SEED DESTINY GE~神喰のアルビオン~ 作:もうなにもかもめんどい
西暦年代末に起きた、のちに『再構築戦争』と呼ばれることとなる戦争の終結と、それまでの国家の枠組みが大きく変わったことを機に新しく制定された暦だ。
新しい世界となって幾年月が流れたが、人類は新たな対立を生み出し、今なお争い続けていた。
ジョージ・グレンなる人物が、自分は遺伝子を操作されて誕生したと世界に報道したの機に、彼が公開した遺伝子の操作方法によって誕生した新人類『コーディネーター』と、従来の人類である『ナチュラル』。ナチュラル達は自分達より優れたコーディネーター達を迫害し、コーディネーター達は地球を追われ、新たな安息の地として、宇宙を選んだ。
しかし、ナチュラルによるコーディネーターの迫害は宇宙にまで届き、ある事件を機に、先鋭化されていた双方の敵意が一気に爆発した。
『血のバレンタイン』。
C.E.70年2月14日。
コーディネーター達の本拠地であるコロニー群、通称『プラント』に宣戦布告した地球連合軍が放った核爆弾が、農業プラント『ユニウスセブン』に命中。その一発により、24万人以上の命が一瞬に消え去った。
この事件を機に、地球とプラント間の緊張は一気に武力衝突へと発展していくのだが、そんな中、中立を宣言した一国が存在した。
その国の名は『オーブ連合首長国』。
群島からなる島国であるこの国は建国時から中立の理念を持っており、先の大戦が開戦した時も、この国だけは地球に残ろうとしたコーディネーター達を受け入れ、居住を許していた。
……しかし、楽園での平和も長くは続かなかった。
プラント軍、またの名を『ザフト』の攻撃により、宇宙へとあがる為のマスドライバーを破壊された連合軍は、オーブにあったもう一つのマスドライバーを接収する為に脅迫とも呼べる協力要請を出すも、開戦前にオーブの中立を強く宣言したオーブの前代表、ウズミ・ナラ・アスハはその要請を拒否。
協力を拒否された連合軍はオーブに対し、武力侵攻を開始するのだった―――。
〇 ● 〇
「急げ、シン!」
「マユ!後少しだから!頑張って!」
「うん!」
鳴りやまない銃声と避難サイレンが鳴り響く戦場から少し離れた山の中を、とある家族が走っていた。
父親と母親らしき男女と、顔立ちからして兄妹であろう二人。
そしてもう一人。右腕に赤い腕輪のようなものをはめた白髪の少女の五人だ。
「大丈夫だ。目標は軍の施設だろう。急ぐぞ」
段々と激しさが増してくる銃声に思わず全員が足を止めたが、父親の声で再び走り出す。
走り出ながら白髪の少女は、木々の間から戦場と化した軍港を見る。その軍港では、オーブが開発したモビルスーツが、上陸しようとしている連合のモビルスーツを手にする巨大なライフルで次々と撃破していく。
「見えた!港だ!」
父親の声で少女は前を見ると、避難船が停泊している港が見えてきた。それを見て少女も家族も安堵の表情となるが、
「ッ!皆伏せて!」
少女は何かを見てそう叫び、全員思わずその場に伏せる。その直後、空から巨大な黒い何かが飛んできて、彼女らの頭上を飛び去る。
「きゃあああ!」
「マユ!」
突如現れたソレに思わず悲鳴を上げたマユと呼ばれた少女を、白髪の少女は抱きしめる。黒い何かは飛び去ったかと思いきや、自分らの近くに、巨大な砲台を二門背負った青いモビルスーツが降り立ち、空にいた、十枚の羽を持ったモビルスーツ目掛けてビームを放つ。しかし十枚羽のモビルスーツはそれをかわし、手にしたライフルからビームを放っていく。その一つが彼女らの近くに落ち、爆発が起きる。
「急ごう!ここも危ない!」
「大丈夫!お義姉ちゃんが守るからね!」
「うん……!」
避難船が停泊する港まで後少し。後は一本道の斜面を下っていくだけ。少女は泣き出そうなマユを励ましながら家族と共に走る。
軍港まで後少し……その時だった。
「あっ!マユのケータイ!」
走っていた拍子に、マユの持っていた携帯電話がバックから落ちてしまい、崖下へと転がっていく。
「そんなのいいから!」
「ダメ!だってあれ、マユの大事なものだもん!」
転がったピンクの携帯電話は、彼女が誕生日に母親にねだってやっと買ってもらったものだ。戦争による電波障害でほとんどが使用できなくなったものの、彼女はその携帯電話が気に入り、片時も手放なかった。
「俺が取って来る!皆は先に行ってて!」
「シン!」
シンと呼ばれた少年は止めようとした父親の声を聞かず、携帯電話が落ちていった斜面を駆け降りる。
「待って!お兄ちゃん!マユも!」
マユも母親の手を振り払い、兄について行こうとした、
その時だった。
「マユッ!!」
「え……?」
自分の名を呼ばれ、思わず振り向こうとしたその時だった。追いかけてきたであろう姉が自分を抱きかかえ、地面へと転がるよう飛び込んだ、その瞬間ーーー
バアアァァーーーーーーン!!!!!!
