思ったより長引いてしまった....間延びしてすみませんでした!
次回からガロウ編に入ります。当然、黒円卓の騎士も何人か出す予定なので、楽しみにしててください。
「....」
ドサッ!
「勝負....ありだな。」
レミリアは、自身の腕が四散しつつ、小さな声を上げながら、ゆっくりと地面に倒れた。ラインハルトはその様子を見届けている。
「レミリアァァァァァッ!!!!」
「お嬢様っ!!」
バッ!
解放された闘技場に、突如乱入した風頼と咲夜。二人はラインハルトを無視して、直様レミリアの元へと駆け寄る。
「おい、しっかりしろ!」
「案ずるな、死んではおらんよ。」
倒れてるレミリアに風頼は抱き上げ、呼びかける。それを見下ろしているラインハルトがそう言うと、風頼は声を荒げながら叫んだ。
「ふざけるな!腕が砕けたんだぞ!無事に済むわけが....」
「.....大丈夫よ、風頼。少し意識が飛んだだけだから。」
「お嬢様!?」
「咲夜も来てたのか.......ありがとね。」
「いえ、お嬢様が無事なら何よりです。しかし、どうやってあの一撃を....」
「とっさに腕を蝙蝠に変身させて避けたのよ。まあ風圧で脇腹とか羽が傷ついたけど。」
レミリアはゆっくりと起き上がりながらそう言った。それと同時に、亡くなっている腕に、バサバサと音を立てながら無数の蝙蝠が集まって腕を作り上げた。
「流石は館の主人を名乗るだけはあるな。絶対に生きる残る意志を捨てぬのは、実に天晴れなことよ。」
「結局勝ったのはあんただから皮肉にしか聞こえないわよ。しかもおかげで右の羽はこのザマなんだから。」
パサッ!
「うっ....これは....」
風頼は見た。レミリアが羽を広げると、それはまるで火炎放射で燃やされたかのようにボロボロになっていた。
「早くパチェ回復してもらわないといけないわね。あんたが幻想郷にいなかったことを本当に感謝するわ。崩壊どころじゃ済まされないもの.....」
「ほう、ならば機会があれば寄ってみようとするか....サイタマと一緒に。」
「絶対来んな。」
ラインハルトは興味を抱いたらしく、是非寄ってみようとするも、直様レミリアに釘を刺されてしまった。
「さて、次は風頼と咲夜が勝負か。特に風頼、あんたの今までの経験全てぶつけて来なさい。」
「うん、分かった。」
「思えば、私と風頼さんが戦うのは初めてですね....もちろん、全力でいかしてもらいますよ。」
「まあ二人とも、精々頑張りなさい.....」
ザッ!
「いや、急遽進路を変更する。」
レミリアが闘技場を立ち去り、風頼と咲夜が向き合おうとした瞬間、ラインハルトは唐突にそう言った。
「丁度ベスト4の選手が集まったのだ。このまま決勝戦を始めるぞ。」
「「はい?」」
風頼と咲夜はおもわずポカンとしてしまった。会場の観客も、ラインハルトの突拍子の発言にざわざわと困惑し始める。
「卿らは恋仲なのだろう?そして主人は私の手によって敗北し堕ちた。動機は揃っているではないか....主の誇りを取り戻すために、卿ら姫と騎士の愛の力で私を倒してみたまえ。その方が、観客も盛り上がるのではないか?まあもっとも、姫役がメイドというのもなかなかに皮肉が効いているがね.....フフッ」
「いや、ちょっとま.....」
「異論は認めぬ。」
バッ!
風頼が異議を申し立て用としたが、ラインハルトはそれを遮る。そしてラインハルトは、聖槍を審判に向けながら、言い放つ。
「そう言うわけだ、今から特殊決勝戦を行う。開始のコールを行いたまえ。」
「え?....し、しかし!いくらS級のあなたの指示でも、本部かの許可を取らなければ....」
「なに、責任なら全て私が負う。なんならキングから許可をもらえば、幾らか幅は聞くのではないかね?」
「....解説席のキングさん、どうしましょうか?」
そして、キングに注目が集まる。キングは動揺する様子を見せずに短く告げる。
「彼の要望に応えてあげてくれ。後から俺が本部にフォロー入れておく。」
ウオォォォォッ!!!
