“転生者” 作:ダフネキチ
『そうだな……まずは国に戻って、教会の再建に後進の育成……あとはこれからの“和平”の為に、諸国へもっと―――』
静謐なまでの静まり返った闘技場……その再現。
フルゴールとかつての“ぼく”が目指した和平の証――“大戦祭り”。これはその会場だったのだろう。
周囲には、ちょっと前まで戦っていた“人馬の戦士”や“人の兵”……それ以外にも見慣れない霊体が観客席に現れ始めている。
フルゴールの呼びかけに集まってきた。そういうことだ。
……たぶん、もう千年くらい経ってても不思議じゃないほど過去な事。それなのに霊体たちの集まりは増えていく。
それほどに。
それほどまでに。
きっと皆が惜しんで、望んでいて……くれたって事なのだろうか。
かつての“ぼく”。人の―――
「きゃあああ!陛下ぁあああ!!こっち見てくださぁぁい!!」
……なんだこのぼくにしてめっちゃセンチな気分を吹き飛ばす、典型的なミーハーな声は。
観客席、そのある一画――なんか霊体にすら迷惑そうに距離を開けられてぽっかりとした所に、絶世の美人がいた。えっ、なにそのうちわ。こわっ。
………誰?
あっ、そういえば前にぼくがラダゴンに殺される前に止めようとして“人の王”の地雷を踏み抜いたすっげぇ美人だったけど挙動が変質者だった人いたな……――んで誰!?
えっ、どなたです!?ここに来て新キャラ出されても転生者くんわかんない……!
青髪美人で古めかしいギリシャローブの、“結婚した”“認知して”うちわを両手に持ったマナー皆無ミーハー女子……?――知るか、ただの変質者だろこれ!
困惑していると……彼女の近くで、ご近所トラブルの前にして「やぁねぇ……」みたいに集まっているリブラと追跡者たちを見つけた。なんか仲良いねきみたち!
ぼくの視線に気づいたのか。リブラは黒ローブのまま、顔をしゃくるように――彼女へ向ける。
……いや、どうにかしろってことだろうけど、どうにかしてるのをどうにかすることなんて出来るかぁ?
………。
……――チュ。
「きゃあああああ!!!……――はぅ」
よし仕留めた。ターゲットダウン。ぼくの投げキッスは一撃必殺。
……ほんとなんなんだあの人。誰?
「………」
「あっ、ごめん。フルゴール。もう終わっ――
跨っていた“レアメタル化グラちゃんMkIII”……あんまりにもあんまりな激ダサネームの機械獣を起動させる。
やけにゴテゴテしているが、輝石動力の謎めいたパワーなのかやけに滑らかで生物的な動きで立ち上がる。
いっそ唸り声すら聞こえるほど精巧なその身体から、無数の魔術の糸が伸びてきて――
これが“手綱”だ。
ぼくはMkIIIの上に立ち上がる。びっくりするほど安定していた。
“設計図”から流れ込んでくる操作方法と……やけにホーラ・ルーへの私怨が篭もった注釈まみれに苦笑しつつ――フルゴールを見た。
「卑怯とは言うまいね?」
「無論。これは決闘なれど――全力だ。卑怯だなんだは惰弱である」
「そうかい!」
“手綱”を引っ張ると、MkIIIは前足を上げて咆哮する。
三ツ首の口元から青色の魔術炎が漏れる姿は――マジで“獣”そのもの。ディティールすげぇなおい。
フルゴールは、剣を構える。
泰然としたその姿はぼくの知っているフルゴールではない。
“夜の王”ではない――“人馬の将軍”である、彼の姿。
「……行くよ」
「来い……!」
――咆哮のままに、MkIIIはフルゴールへ突進する。謎めいた鉄で出来た牙が人馬の巨躯を噛みちぎらんと魔術炎を撒き散らしながら。
しかし彼は――剣で、三ツ首の牙を受け止めた。
ギリギリと火花が散り、牙は剣すら折ろうと噛み続け、強靭な六つ足は巨躯すら地面へ引きずらせる。
「ぬぅ……!」
「騎士道精神はありがたいけど――観客気にしすぎると速攻終わらせるよ!お生憎、きみとの麗しい記憶は覚えてないんでね!」
「そのつもりはない!この程度、ハンデにもなりはしない!」
フルゴールの足が強く踏みしめられ――MkIIIの足が止まってしまう。
そして彼の腕の筋肉がより力が込められると……剣ごと、MkIIIが、
「はぁ!?」
「ぬぅ……ぉおおおお!!」
そうしてそのまま、ぼくはMkIIIごと上空へ振り上げられる。くっそ!馬鹿力めっ!よくわかんない鋼鉄の塊なんだぞこれ!
