“転生者”   作:ダフネキチ

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―――

神々の号令の下に召集された傀儡共は、眼前の“敵”を決して侮っていた訳ではない。

だが、こうは思っていただろう
所詮は只人。偉大なる神々の慈悲を拒絶した愚者の群れ。
()()()”――身の程知らずの蟻など、容易く踏み潰せると。

実に正しい。それは“公平”なる事実に他ならない。
“敵”は間違いなく只人であり、愚者であり、身の程知らずの蟻。

奴らに何ら瑕疵は無かった。

ただ……知らなかっただけなのだ。


()()()()()()()()()――奴らもまた身の程知らずの蟻であり、容易く踏み潰せる愚者の群れに過ぎなかった事に。



――“聖戦”。あるいは、“大防衛戦争”。
そう謳われ、そして忘れ去られ、今なお終わらぬ戦いは。

“人の王”――その名を唯一無二とした、偉大なる始まりであった。


―――


Chapter6
Pt.1


 

 

(んー……)

 

人は、どうしようもない時ほどどうしようもない事を思いつくものだ。今考えても仕方のないしょーもない事で脳みそが支配されて何も出来ない。

――そんな例に漏れず。

ぼくもふんわりとした宇宙に、意識を何処かに連れてかれていた。

 

(顔中にもっちゅりんを押し付けられれば、こんな感じの感触になるのかな……)

 

あー、もっちゅりん。もっちゅりん。

口出して分かるこのもちもちとした語感。サイコーだね。結局食い損ね――

 

「ねぇ、あなた。ちょっといい……――かしら」

 

ふと、レディの声が聞こえてくる。

もそもそと意識を“外”に向けて目を開けると――仮面で隠れてもなお不満そうな表情で、()()()()()()()彼女がいた。

……なんかまたやったか?お酒のやらかしは覚えてるタイプだと思うんだけど。

 

「どうかした?」

「どうか……って。なんでまたわたっ……じゃない。膝枕されてるの?」

「ひざまくら?」

 

何の話――と思って、気づく。

寝っ転がっているぼくの頭だけが、冷たい工房の床にない。

しっとりと柔らかい、けれど良い感じに固い温もりの上。ぼくの頭はそこに乗せられていた。

……。

ぼくは黙って上を見ると――“隠者”と目が合った。

魔女帽で陰った暗がりの中、隠者は優しげに微笑むと――ぼくの頭を静かに撫で始める。

 

「………」

「………」

「………」

 

ぼくはレディに視線を戻した。

 

「なんでぼくは膝枕されてるの」

「私に聞かないで本人に聞きなさい……」

「いや、聞いてもたぶん――」

 

「――貴方が私の“坊や”だから」

 

「ほら!」

「何がほらよ、まったく……」

 

なっ、何故溜息を吐かれねばならんのだ……。

ぼくはただもっちゅりん宇宙に迷い込んでただけなのに……!

 

 

それは、英雄武器くんの柄と一緒にプライドも折ってやってしばらくの事。

 

 

飲み会も程なくして終わったので、ぼくは酔いに酔ってグルグル回る視界とインスピレーションのままに――英雄武器くんと一緒に“工房”にこもり、トンカントンカンしていると、色々な事が分かってきた。

 

――英雄武器。その名は遜色無かったのだ。

良い感じに頑丈だし、刃の切れ味抜群で刃毀れもしない。

さらには元からそういう“力”があったのか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまり……これは――多少無理な設計もイケる!

気づいた時にはチートエンジンフル回転だったよね。

 

そうして。

ああでもなーいこうでもなーいと、英雄武器くんを“加工”している内に、酔いも落ち着いてきて。

はたと、気づいた。

 

――なんかグノスター静かだな……って。

 

……自分で言うのは照れくさいけど、グノスターならぼくが戻ってきたら――いの一番に騒ぐと思ったから。

 

それが、ない。

 

すわ何事かと慌てて“内”に意識を集中した途端――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

衝撃に仰向けにぶっ倒れてワタワタと藻掻いている内に、それがグノスターのもちもちお腹だとすぐに気がついた。

 

声を掛けるが――応答はなく。

静かにぼくを抱き締めてくる。その身体を震わせながら。

 

()()()()

それだけで、どれほど心配させたかが分かった気がして。

ぼくは抵抗をするのを止めて――ただただその抱擁に身を預けて……預けて……。

………。

いつしか世界の成り立ちと空高く広がる銀河系に、そこから見えるエブたその圧倒的な可愛さに思考を巡らせ。

 

――気がつけば、もっちゅりん宇宙に迷い込んでいたのである。

 

 

 

()()――ちょっと言いづらいかな)

 

グノスターたちは“夜の王”だ。

僕たちの敵、滅ぼさなくてはいけない災厄の一人。

決して――相容れない。

 

けれどぼくはもうそういう風には見れなかった。“内”でずっと一緒にいたからか――それとも“昔”に、ずっと一緒にいたからか。

……普通にぶっちゃければ、皆なら普通に受け入れてくれるような気はするが……万が一は踏みたくない。

信頼に付け込んでいるのは分かっている。

 

それでも……ぼくは……。

 

………。

……()()()

 

断じて――グノスターと隠者を直に向き合わせたらただでさえ元から半壊している“円卓”が全壊しそうだから理由は含まれていない!断じて!

