“転生者” 作:ダフネキチ
神々の祝福輝く傀儡共の戦列、地平に並ぶその威容は凄まじく。
対する神無き人の軍勢をどうしようもなく弱々しく見せた。
だが、我らが王はさして気にした様子も無く、自らの軍勢から前に出ると、謎めいた機械を通じて奴らにこう呼びかける。
「きみたちに何言っても無駄だろう。けど、これだけは言っておく」
「そこから後一歩でも踏み込めば、心の底から後悔する事になる」
当然。奴らは嘲笑うようにその一歩を踏み込んだ。
その時だ。
王の後方から無数の轟音が響き渡り、奴らの頭上へと夥しい数のナニカが迫る。
……“婦人”の好みではないらしいが、私にとっては実に“公平”なるお気に入り。
言うなれば。
――地獄の業火そのもの。
霊鷹に掴まって進む中――徐々に強くなる、
雲を抜け、開かれた視界に現れた“リムベルド”が……その答えを教えてくれた。
「……は?」
各地で上がる黒煙。微かに聞こえる爆発音。
何処かの木々が折れ、遺跡の残骸が吹き飛び、ロケーションの殆どが半壊し――風が運ぶ、
そこは見慣れた戦いの舞台ではなかった。
表すならば……そう。
――
「……“地変”か」
ぼくの少し前にいる“追跡者”がそう零す。
地変はリムベルド全体に影響を及ぼすフィールドギミック。大ダンジョンを追加するぐらいの味変程度のもので、ごくたまに起こる分には素敵なものなのだが。
――
ぼくたちは視線を交わし、頷き合う。
言葉は無かったけどそれだけで十分意図は分かった。
まずは小拠点を潰し、周囲の警戒だ。
(……行くぞぅ!)
霊鷹はリムベルド中央付近、北の幾つかの断崖の下へとぼくたちを下ろした。そしてそのまま目の前の小拠点、哀れなる“貴人”たちを強襲。
……しようとしたけど。
「………終わってる」
そこにあったのは、死体の山。
四肢が千切れた血塗れの肉塊、染みだけが残ったナニカの痕。
――
そして、拠点中央にたなびく“戦旗”。
異様に次ぐ異様。
有り得ない光景に、ぼくは呆然とそれらを見つめるしかなかった。
その“跡”へと導く設計が……頭を過る。
「………」
ふと、“隠者”がハリネズミの側に近づいてしゃがみこむ。
そして少し観察したかと思えば、その一本を引き抜き戻ってきた。
「坊や、これ」
差し出された“それ”――そのボルトに、
ぼくは黙って、傑作からマガジンを引き抜き、その中を見せる。
「細部は違うようだけれど……同じね」
「だねぇ……」
「じゃあ……なんだ。まさか――」
ぼくは追跡者の問いに答えるように、“戦旗”を見上げた。
二人もそれに続く。
大きな歯車と、その中に在る――
「二人とも……」
「なんだ」「なあに?」
「――先に謝っておいていい?」
「許さん」
「許してぇ!?ごめん!ほっんとうにごめん!“ぼく”が変な事したばっかりに!」
「大丈夫、私は許すわ。坊や」
「おっ、おかあ――」
「貴方が変な事するのはいつもの事だもの」
「諦めの境地だけじゃんかそれ!」
――
不意に、近くから連続した破裂音が聞こえてくる。
ぼくらは瞬時に辺りを見渡すけど――そこには何もない。
けれど、“加護”で強化された耳は確かにナニカが進む風切り音を拾っていた。
その刹那、追跡者が弾かれるように顔を上げる。
「――上だ!」
その言葉に従うと――
ぼくの“
その正体を。
(
瞬間、ぼくらの頭上で一斉に炸裂すると――
発射数、炸裂位置……計算され尽くした攻撃は、ぼくらが逃げようとしても――必ず、何処かに当たる一撃だった。
そして、
少しでも当たれば、致命的なダメージになる。
(追跡者に……駄目だ彼に当たる。それに煙を吹き飛ばすほどの推力はパイルバンカーにはない……!)
こうなったらせめて、と隠者を抱き抱えるようにして、ぼくの身体で覆い隠す。肌が露出してる隠者にはマズイなんて騒ぎじゃない!
