“転生者”   作:ダフネキチ

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最近眠れない 目を閉じると血と肉と声ばかりが見えてくる
お酒でごまかすのも限界かな
■■■■■■には相談出来ない アイツにこういう話すると すぅぐすまないさんみたいになっちゃうし
ぜんぶ放り投げて 森に帰るには度胸が足りない
皆大好き大防衛が終わった後も お上の暇人共がちょっかいかけてくる
また 新しいものを作らないと やさいせいかつ続行だぁ あははのは
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今日 美人さんがはちみつ酒をくれた
ステレオタイプのギリシャ人みたいな白いローブを着た青みがかった雪女みたいな感じの とても綺麗な子だった
顔真っ赤でしどろもどろで 言ってる事半分も理解出来なかったけど 心配してくれたらしい
どっかの諸侯の娘さんかな?ぼくのせいでいらん事させちゃったようだ
まあ 好意は受け取ろう
ものっそい小さい声だったけど これはトリナ?トリーナ?…のスイレンっていう特別な花を漬け込んでいるらしい
どんな味か楽しみ
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なんか深海の底でデッカイ小松菜みたいなのと一緒に遊ぶ夢を見た
相当病んでんなぼく
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Chapter4
Pt.1


 

 

頭の中に思い描くものを、思うままに形にできるのは気分がいい。

 

“設計図”が無ければ、工学のこの字も知らないぼくだけれど……良い感じの引用繰り返せばまさしく工学チートのように振る舞える。

気分は卒論の文字数を誤魔化す大学生。それっぽいものをコピーして自分のモノを少し混ぜ込めば――あら不思議。

自分が高尚な人間な気がしてくるのだ。AI判定やGoogle検索してくる教授が居ないぼくは無敵……やったるぞーバリバリ!

ワイが超有能チート転生者や!法など無法!かかってこいや著作権!

 

そんなこんなで。

ルンルン気分なぼくはリブラから貰った、ニセモノの金インゴットの加工を続けていた。

 

びっくらするほどに金っぽいが金ではないという、こう……喉に0.5本の魚の骨が突き刺さった微妙な違和感を覚えるこれは――それでも金の性質に変わりないので、叩いたり溶かしたりと色々する。

良い感じの装飾。場所を意識すれば補強にも申し分ない。

“円卓”にあった鉄屑同然の鎧防具で、簡易な金型も作ったしね。

 

ぼくは、手を掛けている――作りかけの“傑作”に目を向ける。

 

今回作っているのは、()()()()()使()()()()()()()()

皆使える“ゲーム”でいうアイテム的なものだ。地図がない中でのコレはきっと役に立つ。

……気に入ってくれるといいんだけど。

 

 

「ふぅ……」

 

 

そうしてしばらく。

加工を終えて、一息吐いた時――バレないように隣を見やる。

 

ぼくの“工房”は、ゲーム上ではコスチューム変更出来る着替え部屋みたいな役割があったので、大きな姿見が設置してある。

その前に、ちょこんと座り込んだ“復讐者”は自分の姿を見つめていた。頭の装飾に付けた――“機械の花”を手で撫でながら。

 

(……まさかあそこでまで気に入って貰えるとは)

 

ぼくが出来る最高峰!……ではあるけれど、人をぶっ殺す事しか考えてない“設計図”から作った苦肉の策的な側面はあった。

そんな中、ああまで嬉しそうにされると……なんだろう。ぼくもすごく嬉しい。

 

(ふっ……ぼくにも女の子を喜ばせられる才能があったんだね……!)

 

彼女の服装は、豪奢な衣装に青色の花を各所に彩られた見事なものだ。その中にあるぼくの花は少しアクセントとしては無骨なように見えるけれど――本人は、嬉しそうな雰囲気をぽあぽあダダ漏れさせながらずっと自分の姿を見ている。

 

それが、ぼくの自尊心やらの複雑な男のメンツをモリモリ満たしてくれていた。

 

「………?」

 

そんな彼女をじっとり見つめ過ぎてしまったようで、気配に気づいた復讐者はこっちを見て、こてりと首を傾げてきた。

ぼくは――ふいっ、と視線を反らした。

危ない。後ろから横目で見続けるとか変態みたいじゃないか。

 

作業に戻る。

……。……。……――チラッ?

