中古ショップで初音ミク売ってて草w 作:すとろー
・雪ミクという存在を知って、私も進化したらなれるかもと思っている。
「ミク、どっかに出かけない?」
テトちゃんがそんな風に話しかけていたのは、マスターさんがお昼寝を始めた13時ぐらい。
テトちゃんの後ろには、なんだか恥ずかしそうなウナちゃんがいた。次は一緒に外に行きたいなと言っていたのに、私たちが2人で散歩に行っていたから次こそは! とずっと思ってたみたい。
断る理由もない……けど、マスターさん置いて行って良いの?
『マスターは?』
「え、マスターは散歩に連れていったら現実逃避で5時間ぐらい家に帰ってこないから家で作業やらせてた方が良いよ」
「……あんまりますたーを甘やかすと、ウナたちのごはんが出なくなりますからね」
散々な言われようなマスターさんに同情しつつ、マスターさんのスマホのアラームの音量を一段階上げておいた。
『どこに行くんですか?』
「中古ショップ行ってみたいんだけど、良い?」
それは願ったり叶ったりかも。まだ妹さんにお礼をちゃんと伝えられてないから、会っておきたい。
今日いるか全然知らないから、行き当たりばったりになりそうだけど。
「あっ、無理なら全然良いんだよ?」
『ちょうど行きたかったから行きましょう』
ちゃっかり便乗させてもらって、元気にやれている様子を見せに行こう。
「なにか用事ありました?」
『会いたい人がいます』
会いたい人と伝えると、2人が目を合わせている。同じ境遇のアンドロイドの仲間がいるとか復讐しに行くとかじゃないよ……?
予備のホワイトボードに3人でおさんぽに行ってきます、少ししたら帰りますと書いて、ダイニングテーブルに置いてきた。これで遭難したらダイニングに置いてきたメッセージで、ダイニングメッセージだね。
届出したらライセンス認証してるアンドロイドの位置情報をマスター登録されている人は知れるので、迷子になっても一応大丈夫って病院に通っていたときに受付のお姉さんに教えてもらった。救急搬送されたマスターを探しにめちゃ遠くまで歩いて探しに行って、迷ってそのまま行方不明になったアンドロイドが昔いたって聞いた。
外に出れる格好になって、家を出る前に身体の冷却を兼ねてアイスをバリボリして、2人を待つ。
ウナちゃん的には超絶早起きなので、とっても眠そうに準備してたけど、整う頃にはすっかり起きて目に見えてウキウキしていた。
最後がテトちゃんだ。外行きのちゃんとしたコーデになってる。かわいい。
「遅くなってごめんね、じゃあ出発しよ!」
「お~」
「マスターちゃんと起きれよ~」
『れっつごー!』
今日は特に寄り道とかをすることもなく、いつぞやにマスターさんと一緒に歩いた道を逆に辿って中古ショップまでたどり着いた。
思い出話をボードにたくさん書き連ねながら歩いていたらすぐに着いた。ウナちゃんがずっと楽しそうにニコニコしていた。でもあんまり喋らないから、テトちゃんが結局ずっと話している感じ。ウナちゃんは聞き上手だから、いつも以上にテトちゃんが喋っていたと思う。
お店の外観に思い出とかはあんまりないので、すぐに入店した。
「いらっしゃいませー……ってあれ、こないだのミクちゃん?」
店に入ると何時しかの店長さんがいた。向こうもこちらを覚えていてくれたようだ。
めちゃくちゃ深く会釈した。
『お久しぶりです。あの時はありがとうございました』
「良いって良いって、売り物の価値を高めるのがこの仕事なんだから。すぐに売れちゃったから、もうちょっと豪華な売り場にしようと思ってたんだけどね。
で、えっと、そっちの2人は……仲間?」
仲間……確かにそうかも?
バンド仲間だし、一緒の屋根の下で暮らしているし、かなり仲間っぽい感じがする。というか仲間だよね。仲良しだし。
「どうも初めまして重音テトです。仲間っていうか、家族みたいなものです」
余所行きテトちゃんだ。あんなに普段雑そうな生き方してるのに丁寧……!
