「おのれ小娘如きがぁぁぁ!!」
メルザルガルドは怒り狂って豪腕を振り回し、ベアトリスに攻撃するが、全て雷の肉体によって好き通されてしまう。
「アトミックさん、私に合わせてください!」
「....成る程な、この借りは必ず返してもらうぜ上ちゃん!」
そう言うと、ベアトリスとアトミックさん侍はバックステップをし、間にメルザルガルドを挟んだ。二人の突然の行動に、メルザルガルドは動揺を隠せない。
「な....何をする気だ?」
「「おぉぉぉぉぉ!!」」
バッ!
ーアトミック・クロス・ヴァルキュリア!
バリィィィッ!!
アトミック侍とベアトリスの万単位の斬撃がメルザルガルドを包み込んだ。メルザルガルドの肉体は粉末状に成る程切り刻まれる。
(ぐっ....小癪なぁ!)
メルザルガルドはすぐさま肉体を蘇生をしようとする。しかし、回復どころかゆっくりと肉体は消滅し始めている。
「何故だ?....はっ!」
バチバチバチ....
メルザルガルドは驚愕した。体内で移動させながら隠していたはずのコアに、ベアトリスの稲妻が帯電して壊れ始めていたのだ。
「あなたは蘇生を始める時には、必ず頭から蘇ります。それは裏を返せば、必ず頭部に核があるということになる。だから私とアトミックさんの連撃の後に、あなたの頭の位置に小さな電撃の結界を張っておいたのです。もうチェックメイトですね....同じことを無様に繰り返すほど、私たち人間は愚かではないんです!」
「地球人如きがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
バチッ!
パキン!
「お.....ふぅ」
「これでこの怪人はイッた!俺たちの勝ちだ!」
プリズナーはガッツポーズをしながらそう言って勝利を噛みしめる。しかし、金属バットは宇宙船を見上げながら言った。
「まだ上にでっけえのが残ってるけどな。エスパーのガキでも落ちなかったらどうするか?」
(ハイドリヒ卿.....)
そして、宇宙船では
ババババッ!
「オオオオオオオッ!!」
ババババッ!
「......」
ボロスとサイタマのハイレベルな攻撃の応酬が繰り広げられていた。プロのヒーローでも目視不可能な速度で移動、攻撃を繰り返す。
(さすがに強い!俺と互角の戦闘ができるとは!しかし、まだあの黄金が控えている、早めの決着をつけなければ!)
ボッ!
「体内の膨大なエネルギーの放射!雑魚がこれを受ければ骨も残らん!」
「!」
ドゴォォォォォッ!!
ボロスの放ったエネルギーは、宇宙船の外にまで流れ、数km単位まで駆け抜けていった。しかし、それを受けたサイタマは少しやけすすれた程度だった。だが...
バッ!
「後ろだ!」
ドゴッ!
「...」
煙幕に紛れ、背後から忍びったボロスの一撃を後頭部に受けてしまった。サイタマの目は白く反転し、意識が飛んでるように見える。
「そしてすかさず....メテオリックバースト!」
メキッ!!
すると、ボロスの肉体はまるで膨大なエネルギーそのものをまとったような肉体になった。この技は、ボロスの膨大なエネルギーそを利用し、肉体の強化を施す技である。しかし、無呼吸運動のようにエネルギーの消費が激しく、体の負担が大きいのがリスクである。そして、ボロスはサイタマの体を上空へ向かって蹴り上げた。
「オオオォォォォォォォォッ!!!」
ドヒュン!
「....」
ものすごいスピードでサイタマは上空へ弾け飛び、宇宙空間にまで到達したのだ。
「フッ!....フッ!....」
ザッ!
