中古ショップで初音ミク売ってて草w 作:すとろー
・実はなんと、VOCALOIDではない。(メタ発言)
・特技:加入していたサブスクを抜けようと思って忘れる。月初に契約更新のサブスクを月末に契約する。
「出たよ~、マスター」
「はいはい」
お風呂から出たテトが肩にフェイスタオルを掛けてリビングに戻ってきた。
その後ろにはホカホカしているミクちゃんがいた。
『お風呂ありがとう』
「やっぱ、命の洗濯だからねぇ……。これからも好きなタイミングで入って良いからね」
事前に書いていたと思われるホワイトボードを見せてくれた。
やっぱ、風呂は大事だ。
物件選びは親にほとんどやって貰ったが、唯一こだわったのはお風呂とトイレが別のことだ。
あとは、足が伸ばせるぐらい浴槽が広いこと。
風呂にこだわると家賃が高くなりがちで、親に少し嫌な顔させたのは懐かしい。試験前で俺がピリピリしてなかったら、たぶん契約してくれてなかっただろう。今は俺が払ってるから良いのだ。
テトの服を貰って、とっても我が家の一員になったように感じるミクちゃん。
ミクちゃんが今着ている"あんどろいど。"と書かれたパーカー、ちょっとダサいと思っていたんだが、なんかこう見るとかわいいな。
もしかして、薄々気が付いてはいたが着る人が大事なのか……。
もちろん、テトも似合ってはいるんだ。似合っては。
それにしても、ちゃんと整備されてるよな。
髪の毛とか手入れが結構大変なのに。
テトなんてツインドリルのメンテナンスが面倒で「ショートカットにしようよ、マスター」とか言い出して、特徴的な部分を1つ投げ出している。
今はドリル部分はウィッグにして、必要なタイミングで被ってセットしている。お前、それでいいのかよ。ほぼコスプレみたいなもんじゃん。
一緒に過ごした長い年月で、精神が設定からどんどん離れていっている気がする。
俺もメンテナンスは怠ってない自信はあるが、このミクちゃんは非常に状態が良い。
歌えないだけでジャンク品なんて、イカレた店だぜ。
世の中の歌わせられてあげれてないマスターのなんて多いことや……。一緒にカラオケを楽しむ勢の方が多いと思う。
たしかに一緒にいるだけで幸せな気分になれるので、それでも良いだろう。
何で声が出ないのかとか、どうしてあそこで売られてたのかとか、過去を聞くのはちょっと憚れるので、もうちょっと仲良くなってから聞こう。
気になる。いや、めちゃくちゃ気になるけど。
「マスター、ご飯は?」
「出来てるぞ。……ミクちゃんって、たしか7型だったよね? ご飯食べる?」
20年前の初期型とかは本当に歌って喋るだけだったのだが、機能更新が重ねられ最近のアンドロイドは味覚を感じられるようになった。
目の前のミクちゃんも世代としては9年前ほどに発売されている機体のはずのため、食事はできる……はずだ。
昔からあった技術だが、アンドロイドが流通し始めるとたくさん機能乗っけようの流行が起こり、小型化ブームで味覚センサーや嗅覚センサーなども徐々に搭載されて、アンドロイドでも食事を楽しめるようになった。
あくまで人間と違いエネルギー補給ではなく、趣味みたいなものだが。
最近は、食事でエネルギーに変換する効率をどうにか上げて取り入れる研究がされていたりするらしい。いずれ、食事と電気のハイブリッドになるのか。
『すこしだけ』
「わかった。準備するから、ダイニングで待っててね~」
「マスター、手伝うよ」
「こういう時にいきなり手伝おうとしても、テト分かんないでしょ」
「一応ずっと見てきたし、ボクでも運ぶぐらいはできるんだけどさ」
おい! 友達が遊びに来た瞬間親の手伝いしまくる子供かよ。
いつも手伝ってくれることは期待してないし、というか日常になってくはずなんだから、席で大人しく待っててくれればいいのに手伝い必要ないの? みたいなまなざしで待っている。
お前さぁ……。
そうして俺とテトが騒がしくしていると、ガチャっと、寝室の方から音がした。
扉が開くと、青い髪を揺らしながら同居人その2が出てきた。
「ごはん」
「あ、ウナちゃんおはよう」
「おはよ、ますたー、テトさん」
そのまま、目のピントが合わないのか瞳孔を大小させながらレンズを調整して、ミクちゃんの斜めの位置の席に座った。
眠そうなうちの天使さんだ。ちなみに最新型は、本当に天使になるオプションパーツがあるらしい。
うちのウナちゃんは夜行性だ。俺が寝てない間に俺のベッドで寝ている。
夜中俺が寝ている間、作業部屋で活動している。だから、朝ごはんと夜ごはんから俺が寝るまでが遭遇タイミングだ。