(もうどうにでもなってくれ...,)
キングがそう言うと、歓声が響き渡った。本人に関しては考えるのをやめ、自暴自棄な状態になっていた。
一方サイタマ達は....
「急な展開ですね。」
「まあ、ラインハルトの事だからこうなるとは思ってたけどな....」
二人とも、ラインハルトの唐突かつトンデモ発言に呆れ果てていた。
「そう言えばラインハルトが言ってた自分の戦闘スタイルについてですが....先生はもう理解したんですか?」
「ん?.....あーアレのことか。おう、なんとなくだがな。」
「本当ですか?教えてください!」
「まあ、あくまで予想だけどな。例えばあいつの武器、槍じゃん。中、遠距離対応の武器だし、あいつ自身接近戦も強い、あいつが滅多にやらないだけ。....んで、もうこの時点で大抵のヒーローは詰むな、間合いが全くとれなくて何もできねえ。プラス、部下を召喚したり、そいつらの能力も操れる。やられる相手からしたら堪ったもんじゃないな。つまり.....」
「つまり?」
「グーチョキパー、なんでも好きな時に出せるタイプだと思う。引き出しが多い.....と言えばいいかな?」
「えっ」
サイタマがそう言い放つと、ジェノスは驚愕した表情で、冷めた声を漏らしてしまった。
「バカな!?そんな万能な人間がいるはずが.......いやしかし、今までのラインハルトの戦闘を見てると、確かにそれにしか当てはまらない気が....」
「まああくまで俺の予想だがな。それに、万能だからって、必ず勝負に勝てるわけじゃない。」
「え、それはどういう意味ですか?」
「勝負に絶対に勝てる特集能力を持ってるってわけじゃねえだろ?つまり、超低いとはいえ、勝てる可能性はあるわけだよ。」
「ああ....なるほど。」
「ま、あとはあの執事のガキ次第ってところだろうな。期待して見ていようぜ。」
「そうですね。」
そうして再び、二人は闘技場で決戦をしょうとしている風頼と咲夜とラインハルトに視線を移した。
そして再び闘技場にて.....
バッ!
「ではこれより決勝を始めます!両選手、入場をお願いします!」
「風頼、咲夜!」
審判のコールと共に、二人が入場しようとした時、背後からレミリアが声をかけた。二人は振り返る。
「コホン、紅魔館主として命令するわ。『絶対、生きて帰ってきなさい』......破ったら、どうなるかわかっているわね?」
「.....もちろん。」
「必ず守り通してみせます、お嬢様。」
カッカッカッ......
そう言って、二人は再び闘技場の中心へと進んでいった。それを見送ったレミリアは....
「私は、奴を倒せるなんて思っていないわ。ただ、あの余裕そうな表情を崩してやればいいの....」
そう呟き、彼らが生きて戻ってくることを願っていた。
そして....
「覚悟の方は、出来たかね?」
「ああ、あんたを地獄に叩き落とす準備はな!」
「お嬢様に傷を付けたこと、後悔することね!」
「フフフ、いい殺意だ。ああ....やはり戦場とはこうでなくてはな。では、そろそろ合図を頼もうか。」
審判はゆっくりと手を挙げ、
「ラインハルトvs風頼信世&十六夜咲夜....いざ尋常に.....勝負!」
パァン!
ワアァァァァァッ!!!
合図の銃声と共に、決勝戦の火蓋が落とされた。
「まずは先手を....っ!」
「っ!?」
風頼と咲夜は共に攻撃を仕掛けようとしたが、止まってしまった。何故なら....
