ある喫茶店にて
「なあ、そろそろ教えてくれよ。お前の事についてよ。」
「.....」
「ボロスがお前の事を随分と危険視してるような事を言ってから、気になってな....だから、お前の素性について教えて欲しいんだよ。」
サイタマは、ずいっとテーブルから少し身を乗り出して、ラインハルトにそう問いかけていた。するとラインハルトは、コーヒーをぐいっと飲み干し、フゥ....と軽いため息をついて言った。
「そう言われれば、いつでも答えるつもりでいたが.....良いのかね?もし卿の予想を遥かに超える内容であったならば、今のような雰囲気で過ごすのは、困難になるかもしれんぞ。」
「今更そんな事で怖気付くかよ。良いから早く話してくれ、気になって仕方ねえんだよ。」
「相分かった。私はな....」
そしてラインハルトは、かつて聡明期でメルクリウスとの出会いの事、黒円卓の事、藤井蓮と全宇宙をかけて戦った事、この世界に座というシステムがあり、今は黄昏の女神が全てを包み込んでいることなどを、サイタマにナントか理解できるように話した。
そして
「つまりお前はあれか?全世界を永遠に戦争をし続けるような世界に塗り潰そうとしてたってわけか?」
「そういう事だ。私は誰かを愛そうとすると、必ず何かしらの形で壊れてしまう。ならば何度壊れようとも蘇るような世界すればいい、それこそが救いなのだと私は思ったわけだ。」
「お前意外と馬鹿なんだな。みんながみんなそんな訳ねぇだろ。」
「随分とストレートに言ってくれるな....まあ実際、自分自身のことは心底つまらぬ男だと自覚はしているつもりだよ。」
サイタマがそうズバッとツッコミを入れると、ラインハルトは自虐気味に笑いながら、そう言った。
「けどよ、お前の存在自体間違ってるとも言えないよな....絶対に正しいとは言えないけど。」
「....どういう意味だ?卿は何が言いたい?」
「だってよ、お前の様な戦争大好き野郎が世界を戦争だらけにしようぜって言ったら、数百万も部下ができた訳だろ?つまり大半がお前の事が正しい、もしくは大好きだと思ったから騎士団に入ったって訳だ。それは、お前についていく事が救いだと思ったからだろ?要するにお前の存在自体が必要な訳だ。」
「.....」
「少数派かもしれないが、闘争本能がある人類にとっては、ある意味救済の一つの世界とも考えられるかもな。まあ、俺は絶対に認めないけどな。」
「そうか、ならば今ここで、私を否定して倒すのかね?」
ラインハルトがそう聞くと、サイタマは呆れた顔をしながら、首を横に振った。
「な訳ないだろ。昔は昔、今は今だ。世界をぶっ壊そうとしてたからなんだよ?今を生きてる俺らにはあまり関係ない話だ。昔魔王だからって絶交する訳ないだろ。今のお前は、俺と一緒に活動してる『新人のヒーロー』だろ?」
「.......卿は私をそう見ているのだな。」
「不満かよ?」
「いや、卿に我が真実を話して良かったと思っているだけだ。」
ラインハルトはそう言いながら、クスリと心地好さそうに笑っていた。それを見ていたサイタマは首を傾げている。すると、ラインハルトはある話を切り出す。
「話は変わるが、私たち二人でヒーロー活動をする上での賭けをせぬか?」
「あ?賭けるってなにをだよ?」
「バングの道場の本に記されていた『甘粕事件』の話を覚えているかね?現代じゃ一部のヒーローしかわからない幻の『災害レベル:魔王』.....それを先に見つけたものの勝ちとする。負けたものは勝者に対して一切の文句や干渉はなしだ。」
「面白そうだがよ、それに勝てたならなにが得られるってんだよ?だいたい、災害レベル神だってボロスが該当するかな?ってところだろ。仮に魔王クラスが出てきたとしても....強い敵と戦って、ハイ終わりになるじゃねえかよ。」
「何を言ってる。幻の存在の生き証人だぞ?間違いなくマスコミやヒーロー協会が釘付けになるな。副作用として、大量の賞金や寄付金がもらえるだろう。当然敗者は無一文だ。まあ私はそんなものもらったところで何とも」
「よしその賭け乗った!」
「速いな。」
ラインハルトがお金の話をし出し、言い終わろうとした瞬間、サイタマは身を乗り出して提案に賛成した。
「よし、そうと決まれば行動しなきゃな....やべぇ」
「どうかしたかね?」
「ごめん、財布家に忘れた。」
「.....今日ぐらい私が奢ってやる。どうせコーヒーぐらいしか頼んでないからな。」
「本当にすまねえ、ラインハルト......」
ラインハルトはそう言って財布からお金を出してカウンターへと向かった。ちなみに現実の話、ファミレスなどでお金を忘れた場合、お店に貴重品などを預かってもらうなどして、財布を取り行くことができ、あとから会計をすることが出来るのである。だからお金を忘れた、もしくは無くしたなどした場合は、泣く泣く食い逃げなどをせずにきちんとお店に相談すべきである。
話は戻って、2人がファミレスから出ると....
