(くそっ....この人、滅茶苦茶すぎるぞ!)
風頼はこの状況に悪態をついていた。何故なら、こちらの攻撃がことごとく無力化され、防御されるのだ。故に、反射バリアを使い、サイタマ自身の破壊力を返し、自壊させることを狙ったのだが、結局のところ無意味であったのだ。
「こうなったら、数で展開をかき乱すか....!」
バッ!
「あ?カード?」
サイタマは、突如懐からカードを取り出した風頼に不意をつかれ、思わず彼の様子を見てしまった。
「防符『トリックバリア』」
ブォオオオオ.....
「これは....分身か。」
風頼の周りに展開されたバリアから、映された風頼の分身が現れ、本体と共に猛スピードで姿をくらました。
「どうだ?これじゃどれが本体がわからないだろ!」
「まあ確かに、ぱっと見は分かんねぇな」
「そして喰らえ!広範囲のバリアクラッカーァァァァァァッッ!!!!」
ドドドドドドドドォォォ!!!
サイタマの周り360度を囲むように無数のバリアの結晶がサイタマに襲いかかってきた。それに対してサイタマは.....
「いいなこう言うの、少し燃えてきたぜ。だから....」
ー少しマジになろう
(え?)
風頼は必死に攻撃を放つ刹那、サイタマからボソリと呟いたその言葉が、頭の中で何回も木霊した。そしてそのセリフを証明するように、サイタマは反撃を開始する。
ー必殺マジシリーズ
「マジ大回転」
ブォン.....
ブォンブォン.....
ブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォン.....
ボボボボボボボボォォォォォォォーーーーーー!!!!!!
「な....なんだこりゃァァァ!?」
風頼は思わず叫んでしまった。当惑どころではない。サイタマは突如バレリーナのように片足立ちをし、その場で超高速回転をし始めたのだ。当然、超越者の如きのパワーを持つ彼が起こした回転のエネルギーはとんでもない風圧を発生させ、その場に小型の台風を起こしたようなものでおる。無論、バリアクラッカーは勢いが分散され、はじき飛ばされてしまったのだ。そしてそれに巻き込まれた風頼の分身達は、消滅してしまった。
「これはマズイ、筋斗雲!」
ギュオン!
風頼は筋斗雲に乗って一旦上空へと避難した。上空なら、恐らく安全圏だ。なぜなら彼は普通の人間だ、空を飛ぶなんて真似ができるはずがない。そう考えたのだ。
「まずは、ちょっとでもいいからダメージを負わせる事を考えないとな....」
風頼はそう言い、一度呼吸を整え、冷静になることに努めた。そして、頭の中であれこれ考察をしながら、サイタマを見下ろしていると。
ピュオン!!
「よ、さっきぶり」
「ハハ.....冗談、だろ?」
サイタマは闘技場からジャンプして、上空数百メートルを旋回している風頼の元に飛びよってきたのだ。安全圏だと思ってた空中に、突如現れたサイタマを見た風頼は、冷静になったはずの頭が一周してしまい、逆に冷え切ってしまった。もはや、ほとんど考えるのをやめたと言ってもいい。
「戻って続きをしようぜ。」
バチィィィィ!!!!
「ぐうぅぅぅぅ!!!」
サイタマはバレーボールにスパイクをするように、風頼に向かって思いっきりアタックした。風頼は咄嗟にバリアを張るが、無意味だと主張するように、サイタマの張り手によって破壊された。
ゴオォォォォォォ......
(このままじゃ.....地面に激突してしまう....!!)
オオォォォォォ.....
(こんなところで....)
コォォォ.....!!
(ん?あいつのぶら下げてる石に光が?)
一緒に地面へと急降下する中、サイタマは風頼の方を見ると、彼の首にぶら下がっている石....いや、ダイヤモンドに突如光が帯びているのに気がついた。
オオォォォォォ!!
「負けてしまってたまるかぁぁぁぁっ!!!」
「っ!!」
バッ!
「反符「イージスの盾」
墜落の衝撃を弾き飛ばせぇぇぇ!!!」
オオォォォォォ......