宙の中。安定させようと“手綱”を握りしめた、
フルゴールは剣を構え、光を番え。
――そして。光の矢がぼくへと鋭く撃ち放たれた。
回避不能。狙いすました一撃。
神々と決別してなお、その威力は受けずともわかる。MkIIIでも当たれば致命的だろう。
「坊や……!!」
小さく、かすかに。
けれど不安に満ちた隠者の声が聞こえる。
それにぼくは――ウィンクした。
「“人の王”さまを舐めんなよ!ってね!」
“手綱”を強く引き上げると――MkIIIの身体が独りでに分解を始め、現れたその隙間を矢が通り去る。
そうして“手綱”から伸びる無数の糸が、宙空でMkIIIを再構成し始めた。
“三ツ首の獣”から――“分かたれた三匹の獣”として。
「ッ……!?」
「行くぞ!グラディウスとグラディウス!そしてグラディウス!――ジェットストリームアタックだ!」
一匹に乗りながら“手綱”を引く。
体勢を整えた“獣”の一匹が先行して、フルゴールへと襲いかかり――回避したのを見たもう一匹がその隙に剣へ食らいつき、力任せに強引に引っ張ると、がら空きになった胴に二匹の獣が食らいつこうと突進する。
フルゴールは瞬時に振り上げた前足で一匹を踏みつけるが――残り一匹の“獣”の牙は、左腕で受け止めた。
ぎちりぎちり、と牙がムキムキの腕を噛み締める。
「ちぃぃ……!貴様……!」
「そういえばさ!ホーラ・ルーへの恨み節塗れだったんだけどこれ!なんか知ってる!?」
「あの競技の趣旨を欠片も理解していない痴呆に似た脳筋の御老体がどうした!?」
「絶対言い過ぎだろ!一応ゴッドフレイ王だぞあの人!?」
“手綱”を操作する――三匹の口内から魔術炎が湧き上がる。後少しすれば……0距離放射だ。
「―――ぬぅん!」
それもフルゴールはわかっていたのだろう。
巨躯に任せた力任せで――一気に三匹を引き離した。撒き散らした魔術炎は、フルゴールの鎧を焼いた程度で辺りに飛び散る。
三匹はまるで生きているかのようにすぐさま体勢を立て直し、威嚇のように牙を噛み鳴らす。
(ふふん!どうよ!)
良い感じにカッコつけられたと隠者たちの方を向けば―――なんか顔を青ざめて視線を反らしていた。
……?なん――あっ、そうだ。夜渡りのみんな、“獣”が軽くトラウマなんやっけ。メンゴ。
「次はこっちから征くぞ!」
フルゴールは剣の中央を握りしめ、天に掲げる――剣先、柄先。双方から光り輝く光刃が伸びる。
神々の力の結晶。“ゲーム”でもフルゴール唯一の事故要素。両刃剣モードだ。
……まずい。ぼくアレ――お願いローリングのボタン連打で脳死回避してたからよくわかんない!
光の軌跡を奔りながら、巨躯に似合わぬ流麗さで――光刃は軽やかに振るわれる。
「っと!ほぉ!」
“手綱”を操作し、三匹に受け止めさせるが……少し損耗が酷い。
クイッ、と小指を動かし――一匹を裏に回り込ませた。
「ああ!グラディウス!くそ!グラディウスとグラディウス!グラディウスを援護するぞ!グラディウスとグラディウスとグラディウスは元に―――」
「うるさいぞ貴様!」
横薙ぎで振られる光刃。
その下を潜り抜け、倒れた一匹の下へ――“手綱”を操作し、元の“三ツ首”に戻し突貫させる。
がちゃがちゃと変形しながら、3つの牙が光刃放つ剣へとかぶりつく。
フルゴールはそれを受け止めるしかない。
「力任せのお返しだ!」
そうしてそのまま剣を奪い取るように――宙へ放り捨てた。手元から離れ、光刃は消えていく。
“手綱”を引き、思いっきり体当たりをかまさせた。
「ぐっ……!」
フルゴールは少し怯むが――すぐに、手元に剣が呼び戻され。
光の矢を連続で放ってくる。ひらりひらりと躱せたが、距離を取られてしまった。
………。
(このままじゃあ千日手ってやつ……?)
