“転生者” 作:ダフネキチ
――大きな揺らぎを、“夜渡り”たちは感じた。
音はなく、声もない。けれど間違いなく――絶命の悲鳴を。
「おっ、おお……?」
無頼漢の素っ頓狂な声が響く。
――潮が引いていっていた。水死体や残骸は、まるで最初から存在しなかったように姿が解け、揺らぐ水流も全てが幻だったように消えていく。
またたく間に、皆が立っている場が変わっていく。
全てを呑み込んでいた“深海”ではない。全てを喪ったように閑散とした見慣れた無の荒野。
“
追跡者は呆れ混じりに呟いた。
「……どうやら、片が付いたようだな」
「ええ。……まったく、“あの人”は」
こちらは“彼”のめちゃくちゃ具合に悩んでいるというのに――まためちゃくちゃなことをしたらしい。
レディの溜息は、その場にいる全員の総意だった。
鉄の目は弓の弦に添えられた指を離す。
「……まあ、なんであれ。夜の王――“マリス”は撃滅された。どういう風にしたかは知らんが、仕事が済んだのならばいいだろう」
「そうは言うがな、鉄の目の兄ちゃんよ。アイツの話がまた騒がしくなるぞ」
「構わん。アレの話は滑稽過ぎて逆に飽きん」
その言葉に、守護者は肩を竦めた。報告という面では“彼”の話は分かりづらい事この上ないが酒の肴として申し分ない。
戻った後が楽しみだ。
「それで、だ――」
「ええ」
少し流れた朗らかな空気の中。
復讐者と隠者は――遠い目をしていた。
「「どうやって戻る?」」
空気が、死んだ。
……いや、無の荒野は元から死んでいるようなものだが。
周囲を見渡しても何の取っ掛かりもない平野と揺らぐ地平しか見えず。空は暗い“夜”に汚染され尋常な色をしていない。
……“円卓”は、どこだろうか。
「……剣を突き立てて、倒れた方向に進むか?」
「そんな子どもじゃないんだから……」
レディはそう言いながらも、兄の言葉に頷きたかった。
まだ身体の“加護”は健在だ。どこから来ているかわからないが。
故に“円卓”も問題なく元に戻ったのだろう。どこにあるかはわからないが。
事態の把握の為に早急に戻る必要があった。どこに、あるか、わからないが!
「“夜の王”の撃滅の時は、霊鷹が迎えに来たが……この場合はどうなる?迎えが来るのか……?」
「いっそ一回死んでみるか?“円卓”に戻れるかもしれんぞ」
「今の状況はいつもとは違う。……それは最終手段だな」
やいのやいの意見を出すがどうしようもない。
レディは、復讐者と隠者に視線を向ける。
「なにかわかる?」
「……
「ええ。魔力の流れもないし……困ったわね……」
“夜渡り”たちは静まり返る。
ふと、その時――一歩、執行者が前に出た。
「おっ……?」
皆はその背を見る。
そうだ。彼は“黄金樹”が健在な時から存在している“坩堝の騎士”。時代の生き字引だ。なにか策があるかもしれない。
彼は――自らの妖刀を地面に刺した。
いったいどのような策があるのだろう。
皆の頭には、何かの不思議な力によって“黄金樹”の力が、円卓に導くとかそん――
パタン。
やがて、妖刀は斜め方向に倒れた。
執行者はそれを拾い、刀の砂を払うと――その方向へ歩き出す。
「……やはりそれしかないな」
追跡者は関心したようにその背に続く。
他の皆も――苦笑交じりに続いた。話している暇があるなら進む。その合理は……確かに、長い時を歩んだ“生き字引”らしい。
しばらく歩みゆく。
けれど景色は何一つ変わらない。いや、そもそも歩いていることすら曖昧だ。まるでただ足踏みでもしているかのような錯覚を覚える。
それほどまでに無機質で平坦で――全てが何もない。空虚だけが広がっていた。
「今何となく思ったんだが……“
ぼそりと無頼漢が口を開く。
それを拾ったのは追跡者だった。
「何なんだろう、とは?」