バキィィィィィィィィィィ!!!!
ドサッ!
「がぁっ!」
風頼は、地面との衝突の衝撃を、イージスの盾で反射し、地面に分散させたのだ。その一部始終を見ていたサイタマは感心し、少し興奮していた。
タッ!
「スゲェな、あんな一瞬でよくこんな真似.....面白えな。」
(ほとんど、あなたのとんでもない力のせいなんですけどね.....)
少しフラつきながらも立ち上がる風頼は、心中でそうちょっと悪態をついていた。しかしそんな事に気づくわけないサイタマは、風頼にとって最悪の決断を取る。
「まあけど、そろそろ終わりにしねえとな。ラインハルトとの約束もあるし、ここで白黒つけるぜ。」
「え?」
「良いもの見せてくれたお礼に、こっちも切り札使うぜ。お前なら、最悪死ぬ事もないだろ。」
「ま....まさか」
風頼はワナワナと震え始めた。そして、その不吉な予感が的中するかのように、サイタマの右拳に、とんでもない拳圧が集まる。
ー必殺マジシリーズ
「マジ殴り」
ドオォォォォォォォ!!!
「究極バリア「ダイヤモンドシールド」!!」
パキィィィィッ!
ガガガガガガガガガガガ!!!!
「ギィィィ....ガアァァァァァァッ!!!」
風頼が使える最固のバリア、ダイヤモンドシールドを展開した。なんとか直撃を防ぐことはできたのものの、完璧に防御はできず、風頼の精神力に膨大な負担が襲いかかる。
(このままじゃ.....気絶してしまう!なんとかしないと...こうなったら、一か八かの勝負やるしかま....ない!)
風頼は、キッとサイタマに向き直る。それと同時に、風頼の胸元のダイヤモンドが輝き始めた。
コォォォ....
「ダイヤモンドシールド・チェンジ!反射バリア!」
「!?」
パリィィィィッ!!
ドガァァァァァァッ!!!
「きゃああああああ!!!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
「風頼!」
「風頼さん!」
バリアが割れると同時に、会場内全てに突然、とんでもない光が炸裂した。その突然の出来事に、観客や、見学していたヒーローたちも大混乱を起こしてしまう。
『み、皆様!落ち着いてください!この会場のバリアは特殊時限装置か組み込まれており、どんな攻撃も別事件へと逃しているため、観客席に被害は及びません!』
アナウンサーがそう言うと、観客たちは徐々に落ち着きを戻し始めてきた。そして....
『ようやく光が弱まり始めましたね....あ、あそこにいるのは!』
「.....ハー!......ハー!」
『風頼選手です!風頼選手は無事でした!』
ワアァァァァァ!!
闘技場の中心には、大の字で倒れ、息を切らしていた風頼がそこにいた。顔色はかなり薄くなっているが、どうやら命に関わる様子はないようだ。
『そしてサイタマ選手は....あれ?ま、まさか!?』
「先生....嘘だろ?先生!サイタマ先生ー!!!!」
「....」
『な、なんと!サイタマ選手の姿が見当たりません!』
ざわっ....!
そう、何と光が完全に消え、闘技場の端から端を見渡しても、サイタマの姿がどこにも存在しなかったのだ。ジェノスは思わず席から立ち上がり、声を張り上げて叫ぶが、返事が返って来る様子がない。その傍ら、ラインハルトは普段の様子と打って変わって、鋭い目つきをしながら、どこかを見ていた。
『キングさん!このような事態は、非常に稀です!あなたは、現状況をどのように判断しますか?』
『判断?』
『は、はい!サイタマ選手は、あの光によって骨ひとつ残らず消滅したか?それとも、あまりのすごいエネルギーのせいで発生した磁場によって、どこかへ連れて行かれたのか?それとも怪人のせいか....』
スッ......
アナウンサーが色々と考察を語る最中、キングは突如指を立てて、目の前に刺し始めたのだ。突然の行為に、アナウンサーは驚く。
『キングさん、一体何を.....?』
『あそこに答えがある。』
『あそこ?カメラ班、キングさんのさす方向にズームアップをお願いします!』
ウイィィィン!
