“転生者”   作:ダフネキチ

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【ジャーナルが更新されました】

“転生者” PART4


―――

「確かに()()()()()()起きた悲劇は沢山ある」
「けれど――()()()()()()()救われたものもあるって事を忘れないで」

ハルモニア。
ぼくの“せい”で変わり果て――それでも殺しに来てくれた少女たち。
……あれを“おかげ”と胸を張れるほど、ぼくは恥知らずじゃない。

もうめちゃくちゃや。
空気の読めない何処かの誰かさん暴れすぎだろチート転――ぼくチート転生者だった……。

………。
なんだろうと、()()()()()なのは変わりない。

ケジメは付ける。“ぼく”を識って――思い出して。
夜を渡り抜いたその先で、()()()()()()()()()()()()と胸を張れるように。

せめてあの子の微笑みを、嘘にしない為に。


……ミケラマジどうしてくれようかあんの野郎“影の地”でしょいんのどうせ純血騎士褒章あるのも折り込み済みだろ一発はたいてやるからな何とかてか魅了はどうやってぼくが超有能チー……


【追憶を開始します】


―――


追憶‐4

 

 

「……“傷”が治り始めていますね」

 

“学者”の静かな声が聞こえる。

そうしてぼくの傷があった所を撫でると――ふむ、と一息吐いた。

 

「光が消え、“加護”が正常に働き出した。……何か異常はありますか?体に負担が掛かっているやもしれません」

 

学者の心配げな言葉。

特に痛みとかはないので安心させるように、ぼくは――

 

「むぎゅあむぎゅぎゅ……!!」

 

呻いた。

 

シスターに頭を抱き潰されながら。

 

「………」

「………」

「あの、シス――」

「嫌です」

「で――」

「や、です」

「……そうですか」

 

 

やった!これ前もやった!!

 

 

――“円卓”に帰還してまだ数分。

 

ぼくはほっと息を吐く前に――命の危機に瀕していた。

死因は愛による圧死。あるいは溺死である。せっ、せっかく助かったのに……!!

 

んぎぎぎぎっ……!!

何とか引き剥がそうとシスターの細っこい腰を掴んで押し返すが当然ながらビクともしない。くっそ筋力Aめ……!!

 

「ぁ……ふふふふっ、懐かしい感触です貴方様……何もかもが寝静まったあの森の暗がりを思い出します……私たちの吐息と熱だけを感じ――」

 

なんのお話!?いや、聞かなくてもわかる!どうせエ駄死案件だっ――いてててててて!!

筋力Aがフル稼働してきた!

ほっ、ほんとに死ぬ……!いや、“円卓”だから死んでも大丈夫か……!?

 

「はぁ……」

 

必死の抵抗の隙間に、学者の溜息が聞こえてくる。

 

「友よ。傷の塞がり具合を考えれば後数分で完治するでしょう。さすれば――貴方は元の“円卓”に戻ります。我々とお別れですね」

 

――ぬっ。

 

ぼくはそっとシスターを背を軽く叩く。

それで“意図”は伝わったのだろう。一回強く抱き締めてくると名残惜しげに解放してくれた。じゃれ合いも終わりだね。

……なんか一瞬、頭蓋骨から嫌な音した気がするがたぶん気のせいだろう。一応抑えとくけど。

 

胸を見下ろせば、アレほど痛々しかった傷は生々しく蠢きながら閉じられていく。心臓も、もう殆ど見えない。

 

「世話になったね二人とも。助かった」

「いえ……貴方様の助けになれた事……とても嬉しいです……」

「僕も、なんだかんだ昔に立ち返ったようで楽しかったですよ」

 

「うん、ありがとう」

 

名残惜しい。それが見て取れる二人の表情。

それが嬉しくて……――申し訳なくて。

 

「あの、さ――」

「友よ。今はしんみりした別れは無しにしましょう」

 

ぼくの言葉を遮った学者はモノクルの位置を直した。

仕方なさそうに笑う彼は、きっとぼくが何を言おうとしたのか気づいたのかもしれない。

()、と呼ぶくらいだから。

 

「君が“夜渡り”ならば――また会えるでしょう。積もる話はその後でも遅くない」

「……わかった。いつ頃合流できそう?」

「そうですねぇ……」

 

“学者”と“葬儀屋”。

DLC追加夜渡りである二人は、“ゲーム”では一体でも夜の王を倒せば合流イベントが起きる。

けど、やはり“現実”だと違うのだろう。

 

………。

 

「実は、今すぐにでも合流出来る段階ではあります」

「えっ!」「そうなん?」

「ええ。ですが――君が“夜渡り”であるならば、少々話は変わる」

 

学者がぼくを真正面から見つめてくる。

そして問いを投げかけてきた。

 

「……君は――()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

……それはぼくも聞きたいんですが?

