ヒーロー協会A市本部
その内部にて
カッカッカッカッ.....
(今日はS級ヒーロー達が集まる....そして部下の報告によると、恐らくあの『黄金の獣』も来るみたいだ.....こうも直に見ることが出来る機会が来るとは驚いたな。しかもこんな事態に....好都合だ、私の目指す世界のために、じっくりと観察させてくれよ....)
シッチは廊下を早足気味に歩きながら、会議室へと向かっていた。しかも彼は、メールを打ち込みながら、一切誰ともぶつからずに歩いている。そして彼は送信ボタンを押した。その送り主はなんと....『メタルナイト』だったのだ。
そしてサイタマ達は....
ウィーン
「おお....ここか。」
バングの道場から数分後、サイタマ達は本部の中へと入った。するとラインハルトは周りに自分たちがいないことを確認したら、サイタマに話しかけた。
「考えてみれば、S級ヒーローが集まると言うことは、協会側の人間も来るということになるな.....あまり正面切っての進行は得策ではない気がするな。」
「は?なんだよそれ?お前たまにおかしなこと言うよな。」
「卿のトレーニングのほうがよっぽどおかしいと私は思うがな。しかしヒーロー協会の人間はなんとなくだが、きな臭い気がする。」
「ふーん.....ま、気楽にいこうぜ。あくまで暇つぶしなんだからよ!」
パンパン!
「ふ、それもそうだな。」
サイタマはニカっと笑いながらラインハルトの肩を叩いた。まるで友人を慰めるかのように。それに対してラインハルトはクスッと微笑む。だが、内心は決して穏やかではなかった。
(サイタマはああ言ってるが、もしカールが内部の人間をいじっているというなら、間違いなく私にとっての不都合が降り注いでくる。かつて、在りし日の刹那がカールの手のひらに踊らされていたように、私も今カールの手のひらにいるのだからな....とても穏やかな気分になどなれぬな。)
「どうしたラインハルト?変なものでも食べたか?」
「いや、構わぬよジェノス。少しな...」
「?」
非常に変質者な友人のことを考えていると、その美貌がわずかに歪むほど、ラインハルトはグッタリとしていた。自分からきたとはいえ.....
そして、進んでいると、いかにも渋い雰囲気をした侍が立っていた。
「おう、シルバーファング!来るとは思ってたぜ。そしてサイボーグのジェノスに、A級2位のラインハルト....ん?後一人は誰だ?」
「久ぶりじゃなアトミック侍。こちらはB級のサイタマ君じゃ、いずれS級になるから同行させたんじゃ。構わんじゃろ。」
「おっさんもヒーローか、宜しくな。」
「まだ握手はできんな。」
パシィッ!
「っ!」
「俺は強い奴にしか興味ないからな、俺と手を合わしたければ、S級まで登ってこい!あと、俺はまだおっさんじゃねぇ!まだコレでも38だ!」
(38にもなればそう呼ばれてもおかしくはないのだがな.....)
アトミック侍といわれる男は、サイタマの手を弾き飛ばし、対等に話したければもっと強くなれと彼にそう言った。そしてラインハルトは、彼の年齢にそうツッコミを入れずにはいられなかった。ちなみにアトミック侍はS級5位だ。そして....
「ちょっと誰よ!B級なんで連れてきたのは!どうせ媚売りに来たんでしょ!?」
「不愉快、消えて。」
「「......」」
目の前に現れた、ラインハルトの下半身くらいの身長の小さな少女が、サイタマを罵倒したのだ。それを見たサイタマとラインハルトはあまりの唐突さに黙り込んでしまった。
「お、おいジェノス、この迷子....と言うか、ガキは誰だ?」
「彼女はS級2位の『戦慄のタツマキ』ですよ。超能力を操って戦います。俗にいうエスパーです。」
(超能力者か....マレウスやかつてクリストフと戦った双頭鷲の首領の少女と同じタイプのエスパーか。しかし何故魔女というのは幼女の姿になりやすいのだ?体が小さい分、エネルギーの周り具合が良くなるのか?私には理解できん。)
タツマキの姿を見て、ラインハルトはそう疑問を感じた。事実、三人ともそこらの小学生より少し高い慎重だ。小・中学生と自負しても誰も疑問に思わない可能性がある。
「さて三人とも、そろそろ会議室に行くぞ。時間が迫っとるわい。」
「お、悪いな爺さん。」
「ちょ、待ちなさいよ!」
間に割って入ってきたバングは、三人に向かってそう言い、会議室に急いだ。背後でタツマキが叫んでいるが、聞こえないふりを彼らはした。
そして、数分後。
「今日はS級ヒーローの諸君に集まっていただいて感謝する。私は会議の解説役をさせていただくシッチだ。今日集まってもらった理由は、非常に大変な事態になったからだ。」
(お茶ぬるいな....)