ぼくはある程度フルゴールの動きを知っている。そしてフルゴールも――ぼくの動きもMkIIIの動きもわかっているのだろう。
“大戦祭り”が何回開催されたか知らないけど相手はこの決闘に慣れている。このまま戦っても何も覚えていないぼくが、ジリ貧だ。
……一気に決めるか。
………それに。
「……はわわ」
「………(頭を抱えている)」
トラウマ発症している二人が居た堪れなくなってきたから。
えっ、そんなに“獣”嫌いなの……?分裂してからすっごいぞあの二人。追跡者ですら震えてるとかよっぽどだぞ、どんだけ強かったんだアイツ……そりゃあ“常夜の王”は一二を争う最強だけどさ。
ともかく――行くぞ!速攻だ!
「行くぞグラディウス!でんこうせっかもどき!」
“手綱”を操作して、三匹に分かち――三方向から襲わせる。
剣を噛むように、足を噛むように。鈍られせ、注意を反らし――本命の一匹が魔術炎を撒き散らし、喉を食い破る機会を探る。
――
「無駄な事を!」
不意打ちで無ければ、フルゴールには勿論通じない。
剣を噛もうとした一匹は逆に剣で吹き飛ばされ――足を噛もうとした一匹も振り上げられた足に潰される。魔術炎など、フルゴールにはドライヤーの大を直に当たられてるのと同じくらい大したことないだろう。……いや、普通にやけどするかそれは。
「――ぬぅん!」
フルゴールは光の矢を放ってくる。狙いはぼくが乗っている残りの一匹。
難なく避けれる……
「あっぐっ……!」
瞬時に三匹を近くに呼び戻すように“手綱”を引くが――その隙を逃すフルゴールじゃない。
巨躯に見合わぬ鋭さで、一気にぼくへと剣が振り下ろされた。
まごうこと無きトドメだ。最後の一撃だ。
不意に兜に隠れたフルゴールの瞳が、一瞬悲しそうに見えた。
――
「なっ……!」
「よく分かんないけど――借りてるよこの謎の武器!」
ぼくは“胸”の内に消えた、儀礼剣を引っ張り出し――両手で剣の一撃を防ぐぐぐぐ………!
「ああくそ骨が折れそう……!いっ、この馬鹿力め!馬だけにって――かっ!」
火花を散らしながら、ぼくは何とか剣を横に流す。
当たってたら確実に肉せんべい確定だっただろう。一撃は地面に減り込んだ。
「っまさか貴様……!」
「もう遅いよ!」
もう一匹が左腕を噛み引っ張り、最後の一匹が兜を噛み上げ――後ろへと引っ張る。
喉元が、
ぼくは無我夢中で剣から獣、腕へと駆け上がり――剣を構える。流派も何の知らん素人でも、こんぐらいは出来るっての!
