ダイの大団円 (take 3)    作:ギアっちょ

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エンディング

「陛下。そろそろ出発のお時間かと」

 

 ログナーが、ソープに向き直って告げる。

 

「え~?! もうそんな時間……?」

 

 ツバンツヒが、あからさまに不満そうな顔をする。

 

「もっとボコりたかったのに~」

 

「十分だ、ツバンツヒ」

 

 ログナーがあきれたようにため息をついた、そのとき──

 

 ソープの胸元のドラゴンドロップが、かすかに震えた。

 

(……ん?)

 

 ソープの耳元に、誰にも聞こえない声が届く。

 

『陛下、こちらマウザーです』

 

 それは、ウィルからの遠距離通信だった。

 

『ラキシス姫様らしき反応が、先ほどから微弱に観測されています。

 座標を固定できるかどうか、今まさに計算中ですが──

 そろそろ本来の目的にお戻りいただきたいのですがね』

 

 どこか呆れたような、しかし嬉しさを抑えきれない声。

 

「……そっか」

 

 ソープは、ほんの一瞬だけ寂しそうに目を伏せ、すぐに笑顔を取り戻した。

 

「それじゃあ、ボクたちはこれで失礼するよ」

 

 彼は、改めて勇者一行のほうを向く。

 

「君たちの世界の、これからの繁栄を祈ってる。

 

 ──本当に、よく戦ったね」

 

 その言葉は、ただの社交辞令ではなく、

 “同じ戦場に立った者”への敬意がこもっていた。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 慌てたように、ダイがソープに駆け寄る。

 

「まだ何もお礼をしてないです!」

 

「そうだぜ! 命を二回も助けられたようなもんなんだ。

 なんかさせてくれよ!」

 

 ポップも続く。

 

「いやいや、いいんだよ」

 

 ソープは笑って首を振った。

 

「ボクは十分、楽しませてもらった。

 それに、これはあくまでボクの“貸し”だ」

 

「貸し……?」

 

「うん。いつか──そう、いつかでいい。

 

 もし、またどこかで困ったときがあったらさ。

 今日みたいに、諦めずに立ち向かってくれれば、それで十分」

 

 ソープは、そう言ってウインクした。

 

(ラキシス。

 君なら、きっとこの世界の“竜の子”にも優しくしてあげただろうね)

 

 胸元のドラゴンドロップが、静かに一度だけ瞬く。

 

「それじゃあ皆さん。縁があれば、また会いましょう」

 

 ソープが指を鳴らすポーズを取る。

 

「『ルーラ(瞬間移動呪文)』!!」

 

 パチン、と指が鳴った瞬間──

 

 眩い光の柱が、ソープたち四人を包み込んだ。

 

 光は天へ伸び、星の粒のように輝きながら四散していく。

 その中で四人の輪郭は徐々に薄れ、やがて完全に掻き消えた。

 

 残されたのは、

 呆然と立ち尽くす勇者一行と、

 キラキラと空中を漂い、少しずつ消えていく光の粒だけ。

 

「行っちゃったわねぇ……」

 

 マァムが、ぽつりと呟く。

 

「そうだねぇ……」

 

 レオナも、どこか名残惜しそうに空を見上げた。

 

「なんだかなぁ……」

 

 クロコダインが頭を掻く。

 

 残された一行は、しばらく呆けたようにその場に立ち尽くしていた。

 

 ただ一人──ポップだけは、顎に手を当てて、じっとさっきの光が消えた空を見つめていた。

 

「今の……絶対に」

 

 彼はボソリと呟く。

 

「普通の、ただの『ルーラ(瞬間移動呪文)』じゃねぇよな……」

 

 誰に聞かせるでもない、その小さな呟きだけが──

 ソープたちが去った後の静かな空気の中に、いつまでも残っていた。

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