「.....」
なんとラインハルトは武器であるロンギヌスの槍を出していなかった。手を組み、二人をじっくりと余裕の表情で見据えていたのだ。
「何やってるのよあの二人は!あいつが武器を出してないのよ、チャンスじゃない!」
「ちょ....レミィ、動かないで!ちゃんと回復できないわよ!」
それを見つつ、回復魔法を受けていたレミリアは怒号をあげていた。相手が相手とはいえ、絶好のチャンスを見逃すのは、少し気に食わなかったらしい。だがその時、珍しく美鈴があることに気づいた。
「....お嬢様、恐らく攻撃しなかったのではなく、出来なかったと思われます。」
「え、何で?」
「周りをみてください。」
「周りって....ああっ!」
彼女の言う通り、闘技場の端をよく見てみると.....
オォォォォォォォォッ.....!
「闘技場を囲むように....伏兵が!」
そう、風頼と咲夜を確保するかのように、ラインハルトの髑髏たちは、武器を構えながら、待機していたのだ。
「恐らく、風頼さんと咲夜さんが何か仕掛けてくると踏んでの判断でしょうね。本来のラインハルトだったら圧倒的な力でねじ伏せてくるんでしょうけど、そしたら2人の策にはめられる危険がある。だからあえて受け身のスタイルをとってるんです。そうすれば、ハズレを引くことはないのですから....なるほど、軍師としても一流ですね....」
「くっ、小癪な....風頼、咲夜!ビビってんじゃないわよ!ようするに向こうは逃げ腰ってことなんでしょ!?」
そうレミリアは叫ぶが、2人はやはりジリジリ追い詰められており、なかなか動けずにいた。
(このままでは、ジワジワとやられる....っ!)
「....咲夜さん、俺が守りますから思いっきり奴に攻撃してください。」
その時、風頼はボソッと咲夜に指示をした。しかし咲夜は風頼が犠牲になることが気になり、反対する。
「そんな、いくら風頼さんでもこの数をさばくのは....」
「それでも動かないと展開はつかめません。大丈夫、ラインハルトはこの軍の司令塔....司令官の身に危険が迫れば、統制がとれなくなる。だから奴の周りにも防御体制をとるはずです。だから、僕に対する攻撃も、そんなに多くはないはず。」
「でも....」
「大丈夫です、僕を信じてください。」
「.....わかりました。」
承諾をした咲夜は、キッとラインハルトを睨みつけ、そこに向かって最大速度で疾走した。
「オォォォォォォォォッ!!」
ドドドドドッ!!
「邪魔するんじゃねえぇぇぇっ!!」
パキィィィッ!!!!
当然、伏兵は咲夜の前進を妨害するために銃撃を放つ。しかし、風頼は弾丸の弾幕全てをバリアでさばき続ける。
「ほぉ....綺麗なコンビネーションだ。」
ナイフで歩兵を切りさばきながら突き抜ける咲夜、その背後を強固なバリアで守る風頼の姿を見たラインハルトは、思わずそう言ってしまった。
「喰らいなさい!」
ババババババババッ!!!
咲夜はラインハルトの眼前全てに無数のナイフを投合した。その数、500以上はあると言えよう。
「私に致命傷を負わして、軍の統制を崩すつもりか....模範回答だな。だが、一つ教授してやろう。『万軍を凌駕する将、そうした者がいる時点で、兵法などに意味はない』....とな。こんな風に。」
カッ!
パキィィィッ!!!!
「うそ!?ナイフが全て.....弾き返えされたっ!?」
ラインハルトがナイフの弾幕を睨みつけた瞬間、全てのナイフはラインハルトの身体に刺さるどころか、弾き飛ばされてしまった。
「私が大人しく座して待機でもしてると思っていたかね?答えは否だ。これでも現場主義でね、傍観しているだけでは何もつかめんよ。」
「くっ....だけど、少し油断が過ぎますね。」
「?」
バッ!