凄まじい爆音が響き、その爆音で生み出された衝撃が二人を襲った。
一方。斜面を降りていたシンのほうも、木の根元に引っ掛かった携帯電話をしゃがんで拾い上げようとしたその瞬間、後ろのほうで爆発が起き、その勢いで吹き飛ばされ、港の側のアスファルトに体を叩きつけられる。
しばらくしてシンは気が付き、立ち上がろうとするも、叩きつけられた衝撃で、上手く立ち上がることができない。
「君!大丈夫か!?」
そんな彼を、避難民の誘導を行っていた軍人が駆け寄り、彼が立ち上がるのを助ける為に、シンの肩に腕を回す。
「大丈夫だ!まだ空きは残ってる!歩けるなら急いで船にーーー!」
軍人に肩を抱えられたシンだったが、その場から離れようとしたその時、ハッとする。
家族は、どうなった?
シンは軍人の手を思いっきり振り払う。
「どこに行くんだ!?」
「まだ家族が上にーーー!?」
後ろを振り向き、シンは愕然とする。
何故なら、先ほどまで自分達がいた崖がなくなっていたのだ。地面は大きく抉られ、木々はへし折られ、その一部は炭化し黒煙を上げていた。
さきほどまで自分達のいた場所が一瞬にして焼野原と化した光景を見たシンは、軍人の制止を聞かず、痛みが響く体に鞭打ち、家族がいたであろう場所まで駆け出す。
「父さん、母さん……!マユ、シアン……!」
家族と妹と義姉の名前を呼びながら破壊された崖をよじのぼる。そしてシンは、よじのぼった先の光景を目の当たりにする。
「あ」
彼が目にした光景。それは、見るも無惨と化した父母の姿だった。
母親のほうは手足が有り得ない方向に折れ曲がり、父親は倒れた木の下敷きに押しつぶされ、二人の周りの地面には大量の赤い血がべったりと塗られていた。
「う……うあああああ!!!!!!」
さっきまで自分と話し、走っていた家族が、ただの物言わぬ肉塊と化した。そんな現実を否定するかのようにシンは大声で叫び、遥か上空で今だに戦っている十枚羽のモビルスーツと、二機の青と緑のモビルスーツを、その赤い瞳で睨んだ。
自分の大切なものを奪った、あいつらが許せないーーー。
悲しみが憎悪へと変わっていく最中、地面の一部が動き、シンはハッとした。まだ、妹と義姉の二人の姿を見ていないということに。
まさかーーー!
シンはすぐさま地面が動いたほうへと走り、地面をかけ分ける。するとかき分けた地面の先には、義姉が避難する時に着ていた服の色が見えてきた。
「シアン!しっかりしろ!シアン!」
「……うっ……、シ……ン……ッ!?」
シンの声を聞いた白髪の少女ーーーシアンは地面からゆっくりと起き上がる。起き上がったシアンの下には、妹であるマユの姿もそこにはあった。
「シン!無事だったんだ……!」
「う、ううん……お姉ちゃん……?それと、お兄ちゃん……?」
「シアン!マユ!よかった……!二人とも、ホントによかった……!」
二人は生きていた。シンはその安堵を示すかのように、二人を力強く抱きしめる。
「シンも、無事でよかった……!」
「うん……!……ねえ?パパとママは?」
「ッ!!」
マユのその問いにシンは、後ろの光景を見せないよう、深く抱きしめる。
「まさか……!?」
その意味が分かったのであろうシアンは血相を変え、先ほどまでシンが走ってきた方向へと向かってしまう。
「お兄ちゃん?痛いよ?ねえ?パパとママは、無事なんだよね……?」
マユはもう一度兄に質問する。自分達が助かったのだ。だから、二人も無事な筈……そう思いながら兄の答えを待っていたのだが、
「……うっ、うう……」
返ってきたのは、自分を強く抱きしめ、声をだしながら涙する兄の姿だった。
「嘘……だよね?パパと、ママが……
いや……そんなの……、いやあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
その意味を知ったマユは、怒りと憎しみの感情がこもった叫びを響き渡せた。
〇 ● 〇
後に『オーブ解放作戦』と呼ばれるこの戦争は、ウズミ・ナラ・アスハ前代表の死亡とマスドライバー施設が破壊されたことにより終結した。
その後、連合とプラント間による大戦も、ヤキン・ドゥーエ攻防戦を最後に終結し、全ての始まりであるユニウスセブンにて、今後の互いの講和条約を結ぶ為に『ユニウス条約』が締結され、今後の相互理解と平和を誓い、世界は再び平和への道を歩み始めるのだった……。
しかし。先の大戦によって生み出された、痛みと孤独が癒されることは決してなく、再び始まる日常に塗り重ねられようとしていたーーー。
DESTINYの小説書く時、マユちゃん生存しようと決めてたのでこうしました!……でも、人が〇〇する描写は初めてで、グッってなりましたね……涙目で書いてました。
感想と高評価、よろしくお願いします!それでは次回まで、ドロンとな!