けど、言える事はある。

 

 

「まだわかんないけど――“()()()()()()()()()()()()()。それだけはわかるよ」

 

 

それだけは。

それだけは果たさなきゃならない。

こう、沸き立つ感じの想いを“使命”と呼ぶならば。きっとぼくのはそれだろう。

 

「……わかりました。なら、出来得る限り合流は遅らせましょう」

「え゛」「……?なんで?」

「君のその想い――()()()使()()()()()()()()、邪魔をさせる訳には行きませんからね」

 

学者は静かに頷くと――シスターを見る。

さっきはめっちゃ嬉しそうに、今は少し悲しそうにしている彼女を。

 

「シスター。今なら一緒に戻れると思いますよ。元は僕に巻き込まれた形ですからね。彼の側にいてくれるなら僕も喜ばしいですが」

「……。………。…………」

 

シスターは顔を天上に向けて小さく呻き始めた。

……すんげぇ悩んでる。

 

「……――いえ。……学者様のお側に……」

「本当に遠慮する必要はありませんよ?」

()()と対し続けるのであれば、遠慮はします。学者様だけでは蟻ん子さんみたいにぺちゃんこにされちゃいますし……」

「……少し、意地悪な問いでしたか」

「はい、意地悪です。私がこのお方の妻として淑女たらんとしている事に感謝して下さい……」

「「淑女……?」」

「……なんですか?」

「「いや……なんでも……」」

 

……まあ、感じ方は人それぞれだからね。

ぼくが自称・超有能チート転生者であるようにね。しょうがないね。

 

ふと。

()()()()()()()()()()()()

 

自分を見下ろすと、もう傷があった事すら分からないほど元通りの姿をしていて――少しずつ、身体が消えていく。

 

もうそろそろお別れだろう。

 

「シスター」

「はい……」

 

ぼくはするすると近寄ってきた彼女の頭に手を乗せた――のと同時に手が消え、宙を切る。

……かっこつかん。

 

「ぼくをそんなに想ってくれて、本当にありがとう」

「貴方様は私の全てですから……当然です……」

「次会う時は手加減してね」

「えっ……?」

「えっ」

「………」

「………」

 

えっ、まさかアレで手加減してた?マジかこの子。

いや……“ぼくたち”の関係がエ駄死案件だったならそうなのか……?

 

首を傾げて困惑している彼女が視線を逸らし――呆れたように笑う学者を見る。……なんだかぼくと話す時ずっとこの顔な気がするぞきみ。

 

「君が話してくれた事を考えると――恐らく、君は“僕達”の存在を忘れるでしょう。これまでの全てか、あるいは“僕達”が関わった部分だけを都合良く切り抜かれるかは不明ですが」

「それは悲しいかも」

「いいんですよ。()()()()()()()()()

 

「……あのさ」

 

消えかかってるこの瞬間なら、少しだけ話してくれるかもしれない。

 

二人が、もう一つの円卓を作ってまで戦っている“敵”。DLC最終ボス。

夜の王とは異なる脅威――災厄。怨嗟と妄執によって立つ、“報復の化身”。

 

「二人がぼくの為にぼかしてるのはわかる。けど、これだけは教えて」

 

 

それは――

 

 

「ソイツは、“()()()()()”?」

「――いえ」

 

ぼくの不安を断じるように学者は遮った。

彼にしては強い、声色。

 

 

「友よ。これだけは言いましょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()。貴方を身勝手に望み、己等の目的を果たそうとしている――傲慢な乞食に過ぎません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っ……んん……?」

 

目が覚める。

ぼやける視界は――見た事ある天井を映し出していた。

ここは……“円卓”の控室……?あそこのベッドか……なんで此処に……?

 

「んしょっ……」

 

のそりと起き上がると――掛けられていた布に、びっくりするほど血が付いている事に気がついた。それだけじゃない、ベッドのシーツ――ベッドの木目から、床にまでそれが染み付いている。

 

「うぇ……なんだこれ……」

「――あなた……?」

 

ふと、“レディ”の声が聞こえる。

そっちに振り向くと――ぼくの右手を優しく掴んでいる彼女が見えた。仮面に隠れていてもわかる。

何処か、焦燥とした表情だった。

 

よく見ると、他の皆も大集合していたみたいで――呆然とこっちを見つめている。

 

えっ……えっ……。

なにが――

 

「ん?」

 

よく分からなくてキョロキョロ周りを見渡していると、ベッドの近くに、あの忌々しい“英雄武器”の槍が立てかけてあった。

その装飾に結ばれている――()()()()()()()も。

 

(あ……あー……)

 

段々と思い出してきた。

ぼくは、いつの間にかもう一つの円卓に飛ばされていて――()()()()()()()()でエデレの歯を見つけた後、一人(ソロ)でリムベルドに出撃して――

 