「この荒野だよ。いつも何の気なしに此処で夜の王とやり合ってたが……その意味を考えた事なかった。障害物が無くてだだっ広いやりやすい死闘の場ぁ、くらいにしかな」
「そうだな……今思えば、霊樹の大扉の先が何故こうなっているかを考えた事はなかった。撃滅だけが使命で、わからぬ事はわからぬまま利用していた。……霊樹に上がる時の、あの謎めいた樹液はいったいなんだ」
「知らん」
二人はそのまま、隠者に視線を向ける。
彼女は肩を竦めるだけだった。
「わかるのは――“此処”は、
「この何にもない荒野がなぁ……“アイツ”んとこにいる夜の王ににゃあ無縁そうだぞ」
「それは確かに」
“彼”に関係した夜の王たちはどれも感情的というか……
ふと、悩ましそうに指を口元に当てた復讐者が呟く。
「奴らの“頭”かもしれんぞ」
「……本当の意味での“夜の王”」
「ああ、夫も何か知っ――」
――
「……待て。何か」
――
――
何も感じない。何も気配がない。
しかしただ――無の荒野を以てなお、耳障りな音が背後から聞こえてくる。
……最初に振り向いたのは、いったい誰だったか。
追跡者かレディか、鉄の目か。
あるいは――全員だったか。
――皆、
幾度も死に、幾度も立ち向かい、“夜の王”に対して来た彼らが
武器を手に、抜くことも出来ず、ただ目の前の存在に身動き一つ取れなかった。
地平の先。
何もないはずの揺らぎから、何かが蜃気楼のように現れ――象られていく。
それは――長身の騎士、その“
身体に巻き付くのは黄金の文字が刻まれた封印。それを固定するように腕は身体を巻き、豪奢な短剣が突き立てられている。
無骨な大剣を、地に引きずりながら――進み行く。
何も感じない。何の気配もない。――“夜”の力すらも感じない。
ただの抜け殻。何故動いているのかもわからない、死すらも突き抜けた残骸。
そう見えるのに。そうだと確信できるのに。
――皆、
剣を荒野に引きずる音が響く。
一歩、また一歩。無限にも感じるほどの時間。“夜渡り”たちはそれを視界に映す事しか出来なかった。
――やがて。
それは目と鼻の先まで近づいてきていた。
何も感じない、何の気配もない。なのに――どうしようもない、怖気だけが周囲に伝播していく。
皆、呼吸すら忘れ……いや生きている事すら忘れているかもしれない。そう思えるほど思考が真っ白になっていく。
“
答えはわかっているはずなのに。
そう断ずるのを魂が拒絶していた。あまりにも存在としての何かが違いすぎていた。
混乱、困惑、錯乱。
ありとあらゆる思考が乱されていく中。
ふと気がつけば――剣を引きずる音は、
……通り過ぎ―――
瞬間。
――雨粒の感触で、“騎士”は目を覚ました。
「……っぅ……」
全てを隠す曇天の空。
降り続く冷徹な雨粒はゆっくりと意識を叩き続けている。
「俺、は……」
反芻するまで時間が掛かった。
……。そう。遠征の帰り道。
頼まれた土産を満載にしていた馬車の上で見た――“黄金の流星”。
何もかも放り捨て、馬を使い潰して、それでも走って見たのは。
瓦礫と死体と、そして――。
『遅かったな。……いや、予定通りか』
――黄金の英雄。
「……」
騎士は上体を起こした。
辺りは瓦礫と死体と死体と瓦礫と死体と瓦礫瓦礫死体死体瓦礫瓦礫瓦礫死瓦瓦礫瓦礫死体死体瓦礫瓦礫瓦礫死瓦瓦礫瓦礫死体死体瓦礫瓦礫瓦礫死瓦瓦礫瓦礫死体死体瓦礫瓦礫瓦礫死瓦―――
「うぷっ……!」
込み上げてくるモノに耐えきれず、騎士は身を丸めてえづく。騎士甲冑から漏れる汚物は――誰かも分からない丸焦げの死体の顔にかかった。
「ん……はぁ、はぁ……!」
震える身体で剣を手繰り寄せ、立ち上がる。
――黄金の色は何処にもない。“黄金の英雄”は騎士を殺さなかった。まるで蠅でも追い払うかのように剣を薙いだだけだ。
殺す価値など最初から無かったかのように。
