僕のヒーローアカデミア トライアングルストライカーズ 作:たくtyan
――「治龍局」オフィス
都心に建てられた超高層ビル、その一角をきりん達は事務所として利用している。パソコンをじっと見つめるきりんと傍で眠るGV、机の上に座って鼻歌を歌うモルフォ、デスクワーク中に居眠りするBBとそれを睨み付けながらも真横で黙々と作業をしているレクサス、ゲームに熱中しているシロン、そして熱心にトレーニングしているカミオムと、オフィスできりんとGV、モルフォ、そしてサイドキックの皆が夜を過ごそうとしていた。
「……」
きりんが黙ったままパソコンをスクロールする。パソコンには、
・雄英体育祭 波乱の1年生!
・ヴィランのアジト壊滅 敵にはXマークの傷あり
・深夜の高速でヴィランが暴走
・保須市にヒーロー殺し現る
など、ネットニュースがずらりと並んでおり、きりんは迷わず上から三番目の項目をクリックする。クリックした先はきりん達が以前戦った暴龍に関する記事であり、ネット上ではきりん達が敵を退治、確保したと書かれていた。
「仕方ない事だと理解していても、敵扱いはやっぱり申し訳なくなるな…」
記事を見たGVがつぶやく。暴龍の存在が世間に知れ渡ることを危険視した警察、政府はきりん達が戦ったのはただの敵だと伝えることで混乱を防いでいた。
「私もそう思うけど、幸いなのは暴走した人の名前はちゃんと伏せてくれることと、見た目も暴龍になると完全に変化するからニュースに載ってたってわからないだろうし、今後の生活に支障は出ないことかな。ま、放置すれば被害が出るし、結局は倒すしかないけど。」
「…君は立派だね、きりん。」
「そうかな。私は私に出来ることをやろうとしているだけだよ。」
二人が会話していると、
ビー!!ビー!!
部屋の警報が鳴り響き、事務所に通報が入って来たことを知らせる。警報を聞いて目が覚めたBBも含め、事務所にいた全員がいつでも出動できる態勢に入る。
「通報!?また暴龍が出たのかよ!?」
「いいや違うよBB!保須市に正体不明の敵が複数現れて暴走中!今はパトロール中のヒーローが応戦してるけど苦戦しているみたい!」
シロンが通報の内容を説明する。
「保須市か…。この事務所なら確かに近い。俺たちに応援を呼んだのも納得だな。」
「それじゃあシロンはここでナビゲートを、それ以外は皆私について来て。」
きりん達は準備を終え、事務所の出口に立つ。
「行ってくるね、シロン!」
きりんとGV、モルフォが外へ出る。戦闘用のコスチュームに着替えたBB、レクサス、カミオムも彼女達について走っていく。
「頑張ってね、みんな!」
シロンがパソコンを操作しながらも、きりん達に左手を振って見送る。パソコンの画面には、保須市で行われている正体不明の敵とヒーロー達の戦闘の光景が映っていた。
――保須市
「クソッ、なんなんだコイツらは!」
保須市では数人のヒーローが敵と相手をしていた。敵は黒い肉体に剥き出しになった脳というおおよそ人間とは思えない姿をし、数で勝っているヒーロー側に対して敵側は怯む様子もなくむしろ彼らを圧倒していた。
「な…なんて力だ…!」
「ウウゥゥゥアアアァァァァァ!!」
「ぐはっ!」
一人のヒーローが腕を掴むも、敵はそれをものともせずに投げ飛ばしてしまう。
「ザ・フライ!」
「ぐっ…!」
ザ・フライと呼ばれたヒーローに向かって敵が車をひっくり返す。膝を付いていた彼はその場から動けず、正面から倒れてくる車の下敷きに…
「ていっ!」
なる直前にきりんが間に割り込み、迫り来る車を切断した。
「大丈夫ですか!」
「あ…ああ。」
後ろにいるヒーローに対してきりんが安否を聞く。突然の出来事にヒーローは困惑し、きりんの質問を上手く返すことが出来なかった。
「グルルァァァァァ!!」
「凄まじいプレッシャー…ねえモルフォ、一応聞くけどあいつ暴龍じゃないのよね。」
「きりん。言いたいことはわかるけど、あの敵から龍放射は感じられないわ。」
異常すぎる言動や外見から目の前の敵が暴龍ではないかと疑ったきりんは傍で浮いているモルフォに聞いてみるが、モルフォはそれをきっぱりと否定した。
「まずは市民の命が最優先ね…。カミオムは周囲の瓦礫の撤去を、BBとレクサスは近くの一般市民を安全な所に避難して!」
「応!」
「合点承知の助!」
「了解!」
きりんは耳元に装着した通信端末で指示を送ると、三人はそれを聞いて直ぐに全員違う場所に移動して活動を開始した。
「皆行ってくれたみたいね。さて、次はあの敵を…」
「ち、ちょっと待ってくれ!」
目の前の敵との戦闘を始めようとしたきりんだったが、その直前に水色のコスチュームを着たヒーロー、マニュアルが彼女に話かける。