「ぼっ、坊や……!?」
「追跡者!クローショットで逃げて!あの煙には絶対――!」
その時。
―― ぼうや
声が、聞こえた。
「――
瞬間、ぼくの身体から“夜”が溢れ出し、それをすぐに捻れ狂った巨体を象った。
『■■■■■―――ッッッ!!!!?!!?!?!』
ぼくの言葉に従うように、エデレは咆哮と共に翼を振るう。
竜の膂力によって目に見えるほど荒れ狂う暴風となり、白煙はそれに呑み込まれるように吹き飛び――周囲に乱雑に散らされていく。
二人に当たるようなものは見当たらない。
ぼくは深い溜息を吐いた。
「……エデレ、ありが――と!?」
エデレにお礼を言おうとその巨体を見上げると、その口が此方へと向かっ――
―― めっ! ――
――てくるのを、ぼくの“内”から飛び出してきたグノスターの頭突きに止められる。
そのタイミングでその巨体はグノスターと一緒に“夜”に解けていく。
―― あの脳足りんめ!坊やには攻撃するなって何回言ったら分かるの!?フォルティス!もっかいシメに行くぞ! ――
“内”でやいのやいの騒いでるグノスターたちに感謝するように胸を撫でる。やっぱりエデレは御するのは出来ないのかもしれないね。
それにしても……危なかった。
いやまじで。
「……あの“爵”を服従出来てる事とか色々聞きたいが……」
追跡者は辺りを見渡しながら、こっちに近づいてくる。
散り散りになった“白煙”が、辺りに引火し――
「“アレ”はなんだ」
「……白燐だよ」
「はくりん?」
聞いた事のない単語だったのだろう。
追跡者らしくない素っ頓狂な発音に少しだけおかしかった。
「簡単に言えば――“
「……なんだそれは」
「一番いやーな所はね、
「………」
何も言えなくなった追跡者にぼくは顔を顰める事しか出来ない。
……なんつーもん使わせてんだ“ぼく”は。
「隠者、大丈夫?カスったりしてない……?」
「ええ……ありがとう、坊や。守ろうとしてくれたのね。優しい子」
「……優しいもんか。コレが――」
「いいえ。優しい子よ。坊やは優しい子。だからそんなに顔を顰めちゃダメ」
隠者に優しく眉間を揉まれる。
……少しだけ気が楽になったような感覚を覚えながら――ぼくは、やってきた
「やぁ……久しぶりって言えばいいのかな?」
見覚えはないけれど。
――
恐らく小隊規模だろう、十人ほどがほどよくバラけて、ぼくらの前に現れた。
厚手の戦闘服に急所だけを覆った
ぼくの“傑作”に似たクロスボウを全員が携えている。
全体的に黒の艶消し加工が施されてるせいか、ガスマスクの赤いガラスが異様に目立っていた。
……そんな、色々チグハグで――けれど、それこそが証とばかりに彼らは目の前に立っている。
微かに、身体の先が揺らめいていた。
「
「ああ。……お前の昔の“戦士”ってとこか?」
「じゃないと嬉しいねぇ……過去にヴィサリ老大好き人間がもう一人いたと思いたい……」
「誰だソイツ」
ぼくらが彼らに視線を外さないまま、コソコソと話していると――
その中の三人が此方に近づいてくる。クロスボウを背に収めながら。
「……。ゆっ、友好的―――」
三人は、腰に収められた剣を抜く。
それは形ばかりが直剣に似て、ゴテゴテした機械が柄と鍔に取り付けられており――
「――じゃあ、無いかぁ……うん。知ってた。人望とか無さそうだもん“ぼく”」
「……むしろ、それしかないだろうお前」
「褒めてるそれ?」
彼らは、柄の底に取り付けられているハンドルに手を掛け、勢い良くそれを引っ張ると、柄の中に内臓されているエンジンが作動する。
――ヴィッ、ヴィィィィィィィンンンッッ!!!
そうして凄まじい轟音と共に、刃が回転を始める。
――“
……何度か
……ちぇ、チェーンソーブレード!?
中学生男子の誰もが通りそうな道を現実にしてる……!