 

「――どうかしたか?」

「うおっ……!」

 

四つん這いのまま、こちらを見上げてくる復讐者のドアップが不意に現れた。

 

「あっ……いやぁ……」

「ずっとこっちを見ているが……似合ってないか?耳の上に掛けた方がいいか?」

「――いっ、いや似合ってる!その方が素敵!」

「ん、そうか。お前の好みならこのままにする」

 

復讐者はそのままじぃ……とこちらを見つめてくる。

ぼくはまともに目を合わせられない。

 

 

――『お前を愛している事を許してくれるか?』

 

 

そんな風に言われたらさぁ……そんな風に言われたらさぁ!

普通に照れて引きずるに決まってるじゃんね!?なんでこの子普通に平常運転なの……!?

これがデキる淑女とポンコツ童貞の差だというのか……!

 

「……その」

「ん?なんだ?」

「――き、気に入ってくれてるようで……あの、スゴク、嬉しいですはい」

 

なんか言葉を求められているような気がしたぼくは、目をあっちゃこっちゃしながら何とかそう返すと――ヒヤリとした、彼女の手がぼくの頬を優しく包み、無理やりこっちを向けさせた。

 

宝石のような青の美しい瞳には、カチコチに固まった間抜けなぼくの顔がめいっぱい映り込んでいる。

 

「ああ、すごく嬉しい。もう手に入らないと思っていた、私の……私達の大切な思い出です」

「あっ、ああそうなの……なら、よかった」

「ええ。ですから隠れずに真正面から見てほしい。お前が愛してくれた貴方だけの(ダフネ)に」

「……ぅ……ゥワァ……」

 

もうなんだかどう反応していいかわからずに心の中のちいかわが途方にくれて泣き始めた――その時。

 

――コンッ、コンッ。

 

ふと、ドアをノックした音が響く。

復讐者と二人で、我に返って目をパチクリさせあい――振り向くと。

 

――コンッ、コンッ。コンッ、コンッ。

 

すっごい不機嫌そうなレディがノックを繰り返していた。その後ろでなんだか居心地悪そうに小さくなってる追跡者がいる。

ぼくたちがこっち向いた事に気づいたレディはただ無言で――クイッと顎を外に向けた。

 

意味は明確――表出ろコラ

 

僕たちは視線を外して円陣を組む。

さっきよりも近い顔の距離にドキドキする――違う意味で。

 

「……なんかしたか?」

「なっ、なんも心当たりがない……!」

 

――コンッコンッ。コンッコンッコンッ。

 

「……お前が怒鳴り込んできたご当主様にそう言った時の九割方お前のせいだったぞ」

「なにその嫌な実体験!ぼっ、ぼくはその時の“ぼく”じゃあ――」

 

――ココココココココココッッッッ!!!!

 

「――ひいぃぃぃ」

「骨は拾ってやる。……ファミリーになれるしそれもアリか」

「不吉な事言わんといて!」

 

ぼくはドアを粉砕する勢いの催促に耐えきれずに、レディの側に向かう。分かりやすいくらい口元をへの字に曲げた彼女を、ぼくは真正面から見た。

だっ、大丈夫だ。なんたってぼくは女の子を喜ばせる才能があると判明しているんだ!ここが使い所さん……!

 

いっ、行くぞ!

 

「あの……その、ヘヘッ……――あっ、肩揉みましょうか?」

「……初手ゴマすりとか正気か……?」

「そこうるさい。ぼくはまじ――むぎゅ」

 

追跡者の余計な茶々を窘めていると――いきなり、頬を挟み込まれる。そうしてそのままむぎゅむぎゅと弄ばれ始めた。

 

「えっ、むっなっ――」

「――あのね。私別に怒っていないのよ。復讐者の想いを昇華出来たのならとてもうれしいわ。あの子だって“夜”に全てを台無しにされたからねそりゃあね当然よねでもねじゃああんなにイチャイチャイチャしてるのを見逃すっていうのもなんだか違うと思うのよね分かる?わからないわよねぇあなたには色々やらかしてるくせに」

「むぎゅぎゅあ……!」

「……変な顔……どうして私はこんな人に……」

 

情緒が……!またこの子情緒がおかしい……!

いったいどうして、“ゲーム”の中では確かにちょっと茶目っ気があるけどしっかりとした委員長キャラだったのに……!