「こんな状況だけど、君は一体誰なんだ?」
「私はきりん。応援要請を受けて此処に来たヒーローよ」
マニュアルからの質問にきりんは迷いなく答えた。それを聞いたマニュアルは彼女がどんな人物で、何故ここに来たかを理解できたが、まだ疑問が残っていた彼は再び質問する。
「要請を受けて来たってことは、君もプロヒーローなのかい?さっき走っていった子や飯田君と同い年くらいに見えるけど…」
「その点は心配しないで。理由は色々あるけど、免許はちゃんと持ってるから」
二つ目の質問もきりんははっきりと答える。マニュアルから見てきりんは高校生程の年齢に見え、免許を所持していると言われても事実であると断言できなかった。
「正直言って、君がプロヒーローなのかは半信半疑だけど、僕たちじゃ力不足なこの状況じゃそんなこと言ってられない。だからきりん君、僕たちの代わりにあの敵と戦ってほしい」
「勿論。私はその為に来たから!」
マニュアルとの会話を終えたきりんは再び錫杖を握り締め、目の前の敵をじっと見つめて様子を伺う。敵もまた、突如自分の前に現れたきりんという不穏分子に対し、警戒を取る。
「いいのかいマニュアル、あの子一人に任せるなんて…」
「そうだぞ、ここは彼女含め全員で協力した方が…」
さっきまで敵と戦っていた他のヒーロー達がマニュアルに問いかける。彼らにとって応援が来た事は喜ばしいことだったが、まだ少女というべき年であるきりん一人に任せるのことに対して疑問を呈していた。
「多分、彼女は僕たちよりもずっと強いと思う。僕たちが彼女を手伝おうとしても却って邪魔になるんじゃないかな」
マニュアルはきりん一人に任せた理由をヒーロー達に伝える。その時の真剣な表情を見た彼らは、一先ずマニュアルときりんを信じるしかなかった。
「アンタ等が何者か知らないけど、こんな滅茶苦茶に暴れて人の命を奪おうっていうのなら容赦はしないよ!」
「街を壊す正体不明の怪人は!私の"
「アンタに、真の封印を!」
きりん達から少し離れた場所では、BB、レクサス、カミオムの三人が救助活動に励んでいた。
「こんな瓦礫など…ふんっ!」
ガシャン!
「道は俺が作った!早く通るんだ!」
「は、はい!」
「ありがとうございます!」
カミオムは持ち前のパワーでビルの破片や車両を持ち上げて避難経路を作り出した。瓦礫が前にあって進めなかった人が待ってましたと言わんばかりに、避難所へ駆け込む。
「皆さーん!こっちに移動してくださーい!っておっと、障害物みーっけ!」
BBは個性を使って浮遊し、空中から逃げている市民を安全な所に案内する。案内の途中、一部の人が瓦礫が邪魔で通れない様子を発見すると、両手に持っていた鎌で瓦礫を切り裂く。
「はあっ!」
レクサスは手から糸を射出させ、それをロープとして利用してビルの側面まで登り、割れた窓を介してビルの中に入った。中には逃げ遅れた人達がいており、彼らを見つけたレクサスはその一人を片腕で抱きかかえると、もう片方の手から伸びた糸でゆっくりと降下した。
「怪我は無いか?」
「だ、大丈夫です!」
「そうか、なら向こうに行ってくれ。そこに避難所がある。」
「わかりました、ありがとうございます!」
レクサスは抱えていた人を降ろすと、避難所の位置を教えてすぐに移動するよう促す。それを聞いた彼は急いで走り、避難所に向かっていった。その間にもレクサスはまだビルの中にいる人を救助するために、再びビルの壁を登り始めた。
「奴らが脳無か…」
『黒い皮膚に丸見えの脳、あっちはデータに載ってたのと似ているけど、後の2体は全然違うね。細身だったり、翼が生えてるし。』
「別の個性を掛け合わせた個体だろう。USJの時と同じ様に、再生系の個性を合わせて所持している個体もいるな。」
『複数の個性を持つ生物、それも色んなパターンがあるってことは…』
「そうだRoRo、脳無を作っているのは間違いなくあの男だ。受け取ったデータから見るに、既存の人間を改造している。悪趣味な奴が考えそうなことだ。」
『だね。ところでアキュラ君、ヒーロー達が苦戦しているみたいだけど、キミは戦いに行かなくてもいいのかい?』
「もうすぐエンデヴァーが来る。ここでヒーローでない俺が加勢に行く必要は無い。それに、強力な援軍が既に来ている。」
ビルの屋上から、アキュラとRoRoが保須市を見下ろす。視線の先には、彼らが脳無と呼んでいる敵ときりん、GVが一触即発の状況にあった。
「鎖環の少女と暴龍の王として目覚めた
ようやく原作突入です。原作は保須市襲撃からスタートします。
よろしければ評価、感想をお願いします。