ドラの子   作:ニコさん

4 / 11
ドラの子4

 

次の目的地を『不夜城』アッサラームへと決めた一行は強敵である、あばれ猿やキャットフライを特効装備である「バナナ」と「マタタビ」を使いつつ道のりを踏破していった。

 

アリアハンから長い道のりを越えた一行が、ようやくアッサラームへ辿りついたころには、太陽はちょうどイシスの砂漠の向こうへ沈みかけていた。

 

夕暮れの赤が砂漠の粒子に反射して街を金色に染め、

夜の訪れを告げるようにネオンの光がパチパチと灯されていく。

 

街全体が、まるで「夜から本番だ」と言わんばかりに活気づいていた。

 

屋台からは香辛料の香りがむわっと漂い、飲み屋からは陽気な笑い声、ストリートミュージシャンの笛の音、怪しげな客引きの呼び込み――

 

無数の音が混ざり合い、アッサラーム特有の“眠らない街のざわめき”を生み出していた。

 

ルビーは街を見た瞬間、胸の前で両手をぎゅっと握りしめた。

 

「すっご……! ここまで派手な街だとは思わなかった……!なんかライブ出来そうな場所ゴロゴロしてる!」

 

MEMちょも目を輝かせる。

 

「ここ絶対バズるやつ……!配信オンに出来たら最高なのに……ぐぬぬ……!」

 

その横で、アクアが歩道に書かれた怪しい落書きを眺めながら低く呟いた。

 

「……“砂漠の女王様ワンマンライブ開催”ってなんの宣伝だこれ?」

 

「ア~くん、見ない方がいいよ……!」

 

かなが即座にツッコミを入れる。

 

あかねは周囲の店の雰囲気、客層、動線をじっと観察していた。

彼女の眼差しはプロのそれで、市場全体の流れを読むかのようだ。

 

「この街、観光客が多いから物価もバラついてるね……。交渉次第で買い物の結果が大きく変わるタイプ……」

 

「うわ……現実的……!」

 

かなが思わず怯むほど、あかねはこの場でも冷静だった。

 

ぴえよんが広い通りの先に宿屋の看板を見つけた。

 

古びているが、場所が良く、結構いい宿に見える。

 

「よし、今日はここに泊まろう。荷物置いたら、みんな自由行動でいいぞ」

 

皆が「やったー!」と声を揃える。

 

ロビーに入ると、砂漠地方特有の装飾が壁一面に並び、天井からは繊細なランプがいくつも吊り下がっていた。

その光が床のタイルに複雑な模様を描いている。

 

受付の主人は、旅人慣れしているのか落ち着いた笑みで迎えてくれた。

 

「六名様ですね。大部屋をご案内しますよ。砂漠の夜は冷えますから、暖炉もつけてあります。」

 

案内された部屋は広く、ベッドは壁沿いに整然と並び、中央には丸いテーブル。

窓を開ければ夜の市場のざわめきが聞こえる。

 

荷物を置き終わった瞬間、全員がぴえよんを見る。

 

――行っていい?

 

――買い物行っていい?

 

目で言っている。

 

ぴえよんはため息まじりに笑いながら片手を上げた。

 

「はいはい。好きにしていいぞ。ただし迷子になるなよ?俺は戦闘中じゃなければ配信できんから捜索イベントやらんぞ?」

 

「いややってよ!?」「薄情か!」「そこは助けろよ!」「そもそも迷う前提で言うなし!」

 

ツッコミを受けながら、五人は一斉に飛び出していった。

 

冷静なる値切りの鬼・アクア

 

アクアは大通りの武具屋に入った。

ドアベルがチリンと鳴り、壁には粗削りの武器がぎっしりと掛かっている。

 

店主はあご髭を扱きながら、大声で言った。

 

「いらっしゃい! 旅の方かい?今ならこのアサシンソードが特別価格で6000ゴールドだよ!」

 

アクアは短剣を手に取ると、ずっしりした重さを指先で確かめる。

 

無駄のない動きで素材を確認し、刃の角度、鍛造の癖、持ち手の加工――プロの鑑定士みたいな目つきで見ていく。

 

アクアの品を見るプロの目に店主の笑顔がみるみる引きつる。

 

「良い品だろ?今これ6000ゴールドで――」

 

「3000ゴールドだな。」

 

「!?!?」

 