「……話は通用しなさそうだな」
追跡者が、ぼくらの一歩前に出る。
大剣を肩に乗せて、構える姿は轟音に臆しておらず、淀みない。
「あの“剣”について何かあるか?」
「……“設計図”通りなら、アレは金属に当てる事は想定してない。手足の腱とか、首とか顔狙ってくると思う。当たったら終わり」
「じゃあ、
「言うねぇ……他の連中は僕たちに任せて。隠者、援護お願い」
「ええ、坊や。好きにやりなさい」
ぼくは
そのタイミングで――
チェーンソーの轟音に紛れるように、
それが始めの合図だった。
追跡者は剣持ち三人を引きつけるように鋭く彼らに接近する。それを牽制をするように後方の兵士たちが、クロスボウを構える。
“設計図”通りなら、アレらはぼくが使っている“傑作”の廉価版と言っていい。
生産性の為に、諸々を犠牲にしている。
けれど――ボルトを高速で連射できるのはぼくのと同じ。
それだけで脅威なのは変わりない。
「させるかってんだ……!」
ぼくはクロスボウ持ちの兵士たちに、“鱗粉ボルト”を撒き散らす。
霊体のようだから毒にはならないだろうが――宇宙色の鱗粉が、彼らの視界を覆い尽くした。
ぼくと隠者は、鱗粉から逃れる為に後退するクロスボウ持ちを追うように“疾走”する。
――後ろから、擲弾が地面に着弾した振動を感じながら。
「普通の爆発?……例の白燐は使わないのね」
「アレは遠くから一発かます用みたいな感じだと思うっ!それでも他の擲弾にも気をつけて!ぼくの脳内にある通りの奴なら、結構な間隔で連発してくるから!」
しかも、その擲弾兵の姿がパッと見何処にもない。
……きっと高台か何処かにいるんだろうが――目の前の奴らに対処しないと……!
ぼくはマガジンを普通のボルトに切り替えて、斉射し続ける。
それに援護するように、隠者の輝石の魔術によって放たれた弾が、追跡者を狙おうとする奴を阻害した。
それでぼくらから排除する事にしたのだろう。
クロスボウ持ちは一斉に、ぼくに向けて――引き金を引く。
「隠者!ぼくの後ろに!」
“仕掛け”を動かし、楯を展開して防ぐ。
ちゃちなボルトの雨など、フォルティスの殻は余裕で弾く。お返しとばかりにそのまま、ぼくもボルトを放ち――何人かを、倒す。
「――坊や!
「……!左の岩場まで走るよ!」
隠者の警告に従って、“仕掛け”を外して――目に入った岩まで一緒に疾走する。
放たれ続けるボルトの雨に重なるように、さっきまで居た位置に擲弾が炸裂した。
岩の陰に到達し、ボルトで牽制する。
そこから間もなく、視界の端に黒い物体が掠める。
「次はあっちの岩に行くよ!ああもう!擲弾がウっザいな!」
「あの剣が煩くて音が聞こえないのが厄介ね……」
たぶん、接近戦を仕掛けてきたのはそれも理由の一つだろう。近くでチェーンソーを吹かして、発射音を誤魔化す。
擲弾兵は、あっちの火力の要だ。位置がバレる訳にはいかないんだろう。
クロスボウの斉射に、擲弾の爆撃。
「……!」
“疾走”と同時に、さっきまでの位置に着弾。
滑り込むようにまた違う岩に隠れる。
……このままだとジリ貧だ。削り落とされる。
「坊や」
ふと、隠者に声を掛けられた。
「その、てき弾?っていうのを使ってくる敵は近くにいる?」
「……うん。たぶん……ああいや、絶対近くにいる!」
「なら――
彼女は両手をふんわりと重ねると――
それは“隠者”の
――“血魂の唄”。
彼女を中心とした広範囲の敵に、“
「……!そっか!それなら!」
唄が歌い終わったのと同時に、血の紋様が茨のように辺りに広がり、敵に烙印によって赤色の光が淡く灯った。
追跡者が対する剣持ち三人。ぼくたちが対するクロスボウ持ちが七人――
「……!」
目視してすぐ――ぼくは草むらに向けて、一斉射。
急な攻撃を予期出来なかったのだろう。微かな着弾音と共に、淡く灯っていた烙印が消える。
……倒したようだ。
「次!……っと?」
今度は高台へと“傑作”を構えるが――そこに、さっきまでの烙印の光がない。
「高台にいたのは、さっき奥の方に走ってったわ。追う?」