 

抵抗むなしく頬を弄ばれていると――パチリッ、と追跡者と目が合った。

 

『プリーズ!ヘルプミア!いつかの我が友よ!』

『無理だ。そのままにされていてくれ。アイツもしばらくすれば落ち着くだろう』

『しばらくこのままでいろと!?』

『女を弄んでいるんだ。頬くらい我慢しろ』

『冤罪!冤罪です!』

 

追跡者は手を横に振る。それはさておきの合図だった。

――さておきってなにさ!若干痛くなってきたんだぞ!

 

『復讐者に贈っていた花だが……似たようなものを、コイツにもやれないか。同じのではないやつ』

『んんー?いや……どうだろう――同じのしか作れないかも』

『そうなのか?お前の手に掛かれば簡単に出来そうだが』

『体内炸裂砲弾は一種類しかないからねぇ』

『……そんなものから作ってたのか』

 

“設計図”の中でも類似品は見当たらない。

……まあ、お腹の中からモツのトマト煮込みを地球にご馳走するのは薔薇の形で十分って事なのだろう。うへぇ……。

 

そうしてマジで“しばらく”弄ばれまくった後。

レディはそれはそれとしてと復讐者も呼び寄せた。復讐者のひんやりとした手が苦難をくぐり抜けたぼくの栄誉ある頬を冷やしてくれる。

 

「……………まあ、いいわ。ここからは“巫女”として話しましょう」

「随分長かったが」

「兄上うるさい」

 

追跡者がしょぼくれる中。

レディが静かに話し始めた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。その件について話したいの」

「不安定?」

「――集まってるな」

 

ぼくがそう訊ねたのと同時に、無頼漢が思案顔でこっちにやってくる。腕を組んで悩ましげだ。

 

「どうだった?」

「受け答えは問題ない。アイツらも長い付き合いだ。“リムベルド”の中にいりゃあ大丈夫だろうが……長引くと、昔の騎士の兄ちゃんみたいになるぞ」

「……昔か?」

「“獣”でびっくりするくらい進めなかった頃あったろ?そん頃にお前さん――ここにいる時は武器の整備をしているだけでずっとぼんやりしていた」

「……ああ、そうだったな。世話かけた」

「んにゃあ、気になさんな」

 

置いてかれる話に復讐者と一緒にぽかんとしていると、レディが静かに語り出す。

 

「私達“夜渡り”は、円卓の加護のおかげで此処とリムベルドに限って不死よ。幾ら死んでも幾らだって蘇る――“夜の王”を殺すまでね。けれど、それは私達の魂には配慮されていない」

 

そこで、ぼくは思い出す。

夜渡り達は――長きに渡り、この“円卓”にいる。“ゲーム”中でも明かされないほどの長い時間だ。

 

きっとぼく――“転生者”が来るまでの間にも、長い時間が過ぎていたのだろう。死と生を繰り返して。

そして普通、そんな事に耐えられるように“人”はそこまで丈夫にできていない。

だから――()()()()()()。記憶、感情、その他諸々。

 

ぼく達がなんだかんだ仲良くしていても――本名を決して口に出さないのがその証左だ。……まあ、ぼくの場合さいっしょからどっかいってるんだけど。輪郭はぼんやり覚えているんだけどねぇ……。

 

「その弊害か、ほんのちょっとの機会で――おかしくなってくるの。しばらくすれば落ち着くんだけど」

「三人いっぺんだからなぁ。ちいと不安か?」

「ええ」

 

三人……というと、ここに居ない“守護者”、“隠者”、“鉄の目”だろう。

………。

えっと、ぼくの中で想像する夜渡りしっかり組に該当する面々なんだけど……!

 

“守護者”は言わずもなが戦士としてのがっちりとした有り様。

“隠者”はぽやぱやねーさんでありながら魔女らしい頭脳明晰さもある。

“鉄の目”はまさに冷静沈着が似合う戦いを仕事と割り切れる燻し銀だ。

そんな一気に変調を起こすように見えない。

 

「いっ、いったい何が起こってそんな事に……?」

 

ぼくはわなわなと呟くと――何故か、しんと場が静まり返った。

そして皆の視線がぼくに集中する。

えっ……えっ……!?