店主の声が裏返った。

 

アクアは、淡々と近くの三店舗を指し示す。

 

「素材が同じ。加工も大差ない。どこも3000前後で売ってる。ここの店だけ6000ってのは設定ミスだ。」

 

「ミ、ミス……!」

 

店主の額に汗。

 

アクアはさらに静かに言葉を重ねる。

 

「それに……この爪、昨日まで値札5000だったろ?」

 

「なんで知ってんの!?」

 

「……他の札に比べて明らかに値札が新しい、砂漠近くの風化が激しい紙なら一目瞭然、それにゴミ箱に5000の値札が捨ててあるぞ」

 

直ぐ様ゴミ箱を振り返る店主、空のゴミ箱に安堵し、驚愕に戦きながらアクアに振り返る。

 

「まぁ、そんなもん見てないがその様子が十分証拠になるな」

 

店主は崩れ落ちそうな顔でアクアを見た。

 

最終的にアクアは

「1000、これ以上は払わない」

と言い切り、淡々と購入して店を出た。

 

(こいつ……絶対商売敵にしたらダメなタイプだ……!)

店主は戦慄していた。

 

アクアは何の気負いもなく宿へ戻る。

 

 

天真爛漫の破壊力・ルビー

 

 

ルビーはとにかくキラキラしたものに吸い寄せられるタイプだ。

 

アクセサリー屋を見つけた瞬間、文字通り「ひゅん!」と音がしそうな勢いで駆け込んだ。

 

「わぁ~~~~っ!!なんでこんな可愛いのばっかり置いてあるの!?見て!これ!これ可愛すぎる!!」

 

店主は、最初は得意げに解説を始めた。

 

「これは砂漠地方でしか取れない希少石で――」

 

「きしょーせき!?すごい!!触ってもいい?わ、冷た〜い!きれい~!」

 

店主はニコニコしていたが、ルビーのテンションはそれを完全に上回っていた。

 

「ねえ、この赤いやつと青いやつと金色のやつ可愛いから着けてみていい?」

 

「ど、どうぞ……!」

 

「わぁ、ピッタリ!このコーディネート最高じゃない?」

 

「は、はい、まるでお嬢様に着けて貰うためにあるかのようで……」

 

「ほんとう?!私のため?!こんなに綺麗なのくれるなんてオジサン太っ腹ぁ!」

 

「はい、本当に……え?」

 

店主は勢いに飲まれ、反射的に言ってしまった。

 

「じゃあこれ全部ね!ありがとうおじさん!」

 

「ま、待っ――」

 

言いかけた店主は、ルビーの屈託のない笑顔を見て口を閉じた。

 

……無理だった。この笑顔に逆らえる商人など存在しない。

 

ルビーは嬉しそうにアクセサリーを抱えて宿へ戻っていった。

 

 

会話の主導権を完全制圧・有馬かな

 

 

かなは別の武器屋へ入った。

 

店主が説明を始める前に、かなが先に口を開く。

 

「この剣、こんな曲線描いた形で使えるの?てかさ、こういう剣で“特殊効果”とか説明する店あるけど絶対嘘だよね。あなたの店どうなの?」

 

「え?い、いやウチは正直商売を――」

 

「ほんとかぁ~~?さっき私の前歩いてた商人、“適当に買わせるのが砂漠のコツ”とか言ってたけど?」

 

「ええぇ!?誰だよそれ!?」

 

店主が慌てる。

 

かなは畳みかける。

 

「だいたいさ、“今だけ安い”って何なのよ?

 本当に安かった試しがないんだけど?」

 

店主のHPはどんどん削れていく。

 

「そもそも特殊能力って何なのさ?」

 

「はいぃ~!こ、このまどろみの剣はですね、この曲線部分で相手を眠りに……」

 

「戦闘の最中にトンボみたいにぐるぐるしろって?あんた魔物と戦闘やった事あんの?!」

 

「ひいぃぃ!!」

 

そして。

 

「す、すまねぇ!!もう勘弁してくれ!タダで持ってってくれて構わねえから許してくれ!!」

 

「えぇぇぇぇ!?いや……ありがとう……?」

 

かなはよく分からないまま商品を抱えて帰った。

 

 

心理掌握の女王・黒川あかね

 

 

あかねは静かな通りで、布屋の主人と対峙していた。

 