「いや――それなら今はいいや。……目の前の連中を片付ける!」
だって、彼らが使っている武器の“設計図”を知っているのだから。
弱点なんて分かりきっている。
「よっ……!」
ぼくは、少し狙いを定めながら、ボルトを放つ。
――彼らのクロスボウ、
カシャン、と小さな音と共に彼らの武器からマガジンが落下した。
“設計図”には、“
バネとかの成形がちゃんと出来てなくてその辺緩いんだよねぇ。まあ、こんな風に狙い撃ちされるなんて想定してないからそれで十分なのだろうけど。
ぼくと隠者は視線を交わしつつ――慌ててマガジンを装填しようとする兵士たちを攻撃する。
一瞬で瓦解した兵士たちは大した反撃も出来ずに、全員倒れ……
手が空いたので、追跡者を援護しようと彼の方を向いたら――もう終わり掛けていた。
「ふっ……!」
チェーンソーの轟音を掻い潜りながら、追跡者は大剣を振るう。
受けず、全て回避する動きに焦りはなく――敵は、もう一人しか立っていない。
(そうか。
追跡者は所々に鎧を付けているから、余計に相手の狙いが分かりやすいんだろう。
それに――剣持ち兵士の“剣士としての技能”が特段高い訳でもなさそうだし。……まあ、一発当たれば勝てるチート武器みたいなもんだし、技能が育たんわな。
そうして、危なげなく。最後の一人を斬り伏せた。
その兵士が霞に消えていくのを油断無く見据えた追跡者は息を一つ吐いて、此方を向く。
「……そっちも終わったか」
「うん、何とかね。結構余裕あった?」
「いや。正直、気を張る戦いだった。あまり――」
――ガシャンッ!とぼくらの近くに何かが落ちる音がした。
振り向くと、二人の兵士がボロボロの状態で倒れている。近くにある筒のような武器を見れば……恐らく、さっき逃げた擲弾兵だろう。
「……今度はなにぃ?」
見たくもないが、諦めて高台を見上げると――
普通の人間の二倍、三倍の体躯。黄色みがかった鎧。杭のような巨大な剣。
そして――その下半身は、屈強な馬の身体をしていた。
「……“
……あー、はいはい。そっすか。そんな感じですか。おけまるでーす。もう驚かんわ。
神々の支配を拒否した“人の王”が戦うには相応しいんじゃないっすかね。うん。もーしらん!
「……来るぞ!」
蹄鉄の音を響かせて、人馬の戦士は高台から飛び降りると――猛然とぼくたちへと駆け出した。
ふんっ!このまま迎え撃つなどトーシロのやる事だ!
先手必勝!すぐに終わらせる!
行くぞ!――英雄武器くん!
「追跡者!――
ぼくは傑作を構えて、“仕掛け”を作動させる。
すると微かな爆発音と共に、英雄武器くんの槍が射出され――人馬の戦士の胸元に突き刺さった。
槍の後ろからは鎖が伸び、ぼくの武器へと繋がっている。
鎧を貫通するほどの衝撃なのにも関わらず、人馬の戦士の足は止まらない。
まあ、それなら――無理にでも止めさせるまで!
「よいっしょっとぉ!」
ぼくはわざと鎖を伸ばし、
瞬間。突進によってだれた鎖がピンッ!と張り、その巨体の動きを止める。グチュリと突き刺さった槍が、その傷を抉る。
その刹那、人馬の足元にワイヤーに繋がれた鉤爪が打ち付けられた。
「ッッ……!」
――クローショット。追跡者の
仕掛けによってそれが瞬時に巻き取られ、その勢いのまま――追跡者は人馬の足元に潜り込む。
そして、自らの左腕の機械を作動させた。
鈍い金属音と共に――それは炸裂する。
皆大好き追跡者の
血肉を撒き散らしながら大きく仰け反った人馬に向けて、ぼくは指に力を入れる。
「そしておまけ!――
パチンッと指を鳴らすと、ぼくから湧き上がった“夜”が人馬の頭上を覆い――大蠍の巨体が、そのまま人馬に叩き付けられる。
骨肉が砕け散る音を最後に、人馬は……
……コイツも霊体だったか。
……ん?ああ、ごめん。フォルティスくん。ありがとう、助かったよ。グノスターに宜しく。
首を傾げながら困惑と心配を伝えてくるのにそう返すと、“夜”に還した。
「……ふぅ」
一つ、息を吐く。
……流石もう何にもないよね?もういいよね?ちょっとやす――
――
ま……せ。
はぁぁぁぁぁ……!!