 

『確かに()()()()()()起きた悲劇は沢山ある』

『けれど――()()()()()()()救われたものもあるって事を忘れないで』

 

 

“英雄武器の娘たち”……――いや。

ぼくのせいで変わり果て、それでも殺しに来てくれた少女たちに出会った。

 

……記憶が、ちょっと曖昧だ。

何か忘れているような気がする。けど、まあ……心臓ぶち抜かれた状態だったんだからそれも当然か。

 

それより……皆、心配掛けちゃったみたいだ。

 

ぼくは信じられないという風に表情を震わせる皆を安心させるように笑い――

 

 

「なんとかなったわ!!」

 

 

――ビシッ!とサムズアップした。

 

――ストンッ、と皆から感情が抜け落ちる。

そしてつかつかとぼくに近づいてきた。

 

「えっ、ちょっ、ちょっとなに!どう――いてっ!なんで小突くの!?ぼく結構がんば――てぇ!?ちょっとみぞ打ちはやりす――いっ、まだしゃべっ――たぁ!?……う、うウワァァァ!!スピキモリチャバダンギジマセヨ!!ネルヌニロッグポンリョッ―――った!?」

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

“円卓”は静まり返っていた。

元々、己とシスターは特に多弁という訳でもない。だから、この静寂はいつもの事だというのに。

 

――やけに静かに感じる。

彼が此処に迷い込んで、体感にして一日も経っていないというのに。

 

(……彼がそれほどやかましいのかなんとやら……)

 

そんな己に苦笑すると、学者は茶を淹れたカップを二つ持ち――その一つを、シスターに差し出した。

 

「ありがとうございます……」

「ええ」

 

そうして互いに静かに茶を啜って――少し。

 

「――良かったのですか?」

「えっ……?ああ……淑女ぶった事はちょっと後悔してます……」

「その有りもしない件ではなく――()()()()

 

自称淑女のおしとやかな後悔ではなく。

もっと前――ハルモニアによって、彼が本当の意味で死にかけたあの一瞬の事。

 

シスターは不自然に揺れる自らのグローブ――その、()()()()に触れた。

あの場面。

彼女は躊躇いなく自らの指を噛みちぎり砕き……口移しで流し込んだ。

 

あの時は血迷ったかと思ったが、今思えば感覚的に分かる。

シスターの“力”が安定したのが、友の血肉なら――それを返せば、力を取り戻すかもしれない。

 

現にそれが理由か――()()()()()()()()()()()()()()

一目でも致命傷と分かる友の腹を“夜”が覆い、完治までは行かずとも行動には問題なく回復させた。

 

でも、それはどの指でも良かったはずだ。

左手の薬指。その意味は――流石に知っている。

 

「……分からないでしょうけど。私、将来の夢はお嫁さんだったんです……」

 

あー、何となく分かってた。とは、言わないでおこう。

 

「こんな忌々しい私を愛してくれて、ずっと側にいてくれる人……そんな人が現れて欲しいと幼心に願っていたんです……」

「………」

「その気持ちは今でも変わりません。けれど、こんな私のちっぽけな夢よりも――()()()()()()()()()()って、彼女たち(ハルモニア)を見ていて、気づいたんです」

 

ハルモニア。

神々の武器に成り果てた戦乙女達……かつて、一人の馬鹿に恋した乙女たち。

変貌してもなお――その馬鹿を殺す為に、その想いを噛み殺した英雄。

 

彼女たちが言った事。

 

「――()()()()()()()()()()誰の為でもなく、あのお方の安寧の為に」

「そう、ですね……」

「だから、薬指を捧げたのはその決意表明と……愛の証を残したくて。……ふふっ、二号さんたちにこの事を教わるなんて、まだまだ妻として精進しなくては……」

「前提が上位なのは変わらずですね……」

 

……やはり、その結論になってしまうか。

 

友の“遺志”――震える字の前で、宙に吊られた友の影。自らが引き起こした悲劇、身勝手な望みに呑まれてしまった無二の友。

それを思えば、それを思い出せば、()()()()()()()()()()()

 

けれど、何か。何か“別の道”は無いのかと。

――それが頭から離れない。

 

“学者”と評された知性は、“遺志”に殉じるべきと言う。

“友人”であった己は、それに反して“道”を探せと言う。

 

まだ、どうするか……決められなかった。

 

 

「………」

「………」

 

茶を啜る静かな時間だけが過ぎる。

……空は、()()()()()()()()()()()()()()。“アレ”の斥候が来るまでまだ時があるだろう。

今回の事を手記に書き留めておか―――

 

「あっ」

「……?どうか、されましたか……?」

 