「………何処だ」
騎士は一歩踏みしめた。
全てが瓦礫だ。黄金の流星は築き上げた全てを完全につぶしている。けれど、騎士にはどれが何処かなど一目瞭然だった。
――アイツが政務が嫌になるとよく逃げていた酒場。
酒が何かに引火したのか、轟々と燃えていた。誰しもが未来を語りあった笑い声を嘲笑うかのように。
――いつの間にか根付いていたヤロダス派の館。
瓦礫だけで、そこには死体も――都市を発展させていた輝石もない。……奴らは元は“黄金の地”出身だ。逃げたのだ。恥知らず共め。
――父が丹精込めて築き上げた王城。もはや、アイツの絡繰り城になっていた場所。
何もない。直撃地点だったのだろう。そこには父の欲望も、アイツの栄光も。何も。何もない。
「……何処だ。何処にいるんだ……■■」
雨は容赦なく騎士を濡らし続けていた。
それでも、足を止めることはなかった。瓦礫を押し退け、死体を震える手で触り――アイツで無かったことを安堵して。
またそれを繰り返す。
繰り返し、繰り返し、繰り返し。
「……ぁ」
そして、
着弾地点から離れた高台の上。
瓦礫もなく、焼き焦がれた死体もない。だから――
「ぁ……あぁ……」
間違いない。間違えようもない。
地に伏したその背を騎士は誰よりも近くで見ていたのだから。
今や――黄金の色を残した、心臓を貫かれたその跡もよく見える。
「ぁ、ぁぁ……ぁぁ……!」
剣を取り落とし、側に跪く。
触れられずともわかる。触れることなどできなかった。
――死んでいる。
“人の王”は。
只人たちの救世主は。
守るべき“彼”は――
「ぁぁぁああ……!あぁぁぁああ……!!!」
騎士は絶叫した。騎士は嗚咽した。
何度も何度も拳を手に叩きつけ、それでも涙に揺れる視界は何も変わらなかった。
豪奢な甲冑に身を包んだ長身の体躯は……雨に濡れそぼり、震える今は――どうしようもなく華奢に見えた。
「何故だ……!これからッ、これからだったのに……!!これからやっと戦争の無い栄光が……平和が待っていたというのに……!!」
握りしめ、叩きつける拳から――血が流れ、雨がそれを滲ませる。
それでも……止められなかった。溢れる激情を表すように。
「何も報いてやれなかった……!ただ俺の重荷だけを押し付けて……何もッ……!!」
滲む血はやがて地を流れ、人の王の死体に染みる。
それを眺め……また、泣き崩れた。
「俺は……私は……!!」
雨が振り続けている。
嗚咽が掻き消えぬほど小さく、しかしただ瓦礫を無情に濡らしていく雨が。
騎士は、空を見上げた。
何の光も見えない、曇天を。
「……ははは……」
そして、虚しさを零した。
自分を、世界を、あらゆる全てを嘲笑うように。
「所詮……私も父上の子か。■■を縛り付けるだけ縛り付け、その意思を利用しただけ……」
そうして、騎士は顔を下げる。
死体がある。全ての始まり――騎士が犯した“
それに、手を伸ばす。
「側にいる資格など……初めから無かったんだ……」
雨が振り続けている。
嗚咽が掻き消えぬほど小さく、しかしただ瓦礫を無情に濡らしていく雨が。
その時だった。
騎士の周囲に淡く何かが集まりだした。
騎士の悲しみ、騎士の嘆き――騎士の絶望が、呼び寄せたのだ。
――“夜”を
それは留まることも知らずに周囲に発生してゆく。
騎士はそれに反応しない。気づいていなかったのかもしれない。
しかし、“夜”が騎士の頬を撫でるように揺らいだ時――
その囁きが。
「………」
騎士は取り落とした剣を握りしめ、死体にも目をくれずに何処かへ歩みゆく。
その先には、おびただしいほどの“夜”が蠢いている。
そうしてそれらは騎士の身体へと纏わりついていき、呑み込み蝕み汚していった。
新たな“獲物”に歓喜するかのように――あるいは、新たな“主”を歓迎するかのように。
………
………?
