ある日のこと。
「きゃあああ!怪人よぉ!!」
「巨大な豚の集団がこっちに迫っているぞぉぉぉ!!」
『住民の皆様、災害レベル鬼の怪人が現れました。至急避難してください。』
ドスン!
「ブーヒッヒッヒッヒッヒー!俺たちは太古からの偉大なる生物、オークであるぞい!生っちょろい人間の雌どもよ!俺らの子孫を繁栄させるために、我々の奴隷に....」
ザッ!
「Guten Morgen.サイタマ」
ドバァァッ!!!!
「ブヒイィィィィィィッ!!!」
ラインハルトが、オークの集団を一瞥しながら、サイタマに挨拶すると、オーク達は体に亀裂が刻まれながら、一匹残らず死滅してしまった。
「おーおはよう。あ....そういえば、お前ついにS級に入ったらしいじゃねえかよ。おめでとう。」
「Dank。かくいう卿もB級7位か....もうすぐA級だな。」
ラインハルトの挨拶に、サイタマは軽く返した。
「なあラインハルト、少し寒くなったからよそろそろ鍋しようかなって思ってるんだ。お前、鍋囲んだ経験あるか?」
「ほう、鍋か....いや、私は始めてだな。」
「よし、決まりだな。やっぱ鍋はたくさんいた方が盛り上がるからな〜。」
「そうだな。一人鍋は縁起が悪いからな....そう、縁起が悪いのだよ....!」
「何でそんな2回も言って強調するんだよ?....別に一人鍋でもいいじゃねえかよ。」
「いや、実はだな.....」
ラインハルトがそう言って、一人鍋の黒歴史をサイタマに語ろうとした瞬間....
「見つけました、フブキ様!」
ザッ!
「「ん?」」
突然声が聞こえた方を見ると、そこには黒スーツをつけた二人の男と、同じくスーツと、黒いドレスをつけた二人の女性がいた。特に、真ん中に立っているドレスをつけた女性は、高貴な雰囲気とグラマスな身体をしてる。そして、ラインハルト程ではないが、並の人間なら魅了される程のカリスマを放っていた。
「始めまして、B級7位のサイタマさん。私はB級1位の『フブキ』よ。後ろの3人は、マツゲ、山猿、三節棍のリリー....私の部下よ。」
「へー、B級1位ねぇ。」
そう、彼女はサイタマが現在所属しているB級1位のトップヒーローなのだ。しかしサイタマは、特に気にする様子もなく、ボート見ているだけだった。
「何がへーだ!お前、B級に入ったら、まずフブキ様に挨拶するのが礼儀だろうが!」
「挨拶ねぇ....」
マツゲと呼ばれる男は、サイタマの態度が気に障ったのか、大声で怒鳴りたてるが、サイタマはそれも軽く流し、ラインハルトの方へと向く。
「なあラインハルト、お前の騎士団ってとこも、そういう義務あんのか?」
「.....一応初期の頃は、私に破壊された順に入団させていたことがあったな。」
(えっ、ラインハルト?)
と、ここで始めてフブキはサイタマの隣にラインハルトがいたことに気付いた。彼はヒーロー界に突如現れた超新星.....B級とはいえ1位のフブキが知らないわけがない。
(どっ、どうしましょうかフブキ様!?)
(落ち着きなさい、まずはやるべきことをやるのよ!)
リリーが焦りの表情でフブキに小声で問いかける。フブキは彼女をそう言って落ち着かせ、一呼吸置いてから、再びサイタマへの尋問を始めた。
「話を続けるわよ!サイタマ、ヒーローには多くの派閥があるの。その中でも最大である我々フブキ組の傘下に入りなさい!そうすれば、B級上位のポジション保持を保証するわ。」
「は?いいよ別に、俺はB級だけじゃなくA級以上を目指すから。それに、俺はラインハルトと一緒に活動するから、派閥とかどうでもいいんだよ。」
「え、何よそれ?つまり既に新S級ヒーロー、ラインハルトの組織に入っているというの!?あのハイレベルなところにB級がどうやって....ど、どうせ媚びでも売って.....」
「それは違う。サイタマは黒円卓の騎士ではない。彼は私と目的が合致した友だ。過去に存在したと言う、災害レベル魔王の存在を探すという目的でな。」
「そういう事。」
「......は?」
ラインハルトの説明を聞くと、フブキはあっけを取られた表情をして、ポカンとしていた。そして.....