「あ、先生、そしてラインハルト!」
「おージェノスか。買い物か?」
「はい、そういう先生たちは?」
「駅前に新しい喫茶店ができてな.....軽いモーニングタイムをしてきたのだよ。」
「ああ成る程....あれ?先生たちは俺よりも先に出たんですよね?家に出る時に先生の財布を見かけたような.....」
「あ、おい!あそこにいるのキングじゃねえか!?」
ジェノスが言い終わる前にサイタマは叫びながら話を逸らした。実際にサイタマが指差す方を見ると、道路の真ん中でキングがカルト団体と一悶着していた。
「確かにキングがいますね。あと、何やら武装をした怪しい連中が....」
「あれは巷で有名なカルト教団だな。あれらの所為で幾つか家庭崩壊した話をよく聞く。」
「そんな奴らがなんでキングに?」
三人はそう疑問に感じ、こっそりとキングの方向へと迫っていった。
「貴様はS級ヒーローキングだな!ヒーロー協会が最近我ら『虚現教』を嗅ぎ回ってると神からお告げがあった!キングよ、お前はヒーロー共の代表として、事実を述べてもらおうか!」
「脅しか....俺を、地上最強の『キング』と知っててそう言っているのか?」
ギラリ.....!
「ヒ.....ヒーロー代表をとして述べろと言っておるだろうが!あまり悠長にやってると、けが人が出るぞ!」
キングが眼光を照らしながら聞いた。その威圧感に教団は一瞬たじろぐが、リーダーらしき男は、刀を突きつけながら、再度尋問を続けた。
「わかった、話はするから一般人には手を出すな。」
「ふん....話せば『正し』ぬっ!」
「一度本部とアポを取ってからでいいか?俺個人で話を進めると厄介なことになる。」
「何をバカなことを言ってる!そんな余裕与えると思ってか!?第一....」
「ならばこの話はなしだな。頼む側の礼儀と言うものを守れんらしい。」
「ぐっ....5分時間やる。早く本部の連中と話を済ましてこい。もし仲間を呼んだりしたらここの市民に命はないと思え!」
タッタッタッタッ......!
そう言って、携帯を片手にキングは公園の方向へと進んで言った。その間カルト団体は一応素直に待ってはいた。
「キングは公園へと行きました。このあと、キングがどんなトーク力を披露するのか、気になりますね。」
「.....」
ジェノスがそう語る中、ラインハルトは鋭い眼光をしながら、キングの背中を見ていた。すると....
「ジェノス、卿は不意打ちでもなんでもいいからカルト教団を一掃しろ。」
「え?」
「そしてサイタマ、卿は私と一緒にキングのあとを追うぞ。」
バッ!
「お、おいラインハルト!」
ジェノスの叫びを気にせずに、ラインハルトはサイタマを無理やり引き連れながら、キングの方へと遠回りしながら駆け出していった。
一方キングは....
(うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!どおぉぉおどしよぉぉぉぉぉぉぉ!!)
ダダダダダダッ!
キングは全力でダッシュをしていた。携帯とゲームを片手に。そう、本来彼は戦闘力のないタダの一般人なのである。
(やばいやばいやばい!なんで俺カルト教団相手に強気で話してるの?なんか見た感じみんな若い子ばかりぽかったから、つい上から目線で言っちゃったけど、絶対怒ってるよアレェェ!!!!)
キングはそう思いながら家に向かって走っていた。そして、約束の5分が経ってしまった。
「あ....あぁ5分がっ!ごめん、みんなごめんよぉ〜っ!」
「その件なら大丈夫だ、今カルト教団はジェノスと戦ってる。あの程度の集団ならジェノスは無双できるだろう。」
「ほっ....それはよか....え?」
キングは自分の隣にいる人物を二度見した。自分の独り言にナチュラルに入り込んできたラインハルトがいることに、一瞬思考が停止した。それに、今時分は全力で疾走してるのに、ラインハルトは呼吸一つ乱さずに悠々と追いついているのだ。
(え?なんでこの人なんで余裕の表情で俺の隣に並んでるの?俺、逃げ足だけなら結構自信あったんだけどな.....いや問題はそこじゃない。)
「お....俺の後をつけて何をする気だ。俺をS級ヒーロー....」
「知っておるよ、『キング』であろ?卿は有名人だから知らぬものはほとんどおらんだろう。まあ私も昨日S級になったばかりだが、一応同僚のヒーローになるな。」
(え?最近S級に?)
