中古ショップで初音ミク売ってて草w 作:すとろー
・マスターの代わりに色々な物を食べようとかそういうつもりは特になく、ただただ食べることが好き
「おつかれ」
「いや~、おつかれ~」
「お疲れ様です」
『おつかれさまです』
ミクちゃんの前のマスターさんのギターを手に入れたが、あまり難しいことは考えない。絶対に前のマスターとの仲が悪くて売られたような感じではないことは分かったので、素直に家族の一員として楽しく過ごさせて貰っていますよと念を送る程度の感じで行こうと思う。
ミクちゃんもあんまり説明してくれなかったけど、マスターさんはもう使えないから私にくれたみたいなニュアンスのことを伝えてくれた。
ならありがたく使わせてもらおうということで、ミクちゃんが使うことにした。流石に俺とかテトとかが使うのは話が違うのでね。
それで楽器がなんと数が揃ったのでセッションしようという感じになった。ノリで買った絶対にいらない4inのインターフェースのおかげで、三本の楽器とマイクが丁度挿せたので完璧だ。
ミクちゃんとテトがギター、ウナがベース、俺がトラックパッドでドラムマシン代わりだ。
一応バンド……って呼べるのか? たぶんプロとかが見たらキレられそうな感じだけど、俺も一応作曲に関してはプロなので許してほしい。
というわけでバンド練習だ。
実に3年ぶりぐらいである。ちょっと4人で入るにはかなり手狭な部屋でなんとか当たらないように3人には陣取って貰って、合わせてみたが……形にはなったね。形には。
まず俺が下手。ドラムをやってないブランクが結構響いているのか、そもそも違うものだから感覚が合わないのかリズムがとれなかった。謝罪だ。
次にウナちゃん。俺につられてリズムの維持ができていなかった。
テトは結構やれてた。歌もやりながらちゃんと弾けていたような気がする。ミクちゃんはなんとかカバーしてくれていたからなんとか形になったなぁ……って感じだ。
ある程度の反省会をやって、今日の合わせは終わりだ。
特にどこかで弾くわけでもないが、こういうのをやっていくのは楽しい。もうちょっと上手くなったら今考えているバンド曲を創ったときに、みんなでレコーディングして楽曲投稿をしていきたい。
「マスタ~、アイス食べよーよ」
「そうだな。ウナちゃんはどうする?」
「ウナはひと眠りしてきます。久々に夜更かしして疲れましたので」
「おっけ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
現在時刻11時だ。お昼にするにはちょっと早いが、ウナの一日にしてはだいぶ長い。
俺はお昼の準備をしますかね……とキッチンに向かうと、テトとミクちゃんが一足早く冷凍庫を漁っていた。アイスバーを物色しているボーカロイドの図だ。俺にもよこせ。
「はい、マスターのぶん」
「さんきゅー」
テトが俺に渡したのはミルクバーだ。俺はこれしか食べないため、テトにすぐに渡された。
口の中で体温を使って溶かしながら食べていくのが一番美味い。ちゅぱちゅぱしながら食べてるとテトに変な目で見られるが、正直これ以外ありえないまである。
ダイニングで包装を開けてアイスを引き抜き口に突っ込んでいると、テトとミクちゃんも決めたようだ。テトはソーダのやつ、ミクちゃんはピーチかな。
テトはまんべんなく食べるから、数が多いやつから食べていく。ミクちゃんは、冒険はしないタイプでテトがちょっと前に美味しそうに食べてたやつを選んでいる気がする。冒険はしないタイプというか他の人が食べてるのが美味しそうに見えるから、それに従っているだけかもしれないけど。
「やっぱ、秋でもアイスだねぇ~」
アンドロイドはどうにも冷たいものが好きらしい。どこの家でもそうって聞いた。
頑張って動くと発熱が凄いので、冷却してるみたいな都市伝説だ。別に理論的に解明されているわけではない。ちなみに発熱のことだが、熱がこもるとやっぱ機能が上手く働かなくなるらしく、それを理由に夏は全然動かない。エアコンの下でだらだらだ。たまたまかみ合って人間と同じような生態になっている。
ミクちゃんは、無言でサクッ、サクッ、サクッとどんどん食べている。は、早ぇ……。一瞬で食べきると棒についた水滴も舐めて、全てを楽しんだ。そうして2本目だ。キッチンへ向かい冷凍庫で次のアイスを探している。
ちょっとずつ遠慮がなくなってきたというか、なんというか。とにかく家になれてきて良かった。
……おい、テトお前も2本目行くのか。どうりで最近アイスバーの減りが早いなと思ったぜ。ウナちゃんが食べたいのが食べられていたという苦情を入れて追加注文してたの、こういうのが原因か。