音へ振り向くと、ボロボロになっている兵が筒を構えている。どうやらまだ死んでいなかったらしい。
……“
脳天に一発入れると兵は霞になって消えていった。
「今度は何を撃ち上げたの?」
「さあな。……わかるか?」
「んー?んー……」
速度からして、殺傷用の擲弾じゃない。白煙の軌跡がないから白燐弾でもない。
アレは……。
すると、上空に炸裂し――
そしてそれはゆっくりと降下していく。
「あー……信号弾、かなぁ」
「信号弾?」
「味方に合図を送る為のものだよ。前もって幾つか“指示”を決めといて色で判別するんだ」
「「……」」
「……?どうかした?」
「「
「………」
………。………。
………“設計図”通りなら。
「――援軍要請、かな……?へへっ……」
――瞬間。
空に、
何個も。何個も。何個も。数えたくないほどに。
「「「………」」」
その意味は――了解。
「に、ににに逃げるよ……!」
「逃げるって何処に!?四方八方から撃ち上がってるぞ!」
「それでもここにいてはマズイのは確か!とにかく走りましょう!」
「賛成!明日に、向かっ……てぇ?」
地面に何かが転がっているのに気がついた。
クロスボウ持ちの兵士を倒した辺りと、さっきまで人馬がいた場所。
そこに、うねりを丸く形作ったような物体が一つずつ。黒白色と黄黒色。
その色は見た事無かったが、
“
「……“
「おい!何をしてる早く行くぞ!?」
「坊や!良い子だから!」
「えっ、あっ!うん!今行く!」
ぼくは反射的に、“
ああもう!
ほんとどうなってんだ今回のリムベルドは!?
地変:“古戦場”
“夜の王”によって蝕まれ、歪んだリムベルド。
“人の兵”と“人馬の戦士”の霊体が各地で戦闘を続けており、どちらかに加担するか、どちらも殲滅する事で様々な恩恵を得られる。
――聖戦は、戦争は。未だ終わらず。
――我らが将軍に。我らが王に。“勝利”を。
―――
[色褪せぬ“人の兵たち”の景色]
かつての戦士たちの記憶、その景色が“遺物”となったもの。
夜に呑まれ、蝕まれ――けれど、色褪せず在り続けている。
――“大防衛戦争”中期。
幾度の戦いを経た兵たちは、今日もまた前線に立つ。
そんな彼らの視線が向く先は、威光を纏う神々の軍勢ではなく――彼らの前に辛うじて立っている、酒に逃げ過ぎて二日酔いの王の背だった。
なんと情けなく、底の見えかけた麦袋のように頼りないのだろう。
けれど、彼らの想いは死してなお――変わらず、色褪せなかった。
人の王。我らの自由と安寧を願った偉大なる救世主。
我らが尊び、我らが崇め、我が奉じる。
我らの―――神。
―――
―――
[色濃い“人馬の副官”の景色]
かつての戦士の記憶、その景色が“遺物”となったもの。
夜に呑まれ、蝕まれ――けれど、色濃く在り続けている。
――“聖戦”末期。
連合軍はすでに崩壊し、最早“信仰”では戦線を維持出来なくなりつつあった。
このままでは戦士たちを犬死させるばかり。
しかし、神々の敵対者に屈するという事は信仰と先人たちへの裏切りである。
だがしかし、このままでは――。
副官は苦悩し続け……明くる日、拠点の中で全身ローブの不審な人馬を発見する。
ていうか、人の王とその最側近たる騎士だった。
……なにしてんだこの阿呆共と困惑してつつ剣を向けると、人の王はこともなげにこう告げた。
「フルゴール将軍と話したい。これからの、未来について」
“その時”の事を、副官は死してなお色濃く覚えている。
―――
“転生者”が手に取ったのは…………
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[色褪せぬ“人の兵たち”の景色]
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[色濃い“人馬の副官”の景色]
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一つのみ、は“公平”ではないな?
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羽虫はいいので わたくしと陛下のラヴ――