「どんだけ強い奴でも、人間だったら後ろは死角だからな!」
「むっ....」
なんと、いつの間にかラインハルトの背後に風頼が居たのだった。
「咲夜さんを守りながら、背後に回り込んでいたんだよ!」
「ほう、私がメイドに集中してる隙をついたわけか。」
「ああそうだ、敵の背後を取るのを卑怯だなんて思うなよ!」
コオォォォ.....
「バリアクラッカー!!!」
風頼は掌にバリアを集中させ、無数の結晶を形成し、至近距離で一気に放出した。
ドドドドドドドッ!!!
バリアクラッカーを放たれた次の瞬間、ラインハルトはまるでもくひょうにむかって刺突をするような構えを取る。それと同時に、短い詠唱を詠った。
「形成(Yetzirah)ー聖約・運命の聖槍(Longinuslanze Testament)」
バゴォォォォォォォォ!!!
軍勢が消えると同時に、ラインハルトの手のひらに黄金の光が集中し、神殺しの槍『ロンギヌスの槍』が形成された。形を成したと同時に、眩い破壊光が放たれ、その光によってバリアクラッカーが消滅してしまった。
「嘘だろ....槍の発現だけで、バリアクラッカーー全てを消しとばしやがった!」
「奴の存在そのものが、破壊の嵐ですか!?」
「何を言っておる、まだ序の口であろう。」
ブンッ!!!!
(まずい!)
ラインハルトは振り返ると同時に、風頼に向かって聖槍を振り切ろうとする。神殺しの槍を生身の人間が受けたら、間違いなく即死。そう思った咲夜は、スペルカードを発動した。
「『咲夜の世界』」
キイィィィィィ......
咲夜の能力は『時間を操る程度の能力』時間を操作して、完全に停止した世界を作り上げた。その隙に風頼の身体を掴み、ラインハルトから距離を取り始める。
「無駄だ。」
ドゴォォォォッ!!!
だがその時、時間が停止した世界で動けないはずのラインハルトが喋り出したと同時に、『咲夜の世界』が崩壊した。いくら『5秒』しか効果のないとはいえ概念操作能力、普通は自力で解除できるわけがない。
「っ!時間が止まった世界を、自身の霊圧で破壊した!?」
「どうやら、このような経験は初めてのようだな。」
咲夜も、戦う前からラインハルトなら、恐らくなんらかの形で対応はしてくるとは思っていたが、無理矢理破ってくるとは思わなかった。だが当の本人はそれほど珍しくはないと言わんばかりに説明する。
「私の配下の中に、頭脳明晰な者がおってな....,彼の台詞を借りて言うなら『厳然な実力差とはこういうもの。相性や奇策が通じるのは、ある程度拮抗したレベルの関係だけに限ることが前提だ』....とな。つまりこの現象は、卿の創造した世界より、私の霊圧が強かったわけだ。ついでに言うと、私の時間操作能力者との邂逅は、今回が始めてと言うわけではない。」
「.....つまり単純にあなたが強いから効かなかったとでも。なんで子供じみた理屈....それゆえにタチが悪いですね。」
とここで咲夜は呆れかえり、同時に絶望を感じていた。大方予想していたとはいえ、奥の手である時間停止を完全に攻略されてしまった。ならば後は自力で戦うしか方法はない。しかしこの男、よりによって筋力勝負で吸血鬼であるレミリアに勝ってるのだ。ならば並みの人間より強いだけの咲夜じゃ当然、勝てる要素はほぼ皆無。先ほどのラインハルトの言葉を借りるなら、厳然な実力差が、目に見えるほど出来てしまったのだ。
ザッ!
「言いたいことはそれだけですか?」
「風頼さん?」
その時、咲夜とラインハルトの間に、風頼が現れたのだ。
「こっから先は、俺が貴方の相手をする!」
「ほぉ....」
「咲夜さん。」
「は、はい!」
「助けてくれて、ありがとうございます。あとは見守っててください。」
そう言って、風頼は再度ラインハルトに向き合い直す。無論、今までの状態で真っ向からぶつかり合えば、圧倒的な力量で押しつぶされるのは目に見えている。
「では、再度踊り直すとするか、失望させてくれるなよ?」
「....踊るのは貴方だけだよ。」
「何?」
ラインハルトは眉をひそめる。すると、風頼の胸に下がっているダイヤモンドが、今までの比較にならないほど輝き始めた。それは、ロンギヌスの槍とは負けずとも劣らないほどに。
「行くぞぉぉぉぉっ!!!」
ドドドッ!!!!