シッチと呼ばれる、ヒーロー協会本部の男は、その場にいるヒーロー達全員に向かってそう言い放った。そしてヒーロー達の視線は彼に向けられる。しかしサイタマだけは、お茶をすすってシッチの方には向いてなかった。
(ふと思ったが、あのシッチという男はたまに私に向かって視線を強く当てるな。やはりこの男、カールと繋がりのある男か?)
そしてラインハルトは、シッチが自分を観測するような目線を向けていることに気が付いた。この事実は、他のヒーロー達は気付いてないが、やはり見られてる本人はどうしても気になるような目線だったのだ。
(あの男が『黄金の獣、ラインハルト・ハイドリヒ』.....写真と実物ではやはりインパクトが違う!今にも多くのヒーローの気迫を浴びてきた私の精神が簡単に押しつぶされそうだ.....さすがは現在全ての神格の中で武威は最強と謳われるだけの事はあるな....伊達に『あの神』と同等の覇道の強さ内包してないわけだな。いや、下手すれば、あの世界大戦の中、突如現れた幻の怪人『魔王・アマカス』以上の脅威を持ってるのではないか?今はまだ、彼の本気を見てないからわからないが.....逆に考えれば、もし彼が怪人の見方をしたらヒーロー達の勝てる未来がまるで見えない!)
シッチの評価では、何とラインハルトは、災害レベル神すらも召喚し、操ることのできる災害レベル魔王の怪人以上の脅威を持ってるのではないかと評価された。しかし何故シッチがそこまでラインハルトに着目しているのかはまだ深い理由はわからない。シッチは一呼吸を置いてから、会議を進めた。
「早速だが本題に入らせてもらう。今日の会議のメインは、シババワ様の予言から始まる。」
「何だぁ?シババワの婆さんがまた環境災害の予言でもしたのかよ?そんなの自衛隊とかに任せればいいのだろ。こっちは大事な妹ピアノの演奏会をキャンセルまでしてきたんだぞコラ!」
ひと昔流行ってたヤンキーのような姿のヒーロー『金属バット』が、面倒臭そうに言うと、シッチは表情を変えずにポツリと言い放つ。
「そのシババワ様だが、昨日の晩亡くなった。」
「!?」
ドヨッ!
その言葉に、S級ヒーロー達の表情が一変する。そんな中、自体を理解できないサイタマは、不安そうにラインハルトに疑問を投げた。
「お、おいラインハルト。シババワって誰だよ?そいつが死んでなんかヤベェの?」
「シババワは大きな災害を百発百中の当たるとんでもない預言者だ。予言の量自体少ないが必ず当たるため、テレビにでもよく出る有名な預言者だ。卿も少しはテレビや雑誌を見て勉強するんだな。おそらく一般人でも常識レベルの話だぞ。」
「....肝に命じます。」
ラインハルトとサイタマがボソボソと話してると、シッチはスーツの懐から小さなメモ用紙をテーブルの上に置いて全員の眼に映るように機械にスキャンさせた。そして映像に映ったメモの内容は....
『地球がヤバい』
メモにはそう一言、しかし文字は大きく、濃く描かれていた。
「これが死ぬ前にシババワ様が最後に残した予言だ。お前達、このメモが訴えている意味を理解できるか?シババワ様はごくわずかな未来しか予告しない。しかしその内容の規模はからなずデカかった....地震や洪水、人間に危機をもたらす危険生物の大量発生。どれも多くの命を奪い去っていったもの数あっただろう....しかしそれでもシババワ様がヤバいなんて言葉は使わなかった.....」
バンッッ!!