「せい!」
――ぐにゅり、と首に剣が入り込む。あまりの生々しさに鳥肌が立ってくる。クロスボウでしかやってなかった弊害か、一瞬手放しそうになるのを気合で止める。
「……っ、こんのぉぉぉ!!」
目を瞑り、力むままに。
端から見ればダサダサのダサだろう――けれど、一気に、剣を振り抜いた。
勢いそのままにぼくは地面へと投げ出させる。
「ぐっ……!」
すぐにフルゴールを見ると――血が吹き出した。
そうして。
ずずんっ……と前足を突く。
……すぐにその首に“夜”が覆われていく。治しているのだろう。
けれど。フルゴールは動かない。
「………」
ぼくは“手綱”を操作して、獣たちを離すと――彼の前に立った。
「
「……。ああ――
――そこにファンファーレも何も無かった。
終われば呆気ない、あっという間に決闘だった。
けれど、観客席から一人、また一人と霊体が消えていく。
――終わったんだ。
元からどうしようもなく終わっていたものを、本当に終わらせた。
惜しんでも、望んでも。これで終わり。その区切りが、霊体を何処かへ還らせている。
まあ、天国とかに行ければいいね。
闘技場も、MkIIIも。
最初から無かったかのように塵となって消えていく。
ふと。
側で黄色い炎が沸き立つ。リブラの力だ。
――中から隠者が飛び出してきた。
「もう!坊や!」
そのままぎゅぅぅぅぅと首に抱きついてくる。
心配さ――ギブギブギブギブ!!!
腕をタップしているとやっと解放され、魔女帽に陰った半泣きの表情と目が合った。
「あんな風に隙を作って……!私、もうドキドキで……!」
「あー……うん。ごめんなさい」
「もう!……無事だったならいいけど……!」
そうしてまたぎゅぅぅぅぅとしてくるが――今度は腕を差し込んでいたので呼吸し――イタタタタタ!腕折れる腕折れる!
遅れて、追跡者も黄色い炎から現れた。
その手にはぼくの“傑作”が収められている。
――観客席は崩れ落ちていっている。
「リブラは?」
「“婦人”とやらを回収して帰っていったぞ。……なんか普通に挨拶してしまったぞ」
「……“婦人”?」
「お前が変な口づけをした奴」
「あー……えっ、誰“婦人”」
「知らん」
……ほんと誰あの人……!
そこで。
ぼくはまたタップして隠者から解放されると――彼の前へ歩み寄る。
闘技場は完全に消え。
辺りは、偽物の威光が降り注ぐ――無の荒野に戻っていた。
「……これで良かったの?」
「ああ。……疾うの昔に私達は敗北していたのだ。最初から。認められず、それに甘え――そうして、終わることもできなくなった。」
フルゴールは顔を上げる。
兜の下の顔は“夜”に汚れて見づらかったが――安らいだような顔をしていた。
「もう十分、責務は果たした。私の首を取れ“人の王”――いや、夜渡りよ。真なる王への礎にするといい」
そうして彼は頭を垂れた。
………。沈黙が流れた。
――追跡者が一歩前に出ようとする。
きっと、ぼくが躊躇っていると思って自分がやろうとしてくれたのだろう。けど――
「どうした?」
「ちょっとね。……フルゴール。
「………」
ぼくの問いにフルゴールは何も返さない。
だが――確かに聞いている。
「ぼくは“人の王”じゃない。だからきみとの記憶なんて何も知らないし、記憶の断片を見た程度できみのことをわかったつもりじゃない。でも――
「………」
「さっきのは“将軍”としての責務で、きみの望みじゃない。……“夜”に沈んででも成し遂げたかったというなら脱帽だけどさ」
「………」
「もう一度言うけど――きみの望みは?もう、隠す必要もないでしょ?」
………。場は静まり返り。
ふと――フルゴールは鎧の留め金に手を掛けた。
「えっ?」
ガシャンと鎧が地に落ち、傷だらけの上裸が露わになる。腕の飾りを外し、足甲を外し――全て荒野へ溶けていき。
兜を脱ぐと。顔の半分が“夜”に汚れた、精悍な男の顔が出てきた。
兜もまた、荒野へ溶けていく。
「やはり、お前は“人の王”だ。誰がなんと言おうとも――
そう言うと――剣を左腕に当て。
「……――ッッ!!」
一気に、切り落とした。
“夜”色に染まった血が溢れ、肉が千切れ――偽りの威光が消え去った。
何もない。無の荒野。“夜の王”の領域だけが残った。
奇しくもそれは。
――ぼくの知っている、“夜光の騎士”に似ていた。
「………」
フルゴールは立ち上がる。