 

「ぼくのせい……!?」

「あなたのせいよ」「お前のせいだろう」「まあ、お前さんのせいだ」

「ほら言っただろう――こういう時はお前が悪い」

「なっ、なんで……!」

 

困惑のままにそう言うと――はぁぁぁ、と無頼漢が、顔に手を当てた。

 

「さっき、食堂で“前の”お前さんの事を面白おかしく聞いて回ってたろう目ぇキラキラ輝かせて……アレだよ」

「……でも無頼漢も追跡者も普通だったじゃん」

「それはある意味、お前の死に納得しているからだ。無頼漢はどうだかわからんが――俺の場合は、お前を看取ってやれた。だからそう引きずるものではない。過去として受け止められる」

「――私は引きずりに引きずったけれどね兄上。ねぇ、兄上」

「………。……ともかく――アイツらにとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。“夜渡り”なんて変な状態でかき乱されれば、不安定にもなる」

「えぇ……」

 

ぼくは追跡者の言葉にパチクリと目を瞬かせるしかない。

 

「……何がそんなに疑問なの?」

 

レディの問いかけに、ぼくは首を傾げながら言葉を選ぶ。

 

「まあ……ぼくの事だし?大切に思ってくれてるのは嬉しいけど――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、嬉しいけど」

「「「「………」」」」

「この超有能チート転生者である“ぼく”が君たちの側にいて、君たちがその死を惜しんでくれているなら――それはきっと、“ぼく”がぼくのまま、君たちに誠実であれたと思うしさ。“ぼく”も後悔はあまりないよ、きっと」

「「「「………」」」」

 

それに、と。

ぼくはつらつらと暗い話題を話していたのを――吹き飛ばす為に胸を張った。

 

()()()()()()()()()()()!一度死んだんだから、二度三度も変わんないよ!だから皆あんま気にしない!笑い話に出来るとこは笑い話にしてくれて構わないよ!今回の最期の参考にするからね!」

「「「「………」」」」

 

………。

あれ?反応が無いな?結構ウィットが効いてる気がするんだけれど?

ぼくが皆の様子を伺おうとすると――無頼漢から拳骨を下ろされた。

 

「ガッ!?」

 

その合間を縫うように、脇腹に追跡者からの肘打ち。

 

「グッ!?」

 

うめくぼくの隙に、スネに向かって復讐者が綺麗なローキック。

 

「ゴッ!?」

 

そしてため息混じりに、レディが懐中時計(“リステージ”)を開いた。

 

「っっ〜〜〜〜!!」

 

拳骨肘打ちローキックの“再演”の激痛に蹲る。

なっ、なんで……!結構良い感じの事を言ったつもりなのに……!!

 

テンセイシャヲイジメヌンデ……!スピキデルジバゼヨ!

 

「んで――このアホ突っ込ませるか?」

「こんな馬鹿と話させたところで拗れそうな気もするが……」

「でも、私はこの大馬鹿者のおかげで陰りは取れたが」

「それはこのアホバカアンポンタンを求めていたからよ。あの三人の“過去”を知らない以上、下手につついてもね。……こうなるって分かってればもう少し深く話していたんだけど」

 

ぼくを呆れた目で見下ろす四人は蹲るぼくを無視して話しを進める。

 

「あっ、あの――」

 

()()()

 

 

――()()()()()()

 

 

それは“円卓”の姿無き主の言葉。

――出撃の時間を知らせる、短い安穏の終わり、

 

 

「――一先ず。この話はお預けね。まずは“夜の王”を殺してからにしましょう」

「ああ」「んだなぁ」「任せろ」

 

そうして四人は戦意を滾らせながら中央室に向かう。

……蹲るぼくを置いて。

 

………。

 

………。

 

「……えっ、アフターフォローゼロ!?そんなに今ぼく悪い事言った!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕方なく“円卓”中央室に痛みを引きずりながら来たぼくは、当然ながら最後だった。

……確かに、言われた三人は何処かぼんやりとしている。目が合うと「どうかした?」という感じは返してくるが、それでも違和感しかない。

 

……うーん。まあ、レディの言う通りか。

ともかく今は――“夜の王”に集中だ。

 

(獣、爵。そして蟲に魔物。後残るのは――)

 

()()()()と、()()()と、()()()()

そして――その先に控える、ラスボス。

リブラが言う事が正しければ、残り二体のボスもいる。

 

物語も中盤。気を引き締める必要がある。

でも、緊張はしなかった。それはぼくがある程度戦える事。

 

それに――仲間がいるからね。

……コンビネーションアタックかましてくるけれどねっ!それは夜の王に向けてください!