思いやりと保身は両立するのだ。おそらく、きっと。

 

 

――ともかく。

 

「ごめん、レディ。お話は後でもいい?このままだと前が見えないからさ」

「……?見えてるじゃない」

「いや、もっちゅりんがね……」

「………??」

 

困惑しているレディを無視して目を閉じる。

申し訳ないけどそのまま、“内”に意識を向けていく。

 

 

 

「………」

「………」

「それで、貴女はどうして――」

「――私は“坊や”のお母さんだから」

「ああもうはいはい。……なら、アレね。お義母様って呼びましょうか?」

「だーめ。お嫁さんにはあげないし、お婿さんにもしません」

「……なんか機嫌よさそうね?」

「あらわかる?――やっと、()()()()()()()()()()。それが本当に嬉しくて……」

「ふーん?……無頼漢が濁してたくらいだから悲惨だったのかしら……また怒るに怒れないじゃない……」

 

 

 

 

“内”で目を開けると――変わらず、視界は真っ白お腹に埋め尽くされていた。……グノスターの思うままにしてあげたいけど、ずっとそうしている訳にもいかない。

 

ぼくは手をヒラヒラさせて、近くにいるであろうフォルティスくんを呼ぶ。程なくして手の平に触れるゴツゴツした感触からは――強い心配と安堵が伝わってくる。

……こうされるとちょっとお願いしづらいな。

 

………。ちょっと話題を逸らすか。

ぼくはもそもそと顔を動かして、口を開く。

 

「――記憶を取り戻したいと思うんだ」

 

―― えっ? ――

 

突拍子のない言葉にグノスターの抱擁が少し緩む。

顔を上げると蒼の複眼と目が合った。

 

―― どうして? ――

 

「離れてる間に色々あってさ。ちょっと真剣に“過去”に向き合おうと思って。……それにグノスターたちも“ぼく”が戻ったら嬉し――」

 

―― そんな事ない!! ――

 

急に言葉を遮られた。

途端に抱擁が強くなって、ぼくの顔はまたもっちゅりんに埋もれていく。

 

―― たしかにっ、確かに記憶が戻ったら嬉しい!嬉しいけど……それだと“()()()()()()()()()()()()()……!いいの!そんな事しないで!坊やは私の子!私達の子!私達は家族なの!それさえあれば! ――

 

「うもうもう……!――ぷはっ。()()()()()、だよ。グノスター」

 

ぼくはグノスターの背と、触れているフォルティスを静かに撫でる。

昔。ずっとずっと昔から――“ぼく”を家族と思ってくれた二人を。

 

()()()()()()()()()()()()()()、ぼくは思い出したいんだ」

 

グノスターたち。

それに……夜渡りの皆も。

“ぼく”を知っていて――それでも思い出さなくてもいい、と。それでもぼくには変わりない、と言ってくれている。

……最初こそそれに甘えていたけど、今はその気持ちに報いたいという気持ちが強い。

 

――『私は貴方を愛しているわ、心から。本当に幸せだった』

 

神々の奴隷になってなお――“ぼく”を想って来てくれた“彼女たち”を間近で見たからかな。

それに―――。

 

ぼくは、二人に気持ちが伝わるように笑いかけた。

 

「“()()()()()()()、でしょ?ぼくも面と向かって君たちをそう言いたくなったんだ。……だめかな?」

 

………。

 

………。

アレ?何も返――うもうもうもうもも!?!?

 

―― うぅ〜〜! うぅぅぅぅぅ〜!! ――

 

えっ、っちょ!強い!抱きしめが強い!

なに!?ぼく結構良い事言っ――いったい!フォルティスくん手の平に頭突きしないで手首砕ける!!

 

―― ぼうやはわるいこ! いけないこ! めっ!めっ! ――

 

なんか怒られた!

よっ、喜んで欲しかっただけな……あの、フォルティスくん頭ぐりぐりしないで手首がすり潰されて取返しの付かない事になっちゃうかぐぁぁぁぁ!!?