「っ!」
ガギイッ!!
一歩踏み出すごとに加速し続ける風頼に面食らいつつも、ラインハルトは風頼の蹴りを聖槍の柄で弾き返した。そう、防ぐのではなく、弾き返さなければそのまま速度の乗った衝撃波が進行してくるほど、風頼の蹴りは貫通性があった。
(この唐突な急成長....どう考えても、あのダイヤモンドのせいだな。原理は詳しくはわからないが.....ダイヤモンドから流れるエネルギーを、一つ一つの攻撃に組み込んでいる。まるで、別々の人格の少年が、分裂しつつ襲ってきてるかのように。)
「まだまだぁぁぁっ!!」
「だが、防御の方はどうかな?」
ブンッ!!!!
「っ!」
ドゴォッ!!!!
ラインハルトが振るった聖槍が、風頼の道を切断した。風頼は声を上げる間をなく、そのまま崩れてしまった。
「っ!」
「.....?」
だがその時、ラインハルトはある違和感を感じた。
(身体を割った時、魂を砕いた感覚がなかった....っ!まさか、ダイヤモンドによる急速のパワーアップと組み込んだ....)
バッ!
「サイタマと戦った時に使った、バリアによる分身か!」
だが時は既に遅し、すでに風頼は最大スピードでラインハルトに接近し、あと僅かで攻撃態勢へと切り替わる。しかも、咲夜のナイフでラインハルトの首を絶つつもりだ。
「止めだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ブゥゥゥゥン!!!!!
「....その覚悟、当時の刹那と比べ、どれほどか.....」
奇しくもそれは、旧世界において永遠の刹那との最終決戦時の最後の一撃と似ていた。もっとも当時とは違い、刹那の攻撃がラインハルトから見て左からに対して、風頼の攻撃は居合切りのように、右から迫っていた。
(勝った!恐らく奴の防御は間に合わない、僕の勝利だ!)
その攻撃力は過去最大かつ最速に上がっており、水平線にまで伸びる海を、一刀の元に断つ斬れ味を誇っていた。そう、あとはラインハルトにその刃を入れ込めば、風頼の勝利である。
ードクン!
(なっ!?)
だがその時、風頼の思考に電撃が走った。世界がスローになった。そして風頼の視界に、ナニかが見え始めたのだ。
(これは、何だ!?)
ゴオォォォォォ......!!
ラインハルトの顔は、前髪がかかって全く見えなかったが、問題は彼の背後である。まず第一に風頼が感じたのは、獅子だった。特に、ライオンと全く同じと言える獣の顔が見えたのだ。それも、人間の頭を丸呑みできるほどの大きさだ。
そして、その獣が風頼を今からかみ砕こうとしていたのだ。まるで、これより先に進めば、ラインハルトがそれとよく似た行動をこれからすると、暗示してるかのように.....
(僕がこれ以上攻撃すれば、とうとう本気の牙をむきだすとでも言うつもりか?....だが、攻撃を止めれば、それこそそっちのほうが危険だろ!僕は、生きて帰らないといけないんだっ!)
ーコレヨリサキハキケン
(っ!)
ー黄金の獣ノハカイヲウケルコトニナル
(何だよ、それはっ!)
ーセイゾンカクリツ0%
ーギャクニ、シボウカクリツ100%
(ふざけるな!そんなの理不尽すぎるだろっ!)
ーテッタイセヨ.....ニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ!!
(何だよ!結局どうすればいいんだよぉぉぉぉ!!)