「待て、テト」
「……どうしたの、急に」
「俺の分も持ってきて」
「はぁ……機械使いの荒いマスターでボクは悲しいよ」
君のマスターですから、これでも。
昼ごはんを食べた後にソファーで昼寝していると、冷蔵庫の方でガラガラ音がしているのに気が付いて目が覚めた。
キッチンの方を見ると、製氷室の氷を口にどんどんと放り込むミクちゃんがいた。
「……何してるの」
むぐっ、と声はしないはずだが効果音が聞こえるように慌てて、製氷室の引き出しを閉めて、口の中を急いで空にしている。
何かいかがわしいことをやってような速度だったけど……気になる。キッチンに向かい、出口を塞ぎつつミクちゃんの方をじっと見る。
何もないですよ~みたいな顔をしているミクちゃんをじっと見ていると観念したのか、その場で正座をしながらホワイトボードを書き始めた。
「えっと……『アイス食べると気持ちいい』。『氷食べても気持ちよかった』。『だからいっぱい食べてた』。『いっぱい食べてごめんなさい』……なるほど」
恥ずかしそうな顔で流れるように書いては目の前に突き出して俺が音読し終えると消して、書いては消してを繰り返している。
「もしかして結構やってた?」
親指と人差し指でちょっとと表現している。初犯じゃないらしい。
『水は自分で補充してました』
「なら別にいいよ? あんまり氷使うこと最近はないし」
顔をパァァと明るくすると、製氷室を開けて氷を一切れ掴んで口に入れていた。かわいい。
なんだか、頭を動かすには砂糖が必要なんだよ! と親に言って、砂糖を直接舐めていたいつかの俺みたいだ。なんか急にかわいくなくなってきたな。
「ほ、ほどほどにね」
嬉しそうに頷いているミクちゃんを見ると心配になる。氷の食べ過ぎで故障したって話は聞いたことないから大丈夫だと思うけど……。
「んで、これはどういう状態なわけ?」
目の前に『氷を食べすぎてごめんなさい』とシクシクしながら、ウナちゃんに頭を下げるミクちゃんがいた。
「べ、別に気にしてません……」
「いやいや、絶対に気にしてるでしょその言い方」
問題が発生したのは晩ご飯を食べ終わった後だ。いつも通りウナちゃんと作業やるか~って思ったら、ウナちゃんが聞いてきた。
あの……氷ってありますか? って。
その時俺は全ての点と点が繋がり、頭を下げた。許可したせいで絶対に食べ過ぎさせた。ミクちゃん食べすぎであることを呆れる前にウナちゃんへ頭を下げた。
この家の序列の一番上は一番若いウナちゃんなのだ。なぜなら、俺が病気で動けなくなってもこの家は回るけど、ウナちゃんがいないともう回らないのだ。一度上げてしまった生活レベルを下げるということは人間不可能である。もちろんボーカロイドもそうらしい。物資の購入や俺が創った曲の投稿や宣伝、マネジメント系といったところを担当しているウナちゃんは偉すぎる。
確かに思い返してみれば、夜の作業の時には絶対に氷でジュース冷やしながら飲んでたな……とか、朝ごはんでも氷いれてお茶飲んでたな……とか、思い当たる節が結構ある。そう、ウナちゃんという氷ヘビーユーザーがいたのだが、なぜかそれを凌ぐアイスイーターが俺の安易な一言から誕生したことによって、製氷室の氷の生産速度が追い付かなくなったのだ。
こそこそして食べてたから消費量が少なかったんだよな、多分。本気を出すと枯らしてしまうとは恐れ入った。
今、氷を作る容器みたいなやつに水を入れて冷凍庫にぶち込んでいる。製氷室の氷もそろそろ追加されるはず。ウナちゃんはもうちょっと待っててくれ。
そんなこんなで食べ過ぎたことを反省しているボーカロイドと、単純な疑問が思ったよりもデカくなっていったせいでちょっとあわわあわわとしつつも、話を聞いてる感じ本当に氷を食べまくっていたことが発覚して、流石に食べすぎでしょうと思い始めたボーカロイドが相対している。
「ま、まぁ……もう1時間ぐらいすれば氷はできると思うから」
「えっと、素人質問で恐縮だけど、普通に許可したマスターが悪いんじゃないの?」
「うぐっ……その通りですね、テト教授」
解決策は氷の生産を増やすか、食べる量を調節するか……。あれ、思ったよりも簡単じゃね?
「ミクちゃんは食べる量考えよっか」
この世の終わりみたいな顔をしたミクちゃん、しかし解決策を思い浮かんだようで、すぐに表情を変えた。
『私が作ったら好きに食べて良いですか?』
「あ、それならいいよ」
3日後に冷凍庫が製氷室のようになっていて、生産量に規制がかかり、また絶望した顔になっているミクちゃんさぁ……。
夏場に氷ばりぼり食べて、製氷室の氷がなくなるってあるあるですよね。