「サイタマの言う通り、卿は強いな。」
すると、颯爽とラインハルトがボロスの目の前へと現れた。
「伊達に宇宙の覇者を自負はしておらんな。自分と対等に戦える相手がいなくて、さぞ退屈であっただろう。」
「.....」
ラインハルトは、まるでかつて既知に思い悩まされていた自分と照らし合わせるかのようにボロスにそう問いかけるが、ボロスは答えなかった。
「....一つ聞きたいが、卿のところに現れたペテン師というものが気になってな、その者の名を教えてはくれぬかね?」
すると、ボロスの大きな一つ目がギョロッとラインハルトをとらえ、ポツポツと呟き始めた。
「.....まず感じたのは『礼賛』....求めし物は全霊の境地。」
「っ!?」
ボロスの口から出た言葉は、一見するとよくわからない。だが、それを聞いたラインハルトの表情は凍りついていた。
「ああ何故だ.....何故耐えられぬ。抱擁どころか....柔肌を撫でただけで何故砕ける。なんたる無情.....森羅万象この世は....総じて繊細に過ぎぬから.....」
「......」
「愛でるためにまずは壊そう....死を想え....断崖の果てを飛翔しろ!.....私は全てを愛してる!」
「....卿は何故今、その言葉を口走ったのだ?」
「....そのペテン師から、お前のことを聞いて、一冊の本を渡されたんだ。.....そこに、さっき言った言葉が記されていた。確か、黄金の獣の渇望とはこんな感じだって言ってたな。」
ボロスはゆっくりとラインハルトへと歩み寄りながらそう言う。するとラインハルトは一呼吸置いてから、口を開いた。
「そのペテン師は今どこにいるか知っているか?」
「さあな。気が付いたら、宇宙船のどこを探してもいなかった。何にせよ、これを読んで俺は興味を注がれたからな。求めし物は全霊の境地....奇遇どころではない。俺の目指す物とほとんど同じだからな。」
「確かにな...」
「さて、そろそろ始めようか。サイタマはもういない....ラインハルトよ、俺の全力に答えてくれよ!」
「....何?もういないだと?」
ボロスの台詞に、ラインハルトは眉をしかめしながら、再度聞いた。
「ああ、奴はもう宇宙空間に漂っている。もう二度と帰ってこないぞ。」
「ふふ....ふふふふ」
「?」
「ははははは!」
ボロスの言葉を聞くと、ラインハルトは大笑いをし始めた。それに対してボロスの表情が少し険しくなる。
「....可愛いなボロスよ!」
「何だと?」
「それでサイタマとの戦いに決着がついたつもりか?だとしたら、存外詰めが甘いと思わずにはいられないな。あの男は私が認めた英雄の一角だ。そのような男を、宇宙に放り出しただけで勝ち誇るのは.....」
ヒュウウゥゥゥゥゥ......
ドカァァァァァァン!!!!
「愛が、足りんよ。」
「お、戻ってきた。」
ラインハルトがそういうとほぼ同時、上空から重力を背負って降りてきたサイタマは、ちょうどラインハルトの横の位置に着地した。その衝撃で宇宙船がかなり傾いてしまった。
「お、ラインハルトの方は終わってたんだな。」
「だいたい数分前にな。それよりも卿、宇宙の方は苦しくなかったかね?」
「口閉じてれば案外なんとかなったぞ。」
「それは何よりだ。」
二人は何気なくそう語り合っていた。それを見ていたボロスは呆然としていた。決着をつけたはずが、まさか覆されるどころか何事もなかったかのように戻ってこられてしまったのだから当然である。
「さって、それじゃ続きを始めるかボロス。それともこれで終わりか、戦いは?」
「....」
サイタマの問いに、ボロスは答えようとしたが、とっさに口を紡いだ。
(このままでは明らかに不利だ。ラインハルト+サイタマて展開はさすがに厳しい.....ならば、あまり得策ではないが、やむを得ん!)
するとボロスは顔を上空に上げ、叫んだ。
「ダークマターの最上位戦士達よ!今こそ俺の魂と融合せよ!」
「「!」」
すると、それぞれの死に場所から魂が浮かび上がり、ボロスの元へと集まっていった。
ドドドドドドドッ!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
カッ!
融合を終えると、そこには黒く輝く肉体を持つ者がいた。そう、これはボロスが本当にピンチの時に使う最後の切り札の姿。『暗黒(ダークマター)ボロス』の姿である!
続く