 

 

そしてほどなく。

 

――()()()()()()

 

 

――無頼漢。隠者。鉄の目。

 

………。

あれ、ぼく居ない?

 

「おおっ!また魔女の姉さんと一緒か、頑張ろうぜ!」

「……ええ、そうね。たのもしい」

「鉄の目もな!後ろは任せたぞ!」

「ふん……いつもと一緒だろう」

 

「だからこそだ!さぁ、航海の時間だ!――“夜”を乗りこなしてやろうぜ!」

 

声を張り上げて、ぼんやりとした二人の背を叩いて鼓舞する無頼漢。

それはまさに彼が海賊船の長をやっていたとわかるほど勇ましく――頼もしい姿だった。それに引き摺られるように、二人の焦点も徐々に合っていっているように見える。

そして無頼漢はぼくたちにウィンクをかますとそのまま断崖へと進んでいく。

 

……彼なら任せて大丈夫という妙な安心――……て!

そうだ忘れてた、ぼくの“傑作”!

 

「あああ!ちょっと三人とも待って待って!」

 

ぼくは慌てて三人を呼び止めると、“工房”から傑作を持ってくる。

 

「これ持ってて!まだ試してないけど転生者印のお墨付きだよ!」

 

そう言って無頼漢に“ソレ”を手渡した。

 

「こりゃあ――“単眼鏡”か?」

 

その言葉にぼくは頷く。

名付けて――“偽金の単眼鏡”!奇しくも海賊な無頼漢に似合った一品である。

前のリムベルドで目的の“小砦”が見つからなくて難儀したからあったら便利だと思ったのだ。

 

「スナイパーワロス……じゃなかった。まあ、遠距離専用クロスボウのスコープをそのまま使ってるだけだけどね。良ければ使って」

「ありがてぇ助かる。……金の装飾も見事なもんだ。……?どっからこの金――」

「――ああああ!要件終わり!いってらっしゃい!」

 

出処を知られたらまた四連コンボが待ってそうなので背を押して断崖に向かわせる。

ほどなく――

 

 

――霊鷹の嘶きが聞こえてくる

 

 

三人の夜渡りは向かったのだ。

――リムベルド。“夜の王”が待つ、戦の舞台へ。

 

………。

 

………。

 

……なんか、行くつもりなってたから手持ち無沙汰だな。

いや、九分の三なんだから選ばれない確率の方が多いんだけどもさ。

 

 

「――“転生者”サマ」

 

ふと、最近召使らしく影の薄かった召使人形から声が掛かる。

 

「そろそろ行商人の方がいらっしゃるので荷の準備の手伝いを願いたいのですが」

「……何故にぼくが」

「暇そうなので」

「……確かにそうだけど言い方ぁ……」

 

……まあ、最近活躍させて貰ってたし。

新人らしく裏方も頑張りましょうかね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

「……なんだ、こりゃあ」

 

霊鷹の足に捕まり、訪れたリムベルド。

何度も訪れたその地を見下ろし――“無頼漢”は目を見開いた。それはきっと二人も同じだったろう。

 

眼下に広がるその地は――深く、暗い色に包まれていた。

 

()()()()()()()

言うなればそれは“無頼漢”が時たま船から投げ出され、落ちた時の色に似ていた。

 

そう。

 

 

 

まるで。

 

 

 

――“深海”に、沈んでしまっているような。

 

 

 

 




―――
偽金の単眼鏡

遠くまで見渡す事が出来る単眼鏡。
転生者が製作した“傑作”の一つであり、悪魔の偽金をふんだんに装飾として使われている。
使用した際、任意の対象を中心に捉えると、対象の情報を確認する事が出来る。だが、その度にルーンを消費する。
どういった作用かは不明だが……。

――悪魔の偽金は持ちし者を狂わせる。
では、“誰の物でもない”あの国の巨大噴水はどうなったのか。

勇ましい“王の腕”のオブジェは、溢れる水に触れて偽金の魔力を溶かし薄め――いつしか、一日の活力が漲る特別な水として国の名物となった。
後の“大戦祭り”においては、神々ですら訪れるほどに。

誰も意図せず、また誰も知らず、そして誰も望まなかった事だった。故に――真に“公平”なものではないだろうか?

―――
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