キングが足を止め、名乗り出ようとしたら、ラインハルトから驚きの事実が述べられた。実は宇宙人たちを一掃したことを評価され、ラインハルトは一気にS級へと昇進したのだった。それはつまりラインハルトとキングは対等な関係のヒーローとなったのであった。
「それよりも、卿はカルト教団をから逃げて何をする気だったのか気になってな.....なあ、サイタマよ?」
ヒョコ
「ああ、と言うかキングがまさか可愛い女の子系のゲームが好きだとは思わなかったなぁ。」
「え?なっ....や、やめろぉぉぉぉ!!」
「何を叫んでいるのだ?今時二次元に恋する男がいても別に珍しい話ではないであろう?別に侮辱なぞせんよ。むしろそう言った趣味のものでも大歓迎だが....」
キングを挟むような形で出てきたサイタマはキングが持っていたゲームを覗き込んでいた。これはいわゆる恋愛ゲーム出あり、色恋沙汰に疎い男向けのゲームである。当然、トップクラスのヒーローなんかがやっていたらイメージが破壊されるレベルである。
「ち....違う!これはシューティングゲームだよ!出てくるキャラの大半がこんな感じのイラストでっ!」
「おや、そうだったのかね?私はテレビゲーム系には少し疎くてだな....パッケージには『ときめき☆クラスメート』と書いてあるが?」
「そうなんだー!最近いろんなゲームはよく萌えイラスト使うから勘違いして買っちゃったなー!捨てなきゃなー!全く、なんでも萌え化すればいいってもんじゃないのに!あはははははははははー!!」
キングは少々苦しい言い訳を叫びながらときめき☆シスターズのカセットを地面に叩きつけた。
「なあ、今シューティングとか言ってたけど、他にもゲーム持ってるのか?」
「え?一応他には格ゲーとか持ってるけど....」
「お、それ面白そうじゃん!やろうぜ!」
「名案だな、私もキングの腕前は気になるところだ。」
「え?もしかして俺の家で?」
「ダメ?どうせカルト教団はジェノスがやってるし暇じゃん。」
(何この人たち図々しい。)
キングは露骨に嫌そうな顔をしたが、ラインハルトとサイタマは気にする様子もなくキングの後を付いて行こうとした。だがその時.....
ー滅
「え?二人とも今何か言った?」
「「別に?」」
キングは振り返って二人に問いかけるが、両者とも特に何かをした様子はなかった。だが...
ー王
「いや、確かに聞こえるっ!」
「む....」
「おいラインハルト、これはまさか....」
ー殺うぅぅぅっっっ!!!!
「うおぉぉぉぉぉぉっーーー!!!」
キングは驚愕した。何とさっきのカルト教団のリーダーが悪霊化して唐突に現れたのだ。身体中に何やら呪詛らしき刺青が刻まれていた。
「悪霊か....どうやらキングを殺す一念でこうなったらしいな。」
「こりゃ驚いたな....キングは怪人を呼ぶ才能でもあるのかよ?」
(そうなんだよ!俺は昔から、何故かよく怪人が寄ってたかって俺のところに来るんだ!)
「それで、どうするかねキング?卿がこの悪霊を始末するのか?それとも、流石のキングも霊体相手では相性が悪いかね?」
「人類最強も、人外は無理って意味か?それなら俺たちがやるが....」
(......違う!)
キングは一瞬、二人の言うとおり霊体は無理という建前を利用して、この場を逃げようとした。だがしかし、彼はこの場を逃げようとはしなかった。
(俺が言いたいのはそれじゃない!本当の事を言わなきゃ!でないと、S級のラインハルトはなんとかなるかもしれないが、B級の彼が怪我を負ってしまう!人類最強の『キング』はどこにもいない!俺は....)
「おれは....!」
ー滅....王....死っ!
「「......」」
「俺は!」
ー死死死死死死死死死死死死死死死ぃぃぃぃぃぃーーーーー!!!!
「ーーーーーーーー!」
静寂、キングの無心の叫びと悪霊の狂乱の叫びが重なった。キングは無心のあまりに眼をつぶっていた。
(ふ....二人はどうなったんだ!?悪霊は?B級の彼は死んだのか?ああ、すまない....俺が本当の事を言わなかったから!)
