航宙艦隊幻想戦記 ステラフリート・ファンタジア 作:谷風 大和
A.D.2088 11/7 聖教国連合、中国内陸部の喀什に上陸。以降地球での地上戦が行われる
A.D.2089 4/11 新国連、地球脱出作戦「オペレーション・エクソダス」を発動。太陽系に住む全市民を別星系へ疎開 new!
A.D.2089 Apr.11 火星軌道
「観測衛星網が敵艦隊の
「前衛の無人ピケット艦
戦術管制士官の報告が艦橋に響く。
次席参謀となってから四回目の戦闘を、僕は司令巡洋艦、
人類の為にも、僕は負けられないのだ。たとえそれが、戦闘の推移には関係しづらい次席参謀としての戦争でも、戦うべき戦争がここにはある。
「艦隊全艦へ通達、軌道交差戦用意!絶対に取り逃がすな、ここで沈めろ!」
ホレーク・トレメイン提督の一声に、艦隊の全艦が動き出した。砲口からは色とりどりの光が漏れ、ソフィストを揺らす推進機の振動は、慣性偏向の恩恵があってなお激しさを増す。
「提督へ進言!作戦計画C4の発動を!」
僕は叫んだ。作戦計画C4はソフィスト中心の第203戦隊が進行方向左に、重巡洋艦
それでも一航過、一回すれちがうだけで敵を全滅させねばならないのだ。やるしかない、その言葉が僕を満たす。
「進言了解、だが敵の出方がおかしい、第403戦隊には右翼へ3千余分に開けと伝えろ!」
提督の了承の声とともに、艦隊28隻がそれぞれスラスターをふかし始めた。スペースシャトルとXB-70バルキリーを合わせたような大気圏突入シールドを持つバイカルを筆頭に4隻の軽巡、9隻の駆逐艦が複縦陣を形成し、ソフィストから離れていく。
ここまで来て、後戻りはできない。決戦だ。
僕は任された任務である軌道砲兵、つまり砲撃衛星の管制に戻った。何とか貧弱な推進機で低軌道から上がってきた砲撃衛星の砲口は、装甲の薄い敵艦の底面に狙いを澄ませている。
異星文明、聖教国連合……地球人類を神敵として2年前から攻撃を続けている彼らは、どうして側面に装甲を集中させ底面の装甲を削っているのだろうか?地対宙兵器への対策をどうしているのか、参謀だけに気になってしまう。
だがその思考も、中断するときが来た。敵が火平線を超えた、視認可能領域に入ったのだ。ここからまた敵が火平線の彼方に消えるまで、3分弱。そのわずかな時間だけで、敵艦隊100隻余りを沈めなくてはならないのだ。
「全艦、
艦隊全艦の砲口が叫びを上げた。亜光速の
僕もコンソールに後付けされた、真っ赤なボタンを押し込んだ。砲撃衛星へ発された電波は、彼らが抱いていたミサイルを全てぶちまけさせ、フェイザーを敵艦へ叩き込ませた。
光の花が咲いた。艦橋から遠い所に咲き乱れた。
この眼では数えきれないが、コンソールには57隻が沈んだと映っている。
「やった!」
「勝てる、勝てるぞ!」
艦隊通信に歓喜の声が溢れた。そりゃ、初撃で半数以上を沈められたのだから仕方が無いだろう。
だが、その歓喜も長くは続かなかった。敵の攻撃がこちらへと降り注いできたからだ。
「
通信士の声に反応し、僕はコンソールのウィンドウを外部カメラに移した。細身で人員削減が進められた彼女の身体は、敵の熱線により貫かれ、外板はむごく爛れていた。
プファネンレンネン、時のローマ皇帝マクシミリアンも愛したというフライパン一枚を防具にぶつかり合う騎士たちの死花。それになぞらえられる軌道交差戦がついにはじまったのだ。
「全砲塔一斉発射よーい、撃て!」
「駆逐艦南昌、轟沈!」
「軽巡ブリュッヒャー、魚雷発射しました!敵戦列艦へ誘導中!」
梯形陣、つまり斜めに並んだ第203戦隊は粒子衝撃砲と光学衝撃砲、ミサイルを撃ち続けていた。大口径とは言え装填には長い時間がかかる聖教国連合艦隊の魔力砲に対して、こちらは短時間での再装填が効く粒子衝撃砲。
光学照準での命中率も、地球艦隊に分がある。魔法文明と言うだけあって、光学技術の進歩が遅いのだろうか?……そこまで単純な話も無いと思うが。
砲撃衛星の管制システムに目を落とすと、第二陣の射撃準備が整っていた。艦隊の射撃統制システムが示す目標に向け、既に光学衝撃砲のプリズムレンズが狙いを澄ましている。その先にあるのは、敵戦列艦のつるりとした下腹部だ。
「提督、砲撃衛星射撃許可願います!」
「よし、許可する!撃ち方はじめ!」
僕の押し込んだボタンの命令に応じ、砲撃衛星群が光を吐いた。
波動と粒子、両方にエネルギーを預ける光子の不安定な濁流が、戦列艦の装甲を食い破って魔力炉に体当たりする。
破裂する敵艦、その中にいくつもの命があるのだろうと考えるのは、僕が新任だからだろうか。それとも、神を信じられるほどに狂っていないからだろうか。
これが、僕の初陣。第四次火星沖海戦と呼ばれる戦いだ。
地球艦隊も4隻の駆逐艦と3隻の軽巡を失ったけど、聖教国連合は戦闘艦を全て、それも109隻全て失った。まあいいディールじゃないだろうか。
今何か書くとネタバレになりそうなので、後書きは次回に期待してください