 

 

 

 

 

――しばらくして。

ぼくはグノスターたちの揉みくちゃから解放された。ぼくの手の平は石臼にすり潰された小麦粉になった。

 

―― ふぅ ――

 

満足したらしいグノスターはぼくを抱擁から解放する。ひらひらと宙を舞うその姿は元気を取り戻したようだ。

ともかく、元気になってくれたのなら嬉しい。

 

―― ぼうや やっぱりわるいこ いっしょにいなきゃ めっ ―― 

 

「うん……そだね」

 

―― あと…… フォルティスも悪かったな ちょっと取り乱し過ぎた ――

 

「うん?……って、うわぁ」

 

改めてフォルティスくんを見ればびっくりするほどズタボロだった。……足も一本折れてないこれ?

……もしかして離れてる時、グノスター死ぬほど暴れたりした?

フォルティスの頭を労るように撫でる。

すると、大丈夫だと安心させるような気持ちが伝わってくるのと同時に――フォルティスの巨体に“夜”が纏わりついていく。

徐々に傷が治っていっているようだ。

 

……ふぅむ。()()()()()()()()

むっ!むむむむ!……おおっ、出来た。

 

―― ぼうや ぼうや ――

 

手の平が治っていくのを見ているとグノスターに声を掛けられる。

 

「どうしたの?」

 

―― ()() なあに? ――

 

「“アレ”?……ああ」

 

グノスターの示した先。

“夜”に象られた“内”の隅っこに――歪んだ歯が無造作に転がっていた。……時折、紫雷が奔っている。

 

――“夜の爵、エデレ”の一部だ。

“誰も居ない円卓”に迷い込んだ時に、開いていた礼拝堂から見つけたもの。戦いの時は大いに助かった。……こっちを食べようとしてくるのはアレだったけど。

 

「あっ――そうだ」

 

―― ……? ――

 

何処で見たかは忘れたけど。

確か、“過去のぼく”――厄ネタの権化、人の王陛下はグノスターの毒でエデレを倒した疑惑があったんだった。

 

……んー。イケるかぁ……?

 

「二人とも。ちょっと付いてきて貰っていい?」

 

ぼくは首を傾げているグノスター達を促して、“歯”の元に近づく。

そしてそれに触れると、やがて歯から溢れんばかりに紫雷が迸っていき―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無の荒野。

無限に広がる空に――紫雷が荒れ狂う。

狂乱の暴威、その“()”の咆哮が止まらぬように。

 

 

『■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?!』

 

 

肥大化し、膨れ上がった巨体。焼き焦げた雄大であった翼。

捻じられた首、引き裂かれた口。埋め尽くされた無数の歪で醜い歯。

 

 

『■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?!』

 

 

此処は、エデレの“夜”。

爵とすら称されたはずの化け物の、残された場所。

 

 

―― よるにのまれてる ふん よわいやつね ぼうや ――

 

 

後ろからグノスターの声が聞こえてくる。

振り返るとフォルティスもいる。よかった、二人とも来れたか。これでまた一人だけだと意味ないからね。

 

……フォルティスくん、なんか言いたげな顔をしてる……?

なになに……グノスターも前はこんなんだった?ずっと暴れて辺り一面力を撒き散らし――

 

―― は? そんな訳ないが? ――

 

フォルティスを遮るようにグノスターがその巨体に突進をかます。

 

―― 嘘言うな 坊やの優しくて賢いお母さん像が崩れるだろうが さっき下手に出たからって調子乗るな このっ このっ ――

 

そうしてそのままフォルティスくんをシバキ始めた。

 

……いや、想像通りなんだけど。

初手会った時もあんまり話通じなかったじゃんね……。

――とは言わない。かかあ天下の家庭は余計な事を言わないのが秘訣だから。

 

 

『■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?!』

 

 

()()()

エデレが此方を嗅ぎつけた。

前の時のように首が俊敏に振り向くと、勢い良く駆け出す……()()()()()()

 

 

『■■■■■………』

 

 

歪な口は絶えず唾液を溢し、いきり立つ紫雷の勢いは変わらない。

けれどエデレは立ち止まり――警戒している。

ぼくたち……特にグノスターの方。羽ばたく翅から微かに舞う()()()()()()()

……どうやら目論見通りになったみたいだ。

 

―― 何見てんだコラ ――

 

喧嘩腰過ぎる……ヤンキーじゃないんだから……。

 

「過去の“ぼく”がエデレをグノスターの毒でやっつけた事があるらしくてさ。気づけば足を止めると思ったよ」

 

―― ふーん? ――

 

今のエデレは“夜”に狂い――原始的な本能に支配されている……と思う。

なので一杯食わされた“もの”を見れば無闇に襲っては来ない……はず。

 

これなら――

 

―― それで どうするの? ころす? ――

 

「いや、ちょっとお話しようかなって」

 

―― むりじゃない? ――

 

「それはそう」

 