そう考え、キングはゆっくりと眼を開けた。するとそこには....
「おいおい、ラインハルトの言ってた事本当だったのかよ。キングの成績も、人類最強も、全部嘘っぱちだったのかよ。」
「クリストフの『異能』には感謝せねばならんな、これがなかったら、私もその場の雰囲気であざむけられてたかもしれぬ。」
(え....生きてる?)
悪霊は霧のように消滅し、二人とも無傷だった。実はキングを追う前に、ラインハルトは部下のヴァレリア・トリファの『読心能力』を使ってキングの真実に気付いていたのであった。
「さてキングよ、漏らしてるところ悪いが、あとは卿の口で全てを話してもらおうか。」
「え?あ、うん。」
キングは悪霊の殺気で思わず小便を漏らしてしまってたのである。そして3人はそのままキングの家へと移動し、キングの全ての経歴を聞いたのであった。
「成る程な、経緯はどうあれ災難であったな。」
「い.....いや、黙ってた俺も悪いし....」
「けどよ、そのまま嘘を通していても楽しくないだろ。」
「な.....なかなか決心がつかなくて....」
キングはモジモジとしながら、呟いていた。すると、ラインハルトは何かを閃いたのか、立ち上がり....
「ならば....本物のヒーローとして強くなればいい。」
「え?」
「卿は曲がりなりにもヒーローだ。案外卿自信気付いていない能力が隠されてるかもしれぬではないか。それに、私の愛すべき同僚なのだから、これから精進してくれ。私を失望させてくれるなよ?では、また会おう。」
バッ!
ラインハルトはそう言い残してキングの家の窓から立ち去っていった。そして....
「俺は....みんなを騙してたというのに.....」
「おれもラインハルトも、お前が本気でヒーローとして頑張っていたことは分かってたんだよ。だから怒ったり侮辱なんかしたりしねえさ。だから、これからもヒーローとして頑張れよ、キング。たまにゲームしに来るからよろしくな!」
バッ!
「え....うん、よろしく。」
今度はサイタマがそう言ってキングの家から立ち去ったのであった。
そして日が沈み、夜となった。
「今日はなんか色々あって疲れたな.....もう寝るか。」
そう言ってキングは布団を敷いて、寝る準備を始めた。すると..,
ブー! ブー!
「ケータイ.....こんな時間に?」
キングは携帯を取り、電話に出ようとする。電話の相手は、ヒーロー協会の人からだった。
「もしもし?」
「あ、キングさんですか?」
「あ、うん。そうだけど?」
「良かったー電話に出てくれて。実は来週行われる『結局誰が一番強いの?選手権大会』で、アマイマスクさんに解説役を頼んでたんですが、急きょドラマの最終回の撮影が重なりまして、これなくなってしまったのですよ....」
「ああ....それで?」
「ですので、代わりにキングさんに解説役を頼みたいのですが....良いですか?」
「え?.....あ、うん。」
「ありがとうございます!いやー実はキングさんもエントリーしてもらおうかと思ってたのですが、キングさんが参戦するとなると、一般の方はビビってキャンセルする人も多かったのですよ。キングさんが解説役になった事で、また参加者が増えそうです。では、当日お願いします!」
プーップー....
「.....どうしてこうなった?」
続く
〜オマケ〜
シュピーネ「みなさまこんばんわ。私は黒円卓第10位『ロート・シュピーネ』と申します。以後お見知り置きを....今回は作者に変わって少し話をしたいと思います。
さて、今回の話を見てわかる通り、次回は番外編『結局誰が一番強いの選手権大会』が始まります。ちなみに本編の大筋とはほぼ一切関係ありません。そして、どの位番外編が話数を喰うのか考えていません。
そして、参戦キャラの話ですが....今回はコラボ回。即ち『基本人だったらどんなキャラも参加自由』でございます。ワンパンマンや神座シリーズは勿論....全然関係のない漫画やゲーム、ラノベキャラ.....さしてやオリジナル小説のオリ主も大歓迎としております。ちなみに別の小説キャラもすでに入れる予定もしております。皆様が参戦して欲しいキャラがいれば、ぜひご意見をお願いします!
.....まあ、私の予想では戦神館の『甘粕大尉』が大多数を占めるでしょうね....この話が来る前に戦って欲しいという声がちらほら聞こえましたからねぇ。読者様からお声さえあれば参戦するでしょう.....会場ごとぶっ壊されそうな気がするのですが。
さて、話が長くなりましたが、次回の番外編で、皆様が楽しんでいただければ幸いです。では次回まで御機嫌よう.....Auf Wiedersehen」
終わり
皆様のご意見、どうかよろしくお願いします!