「そのシババワ様がヤバいと言い、死ぬ前に必死に伝ようとした近い未来起きる災害が、なんと地球に危害を及ぼそうとしている!下手をすれば一部の人間しか聞いたことのない、あの幻の『災害レベル魔王』の再来も考慮されても全くおかしくないのだ!それも最悪半年のうちにだっ!!」
シッチはテーブルを強く叩き、顔から大量の汗をかきながらヒーロー達に強く訴えかけた。
「....しかし、半年以内で結局の所予言にはいつどこで起きるか書かれてない以上、俺たちもどこでどうやって動いていいのかわからない。」
「そうだ!だから君らヒーローのトップに立つものにお願いしてるのだ!お願いだ!なんとか地球を守って欲しい!この通りだ!」
顔に爪で裂かれたような傷を負い、ドッドッドッドッ!....と体内から異音を発するS級ヒーロー『キング』が言うと、シッチは頭を下げながらそのヒーロー達に懇願した。するとサイタマとラインハルトが間を割ってきた。
「いつどこで起こるかわからないってことは、明日か明後日に予言どおりになってもおかしくないってことだな。」
「ならば、今日中にでも動けば、未然に防げる可能性が上がるかもしれん。世界中のヒーローを全て動かして怪人を絶滅させるというのはどうかね?そうすれば少なくとも地球内からの崩壊はほぼ防げるわけだ.....簡単な方程式だな。」
「そ、そうかもしれんが、ラインハルト君...と、おまえは誰だ?」
「....来て良かった。俺は...」
シッチの問いに、サイタマが名乗りを上げながらこたえようとした瞬間.....
ドゴォォォォォッ!!!
「!?」
協会に強い衝撃が襲いかかってきたのだ。
所変わって近くの街にて
カン!
「はいカットォ!はい、ここで休憩に入りましょうかぁ!」
「アマイマスクさん!お水をどうぞ!」
「....どうも。」
とある市街地でA級1位のヒーロー『アマイマスク』は、ドラマの撮影をしていた。彼はマネージャーから水を受け取ると、水を飲みながらケータイで何かをチェックを始めた。
「アマイマスクさん、食事の後に、今後のスケジュールについて話したいのですが、宜しいですか?」
「....良いよ。但し手短に済ましてくれよ、ドラマの撮影が再開する前に、少し休みたいからね。」
「はい、勿論です!」
そういってアマイマスクとマネージャーは場所を写そうとした瞬間、彼のケータイのメールのアラームが二回鳴った。それもほぼ同時に。それに気付いたアマイマスクは、ピタリと歩みを止めた。
「.....やっぱその話は別の機会にしよう。」
「え?はい?」
「撮影の再開までには戻る。」
「ちょ、ちょっと待ってください!アマイマスクさん!」
そう言い残すと、アマイマスクは瞬時に姿を消してしまった。
とあるビルの屋上にて
ヒュオオオオオオ.....
「.....。」
一人の青年が佇んでいた。まるで、誰かを待っているかのように。
ガチャリ....
「.....貴方は待ち合わせの場所をよく屋上に指定しますね?何か思い入れでもあるのですか?」
アマイマスクは扉を開け、青年の姿を確認すると、くすりと笑いながらそう言った。青年は振り返らず答える。
「まぁな、人を待たせたり、喧嘩したり、打ち上げしたりと.....思い返せば割と思い出のある場所ではあったな。」
「あなたが言うと、随分と言葉の重さが違いますね....それで、今日は僕に何を話してくれるのですか?」
アマイマスクはそう聞くと、その青年は彼の方へと振り返った。その瞬間、青年の首に巻いていた『白いマフラー』が揺れ、その中から『刃物で切られたような傷跡』がチラリと見えた。
「僕の命の恩人『永遠の刹那』よ....」
そう、この青年こそかつてラインハルトと死闘を繰り広げ、世界を守り抜いた英雄『藤井蓮』だったのだ!
続く
神座シリーズと言えばこの男、藤井蓮が登場しました。蓮とアマイマスクの繋がりは宇宙人編が終わったら少し掘り下げる予定です。どういった展開になる概ねわかるかもしれませんが....