風頼は、唐突な自身の生存本能との議論の板挟みに悩まされてしまった。自問自答を繰り返しているうちに、刻々とナイフがラインハルトの首へと迫っていく。
(僕は.....ここで死ぬ運命なのか?)
その時だった。
(ーコホン、紅魔館主として命令するわ。『絶対、生きて帰ってきなさい』......破ったら、どうなるかわかっているわね?)
(っ!)
キイィィィィィッ!!!!
シュウゥゥゥゥゥ.....!
「ハァ....ハァ....!」
「ん?」
「風頼....さん?」
ラインハルトの首を絶とうとしたナイフを、風頼は急ブレーキを立てて止めた。その不意な行為に、ラインハルト、そして咲夜も戸惑ってしまった。必殺のチャンスを、自分の手で止めてしまったのだ。
「何の真似だ?せっかくのチャンスを不意にするとは....何か、気の迷いでもあったのかね?それとも、私を殺すことに、抵抗を感じたとでも?」
「まさか、殺さないであなたを倒すなんて、そんな器用な真似は僕にはできません。これでも全力全開でしたよ。」
「ならば尚更、全能力を用いて私を「だがっ!」.....なんだ?」
「これ以上、闘いのレベルが上がり続ければ、殺し合いになると判断した。矛をおさめろ獣!僕はお嬢様に『絶対、生きて帰ってこい』と命令を受けている。それに、僕は咲夜さんを過去の因縁から救済し、幸せにしなければいけない使命があるんだ!ここで死ぬ真似事なんてできないんだよ!!」
「.....フッ」
「?」
「フフフ......ハハハ、アハハハハハハハハハハーーーーー!!!」
僅かな沈黙。その時のラインハルトの表情は、文字通り目が点となり、面食らった顔をしていた。そしておもわず吹き出してしまい、大笑いをし出したのだ。そして再び風頼に向き直る。
「否だ、認めぬよ。」
「何!?」
「どだい戦場とは、敵兵を殺すことが第一の使命だ。でなくば、卿のいう生きて帰ることなんて不可能だよ.....認識が甘いと言わざるを得ないな。使命を履き違えては困るぞ。」
「くっ.....だが「しかし」.....っ!」
「....忠道、大義だ。私との戦闘よりも、主人の使命を重視し、この私を恐れずに矛を収めることを命令したのは見事だ。従者の鏡と言えるよう.....そして、己が矜持を胸を張って宣言したのは、感動見入ったな。」
コォォォォ.....
バッ!
そう言ってラインハルトは聖槍を収め、くるりと風頼に背を向ける。そして出口の方へと向かおうとした。その突然の行為に、会場がざわつく。
「故に、今回は卿の主張を尊重するとしよう。サイタマとの善戦に続き、私との闘技、実に楽しかったぞ....卿が使命とやらを終えた時、どれほど成長するのか気になるな。その時に、もう一度再戦したいものだ。フフ....」
カッカッカッカッ......
ラインハルトゆっくりと審判のへと近づき、短く告げた。
「私は棄権する、風頼少年が優勝だ。」
「へっ....」
カッカッカッカッ.....
そしてそのまま静かな軍靴の音を響かせながら、ラインハルトは闘技場を去ったのだった。
「あ....えっと....っ!」
バッ!
「勝者、風頼信世&十六夜咲夜選手!!」
ワアァァァァァァーーーーーー!!!!!
『な.....な....なんとなんと!!驚きました!いや〜私も解説を忘れてしまうほどの激戦!正直私、ラインハルト選手の圧勝かと思いましたが、まさかまさかの!執事長・風頼選手と、メイド長・十六夜選手の優勝です!』
パチパチパチパチパチパチ!!!!