そうだ、忘れていた。

慌てて懐から取り出したのは――“鍵”だ。リムベルドの秘所に隠されていた。何かの、鍵。

 

……別れが早すぎて、この件をすっかり忘れていた。

 

「シスター。少し、付き合ってくれませんか?」

「……?はぁ……」

 

このままぼんやりと友を想う時間は毒だ。

少しでも有意義な事に使おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かったのは、“円卓”の地下廟。

書庫から階段を下り、浜辺に出るよりもさらに階段を下った奥。

閉じられた扉の先にある。

 

厳重に鍵が掛かっていたが……まあ、()()()()()()がいた己にとって。錠などちょっと硬めのドアノブ程度の違いしかない。

 

「……此処が」

 

円卓に来てから何度か忍び込んで探究をしていた己とは違い、シスターは初めてだ。物珍しそうに辺りを見渡している。

 

ここは――白木をくり抜いたような大きな空間だ。

等間隔に()()()()()()が横たわり、立てかけられた二つの棺が狭苦しく置かれている。

 

「これは……?」

「我々――“夜渡り”の先祖に当たる者たちです」

「えっ?」

「詳しく説明すると長くなるので単純に言いますが――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ずっと昔から計画されていたんですよ」

「―――」

 

シスターは瞠目する。

無理もない。自らの“意志”で訪れたと想っていても、その実――運命は決められていたのだから。

 

「……やはり、鍵穴らしきものは無いか……」

 

シスターは少し置いておいて。

地下廟内を見て回るが――やはり、そういう類の物は見当たらない。人工物と言えば、棺と。

 

棺を統べるように刻まれた――奥に置かれた、碑文

 

「………」

 

その辺りを軽く叩く。

……分からないが――ここはやるしかないだろう。

 

「シスター……シスター!」

「えっ……あっ、はい……」

「――()()()()()()()()()()()()()

「はっ……はい……?」

 

怪しい所はもうここしかない。

()()()()()()、奥の方にある怪しいのを狙えばいいと――友が言っていた。

 

困惑しながらも、シスターはメイスを振りかぶる。

 

「えっと……いいんですか……?きっと“()()()()()()、“()()()()()()……」

「ええ。けれど、僕たちのせいだと気づかれる事はないでしょう。思いっきりどうぞ」

「……学者様は、時折常識が何処かに行きますよね……」

「お陰様で」

 

主に、常識があるんだか無いんだか良く分からない何処かの誰かさんのせいである。己はあんまり悪くない。

 

溜息一つ。

シスターはそのまま勢い良くメイスを振り下ろした。

 

 

――ゴバンッッ!――

 

 

鈍い音と共に、破片が下に落ちていく音も聞こえる。

碑文が置かれていた其処に――空洞が現れた。

 

「成る程。地下の、地下です――ぐっ……」

 

空洞を覗き込むと何も見えない暗がりへと下る粗末な階段が見え、瞬間――()()()()()()()()()()()が鼻を襲った。

 

「ゲホッ!ケホッケホッ……!これは……!」

 

何かの腐敗臭じゃない。

“夜渡り”として戦い続けた中で――嗅ぎ慣れた匂い。

 

 

「――()……?」

 

 

それでもここまで濃密なものは嗅いだ事はない。

まるでワインのように――長きに渡り、熟成されてきたような。

 

そんな匂い。

 

「……いったい何が……」

 

懐からランタンを取り出し、火を灯す。

空洞へ掲げても見えるのは狭苦しい岩肌と――暗がりへと誘う、下り階段のみ。

 

心して向かった方が良さそうだ。

 

「シスター。申し訳ありませんが、殿をお願いします」

「………」

「……?シスター?」

 

反応がない。

振り向くと――その真っ白な肌を、さらに青白くさせたシスターが呆然と空洞を見ていた。

何かが、可笑しい。

 

「どうしました」

「そんな……()()()()()……でも……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、二人は垣間見た。

――碑文に刻まれていたものを。

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

“円卓”中央室から出た先、書庫を横切った……“食堂”から賑やかな声が聞こえる。

その声を、書庫の自らの席に座りながら――“隠者”は静かに聞いていた。

 

「――ってぇもんで!光と共に対したのは七人の戦乙女たち!七対()のアンフェア戦の中でもぼくはニヒルに笑ってこう言った「待たせたね、ベイビー達。ぼくに負ける準備はいいかい?」とね―――!」

 

 

“坊や”の楽しげな語りが響く。

お酒を飲んで呑まれた愉快そうな言葉。

 

ほんのちょっと前まで死にかけてたとは到底思えない。

変わらない――愛し子の声。

大きくなって少し低くなっても変わらない、絶対誇張しているな……とすぐに分かるその場任せのクルクルとした話し。

 

それが聞けて、心からほっとしていた。

 