……
……
………
それは、奇跡と呼ぶ他無かった。
揺らめく風に乗せられた葉が、燃え上がる炎の上を通りつつそれを帯びながら……遠くの蝋燭の上に乗って火を灯したような。
そんな馬鹿らしい、話。
あるいは――
「ん、んん?……な、にが……?」
“人の王”の死体に“夜”が纏わり付き、肉塊と化した肉体に未だこびり付いた魂を揺り起こしたのだ。
彼は固くなりつつあった身体を動かし――そして、“夜”に消えていく自らの騎士の背を見た。
「……
その困惑は、ありえない超常現象を見たから――
「……“夜”……」
そして人の王は、降り続ける“雨”を見上げた。
そうして――息を呑んだ。
見開いた目の焦点は何処にもなく震えるように彼方を見ている――あるいは、思い出している。
纏わりつく“夜”が魂を揺り起こしたのと同時に、
「
その意味を理解出来る者は誰もいないだろう。
けれど、“彼”にとっては――致命的なまでの意味を持っていた。
「ぁ、は……ははは……!なんで今思い出すんだよ……!さいっしょから本気出せやぼくのポンコツ脳がぁ……!」
人の王は震えながら立ち上がる。
思うように動かないその身体で騎士の背を追った。
「待って……」
呟く。
「待ってくれ、■■■■■■」
言う。
「待ってって言ってんで―――!」
叫ぼうとした所で、躓いた。
「……待って、待ってくれ……!」
人の王は這いずるように手を動かす。
雨に濡れた地面をもがくように、遠ざかっていく背に追い縋る。
「行くな……行くんじゃない……!君は“ナメレス”なんかじゃない!きみは、どうしようもない馬鹿だし融通効かないしオカンめいて鬱陶しいしグノスターとフォルティス叩きのめしたことは一生許すつもりはないけど……!それでも――ぼくの友達なんだ……!」
“夜”は、騎士の全てを呑み込む。
「やめろ……」
“夜”は、騎士の全てを蝕んでいく。
「やめてくれ……!」
“夜”は――新たな“主”を得た。
「■■■■■■を連れてかないでくれ……!!」
“夜”は晴れていく。人の王の伸ばした手の先には、もう何もない。あるのは死体と瓦礫の山。無常に振り続ける雨だけ。
「……っ、っっ……!」
人の王は伸ばした手を地面に叩きつける。
握りしめる手は地面を引っ掻いた。
「……まだ、
人の王は震える身体を起こそうとする。
その死に切り濁ったはずの目は爛々と輝いていた。
「“狭間の地”に、行かないと……!“夜渡り”に、まだ“円卓”は出来上がっていないはず……!マリカ、ラダゴン……ああ、あのクソアホに話さないといけないのか……マジぃ?民の大裏切り者じゃねぼくぅ……?」
そうして、人の王は立ち上がろうとするが――急激にその動きが鈍くなっていく。
“夜”が去ったことで、灯っていた最後の蝋燭が消えつつあるのだ。
「ぐっ……!」
起き上がる事も、這いずる事もできない。
地面を引っ掻く力も……無くなっていく
「あっ……くそ、駄目だ、駄目だ駄目だ、ぼくにはやらなきゃいけない事が……――誰か。神様……とか。助けて……!」
当然、その声は雨に掻き消された。
「くそ……“大戦祭り”の時に高い酒やったでしょうがあの呑兵衛どもがぁ……!」
末期の呼吸すら消えていく。灯っていた目の光を消えていく。
掠れた声は、それでも諦めていなかった。
「だ、れか……だれ、でもいい……ぼくは、まだ……やるべき、ことが……」
――
――
………
……
――
………
……
…
目の前に、果てない海岸線が広がっていた。
「………」
遠くで滞空する猛禽類、不規則に海に突き刺さるように在る石柱――人の営みなど感じ得ない大自然的光景。
それに美しさを見出す……より前に。感じるのは。
空の奥の、昏き闇。“
「……あー……あー」
ぼくは、手のひらに感じる砂浜の滑らかさを感じながら――頭を抱える。
見なくともわかる。ここは“円卓”の砂浜だ。戻ってきたのだ。
「……うわぁ……マジでナイトレインだくそぉ……!」
ぐるぐる回る視界と記憶の中。
ぼくはそう吐き捨てるしかない。いや、知ってたよ?いや、
――エルデンリング・ナイトレイン。
“狭間の地”が――突如として現れた“夜”に呑み込まれてしまい、その栄光も偉業も何もかもが彼方へ消え去り……“リムベルド”という新たな名となった世界。
そうしてやってくる“夜の王”と、それに抗する“夜渡り”達の――終わりが見えない戦いの物語。
そんな世界の過去を生きた、生きてしまったぼくの事。
……あー、もー……。
「つうかなんで“転生”なんて起こってるの?ラダゴンのクソアホめ、ちゃんとぼくの死体を“円卓”に運んだん――そういや、ストーム・ルーラーは!?アレ運んでねぇやんけ!」
あの完璧主義者の顔をした不器用愛妻家め……!