「すげー、あの坊主やるじゃねえか!」
「カッコいい....あんな彼氏欲しかった!」
「あのメイドさん、羨ましすぎる....」
「ぼ....僕も将来執事になってみようかな?」
「バーカ、あんたラインハルトさんと正面からぶつかって勝てると思ってるの?」
拍手喝采。二転三転と激戦が繰り広げられたが、異世界から訪問した1人の少年と少女の優勝に、観客歓声を上げずにはいられなかった。ヒーロー界の頂点であるS級、しかもその中の超新星であり、最強角の1人と議論されているラインハルト相手に、曲がりなりにも勝利したのだ。関心しつつ、感動せずにはいられなかったのだ。
「嘘....僕の、勝ち?」
「何か、まだ実感湧きませんね。あんな化け物と正面から戦ったのに....」
「風頼!咲夜!」
「咲夜さーん!!」
2人が声のする方を向くと、そこには激励を送る紅魔館のメンバーがいた。
「ふぅ....みんながいたから、勝てたんだよなぁ。」
「....ふふ、そうですね。」
そして二人は、大勢の人が祝福する中、表彰式を迎えたのだった。
一方、ラインハルト達は。
「あーあ、お互いあの坊主に負けちまったなぁラインハルト。」
「.....そうだな。」
「言っとくが、本気を出せばー....とか、そういった言い訳は聞かねえぞ。そういうの一番カッコ悪いからな。」
「無論だ、形は違えどあれは私なりの全力だよ。ヒーローの一員としてな。卿とてその点は同じであろう。」
「当たり前だろ。対等の勝負じゃねえと、自分や相手に対して失礼だからな。」
「当然だ....だが」
「それでも.......」
フゥ.....
((本気(マジ)でぶつかり会える相手は、欲しいものだな....))
闘技場から帰宅する最中、サイタマとラインハルトは、ため息をつきながら、心の中でそう呟いていた。
「そう言えば、ジェノスはどうしたのかね?」
「あー、あいつは、今回学ぶことが多かったから、博士ってやつと話して、新しいパーツを調整するから先に帰っとくってさ。あと、お前と一緒にいた真っ白い奴は?」
「ベイのことか。恐らく打ち上げにバーあたり行ってると思う。まあ連れ(シュピーネ)と一緒に飲むと言ってたから、何なりと楽しんでいよう。」
「へー。あ、そうだ。協会との責任とか話はどうなったんだよ?」
「キングを通して話したが、『死人さえ出てなければ、別にいいよ。』と言ってたらしい。」
「適当だなオイ。」
「実際、本部の人間は大体そんな連中ばかりらしい。」
そうふたりは何気ない会話をしながら、帰路を歩いていると.....
「あのっ!」
「「ん?」」
後ろから声が聞こえた。振り返ってみると、そこには風頼が居た。
「あの....今日は、本当にお世話になりました。それと、いろいろ勉強になりました。機会があれば、また一緒に戦いましょう!」
「.....ああ、そうだな。戦ってるときのお前カッコよかったぜ。元の世界でも頑張れよ。」
「卿なら、己が使命を達成できると私は信じている。まあ、もしピンチになったら私たちを呼ぶといい。我々はヒーロー故に、支援に来るかもな....フフ」
「あ、ハハハ....」
風頼はつい苦笑いしてしまった。もし彼らが自分たちの世界に来たら、元凶の巌馬を倒せるかもしれないと思った。もっとも、彼らを全力で戦わせたら、世界の一つや二つ、犠牲になるかもしれないが....
「ありがとうございます。けど、気持ちだけもらっておきます。この異変は、自分たちで何とかしないといけませんので....本当にピンチの時に、お願いします。」
「相わかった。」
「風頼さーん!そろそろ帰りますよー!」
「うん、わかった!....では、さようなら。また会いましょう!」
「おう、気をつけて帰れよ!」
「Sieg Heil! Viktoria!(ジークハイル・ビクトーリア!)卿らに勝利を!」
タッタッタッタッ......!!
ラインハルトとサイタマの激励を受けながら、風頼達は元の世界である幻想郷へと戻って行った。
「さて、我々も帰るとするか。」
「だな。」
番外編 ー完
再度となりますが、コラボの許可を下さったニシン先生、ありがとうございました!
風頼君の物語が無事達成することを心から、応援しています!