「あなた達、何都市伝説を、本気にしてるの?」
「何?」
フブキの呟きに、ラインハルトは眉をひそめた。
「甘粕事件の事を話しているのでしょう?あれは根も葉もないただの『噂』よ。だって、まず第一に甘粕の死体が見つかってないじゃない。海底に沈んだという話もあるけど、それこそ、骨の一本も見つかってないじゃない。それに、甘粕を倒したと言われている『柊四四八』彼の子孫が見つかってないのも輪をかけて怪しい。もし居るのならヒーローとして、いや....そうじゃなくても、あの英雄の子孫なんだからマスコミに取り上げられてるはずよ。だけど、数百年経った今でも今だにそんな話は出てこない。戦時中だったし、そんな幻覚を見た人がいたのでしょう?だから、これは所詮妄想の話なのよ!」
「さすがフブキ様、見事な正論ぶりです!」
フブキの独白にリリーが誉めたたえると、フブキはフフンと得意そうには微笑んだ。
「聞いたかね、サイタマ?」
「ああ、ますます面白くなってきたな。嘘くせえってのが、逆に真実味があるっていうか....もっと調べたくなるっていうか!」
「私も同意だ。何でもいいから、とにかく情報が他に欲しくなったな。」
「なっ!?」
しかしラインハルトとサイタマは、逆に目を輝かせていた。その様子を見て、フブキは我慢できなくなった。
「くっ、もう良いわ...貴方のような甘い夢を見ているヒーローがいると、B級ヒーローの質が下がってしまうわ!!3人とも!彼を二度とヒーロー活動をできなくなるよう、痛めつけなさい!」
「「「はい!!」」
そう言って3人は『ピューラー』『三節棍』『拳』を構えながら、サイタマへと襲いかかった。
(イラッ)
サイタマは少し苛立った表情をし、拳を握りしめ、そのまま一振りで3人をぶっ飛ばそうとした。
ドゴォォォッ!!!
だがその時、頭上の無人ビルが爆発した。
「キャアッ!?」
「.....ジェノスか。」
「お前ら何やってんだよ?」
爆発したところから現れたのは、ジェノスだった。ジェノスは体勢を立て直すと、サイタマたちの存在に気がついた。
「先生、ここにいたのですか!例の音速のソニック(笑)とやらが、先生の部屋のまえにスタンバッてました。この粘着ストーカーは俺に任せてください!」
バッ!
「見つけたぞサイタマ!」
「またお前かよ....」
ジェノスがそう言ってると、街灯の上からソニックが現れた。彼を見ると、サイタマは少しゲンナリとした表情をした。
ヒーロー協会 幹部会議室。
「ジェノス君は、怪人を恐れないアグレッシブな戦闘スタイルから....『鬼サイボーグ』
サイタマ君は、見た感じから....『ハゲマント』
ラインハルト君は、金髪をなびかせながら、死者を操っていく感じから....『金色の獣』
以上でよろしいかな?」
「異議なし!」
「いやー彼らはそれなり成果を出している。ヒーローネームを貰ったことで、立派なヒーローだ。ますます成果を上げるだろうな。」
「ホッホッホッホッホッホ(笑)」
ヒーロー協会の上層部の者たちは、反論する様子もなく、ゲラゲラと笑いながら、だらだらと会議をしていた。その様子を見て、シッチは呆れつつ怒っていた。
(何て楽観主義者共だ!ガロウの襲撃もあったにも関わらず、その件に関しては15分ちょっと!
対してどうでもいいヒーローネームの話し合いを2時間もかけやがって!これ以上被害を出した時、責任取る気はあるのか!?)
ーああ、例のいかれた人間のことか。
ー所詮は人間だ。怪人になるわけないだろう。
ーシルバーファングも自分からこの件に関わってるし、最悪タツマキが一瞬にしてケリをつけてくれるだろう。
ー我々もそれに同意だ。
ガリッ!
(くそ、人間怪人の対策は本当にそれだけでいいのか!?)
ガチャ!
タッタッタッタッ!
シッチは会議室を離れると、急いでとある場所へと走って行った。
ところ変わって、とある病院。
(まさか、あんな若造に遅れをとるとは.....S級ヒーローとあろうものが、情けない。)
S級16位のタンクトップマスターは、ガロウとの戦闘で負傷をし、入院していた。幸いに後遺症はなく、もうすぐ退院できるが、ガロウに敗北した現実が、彼の表情を暗くしていたのだ。
バサバサバサバサ......
「これはこれは....酷くやられたようだな。」
「お前か....第4天」
窓側を見るとなんとそこには、リンゴを剥いているメルクリウスがいた。しかし、その唐突な現象に、タンクトップマスターはいちいち驚いたりはしない。もはやこの存在が、超常な事をしても、別段不思議では胃のだと、直感で感じていたのだ。
「お見舞いに来てやったのだ、感謝したまえ。」
「こう言うのは善意でやるものだから、見返りは求めないものではないのか?」
「ほう、脳筋の割には知識はそこそこあるのだな。ほら、りんご食うかね?」
「ああ、どうも。」
シャク....