……脳天気なサムズアップにちょっとイラッと来て皆で突き回したのはちょっと反省しているが。

最終的に突っついてもアーウしか鳴らなくなったので勘弁してあげた。

 

 

本人的には頑張った末に苛められたので不貞腐れていたが、料理を食べればすぐに元の状態に戻り――ケラケラと今まで会った事を話し出す。

()()()、隠しながら。

 

(二日目の“夜”に、何があったのかしら……)

 

他もちょいちょいあるが――そこは「現れた瞬間、ぶんなぐって勝った」とかいうびっくりするほど隠せてない嘘で誤魔化していた。

……皆も、ツッコみたそうにしていたが。

 

「……“隠者”サマ。皆様と一緒じゃなくて良いのですか?」

 

ふと、顔を上げると厨房から追加の料理を持ってきている召使人形がいた。幾つか見慣れない料理を上手に乗せられている。

その気遣いに、肩を竦めた。

 

()()()()()()()()()()()()()。それに……少し疲れたの」

「……左様ですか。隠者サマは特に気を張っていらしていましたから、心中お察し致しマス。何かお飲み物でも……?」

「ええ、お願い」

「かしこまりました」

 

少々お待ちください、と頭を下げた召使人形が食堂に入っていく。

 

「―――七人から連携!無慈悲な連撃!けれど、この超有能チート転生者に掛かれば赤子の遊びで――!」

 

「皆サマ。追加のお料理をお持ちしましたよ」

「おー!ありがとう!……ってぇ、えっ。マジに天津飯作ったの?結構無茶振りだったんだけど」

()()()()()()()()()()()()()

「何故?……中華の方が昔いたの……?」

「さぁ?ともかく、お口に合えば良いのですが―――」

 

……テンシンハン。

そういえば、“昔”。坊やが食べたいと騒いでいたような気がする。

けれどその時の私は面倒でリンゴを投げて………。

………。

嫌な記憶を思い出した。

 

……食堂から、坊やの歓声が聞こえる。

後で作り方を教わっておこう。

 

 

「………」

 

 

書庫の机に向き直る。

“隠者”は思い直していた――()()()()()、と。

 

このままでは駄目だ。

遅々として進まない研究に、時間があるからと悠長に構えていればああして突かれる。

“円卓”に長くいたからかその辺の警戒を曖昧にしていた。

 

そのせいで、“坊や”を失いかけた。

 

「………っ」

 

新たに知った事は無数にある。()()()()()、有用であった事も認める。

けれどそれは――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

己の望み。

過去を振り返った事でより強固になった願い。

 

――ずっと“坊や”と共にある事

その為に、どうにか……。

 

「………」

 

けれど、何も思いつかない。

坊やの“転生者”としての力は、長きを生きた魔女ですら複雑怪奇で読み取れないし、共にある為の手段は、()()()()()()見つけられていない。

 

(――“()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

そうすれば、この“円卓”は永遠に維持される。

世界が大変な事になるだろうが――そんなのはどうでもいいし。

 

けれど、夜渡りの同志たちがそれを許すと決して思えない。説得も不可能だ。レディや復讐者でもそれはきっと許容出来ない提案だろうから。

 

長い間共に戦い、己等の手札を知り尽くした仲。

負けるつもりは毛頭ないが、分の悪い争いになるのは間違いない。

 

それに――“坊や”も、それを許してくれるとは思えない。

それは――()()()()()()。これが正しかったと教えていれば大丈夫だろうが。

 

(……でも、そうなると“外敵”に対処出来ない)

 

()()()()()()()()()

よりいっそうそれが顕著になる。

……やはり、これは最終手段として取っておくべきだろう。

 

 

「―――そうして華麗にハルモニアを撃退したぼくは!じゃ~ん!こうして彼女らの武器を手に入れたのでした!……しょーじきいらねーけど……」

 

 

……少し、坊やの声を聞いて落ち着くか。

いつの間にか置かれていた紅茶を有り難く飲みながら、あの子に耳をすませる。

どうやら、あの“敵”を倒して――()()()()()()()側にあった、あの“武器”を自慢しているらしい。

 

……精緻で美しい装飾を施された武器。

持てば、力を与える代償に――永遠に神々の奴隷とする、悍ましいもの。

坊やの好きそうな代物だが――自分としては、あまり好まない。

 

見せびらかしているだろう坊やに最初に反応したのは、坊やと同じくらいお酒を飲んで愉快そうにしている無頼漢だ。

 

「ほほう!けったいなもんだなぁ、持てばソイツを英雄にしちまう武器なんてよぉ……」

「持ってみる?無頼漢」

「いやいい。あの鎧は俺にゃあ似合わねぇだろ。つうか、なんでお前は持ってて平気なんだ?」

「さぁ?あんまきょーみ無いからかなぁ……あっ、たぶんコイツがぼくに負けて心から平伏してるからだと思う!」

「……なんか抗議するみてぇにピカピカ光ってっけど」

「あー?んだおら、生意気やぞ英雄武器くん……」

 