なにが「任せておけ。万事整えておく」だよ!?くっそ、本編の時点でエルデンリング破壊されてた事ちゃんと鑑みるべきだった……!
「てかミケラとマレニアはなにやらかしてくれちゃってんの!?げんこつですまさんぞあの馬鹿共!ぼくは皆と仲良くねって言ったの!誰が破砕戦争起こせつったよ!?」
ぼくは、顔を覆った。
そうしても波打ち際の漣や遠くの鳥の嘶き、這い寄るような“夜”の気配が、“ここ”が現実であると教えてくる。
「はぁぁぁ……まあ、でも――
ぼくが深い溜息を吐いていると、ふと。耳に砂浜を踏み鳴らす音が聞こえてきた。ぎしりぎしり、と響く音は機械のようにも聞こえる。
振り向くと、召使人形が慌てた風に近寄ってきていた。
「ああっ!転生者サマも戻られたのデスね!よかった、中々お戻りにならなかったので心配に……!」
「………」
「皆サマはもう戻られていマスよ。何でも夜の王をまた撃滅したとか、早速お食事を……」
「………」
「……あの?申し訳ありません、転生者サマ?」
ぼくは、“召使”を頭からつま先まで眺めた。
「……人形兵の耐用年数ってどうなってんの?一家に一人じゃなくて、一族に一人レベルじゃん」
「はい……?」
「いーや。なーんでも」
ぼくは砂浜に大の字に寝転んだ。
「………」
「………転生者サマ?」
「……かないぞ……」
「……?失礼、声が小さ――」
「――ぼくは!動かないぞ!」
「………」
「いやほんとどうしてこうなったで頭がいっぱいなの!ぼくなんかし――いや、なんかしたんだけどさ!?こうなるって思わないじゃん!?池に石投げたら波紋が云々どころの話じゃないの!石投げたらマントルからマグマ吹き出したみたいなそんなウルトラCかましちゃってんだけど!?」
「……失礼しますね」
「ええいやめろ離せぇ!くそぉ!あの腐れ悪魔と残念美人めぇ!マジで覚えてとけよ!全部終わったらうちの“森”ではちみつの刑にしてやるからなぁぁぁあ―――!!!」
「………」
「………」
「……。……ミケラ。感じますか?」
「ええ、マレニア。“兄様”の魂が戻ってきた。
「……全て、上手く行くのでしょうか」
「恐れる事はありません。何もかもが我らの手中。全ての大ルーンも、来る夜の王のルーンも。者皆全て、違わずに」
「………」
「“円卓”もそのように作り変えました。“夜渡り”……旧律の狗が何をどうしようとも結末は変わらない。兄様が、
「……そう、ですね」
「では――彼らに最後の“声”を届けるとしましょう。やっとです。長き夜が明け、拓けたこの地に新たな律が敷かれる」
「全てへ注ぐ優しき“祝福”を、“夜”に乗せて何処までも拡げていこう」
「兄様と共に掲げるのです。我らの理――“黄昏の律”を」
「そして――一緒に取り戻すんだ。あの日喪った、
「……ミケラ。本当にこれでいいのでしょうか」
「これで、私達の“罪”は贖われるのですか」
「兄様は、私達を愛してくれるのですか……?」