちと冒険したいな」

 

王としての務めを家臣に任せ、ルビーは王冠を脱ぎ、一行に駆け寄る。

 

「私はここまで次は先輩お願いね?」

 

そうしてルビー王の短い治世は伝説となった。

 

二番手有馬かな

 

「……は?王?私が?」

 

王は勢いよくうなずく。

 

「そのツッコミと度胸!きっと国を導いてくれよう!」

 

かなは頭を抱える。

 

「ただの自称“曾祖父が武将かも”レベルの家系だけど……」

 

周囲の家臣が口々に言い始める。

 

「いや!あの冷静なツッコミは王者の資質!!」

 

「むしろツッコミこそ統治能力!!」

 

「そこぉ!理屈おかしいだろ!!」

 

しかし押し切られる形で王に即位してしまうかな。

 

「良い娘なんだけど本当に押しに弱いな」

 

王になったかなは、最初のうちは真面目に政治をこなす。

 

書類にツッコミを入れ、家臣の行動にツッコミを入れ、法律にツッコミを入れ……

気づけば国政が異常に健全化していった。

 

「王のおかげで不正が消えました!」

「私ただ突っ込んでただけなんだけど!?」

 

アクアが苦笑する。

 

「合理的ではある」

 

だが、豪華な王宮に立っても、かなの足はじっとしていられない。

 

「……やっぱり、あのパーティーの中でこそ私は一番居心地いいのかも」

 

王冠を置き、仲間の元へ。

 

「ほら、私はこれでおしまい、次はあんたの番よ黒川あかね」

 

3番手黒川あかね

 

「私……?王に……?」

 

王は深々とうなずく。

 

「その聡明さと観察眼!国政に必要なのはまさにそれ!」

 

あかねは少しだけ思案し、静かに答えた。

 

「では……私なりに、国を良くしてみます」

 

即位したあかね王は、まず家臣一人ひとりの癖や背景を分析。

 

贈収賄しそうな家臣を先に遠ざけ、適材適所で配置換え。

 

外交では相手国王の性格を読み切り、まるで心理戦のような交渉術で取引を成功させた。

 

「王がおそろしいほど有能です!」

 

「もはや未来が読めるレベル……!」

 

「いえ……皆さんの性格を見ているだけですよ?」

 

(全員ドキッとする)

 

ある日、アクアが会いに来る。

 

「……楽しそうにやってるな」

 

「うん。でも――」

 

視線の先は城門の外、遠く広がる世界。

 

「みんなで旅した時間は、やっぱり特別だったなって」

 

王の座を家臣に託し、

 

あかねは旅装に着替えると、微笑んだ。

 

「じゃあ…最後はMEMちょお願いね?」

 

4番手MEMちょ

 

「わ、わたし!?王!?えっ、映える……!」

 

王が力強く頷く。

 

「あの笑顔と配信技術!国が盛り上がること間違いなし!!」

 

MEMちょの目がキラキラし始める。

 

「じゃあ……やっちゃおうかな王!」

 

MEMちょ王、誕生。

 

即位式は完全ライブ配信。視聴者からのコメントが式次第にリアルタイム反映される新スタイル。

 

「王!今日の会議は?」

 

「まずはサムネ撮るね!」

 

家臣たちが背景を調整し照明をセットし始める。

 

「王の政治、全部動画で理解できる……めっちゃ分かりやすい……」

 

国民も大喜び。

 

“本日の王の政治まとめ動画”が毎日バズり、国際的な人気チャンネルに。

 

アクアがこっそり呟く。

 

「……国政が配信ベースで回ってるのすごいな」

 

「逆に効率いいのでは?」

 

MEMちょは王として充実していたが――

 

ある日の雑談配信でふと言う。

 

「……でもやっぱり、仲間と冒険したいんだよね〜」

 

視聴者《行ってこい!》《続き見てえよ!》

 

背中を押され、王冠を置く。

 

「ただいま〜!王様終わったよ~!旅の続きしよ!」

 

仲間は温かく迎えた。

 

ロマリアの王城を満喫した翌朝。

 

一行は軽くパンと果物をつまんでから、意気揚々と北へ向かった。

白い砂を踏みしめ、風に揺れる布を押さえながら進むと、やがて関所が見えてくる。

 

木の柵と頑丈そうな鉄の扉。

その前に、やる気のないような、それでいて妙に小綺麗な兵士が二人立っていた。

 

「ん?ここか、ポルトガへの関所は」

 

アクアが扉を覗き込みながら言う。

 

「よし、盗賊スキルの見せ所だなアクア。」

 