タンクトップマスターは、空いてた左手でリンゴを受け取り、ゆっくりとかじった。それを頬杖をつきながら見ていたメルクリウスは、話を続けた。
「では君の善意に期待して、少しお願いをしようかな?」
「何だ、ガロウ関係の話か?」
「いいや、もうガロウの事は忘れたまえ。そもそもして、君はガロウに敗北をしたのだ。ゆえ、もはやその舞台に上がる資格はない。」
「くっ、否定はできないのが苦しい.....」
「だからこそ、私が君のために第2の舞台を用意した。この時点で交渉は成立しているのだよ。あとは、君は承諾するだけの話だ。」
「....それで、依頼内容はどんなのだ?」
少々気にくわない表情だったものの、タンクトップマスターは、話を受け入れる様子だ。しかし次の瞬間、メルクリウスはとんでもないことを言った。
「....メタルナイトの『離れ』を探索して欲しい。」
「はぁ!?」
タンクトップマスターは傷だらけの身体を無視して身をよじらせるほど驚いた。無理もない。同じS級ヒーローのプライベートゾーンを見てこいと言ってきたのだ。いくらメタルナイトがヒーロー側に対して協力的ではないとはいえ、情の深い彼が頷くわけがない。
「ふざけるな!そんなのに承諾するわけがないだろう!」
「静かにしたまえ、他の患者の迷惑だぞ。」
「貴様.....まさかヒーロー協会を潰すつもりなのか?」
「まさか、それが真実なのならば既にやっている。私からしたら、ヒーローなんぞ心底どうでもいい。潰れたところで、ああそうかとも思わん。ただ、ヒーローの中でメタルナイトと言う奴が少々気になるのだよ。」
「ならば、何故ヒーローの俺に協力を申請してくるんだ?」
「最近巷で噂のカルト教団がいるだろう?わたしと愚息がそいつらの抹殺活動をしているのだよ。女神の護身のためにな。と言うか、私はそっちがメインなのだがね。」
「ふん、そうなのか。」
「だが、その親玉菌がなかなか見つける事が出来なくてな....世界中しらみ潰しに探しているのだが、炙り出てこないのだよ。」
「.....成る程。キチンとカルト教団のボスを見つけ出すために、メタルナイトの調査を俺に頼んだというわけか。」
「そういう事だ。それで、どうかね?」
メルクリウスがそう聞くと、タンクトップマスターは、少しためらいを見せつつも、何とかうなずく事にした。
「いいだろう。個人的にメタルナイトの本体がどんな奴か気になるから、承諾はするが.....何故俺に頼ったんだ?自分で言うのもアレだが、俺はS級ヒーロー下位ランカーだぞ?お前なら、上位ランカーに頼みそうなんだが?」
「まあ、確かに。しかし、トップのヒーローであればあるこそ、より強い自負心を抱く事になる。言うなれば、他の存在を受け入れる余裕がないわけだ。タツマキとかが、いい例だろう。」
「俺は違うとでも?」
「ああ、そうだよ。君はS級の中でも1番配下が多いではないか。アトミック侍とやらも、粒ぞろいの弟子がいるが....あれは師匠が斬ること以外考えようともしないからな、見込みがない。」
「そうなのか.....だが、それがメタルナイトの調査と何の関係がある。」
「直接的な関係はない。しかし、君は興味が湧く話だと確言できるな。そう、他を受け入れるということは、可能性の幅を広げれるかもしれんということにのだよ。例えば.....『対超能力用のパワーの発現』とかね。」
「っ!?」
メルクリウスがニヤリと笑いながらそう言うと、かつてタツマキに結果的に分けた現実を思い出しながら、ガバッとタンクトップマスターは起きてしまった。
「ま、信じるも信じないも、君次第だ。ここにメタルナイトの離れの地図と、私作のコンパスを置いておく。気が変わってやめると言うなら、そこらへんに捨てても構わんよ。君の心から離れた瞬間、それはただの紙とコンパスになるからな。」
「......」
「では、あとは頼んだよ。」
オォォォォォォォォッ.....
そう言い残して、メルクリウスは埃一つ残さず、消えていった。それを見送り、彼は地図に目を通す。
「.....V市の大迷宮の森、そこの中枢か。くそっ!第4天め.....こんなの、断れるわけないだろう!」
タンクトップマスターは頭を抱えながら叫んだ。そして、自分の帰りを待っているタンクトッパーたちのことを思い出す。
(あいつらのマスターとしてふさわしいタンクトッパーになるためにも、俺は歩みを止めるわけがない!俺は成長するんだ!)
ガタッ!
ビリビリビリ!
腕に巻いてた包帯を剥がし、メルクリウスがおいていった地図とコンパスを取った。そして、病院の外へと出る。
「よりタンクトップの似合う男になるために....目指すは大迷宮の森だー!!!!」
ダダダダダダダダッ!!!
本当はジェノスとソニックとシュピーネの三つ巴戦を予定してましたが、また展開がダレるのでやめました。