エデレは何故か“ぼく”に執着している――()()()()()()()()()()()()()、忘れないほどに。

それを知りたかった。“過去”と向き合うと。そう決めたから。

 

ぼくはグノスターたちと連れ添ってエデレに近づいていく。

竜は後退りせず、さりとて攻勢に出る事もなく――ただじぃぃぃと身体を止め、唾液を溢している。

 

そうして“彼”の目の前まで行き、ぼくはその顎に触れた。

 

感じる暴れ狂う“夜”の気配。

ぼくは、()()()()()()()()()()()()()()に従って。

 

その“夜”と――繋がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は、いつしかその“島”を統べていた。

 

そこに何ら理由はない。

竜として産まれ、そう在るのであれば――弱きを蹂躙し、その全てを喰らう。

小賢しいだけの“古竜”共とは違う……()()()()。祖たるベールの血を引く竜として当然の事だった。

 

“島”は雄大で美しく、糧にも困らない。

縄張りとしては理想的だったが、些か単調であったのが不満であった。

 

――人間。弱き豆粒たちが我が地を見つけるまでは。

 

それでも、それは気色の違う肉を喰える機会でしか無かったが……時折、骨のある豆粒がやってくる事もあった。

ソレらは同胞の色を瞳に乗せ、借り物の猛き意志を以て――我を喰らわんと向かってくる。

 

“竜餐の戦士”

 

我らが祖ベールに痛手を負わされた古竜共が、人間に授けた業。

――我ら竜を殺し、その心臓を喰らい、我が物とする力。

賢しさ故に臆病者である古竜共の気取った儀式……だが、好ましい摂理ではある。

 

()()()()()()()。実にわかりやすい。

 

だが、そんな者達も。所詮は我らの成り損ない。

豆粒程度に負けた同族の力で――我を殺せるはずもない。

 

結局の所。

最初こそは滾ったものだが……時過ぎればなんて事はなく。

我はまた単調なる生の下にいた。

 

 

「たのもー!!たぁのもぉーー!!ドラゴンさぁーん!!」

 

 

――()()()()()()()()()()()()

 

 

 

呼び声の下には、我をして粗末だと分かる布を纏った豆粒が居た。

我の前に立つ者は大抵そこらの石で作ったものを身に付けていたからよく覚えている。

 

首には、()()()()()()()()()()()()()が付けられていた。

 

「おぉぉぉ……すっごい、本物だぁ……!この世界に来て久しぶりに感動したぁ……!!」

 

「おっ、おい!集中しろ!竜の前なんだぞ!?」

「あぁ〜?感動の邪魔しないでくださる〜?」

 

豆粒の隣には、鎧を纏った戦士……“騎士”といったか。それと、見慣れぬ“獣”が居た。よくよく気を凝らせば、辺りにも何人かの豆粒がいる。

 

……ふん、所詮は戦術とかいう惰弱な力に頼った良くある豆粒か。

そう思い、すぐにでも殺すかと火を内に蓄える――前に。

 

「おぉら、シッシッ!早くどっか行け!ぼくの考え通りにならんでしょうが!」

 

豆粒が“騎士”を他所に追いやろうとしていたのが見えた。

 

「だっ、だが奴は“爵”だぞ?長きに渡りこの島を―――」

「知ってるっつの!()()()()()()()()()!誘いに乗ってくれんきゃ遠距離でハメ殺しだよ?ウチにゴーさんは居ないんだぞ!?」

「誰だゴーって!?」

 

豆粒は一歩、我の前に歩み寄る。

抜き取った(ナイフ)は――()()()()()()()()

 

……一人で掛かってくるか。竜餐の戦士でもなかろうに。

ならば、()()。直に殺してくれる。

 

「……ふぅん?()()()()()()()()()()()()()()()()()。やっぱ記録って頼りになるわ〜」

「おっ、おい!ちゃんと構え―――」

「だぁから黙ってろがい!――ぼくが死んだ所でキミらに関係ないだろうが!」

「―――……!」

「……。まあ、安心しな。ぼくは“蟲の子”だぜ?そこらの雑魚と一緒にしてもらったら困る。……グノスターとの追いかけっこは324戦全敗、フォルティスとのかくれんぼは8割負けて貰ってる男だぞ?」

「今の何処に安心出来る要素があった!?」

 

豆粒は、蟲の如く我に迫ってくる。

 

 

「――超有能転生者様に任せんしゃい!」

 

 

その攻勢に、我は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――気づけば、地に伏せていた。

 

身体が思ったように動かず――それどころか、()()()()()()()()が痛みと共に全身を這い回っている。

チロチロと走る鼠のような動きに翻弄されていって……それで……。

 

これは……――毒か?