アンドロイドにとって睡眠は充電だ。パソコンのスリープ状態が本当にスリープになっている。
「……だれ?」
「あっ、新しい家族のミクちゃんです」
ボードをウナちゃんに見せてペコリとしている。かわいい。
こちらからはボードの文字は読めないが、随分と使いこなしているな……。
書く速度もかなり早い。関節パーツがちゃんとしている証拠でもある。
「えっ、ますたー。さらってきたの?」
「いやいや、ちゃんと買ってライセンス認証もしたから!」
「へ~……。よろしくね、ミクさん」
リビング越しに疑う顔をしているウナちゃんを横目に、今日の晩御飯のメインである大皿にのった回鍋肉をテーブルまで運ぶ。
回鍋肉の理由は俺が好きなだけだ。あと作りやすい。
ちなみにテトには、取り皿とか飲み物とかを運ばせている。ちゃんといつも働けよ。
家事をやってくれるアンドロイドの話とかSNSでめっちゃ見るが、テトはボクにはそんな機能は搭載されてないよの一点張りだし、ウナちゃんは気が向いた時にしか手伝いはしてくれない。
住み始めたころはテトさんとわちゃわちゃ騒ぎながら作ったり、疲れすぎてた時は諦めてピザを頼んだりしていたが、自炊にもだいぶ慣れたものだ。
冷凍食品や完全栄養食とかもあるが、正直俺はそれでもいい。
それでも、こいつらにとっては食事は娯楽の1つなので、手作りにこだわっていた。
もはや全てを量産する社会で、手作りというものの価値は上がっているのだ。
「今日は以上ね」
味噌汁とごはんも人数分よそって、テトに運ばせてキッチンのライトを消して、俺も椅子に座る。
ちなみにミクちゃんの横にテトが座ったので、俺はミクちゃんの正面でウナちゃんの隣の位置だ。
人数増えたから、いつもよりもちょっと狭く感じる。幸せな悩みだ。
「じゃ、いただきます」
「いただきま~す」
「いただきます」
ペコリ。
4人で手を合わせてから、食べ始める。
食事は家族全員で。これが両親からの教えだからね。
「ミクちゃん、大丈夫?」
取り箸で、少し取り分けて、綺麗に箸を使って口の中に入れる様子をずっと視界の端で見守っていた。
テトもウナちゃんも気にしていたようで、いつもガツガツ行くのに今日はおとなしめだった。
箸をおいて下を向いたと思うと、膝の上からホワイトボードとペンの当たる音が聞こえる。
『おいしいです』
「よかった。食べたいだけ食べてね」
「ますたー、言わせてない?」
確かに。ウナちゃんが言う通りちょっと圧があったかも。
『本心です』
「わかった。でも無理して沢山食べなくても良いからね」
まぁ、表情を見ている感じ噓ではなさそうだ。来た時より緊張感もなさそうだし。
テトがめちゃくちゃ気にかけてくれてるのも助かってる。
アンドロイド同士の方がいる時間長いだろうから、仲が悪かったらどうしようかと思っていた。
杞憂にすみそうで良かった。
「ごちそうさま」
「ごちそーさまです」
『ごちそうさま
おいしかったです』
「お粗末様でした」
うーん、量ちょっと少なかったかもな。
俺とテト、ウナちゃんでだいたい4人前食べるから、5人前くらいかな~って思ったけど、ちょっと足りなかった。
明日からもうちょっと増やそう。余ったら俺の昼飯かテトの昼飯かどっちかになるだけだから、多少余っても大丈夫だ。
「テト、ミクちゃんに寝室案内しておいて。俺は皿を食洗器に入れたら風呂入っちゃうわ」
「分かった! じゃあミク、おいで!」
テトのあんな笑顔、俺に見せてもらったことない気がして、爆涙過ぎる。
マジ無理……曲にしよ……。俺は、嫉妬で狂いそうだ。
「あのミク、話せないの?」
「あっ、説明してなかったね。声が出ないって理由でジャンク品で売られてたから買ってきた」
「へ~。それは、大変だね」
「ウナも気にしてあげて。ま、あの感じだとテトが一生かまってると思うけど」
「わかった」
確かにな……みたいな目で、寝室の方を眺めているウナちゃん。
ウナちゃんは、なんだかんだ面倒見がいいところがあるから安心だ。
俺が作業部屋でぶっ倒れかけてたら、寝室まで引き摺ってベッドに乗っけてくれるし、気が向いた時に掃除をしていてくれるし、冷蔵庫のアイスとかジュースとかを補充してくれるし、なんか口座の金を増やしたりしてくれている。
そんなウナちゃんと机の上の皿を一緒に片づけて、俺は風呂に入ることにした。
いつも通り脱衣所で服を脱ぐが、洗濯籠に見知らぬ服が入っていると、なんか変な気分だな……。
あっ、これって……。
……見なかったことにしよう。いや、洗濯とかやるの俺だから見ちゃうから、あんまり見ないようにしておこう。
じゃあ、今全部テトの着てるのか。どっかで服買わないとな。