ぴよえんはアクアの肩を叩いた。

 

「まあ任せろよ。昨日の王様で気分もいいし。」

 

ルビーがニコニコしながら呟く。

 

「お兄ちゃん、なんか誇らしげ〜。」

 

かながすぐツッコむ。

 

「誇れることなの?カットされたのに?」

 

MEMちょが笑いながら言い添える。

 

「それに比べて私たちメイン組だからね〜」

 

アクアの眉がピクリと動いた。

 

「……うるせぇ、集中する。」

 

アクアは扉に手を当て、深く息を吸い――

 

「アバカムッ(弱)!」

 

どこか湿った、音量の低い魔力音が扉に吸い込まれた。

 

……。

 

…………。

 

ビクともしない。

 

扉は無言のまま、そこにある「ただの扉」という存在感を主張している。

 

「……弱すぎない?」

 

かなが遠慮なく言った。

 

「いや、弱って言ってるんだから弱いのは当たり前だろ……」

 

アクアが若干イラつき気味に返す。

 

ルビーが扉を指でつつくと

 

「ねぇ、これってさ、魔法無効化してるとかじゃなくて……」

 

ぴえよんが代わりに言った。

 

「単純に弱すぎて効いてないだけだな。」

 

「おまえまで言うのかよ!」

 

アクア、涙目。

 

すると、後ろから声。

 

「お客さん、通行ですか?」

 

兵士がにこやかに歩み寄ってくる。

関所の兵士にしては異常にフレンドリーな微笑みだった。

 

ぴえよんが事情を話す。

 

「この鍵、開かないみたいでな。何か条件とか?」

 

兵士は昼休みを思わせるゆるいテンションで答えた。

 

「ええとですねぇ〜、ここはアバカム(中)か、魔法の鍵じゃないと開きませんよ〜。」

 

アクアが眉をひそめる。

 

「弱がダメなら最初から言ってくれ……」

 

兵士は「あー」と頷きながら続ける。

 

「でも魔法の鍵なら、砂漠の国イシスで噂を聞いたことがありますね。旅の方はだいたいイシスに寄って行かれますよ。」

 

MEMちょが首を傾げる。

 

「え、そんな重要情報を普通に教えてくれるの?」

 

「あ、そこ私も気になる」

 

ルビーも興味津々。

 

兵士は胸を張った。

 

「もちろんですとも!あなた方、ロマリアで王様やってくれたじゃないですか!!」

 

全員「え?」で固まる。

 

兵士は嬉しそうに指を折りながら語りだした。

 

「いや〜、あれからすごいんですよ!ロマリア王家主催でライブやイベント増えるわ、観光大使とかやるわ、劇場は満席続きだわで――」

 

「スーパースター景気って呼ばれてます!!」

 

かなの目が死んだ。

 

「景気に名前ついちゃってんの……?」

 

あかねが額に手を当てる。

 

「スーパースター景気って何……?」

 

兵士は続ける。

 

「給料も上がりましてねぇ!王様で誰が一番の推しかって? ええ、あの4人のスーパースターですよね!!ワタシは有馬かな王が推しですね!あのツッコミ!是非受けてみたいですよね?いやぁ、ありがたい!まじで縁ってどこで繋がるかわかんないね!!」

 

「そんなんに推しって言われても嬉しくないよ!?」

 

「ありがとうございます!!」

 

兵士のあまりにもあまりな言い分にかながツッコミをいれるも兵士を喜ばせるだけだった。

 

アクアが小声でぴえよんに囁く。

 

「……俺たち、どこへ向かってるんだ?」

 

「さぁ。」

 

「というわけで、魔法の鍵の噂はイシス方面ですよ!」

 

兵士が親指を立てた。

 

ぴえよんは軽く頭を下げる。

 

「助かった。……まさか王様バイトがこんなところに影響出るとはな。」

 

MEMちょが手を振りながら笑う。

 

「ほんとどこで人生つながるかわかんないね〜!」

 

アクアはまだ扉に視線を向けていた。

 

「……俺のアバカム弱、完全に無視されたな……」

 

かなが肩を叩いた。

 

「ドンマイ、弱なんだから。」

 

ルビーが追い打ちをかける。

 

「次の街で強いの買おうね!」

 

アクアは両手で顔を覆った。

 

ぴえよんが笑いながら宣言する。

 

「よし!ひとまずアッサラームへ行って、そこからイシス方面に向かうぞ!」

 

「「「「おーっ!」」」」

 

砂漠の風が、彼らの声をさらっていった。

 

コメディと混沌を抱えて、旅はさらに加速していく。

 

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