 

「ふぅい……グノスターの鱗粉って竜にも効くんだ……そりゃあ森の縄張り争いダンチだわ……」

「……これほどとはな。俺が戦った時に使われたら負けていたな」

「いや使ってた!――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!このチート野郎め、ほんとに人間?」

「一応、俺達王族は何処かで神々と交わっているらしいが」

「ああそう。あのハゲの妄言ね……」

 

霞む視界に豆粒が入り込んでくる。

その周りには“騎士”と隠れていた他の人間たちも居る。

 

「……これを勝ちというには、些か卑怯に思えるが」

「なぁにを言ってるんだね?――()()()()()()()()()()()、ワトソン君。てか、それ言うならデッカイ身体に牙やら翼やら持ってるあっちが卑怯だろ」

 

小癪だが――豆粒の言う通り。

卑怯などと、所詮は弱者が己が弱かったと思いたくない故に吐く戯言だ。

強者であるならば、毒など喰らい潰せば良かったのだ。

 

それが出来なかった。すなわち、己は弱者に他ならない。

敗北して――死して然るべき。

痛みも何もかもねじ伏せて立つ事の出来ない己は、祖たるベールの血に相応しくないのだから。

 

「ともかく。殺すか。……皆、構えろ」

 

“騎士”の言葉に、周りの豆粒共も(けん)を抜く。

……此処で終わりとは。認め―――

 

「いや、()()()()()()。なにしてんの」

「……はっ?」

 

……はっ?

 

周りの豆粒、我でさえ。

その言葉に目を見開いた。

 

「おいおい……おいおいおい、みんな馬鹿ぁ〜?」

 

――心底呆れ果てた。

そう表情に書いてある豆粒は深く溜息を溢した。

 

「確かに。たぁしかに?ここでドラゴンさんを殺せば――今はこの“島”の全てが手に入る。けど、それを()()()()()()()()()()()()()()()?ぼくらの目的は島の資源なんだよ?……厄介なドラゴンさんを殺してくれてありがとー!お礼にこの島には手出ししないよー!って、皆さんおっしゃるとでも?」

「いや……所有権争いになる」

「そ。キミらなんて、キミとグラちゃん以外にまともな戦力ないんだから三日天下どころじゃすまないねぇ」

「じゃあ……どうするんだ」

「――ドラゴンさんを番犬にする」

 

 

その言葉に――身が焼かれるほどの熱を感じた。

番犬。番犬と言ったか豆粒風情が……!

 

――この、竜たる我に向かって……!!

 

我の気炎に他の豆粒は一歩後ずさった。

けれど――奴は、一歩。己へと踏み出した。

 

「ドラゴンさん、言葉はわかる?――キミの命は助けてあげる。代わりにこの“コイツら”に手出しはしない。他はいつも通り好きに食べればいい。……どう?守れそ?」

 

………っ!…………っっ!

 

「んー。返事がないのは困っちゃうなー。それとも……言葉がわからない?やっぱり、本に書かれた通り―――」

 

 

「所詮――永遠なる古竜から分かたれた、()()()()()()()()()()?」

 

 

その侮辱は、毒に侵された己が身を動かす力があった。

あんな存在に劣るなど……我と。そして祖たるベールへの途方も無い侮辱だった。

首が動き、奴を喰らう為に――口を開ける。

 

()()()()

奴は、その(ナイフ)を我の瞳の横に突き立て――真正面から我を睨み付けた。

 

「悪いけどこっちは――()()()()()()()()()()()()()……!とっとと、ハイかイエスか言って欲しいんだよなぁ!?」

 

数瞬。

我と奴は瞳を交わした。

豆粒のさらに豆粒ほどのその瞳に――微かに、()()()()を見た気がした。

 

………。

我は、身を伏せ――瞳を閉じる。それが答えだった。

 

「よぉし。これであのハゲの命令通り。“竜を蹴散らし、恒久的に資源を確保しろ”でしょ?……ねぇ?()()()()()()殿()()?」

「……わかってる。父上には俺も言い含める。グノスター達に―――」

「きみがその名を呼ばないでくんない?」

「……すまん」

「ふん。……あっ、お人間さん。ぼくの荷物持ってきて。そう、それ」

 

奴は、我の前に幾つかの木の実を転がしてきた。

 

「これ、グノスターの毒を多少中和させるからあげるね。じゃあ、またね――“エデレ”。これから宜しく」

 

そう言うと奴と、他の豆粒共は去っていく。

 

「エデレとは……?」

「ドラゴンさんの名前。長い付き合いになるから必要でしょ?なんか……()()()()()()()()()()()()()。ナイスセンス」

「……まあ、いいだろう。その、なんだ……これで我が民は救われる。ありが―――」

「―――あぁー、疲れたよグラちゃぁーん。おぶって――てぇ!ちょっとちがっ、背負ってって意味で首後ろ咥えないでぎゃあああ!足引きっ……!てっ、テンセイシャヲイジメヌンデ……!!」