食堂の入口からでも分かるほど光が点滅している。

……流石は神々が作った“武器”。多少の意志はあったりするのだろう。

 

皆が驚きの声を上げる中で、疑問を投げかけたのは守護者だった。

 

「それを鹵獲したのは構わないが、どう使うんだ?」

「んー?」

「性質的にお前以外が持てば障りがありそうだ。危険だから飾りのままでもいいとは思うが?」

「そーねぇ。今、考えてるのはぼくの“傑作”に仕込む案かな。()()()()()()()()()()()、組み込もうかと」

「……なんかびっくりするほど点滅しているが。嫌がってないか?」

「ん〜〜〜〜〜?嫌がってる〜〜〜〜?」

 

 

あっ、なんか坊やの琴線に触れた音がした。

酔っているせいかそれがより顕著な気がする。

 

 

「おいおいおいおいそりゃあ道理が合わないねぇ英雄武器くん。きみら散々っぱらあの子達を加工したっていうのにさぁ、自分だけはごめんなんてなぁ……そんなずっこいのは有り得ないよねぇ!?」

「……点滅が止まらないな。チカチカする」

「兄上、ちょっとアレ止めてきて。眩しいわ」

「仮面で隠れてるだろう、我慢しろ」

「えー。……んむっ……テンシンハンってこんな感じだったのね……あの時に出来てたら……」

 

そんなこんな坊やと武器の言い合い……光り合い?は止まらず、ついに――ガシャン!と机を叩く音と共に、椅子が転がる音がした。

 

「あぁぁ!もう怒った!ちょっと追跡者!ぼくの“工房”からハンマーとノミ持ってきて!」

「俺をパシリに使うな。……何をする気だ?」

「神々のお武器殿に人間様の恐怖を教える!!!」

「……まあ、楽しそうだからいいか」

 

わーわー盛り上がり始めた食堂から追跡者が出てくる。

こっちと視線が合うと――仕方なさそうに肩をすくめると、工房へと向かっていく。

 

うん、まあ……あの子が楽しいならいいか。

 

「……兄さ――んんっ!転生者。爆薬の用意があるが、使うか?」

「準備が良いねぇ鉄の目!流石!かますにゃあ上等だよ!」

「おおっし!じゃあハンマー振るうのは俺に任せな!……話を効く限り胸糞悪ぃ……」

「おっけぃ!じゃあ無頼漢に任せた!その上腕二頭筋を十分に発揮してくれたまへ!少女たちの為に!」

「……私は何をしようか。盾でも使うか?」

「えっ、いいの!じゃあ、衝撃シールドにお願いしようかな」

「……友よ。素晴らしい装飾だ。それに罪はない。模写するから少し待て」

「それは確かにぃぃ……って、アレ。執行者喋ってる。どうしたのん」

「自白剤を飲んだ」

「何故に!?」

 

「ちょっと皆、落ち着きなさい」

「そうだぞ、無駄な事はやめろ」

 

やいのやいのと騒ぐ男衆に――女性二人、レディと復讐者が水をかける。

……坊やが少し可哀想だが、話を聞く限り危険な代物だ。

出来れば止め――

 

 

「でも――」

 

「やる前にまず岩とかに打ち付けて擦って傷を作るのよ。乙女の敵よ、存分にやりなさい」

セバスを使え(セバスチャン)霊体なら影響はないだろう(命令です。もう折れる勢いでやりなさい)もう思いっきりやってやれ(女として許すまじ。蛮族を地獄に送るのです)

 

「――二人とも……!!」

 

 

駄目だ、あの二人も随分キテる。

 

しばし後――復讐者の巨大骸骨(セバスチャン)の野太い咆哮と共にガンッ!ガンッ!と何かに叩き付けられる音が聞こえる。

それに合わせて光が悲鳴を上げるように点滅していた。いや、たぶん普通に悲鳴上げてる。

 

「……何が起きている?」

 

追跡者が言われた通りの物を持って此方に聞いてきた。

……言える事は。

 

「――集団リンチ」

「……まあ、アイツの手に渡ったのが運の尽きか」

 

追跡者が食堂に消える。

……ちょっと気になってきたので席から立ち上がり、こそりと入口から覗いてみる。

 

食堂から吹き抜けた、中庭に皆が集まっていた。

その中央には砂埃塗れの武器が力なく地に横たわりピカピカと光っている。そんな彼……彼女?に構わず、坊やはせっせと爆薬を柄に持っていた。

 

「――英雄武器くん。あの子達の気持ちは分かった?」

 

ふと、坊やが静かに語り出す。

 