何も語らない――だが、その目には何か意志が宿っていた。
「二人とも」
ぼくは、二人に振り向いて。肩を竦めた。
「もう少しだけ付き合って」
「ええ、坊やの為なら喜んで」
「……お前はなんというかアレだな」
「どれよ?」
「アレだ。……表現しづらい」
――
――結末は、言う必要はない。
『ああいったい!いったいなぁ!きみが思いっきり剣の腹で打ちやがったから呼吸する度に痛い!これ肋骨折れてるわぁ!ちゃんと手加減したのになぁ!ぼくはぁ!』
『……お前は私の左腕が見えんのか?折れてるんだが?お前の謎の機械獣に思いっきり噛まれたんだが?』
『うっさいうっさい!……いてて』
『ていうか、何だあの怪物は。決闘だろう?尋常な一対一だろう、普通』
『人馬相手に一対一とかアホか、普通に潰されて終わるわ。決闘だからこそ全力なの!卑怯だなんだは惰弱ですー』
『……否定は出来んが。それならお前の所の“王の腕”はなんなんだアレは』
『あのチート野郎は別格だわ。種族・“王の腕”なんだよアイツ。人間じゃない絶対』
『……お二人方。仲が宜しいようで何よりデス‥…何かお持ちしましょうか?』
『『酒』』
『はいハイ』
『………』『………』
『……なんだかんだ、上手く行ったね“大戦祭り”』
『ああ。……だが、思いの外“神々”がお喜びだ。定期的に開いてほしいそうだが』
『あーん?……まあ、それでもいいか。お祭り会場だって確立すれば、神々も手ぇ出してこないだろ』
『我らの決闘はどうする?』
『続けよっか。一応の目的は“和平”だし、わかりやすいイベントは必要でしょ?……このままやって、ある時にどっちかが負けて民が大慌てすんのも面白くない?――えっ!マジで!?ちょっ、今更占有権とか困るんだけど!……みたいな』
『趣味悪いな……』
『そういう王様担いでるアイツらが悪いんでーす。へへへのへ』
『………』『………』
『ねぇ、フルゴール。全部終わったら――きみは何がしたい?』
『なに?』
『全部上手く行って。和平が為されて。“大戦祭り”がただのお祭りになった時』
『そうだな……まずは国に戻って、教会の再建に後進の育成……あとはこれからの“和平”の為に、諸国へもっと―――』
『――ああ、違う違う。
『は?』
『それは“将軍”の役目でしょ?――君自身、
『諦めてないのか……』
『うん。……まあ、実際問題無理なのはわかってるけどネ。グノスターとフォルティスの元に帰りたいな……森に帰りたい……』
『………』
『――っとと。ぼくはいいんだよぼくは。それでフルゴール。きみの望みは?』
『……そう、だな。私の望みは………』
『――秘密だ』
『おい、引っ張ってそれ!?』
『恥ずかしくなってきた』
『人馬の将軍が修学旅行のピロートークみたいなこと言ってる!』
『お二人方。お注ぎしましたよ。軽い軽食も宜しければ』
『おー!サンキュー!召使ぁい』
『むっ。おい、これまさか――お前の酒か?』
『え?……あー、そーか。飲めないんだっけー?副官から聞いたよー?ありゃりゃー、それは申し訳無かったねー。召使、他には?』
『ご主人サマがご用命した蒸留酒が幾つか残っていますが』
『じゃあそれで!』『――待て』
『あん?』『……この私がここまで来て飲めないと思っているか?酒ごときで屈すると……?』
『……変なスイッチ入った?』
『お前には散々煮え湯を飲まされた――これ以上何かを飲まされて堪るか!』
『ちょっと待てフルゴール!その言い草だと酒飲まない方向に』『――ぶほぉあ!』『話聞けよ!匂いでもう酔ってるの!?』
【“遺物”を入手しました】
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【戦士の覚え】
戦士、フルゴールが内包していた夜。その齧り取られた断片。
“転生者”の内に収まったそれは、古い望みに従い、存分にその力を貸すだろう。
後悔があった。怒りがあった。無念も憎悪も、あらゆる全ての負の念が。それが“夜”を引き寄せ、その身を沈めた。
けれど、神々と決別し――また、面と向き合った時。
全てが取り払われた時。
フルゴールには、たった一つの望みが残った。
言えなかった、言えるはずもなかった。その望みが。
『――お前を、心から友と呼びたかった』
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