「……。はぁ……」

 

 

我は騒ぎ立てる奴の背を――睨み続けた。

 

エデレ。エデレ。エデレ。

――()()()()()。我は“エデレ”。

奴に敗北し、従伏した弱き竜。“島”の全てなど持っていくがいい。

 

 

だが……今この時――殺さなかった事を後悔させてやる……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――毒の傷は癒えた後。

我は直ぐ様、奴の匂いを辿り……その住処、“人間共の国”へと飛んだ。

約定の範囲は“島”だけだ。その外で守る道理はない。

 

騒ぐ豆粒共を牽制する為、中央に聳える高き城を体当たりで粉々にする。残骸が堕ちていく最中。

 

奴と――その側に王冠を被った豆粒が見えた。

 

「あぁぁぁあああ!!ワシの城がぁぁああ!?」

「ひゅ〜、エデレやるぅ〜」

「言っとる場合か!奴隷!貴様のせいであろう、何とかせよ!!」

「あー、通気性良くなっていいんじゃないっすかー?へーかは王冠以外にもう一つ被ってるから蒸れますでしょー?」

「誰がハゲだ貴様……!蟲共がどうなってもいいのか!?」

「チッ。……はぁーいお人間さんたちー迎撃よーい、蟲の子くんの言う事聞いてー」

 

我は奮闘したが()()()()()に対応出来ず、撤退を余儀なくされた。恥辱に塗れた敗走だが、あの屈辱に比べればなんて事はない。

 

――次はああはならん。

今度は、人間共が少ないであろう国の端。

奴らに力を貸すいけ好かない“神々”のねぐらへ踏み込んだ。

火を吹き、翼を振るい、足を踏み落とすし――全てを瓦礫としている最中。

 

奴と――その側に、人間のメスの形をした“神々”が見えた。

 

「きゃあああああ!!わらわの神殿がぁあああ!!?」

「エデレー!もっとみぎー!もっとみぎをやれー!」

「応援してる場合!?異邦の子よ、何とかなさい!!」

「えー、このままでいいと思いますけどー。ほら、この埃塗れになった下半身だけの肖像とか貴女様を良く表してますよー。これぞ芸術」

色狂い(ビッチ)とでも言いたいの不敬者めっ!蟲共に神罰食らわすわよ!」

「チィッ!……はぁ、まあ。手伝ってくださいねー。配備が足んないんで」

 

此度の襲撃は、後少しで喰らえるかと思ったが――神々の一撃を喰らい、撤退を選んだ。

その力は竜たる身すら蝕み、“島”を出るほどの気力を奪われてしまった。

 

 

約定を守らねば、竜たる己への恥。

だが奴が生きている事もまた、竜たる己への恥。

 

 

内なる気炎は渦巻き、さりとて何も出来ぬまま――“島”に来る有象無象を蹴散らし続けていると。

 

()()()。蝕んでいた神々の力が消え失せた。

 

熟されていた傷は癒え。

奴の元へとすぐに襲撃に向かうと――奴は、“()()()()()()()()”になっていた。

しかも、神々と敵対し、戦いを続けている。

 

――なんたる。

 

ああ、なんたる……喰らい甲斐の敵へとなっているのだ。

しかも、神々に牙を向くなど恐れを知らぬ。

 

まるでそれは。

かつて古竜共からの恥辱に対し、その全てへ反逆し、滾りを向け暴れ狂い恐れられた――祖たるベール。

()()()()、その一片ではないか。

 

ああ、今ならばわかる。

何故――“竜餐の戦士”共は、無謀なる戦いに挑み続けたのかを。

 

この滾りだ。この憎悪。この戦意。

全てをぶつけ、屠り……そして――()()()

その悦楽の味が忘れられなかったのだ。

 

 

――時を経るほどに、その想いは強くなっていく。

何度も戦い、退き、追い詰め追い詰められ……そして共に戦う事もあった。

()はより強くなっていき、我もまた高まっていく。

 

あぁ……いつか。

いつか、全てが終わる日が来る。

 

手傷と疲労に塗れ、血肉に染まり、心臓を貪り喰らうのは――我か、奴か。

あぁ……楽しみだ。その時が来るのも。

 

 

 

その機会は、黄金の光に消え去った。

 

 

 

………。

 

………。

 

………。

 

――()()()

神如きが?世界如きが!?我らの戦いを台無ししたのか!?!

認めぬ……我は絶対に認めぬ!

奴がこんな事で死ぬはずがない!我を殺さず、この滾りを残した憎き仇敵がこんな風に終わるはずがない!!

我が殺す!我に殺されるべきだ!!我が死ぬその日まで――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

認めぬ!認めぬ!