アナウンサーがそう指示すると、1台のカメラが、キングの指差す方に合わせて、カメラのレンズを合わせる。そして、徐々にピントを合わせつつ、遠くの景色を写していくすると...
「な!?」
『こ....これは!?」
カメラに映っていたのは....
パラパラ.....
「あー、すっごい目にあった。」
なんとサイタマは、闘技場から数km離れた先にある山のど真ん中に、大きレクレータを作りながらめり込んでいたのだった。そう、ダイヤモンドシールドによって跳ね返されたマジ殴りの衝撃波によって、こんなところにはじき飛ばされてしまったのであった。
『なんと、サイタマ選手は闘技場のはるか外にまではじき飛ばされていました!場外!場外ホームランです!この結果、サイタマ選手は場外アウト判定となります!よってこの試合、風頼選手の『TKO勝ち』となります!』
ワアァァァァァァァァァァァーーー!!!!
アナウンサーの勝者コールに反応し、観客達は完成と大きな拍手を風頼に向けて送った。風頼はフラフラと立ち上がり、周りに向かって一礼をした。
「なんかしっちゃかめっちゃかだったけど、勝てたんだ、俺。」
「風頼さーん!」
風頼は声のする方に向くと、そこには彼の恋人の咲夜が駆けつけていた。
「良かった....グスッ!死んでしまうかと思いましたよ!もう!」
「まあ、何回か死にかけましたけどね....しかもある意味、実力負けみたいなものだし.....」
「そんな、場外とは言え風頼さんちょんと勝ってたじゃないですか。あのサイタマさんの本気の一撃倍返したし.....」
「いや、確かにマジの攻撃とはいえ、サイタマさんのあれは、全力の一部と考えてもいいでしょう。あの人からは全力の闘気を感じなかったから、本気とはまだかけ離れていると思われます。」
「そうですか.....」
「まあ、そんな化け物相手に生き残るだけではなく、試合においての勝利を得ることができたのですから、今はこの喜びをかみしめときますよ。」
「それが一番ですよ。では、戻りましょうか。肩貸しますよ。」
「ありがとうございます、咲夜さん。」
そして風頼は、咲夜と共にこの試合の勝利をかみしめながら、闘技場を去ったのであった。
そして、ジェノス達は.....
「まさか先生が準決勝で敗退とは....幾ら何でも予想外だった。ラインハルト!後はお前しか.....うっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ........!!!
「.......」
ジェノスはラインハルトから溢れ出る何とも言えないオーラ圧力に思わずたじろいてしまった。無理もない、『決勝戦で全力で戦おう』と試合前に約束した矢先にまさかの敗北をサイタマがしてしまったのだから、彼の心境はかなり複雑になったといえよう。
「め....目に影が刺さって表情が読みづらいぞ。それに、約束を反故された事に怒ってるなら、あの風頼と言う少年にぶつければいいじゃないか。ある意味、あの少年が元凶みたいなものだろ。先生と共を名乗るなら、先生仇を打てばいいじゃないか。」
と、ジェノスはかなりの言いがかりをラインハルトに提案するが、ようやく口を開いたラインハルトから出た答えは意外なものだった。
「怒る?まさか、とんでもない。」
「何?約束破られた事に怒ってはいないのか?」
「ああ、確かにサイタマが負けてしまった事は意外だったし、事実ショックではあるよ。だが、若い少年がヒーローとしてかなりの熟練度を誇るサイタマ相手に、機転を利かして勝利をもぎ取ったという未知に私は感動したのだよ。ああ、あの少年がどれほどのポティンシャルを秘めているのか、絞り出したくて仕方ないのだ。」
「つまり、怒りよりも、好奇心や興味の方が勝ってしまったという事か?」
「ああそうだ。故に、我が修羅道に招待願おうか風頼少年よ。決勝戦、楽しみにしておこう。」
ラインハルトは、不敵な笑みを浮かべながら、退場している風頼に視線向けていたのだった。
続く
最近八命陣をプレイしているのですが、晶が可愛くて辛いです。