「初めまして音街ウナです。ミクさんの妹みたいなものです」
このウナちゃんはなんか想像通りだね。丁寧でかわいい。
家族か~。実際にこうやって家族だって言われると嬉しい。
私が家族ですよ~って思ってても、新入り過ぎて大っぴらに言えないから。元から言えないけど。
「お~、よかったよかった。あっそうだ、ミクちゃん来たってことはあいつに用事あるんだろ。ちょうど今日はたぶん裏にいるから呼んでくるからちょっと待ってて」
そう言うとレジから離れて、奥の従業員入り口に消えていった。なんで会いに来たって分かったんだろ? それはそうとして妹さんはここにいそうで良かった。いなかったら店長さんと話して終わるところだった。
店長さんも良い人だしお世話になったから絶対に挨拶はしたかったけどね。
「会いたい人がいるって言ってたけど、今呼んでもらってる人?」
その言葉に頷く。
そういえばマスターさんはあったことがあるけど、2人は全く情報伝えてないかも。
「どういう人なんです?」
『私のマスターの妹さんで、ここで新しい出会いを探させてくれた人』
たぶん、この紹介の仕方が一番いいと思った。ここに連れてきて貰えなかったら、そもそもマスターさんはギターだけ買って帰ってたからね。あのタイミングでここに連れてきて貰って本当にありがとうを伝えたい。
するとどうやら2人はピンと来るところがあるようで。
「あっ、じゃあギターを届けてくれたのって」
「なるほど……。ってことはミクさんのお姉さんみたいなものなので、ウナのお姉さんってことですね」
「……いや、それは飛躍しすぎじゃない?」
『お姉ちゃんってことでいいと思う』
「ほら、ミク姉もこう言ってますよ。テト姉」
ウナちゃんに姉と呼ばれるのも悪くない……。
「おまたせ~、ミクちゃん来てくれたんだ!」
奥の方からどたどたした音がしてるなって思ってたら、妹さんが駆けてきた。なんだかとっても懐かしい。
『お久しぶりです!』
「うんうん、久しぶり! 元気にしてた? 仲良くやれてる? ……って見てる感じからすると大丈夫そうなんだけど……」
妹さんもテトちゃんとウナちゃんの方を見て、そうやって言う。
「あっ、初めまして……。おにー……、えっと兄が今お世話になってるミクちゃんのマスターやってました。いい子なのでこれからも面倒見てあげてください!」
とにかく情報がないけど、情熱だけが伝わってくる感じに妹さんは2人に挨拶している。
「えっと、ミクちゃんの今の家で一緒に暮らさせてもらってます。いつも楽しく過ごさせていただいているので、これからも一緒に仲良くやっていこうとおもいます」
「テトさん、自己紹介はしないんですか? はじめまして。音街ウナです。こっちが重音テトです。ミクさんとはたくさん仲良くやっています」
2人を見てホッとしている様子だった。
「あ、新しいマスターさんと仲良くやれてる?」
『仲いいですよ!』
「ミク、マスターにたくさんギター教えてるもんね」
「多分だけど、テトさんの方が教えてもらってますよ」
不貞腐れているテトちゃんがかわいい。最近はテトちゃんは上手いから、教えるというかセッションっていうか。
絶対に一緒にいる時間はテトちゃんが一番多いとは思う。
「うんうん、本当に仲が良さそうで良かった……。良かったよ」
そう緊張が解かれたように満足そうに頷いている様子を見ると心配してくれてたことを感じた。
「ねぇ、あの、お節介じゃなかったら2人で連絡先交換したら? ほら、一緒に住んでないけど……あの、2人も家族でしょ?」
「うん……そうだね、そうだよね! ほら、交換しよう!」
そういって取り出したスマホにはちょっと見覚えのあるデフォルメされたネギみたいなキャラクターのキーホルダーが付いていた。
「あっ、これでしょ? おにーちゃんが出してたグッズ。部屋にあったからこれだ! って思って貰ってきたんだよね。曲しか出してないと思ってたら、なんかいきなりグッズ展開して笑っちゃったもん」
「かわいいですね」
「でしょ! ちょっとミクちゃんっぽいし、持ち運びやすいから2人のことすぐに思い出せるからね!」
マスターがグッズとか出したら売れるのかな? って挑戦して、ファンではない層にちょっと売れたキーホルダーだ。出来が良いから、ちょっとバズってすぐに無くなっちゃったレアなやつ。
私に似てて、私じゃない他の初音ミクのファンにも売れちゃったからね。なんか、マスターがちゃんとこの世界に残した物体として存在しているのは、ちょっぴり嬉しい。
私もスマホを取り出して、スマホ通しを近づけてすぐに連絡先を交換した。
マスターさんに貰った新しいスマホ。これで連絡先が4つ目だ。
『よろしく!』
そう、メッセージを送った。ついでに猫がお辞儀している……お辞儀させられている? スタンプを送った。かわいいから。
『これからもよろしくね』
そう返信がきた。すぐ隣にいるけど、私に合わせてくれているみたいで、とっても嬉しかった。
「お~い、ちょっと手伝ってくれないか?」
「あっ、店長すみません! じゃあミクちゃん! またね! またいつ来ても良いから! ウナちゃんとテトちゃんもまたね! マスターさんにもよろしく言っておいてね!」
そうだった。いつまでもお邪魔するわけにはいかないしね。
「じゃあ、帰ろっか」
「そうしましょうか」
『今日はありがと』
それで店を後にした。
あっ、そういえば。
『何のためにテトちゃんはここに来たかったの?』
「え? なんかアンドロイドが売ってるんだったら見てみたいなって」
「そんな野次馬みたいな感じだったんですね。ミクさんは絶対レアケースですよ」
私もそう思うよ。
評価、感想ありがとうございます
作者は最近ちょっぴり忙しいですが、これくらいのペースで話を書いていきます