認めぬ認めぬ認めぬみとめぬみとめぬミトめぬみとメヌみとめぬミトメヌ■トメヌ■ト■ヌミ■■■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?

 

 

 

 

―― ぼうや ぼうや ――

 

 

 

「――うぉお!?」

 

グノスターの言葉に我に返ると――エデレに触れていた手に紫雷が奔っていた。慌てて手を離すと徐々にそれが消えていく。

 

―― だいじょうぶ? ――

 

「うん、ありがとう。ちょっと呑まれてたかも……」

 

にしても、()()()()()()()。なら、狙うのもちょっと納得かも。竜餐関係ってちょっと熱いんだよな。ゲームでも好きだった。なんか熱血通り越したマグマなスポ根じみてるというか。

 

……てか。

エデレが見た、“獣”と――“()()”。

 

やっぱり、“ぼく”は重要な何かを忘れているような気がする。

 

―― むぅ むぅ ――

 

「んん?どしたん?」

 

―― ぼうや わたしたちのために がんばってた ――

 

―― うれしいけど かなしい ――

 

「……そっか」

 

断片しかわからなかったけど。

どうやら人の王になる前――“蟲の子”であったぼくは、グノスターたちを人質に良いようにこき使われていたみたいだ。

……こっからなんで“人の王”になってんだぼく。むしろ逆じゃない?こっから仲良しイベントがクリティカル出しまくったのか?

 

―― やっぱり あの時一緒に逃げるべきだった 森なんてどうでもよかったのに 家族さえいればなんでも ――

『■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?!』

 

「……っ!グノスター!」

 

その刹那。

エデレがその口でグノスターを咥え込もうと大口を向ける()()

フォルティスが、その巨体でエデレを弾き飛ばした。

 

地響きと共に転がっていったエデレはすぐに体勢を整え、咆哮を上げる。

無の荒野は、徐々に――エデレの“夜”に染まっていく。

 

「……やっぱり、仲良しこよしは無理かぁ……」

 

まだ“夜の王”になる前の“竜”なら多少何とか出来る雰囲気はあったが――“夜”に溺れ、狂いきっている“化け物”になってしまっていたら。

 

―― ぼうや ぼうや さきにもどってて ――

 

「グノスター……?」

 

ぼくらを守るように前に立ったフォルティスの横へ、ひらりとグノスターが舞う。

 

―― はなしがわからないやつは シメる わたし シメるのとくい ――

 

いや、それは知ってるけど……。

でも――確かにそうか……?原始的本能に帰り過ぎているエデレなら、力の差で従えるのは一番分かりやすいか……?

エデレは強力な“戦力”になる。扱えるならそれに越した事はない。

 

「でも、それならぼくも――」

 

―― めっ わたしたちに まかせて もどってて ――

 

「――てぇ、ちょっ……グノスター!?」

 

ふわりと足が地を離れ、そのまま無の荒野から離れていく。

いや、確かに“夜の王”に生死は無いかもしれないけど危な――!

 

―― 大丈夫 お母さんに任せて ――

 

……!!

 

―― 行くぞフォルティス。“坊や”を喰らうなんて一兆万年早いって教えてやる……! ――

 

 

そうして。

重なり合う咆哮の中――ぼくは“内”から弾き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

――パチっと目を開けると、此方に手を伸ばすレディが見えた。

 

「………」

「………」

「……なにして――」

「――何でもないわこのスケコマシ!」

「てぇ!何故……!?」

 

叩かれた。

ひどくない……?ただ起きただけなのに……?

――ふんっ!と顔を背けるレディに隠者は微笑ましそうに笑っている。

 

「せっかく勇気出したのにね」

「……まったくよ、ほんとタイミングの悪さだけは一流なんだから……」

「……??」

 

なに?何があったの?

 

「気にしなくていいわ、坊や。それより、“用事”は終わった?」

「ん?ああ……うん。おそらく……?」

「……?ふふっ、なんで首を傾げるの?」

 

いや、現在進行系というか。

今も“内”で大怪獣決戦の音が響き渡ってるというか。いや、たぶんどっちも死にはしないと思うから信じるしかないというか。

――努めて、その破壊音から意識を反らしながら、ぼくは膝枕から起き上がる。

 

「それで、レディ。話ってなんだっけ?」

 

彼女は深い溜息を吐いてから口を開く。

 

「あなたが例のハルモニアに襲撃される前―――」

 

その時。

 

 

――()()()()()()

 

 

「………」

「………」

「ふふっ、ふふふっ……!」

 

「あなたわざとやってるんじゃないわよね!?」

「流石にこれはほんとに冤罪だよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“声無き声”に従い、円卓中央室に向かう。

ふくれっ面のレディに腕を小突かれながら着いた時には――もう皆揃っていた。

 