「あの子達から力を求めた結果だろう――きみは神々の意の通りにしただけだろう。けれど、あの子達はきみのように苦しんだはずだ。……違うかい」

 

武器は少し逡巡するように光を弱らせる。

 

「今謝れば――折るのをやめるよ」

 

その言葉に武器は必死に点滅する。

わかった。もうしない。あやまるから。

そう何度も何度も、坊やに懇願する。

 

坊やはふぅ……と溜息を吐くと、追跡者からハンマーとノミを受け取り――それを無頼漢に手渡した。

意図が分かった彼がニヤリと笑うと、丸太のように太い腕に血が巡る。

 

あぁー……と、隠者たちは武器を気の毒に思った。

 

武器は呆然とするように光を止める。

 

 

「謝れば折るのをやめるって言ったね――」

 

 

その言葉に縋るように光が淡く灯る……が。

 

 

「――()()()()()

 

 

光の悲鳴が輝くその刹那。

振り下ろされた衝撃が――爆発となって、武器を襲う。

煙に塗れたがその影は真っ二つに割れていた。

 

……可哀想に思えるが、当然の末路のように思えた。

 

 

――ゴバンッッ!――

 

 

「――ん……?」

 

()()()

地下から何かが壊れる音が聞こえた。

……くぐもった聞こえ方……“地下廟”から?何かあった?

 

目の前の皆を見る。

楽しげにしているのを邪魔するのも悪いだろう。坊やも病み上がりだ。厄介を持ち込むのも。

 

――少し、一人で様子を見ているとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“地下廟”の前に着くと、すぐに違和感に気づく。

 

「開いてる……それに――何この匂い」

 

鍵が掛かっているはずの扉。

その開かれた隙間から――むせ返るほどの、()()()()

……棺の誰かが蘇りでもしたのだろうか。

 

扉を開けると、並んだ棺の奥。

――碑文が刻まれているはずの箇所が倒壊している。そこから自然に出来たとは思えない空洞が覗いていた。

 

「……何が起きたの」

 

慎重に近づいていく。

空洞の先は一寸先も見えない暗がりの地下に続いている。

粗末な階段が実に頼りなかった。

 

「………」

 

転がる碑文の残骸を見やる。

そこには確か――こう、書かれていた。

 

――

 

“はじまりの罪”を贖う為 我らここに礎となる

 

――

 

夜渡りは――()()()()()()()とされている。

罪を償う為に、()()()()()()()()()()()()

 

……そういうお題目になっているが。

 

その“罪”については、長く此処にいたが隠者ですら分かっていない。罪を償えと言いながら肝心のそれが書かれている物が何処にもなかったのだ。

不思議に思いながら……“獣”と“爵”の激闘に心を費やされ――坊やとの再会に浸っていて。

 

ずっと、この件を気にしていなかったが。

 

「……はじまりの罪」

 

この先に、あるのだろうか。

……少し悩んでから――手の平に“魔術の光”を灯して、空洞の先……階段を下る。

それでも手の届く範囲程度しか明るくならない。

 

慎重に、慎重に階段を下っていくと。

階段の終わりで――()()()()、と。足首まで何かに浸かった。

 

濃い血の匂いと粘着質な感触から、それが何なのかは考えるまでもないが。

 

「うぅ……上がったら消臭しなきゃ。坊やに嫌がられちゃいそう……」

 

それにしても、何故ここまで血が溜まっているんだろう。

しかも固まる事なく、ずっと。

 

そうして前に進むと――両端に低い、ベンチのような椅子が見えた。

手の中の光を動かすと、まるで()()()()()()()()()()

 

「誰かが、座ってる……」

 

その影を照らせば、すぐにそれが骸骨と化している人影だと分かった。小柄な体躯、虫食いだらけでも精緻な衣装――頭蓋骨にこびりついた()()()()()()()()

 

……黄金の一族だろう。

かつて“黄金の地”を統べた女王マリカの直系たち。その少年か――()()()

何人かが、椅子に座り蹲った形で朽ち果てていた。

 

「円卓に関わった“挿し木の一族”かしら……姿形も無いと思ったら、こんな所に……」

 

そんな骸骨たちの先――祈る先を見る。

光がギリギリ届いたその先には、祭壇に置かれた豪勢な宝箱が見えた。

 

「………」

 

血の河を掻き分けながら近づく。

その箱の装飾は、黄金の地に見られたありきたりな装飾。()()()()()()()()()()()()

その留め金には、鍵穴があり。

 

――()()()()

鍵が箱の前に置いてあった。

 

「……まだ、新しい……?」

 

箱はかなり埃が被っているが――“鍵”はそうではない。

まるで――()()()()()()()()()()()()()

 

「………」

 

何らかの罠の可能性もあった。

けれど、この場の雰囲気と“円卓”の加護が、隠者の背を押した。

鍵を入れ回し……慎重に蓋を開け……、中身に光を照らすと――

 

「―――」

 

――閉じた。

一瞬で沸き立った()()()()()()()()()()()()

 

何故。何故――“コレ”が此処にある!?