布を一枚撫でただけで、その品質・保存状況・仕入れの滞りまで読み取る。

 

「最近、仕入れが不安定なんですか?」

 

「なんでわかるんだ……?」

 

「手の動きが少しぎこちないです。

 発注に余裕がないとああいう癖が出ますよ。」

 

「それに同じ棚にある反物も同じ値段なのに、質が悪くなっている感じがします」

 

主人は驚き、そして急に力が抜けて泣きそうになる。

 

「ああ……確かに最近うまくいってなくて……!」

 

あかねは優しく微笑む。

 

「大丈夫ですよ。今がダメでも必ず上手く行きますよ」

 

「お嬢ちゃん……」

 

あかねは布に手を通す

 

「だってこの子達、すごく丁寧に扱われているのが分かりますよ。全部の反物に解れの一つもありませんし」

 

穏やかにあかねは微笑む。

 

「じゃあ協力させて頂いて、私も少し買わせていただきますね。」

 

店主はあかねの、普段は誰も見てくれない所に感動して感涙がとどまらない。

 

「駄目だそんな良い人に売れねぇ!タダで持ってってくれ!頼む!!」

 

「えぇぇ……?」

 

気付けば商品が袋に詰められていた。

 

あかねはありったけの反物が詰められた袋を胸に抱え、店を振り返りつつ帰途についた

 

配信善意ブーストで商人全員沈黙・MEMちょ

 

出会いは唐突だった。

 

店を探しながらMEMちょが歩いていると、突然ベビーサタンがポンと飛び出してきて肩に乗った。

 

しかも胸に札。

「るびす仕様・無害(戦闘中は撮影係)」と書いてある。

 

「は、はわわ……!?やば……かわ……!」

 

周囲の商人も客もざわつく。

 

(あれ……無害……?)

(むしろペットみたいな……?)

(あ、あの子……どっかで見た気が……配信者……?)

 

「配信の匂いに誘われて来ちゃったよ。姉ちゃん配信者だな?しかも濃厚な?」

 

「ふふふ~ん。滲み出るオーラは隠せないのかな~?」

 

ベビーサタンがMEMちょに訪ねると、配信者として選ばれた感じのしたMEMちょは嬉しいのか得意気に答える。

 

「今は姉ちゃん何してんだ?」

 

「今はこの町に来たばっかりでお買い物しようとしてるんだよ~」

 

手のひらに乗ったベビーサタンを顔の前に持ってきて撫でながらMEMちょ。

 

「じゃあ、オイラが配信してやるよ。悪魔属のオイラは町の中じゃ戦闘扱いになるから配信が出来るんだぜ?」

 

「ほんとう?!じゃあお願いするよ!」

 

MEMちょがお礼を言いながら杖屋に入った瞬間、店主の背中を冷たい汗がつたう。

 

(ここで悪い商売したら……あの子の配信に……映る……!)

 

MEMちょが杖を手に取る。

 

「これ可愛い〜!いくら?」

 

「タダです!!い、いやむしろ宣伝お願いします!!悪い噂は……困るので……!!」

 

「え!?それは悪いんじゃ……」

 

「ケケケ、どうせ悪どい事を普段からやってんだから姉ちゃんは気にしなくて良いぜ!どうせならこれも持っていっちまぇ!」

 

そう言うとベビーサタンは抱えられないくらいの杖をMEMちょに持たせるとピースする。

 

MEMちょは良いのかなぁ?としかしご満悦で宿へ戻っていった。

 

 

“買ってきた男”アクア

 

全員が宿に戻ると、テーブルいっぱいに“無料戦利品”が並ぶ。

 

アクセサリー、剣、布、杖……量がおかしい。

 

アクアは静かに自分の袋を置く。

 

「……俺だけ金払ってるの……?」

 

全員が固まる。

 

「いやいやいや、アクアくん……!」

「半額で買ってきたの普通にすごくない……?」

「いやむしろ一番商人泣かせてるよ君……」

「方向性が違うだけで十分悪魔だよ……?」

 

アクアは虚空を見つめて言った。

 

「なんで俺だけ……値段の概念……守ってんだよ……」

 

ぴえよんがツッコミする。

 

「適正価格の半額以下で買ってくるお前も十分怖ぇよ!!」

 

アクアは天井を見たまま崩れ落ちた。

 

それを見た皆が笑ったのは言うまでもないだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。