ふんっふんっと満足そうに両手を腰に当てて満足そうにしている復讐者と、その周りで疲れた表情をしている男衆が。

 

「……何かしてた?」

「――特訓だ」

 

復讐者が自信満々に答えてくる。

ひょこひょことやってきて、頭を突き出してきたので――取り敢えず撫でる。

 

「先の襲撃の後考えたんだ。私にも呪爪はあるが心もとない。どんな武器でも扱えるのには越した事はないだろう」

「おぉ……」

「学んだ技能は死んでも元には戻らんからな。少しでも、夫の為になりたくて」

 

そう言って見上げてくるマイスイートエンジェルを存分に撫でて上げながら――疲れ果てている男衆を見る。

……復讐者の筋力・技量は共にC。一見バランス良く高そうに見えるが汎用型と特化型溢れる“夜渡り”の中では、心もとないのはその通りだ。

改善されれば頼もしいが……。

 

追跡者を見ると……ふいっ、と視線を逸らされた。

 

「……勢いは良かった」

 

あっ……ふーん……。

 

ふふん(………。)皆、そう言ってくれた(こうなるとわかっていれば)このまま続ければ皆を超えるかもしれんな父様の狩りの誘いを受けてれば良かったですね……!」

「うん……期待してるね」

「ああ!」

 

嬉しそうに手の平にグリグリと頭を押し付けてくる復讐者を撫でる。……頼む、止めてくれ……!と男衆の無言の圧はきっと気のせいだろう。うん。

 

 

話が終わったタイミングを見計らったのかは分からないが。

また――()()()()()()

 

 

――追跡者。隠者。転生者。

 

 

「むっ……」

「あら、坊やと一緒」

「おおっ、連チャンだぁ……武器取ってくるね」

 

急いで“工房”から――()()()()()()()()()”を持ってくる。酔いに酔った末完成したモデルだが、たぶんちゃんと稼働するやろ。

 

「……本当に神々の武器を“加工”したんだな」

「えっ、うん。そだよ。期待していいぜぇ、ほら。良く見ると英雄武器くんもちょっと光ってるから気合十分!」

「死にかけの灯火にしか見えないぞ」

 

「ねぇ、あなた」

 

ネガティヴな追跡者にやれやれと溜息を吐いていると――レディに声を掛けられる。

その意味は、分かっていた。

 

「うん、()()()()()()()()()()()()()()。約束するよ」

「………」

「なにさ」

「……あなたが殊勝だとなんか不安ね」

「ひどいっ!」

「兄上、この人の首から上は絶対守ってね。記憶喪失で逃げれちゃいそうだから」

「ああ、分かった」

「分かんでほしいな!信用してくりゃれ!」

 

やいやい騒ぎながらぼくたちは、断崖へと足を進める。

何度か目だから流石に慣れてきた。“傑作”を抱える手にも震えがない。

 

「坊や」

「んー?」

 

ガチャンガチャンと“仕掛け”を確認していると、隠者に声を掛けられる。魔女帽から覗き見える微笑みは――優しげだった。

 

「やっぱり、“夜の王”は倒したい?」

「……倒さなきゃ、駄目じゃない……?」

 

えっ、なにどういう質問……?謎掛け……?

異端分子とか燻り出すやつ?

 

()()。じゃあまずは、それを終わらせてからね」

「……??」

 

なんだか良く分からない隠者はそのまま前に出る。その背は分かりやすいくらい機嫌が良さそうだった。

……なんかあったのかな?

 

 

 

――()()()()()()()()()()()()

 

 

疑問をいったん置いといて。

ぼくは先んじる二人を追いかけて――霊鷹の足に掴まる。

そうして空の向こうへと進んでいく。

 

“リムベルド”。

夜渡りの戦いの舞台へ。

 

 

………。

 

………。

 

なにか。

――気分が悪くなる、()()()()()()()()()()()()()()。鼻を撫でた。

 

 

 

 





―――


[上下二連弾倉式連発弩=堅楯式・聖()型]

転生者が使用している“傑作弩”。それに英雄武器を組み合わせた物。輝かしき神器は三分割され、これには刃部のみが使用されている。

刃部は長い鎖に繋がれ、幾つかの機械と共に弩下部に組み込まれており、“仕掛け”によって勢い良く射出され――敵に撃ち込む“銛”となって、その行動を大きく阻害する。
英雄武器の“力”はか細いながらも健在であり、撃ち込まれた銛は敵が動く度に癒えぬ出血を強い、決して獲物を逃す事はない。

なお、使用されていない分割された残りは、工房炉の火かき棒と制作中の謎めいた機械の添え木として無駄なく有効活用されている。



……あの……な?

くれてやったから否はないが……もう少し……その、なんだ……

畏敬とか敬意とか……くっ、くれてやったから否はないんだがな……!?



―――
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