書庫で描かれていたものが正しければ、コレは――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかし、全てが“夜”に呑まれてしまった為。

当然コレもその中に消えていて。リムベルドに落ちてたらいいなー程度に構えていたのに。

 

コレが……コレさえあれば……!

 

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

奥から、滴りが聞こえる。

……思えば、箱の裏は壁ではない――まだ先がある。

光を向けると……二つの影が見えてきた。

 

「……誰か、いるの……?」

 

いつでも攻撃が出せるようにしながら一歩、また一歩と近づく。

影の正体は、像だった。何かの人物の背だった。

 

「……?」

 

顔が見えるように回り込む。

 

――台座に腰掛けるように座った形の人物像、それが二人。

 

片方は小さな子供。片膝を付いて、台座に腰掛けている。

綺麗な長髪にアクセントで幾つか編み込みがある。少年とも……少女とも取れる端正な顔立ちは優しげな微笑みが刻まれている。

像であるはずなのに――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

意識して視線を、もう片方に向けると。

()()姿()()()()()()()()()。几帳面に座り込んだ長身の女性。

両翼を象った兜に、肩口が大きく開いたドレス。右腕全体が義手であり、残る片足も精緻な義足であり――右手に握る刀を、静かに胸に添えている。

 

彼女が、()()()()

一緒にいる子供の像を合わせれば――

 

 

「ミケラと、マレニア?」

 

女王マリカと王配ラダゴンの子。

“黄金律”の次代を担うはずだった神人、天賦の双子にして―――

 

 

―――“破砕戦争”を引き起こした大罪人。

 

 

「何故、此処にこの二人が――」

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

背から、血の滴りが聞こえる。

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

ふと、気がついた。

ミケラとマレニア。二人の像は――()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

隠者は意を決して、振り向くと。

手の平の光を構える。

 

 

そして――()()

 

 

光に反射した、忘れるはずのない二対の愛しい色を。

磔にされた――それを、()()

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

見て――()()()()

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

「――ぁは」

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

「はは、ぁはは……ぁあぁあ、坊や……」

 

 

()()()――

 

 

「私たちはずっと一緒にいられる……今度こそ……!ずっと、幸せに……!ぁは、ぁはははは……!」

 

 

――()()()()() ()()()()()――

 

 

 

 







―――――――――

[純血騎士褒章]

“血の君主、モーグ”が築かんとした新たなる王朝、モーグウィンの栄誉ある騎士の証。
ひどく古びたこれはごく最初期に作られた物であり、血の君主は誰に渡すわけでも無く持ち歩いていた。


使用すると“破砕戦争”最後の地、モーグウィン王朝跡地へと向かう事が出来る。


――“それ”を語ると誰もが嗤った。語る本人でさえも。
生命の謳歌を祝福する黄金律から忌まれ、恥辱の暗がりの中で異形の神性に縋り付いた……そんな哀れで無様な者の、“誇大妄想”であると。

だが、ただ一人は違った。彼だけは嗤わなかった。
それどころか大いに賛同を示すと勝手に“宣教師”を名乗りだし、回りに回るその口先で――地下全体、そして夜半に紛れて黄金の地全体に“それ”を広めていった。

……彼にとっては、黄金律への私怨に任せた嫌がらせの類だったろう。
けれど――やがて。

一人の誇大妄想は、十人の夢となり、百人の希望となり、千人の救いとなり。
哀れで無様な“忌み子”は――律にあぶれ、迫害されてきた者たちを率いる“血の君主”となっていた。

―――――――――



―――――――――

[無垢金の宝箱]

“円卓”地下廟、その隠された最奥にて秘されていた物。
挿し木の少女たちが犯した大罪。あるいは、用意された“策”の一つ。

これの中身を知る者はすでに朽ち果て、今や二人だけ。
そして、これを開けた“隠者”以外に存在しない。


――“事”が知れた時。

王配ラダゴンは激怒し、女王マリカは天を仰ぎ――共に頭を抱えた。
程なくして送りつけられた“月の王女、ラニ”直筆の兄妹連名による――礼状という名の宣戦布告に近しい呼び出し状を前に、うだうだと理屈を捏ねて拒否しようとする王配の尻を蹴り上げる形で女王はそれに応じ。

罪の赦し。為されないはずの再会が為された。

“人の王”が刑に処され、姿を消してまだ間もない頃。
――全てが破砕するまでの、取るに足らない日々の事であった。

―――――――――











【新たなエンディング分岐条件を達成しました】




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