中古ショップで初音ミク売ってて草w   作:すとろー

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・今よりもちょっと先のAIがたくさん仕事を奪い始めたぐらい先の未来。



朝ごはん

「ますたー、朝ごはん」

 

 我が家の機械式目覚ましが今日も扉を開けて入って来た。きっちり朝の6時。カーテンの隙間から感じる外は、恐らくまだ少し暗い。

 俺の体調が悪くない限り、必ずウナちゃんはやってくる。ちなみにこれは"朝ごはんを作ったよ"ではなく、"朝ごはんを作ってよ"だ。

 

「はいはい、起きるからね……」

 

 起きないと機嫌を損ねるので、まだ動かない脳をなんとか動かして立ち上がる。

 身体バキバキでワロタ。ちょっと、最近デスクワークばかりで血流が微妙なのかもしれない。大学生の姿か? これが。

 

 身体に鞭打って立ち上がる。少し離れて置かれたベッドを見ると、ミクちゃんが寝ていた。普段はテトがそこで寝ているので、譲ってもらったんだろう。

 3人同時に寝るために追加で新しいベッドを買うとなると、並べて3つ置く感じになる。それでも良いか聞いてみてから買おう。まぁ、テトは許してくれるだろうから、端に俺とミクちゃんでテトを挟めば問題ない。

 

「おはよ〜」

 

 リビングに行くと、珍しくテトが起きてた。珍しく。

 いつもはだいたい料理をし始める音で起きてくるのに。もしかすると徹夜かもしれない。

 

「おはよ。……どこで寝てたの?」

「ん〜、リビング。ソファーって思ったよりも寝心地いいね。あっ、毛布は欲しいけど」

 

 話を聞いていくと、俺が寝た2時間後ぐらいに寝たらしい。ミクちゃんにベッドと充電プラグの位置を教えてあげてから、ちょっと話してミクちゃんが寝たのを確認して寝たらしい。

 恐らく俺の寝ている横で話していただろうに、全く気が付かなかった。

 

「いや〜、マスターはスヤスヤだったよ」

「マジか、結構疲れてたのかもな」

 

 なんだかんだ気を遣って疲れていたのかもしれない。自分で買っておいて思ったよりも俺が繊細なやつで、ちょっと申し訳ない気分になる。

 

 そんなふうに話しながらも、少しずつ味噌汁の具材を切り分けて、順番に鍋に入れていく。いつもよりも少し多めにだ。

 昨日のミクちゃんは、少しだけと言った割にはそこそこ食べていた。うれしいことだ。どれぐらい食べるか分からないので、ちょっと多めに作る。足りないのは申し訳ないから。

 

「テト、ちょっとミクちゃん起こしてきてくれない? ウナちゃんは配膳手伝ってくれる?」

「おっけー」

「わかったよ」

 

 よっこいしょと言って、立ち上がって寝室に行くテトと、タブレットをスリープ状態にさせ、テーブルの端に置いてからキッチンに来たウナちゃん。

 誰を学習したのか分からないが、立ち上がるときに掛け声を必要とするアンドロイドちゃんさぁ……。ウナちゃんに炊飯器を開けて、少し混ぜてからよそってもらっている間に、俺は味噌をといて味噌汁を完成させる。

 

 俺は割とパン派なのだが、ウナちゃんとテトはごはん派だ。だから朝食は和食だ。我が家は俺の統治下ではあるものの、基本的に多数決が採用されるのだ。結託されてしまったら、俺は負ける。

 できるだけ朝ごはんもこだわりたい気持ちはあるが、そんなに朝から色々作る気力が沸くわけではないので、味噌汁だけ手作りしている。家政婦ロボットとか買ったら、朝食が豪勢になったりするのだろうか? 

 

「ミク、ごめんね~。朝ごはんと夜ごはんは一緒に食べるって決まりだから」

 

 配膳をしていると、テトが寝室からミクちゃんの手を引きながら出てきた。ミクちゃんは頭をこくりこくりと揺らしていて、めちゃくちゃ眠そうだ。

 

「眠かったらまだ寝てても良いよ?」

「駄目だよマスター。ミクも我が家の一員なんだから、マスターの決まりに従う必要があるの!」

 

 おっと。テトにピシッと言われてしまった。

 もうちょっと緩くてもいいと思うだけど、テトとしてのラインがあるっぽい。うちのテトは普段だらしないが、きちっとしてる所はかなりきちっとしている。こだわりや信念はちゃんと持っているタイプだ。

 

『おはようごさいます』

「おはようです」

「おはよう、ミクちゃん。良く寝れた?」

 

 昨日披露したきれいな字とは一転して、ちょっとふにゃふにゃした文字で挨拶するミクちゃん。半目しか開いていない状態で、キレのないうなずきで良く寝れたことを肯定してくれた。

 

 そのままふらつきながらも、テトに手伝ってもらうことで席について、目をこすってる。

 めちゃくちゃ眠そうな様子に、ウナちゃんが配膳を中断してパシャリと写真を撮っていた。後で共有お願いします。

 

「ほらミク起きて」

「ミクさん、食べたらウナと一緒に寝ませんか? だから、朝ごはんだけ食べちゃいましょう」

 

「……君たち、いつの間にか仲良くなってるね。おじちゃん、びっくりしたよ」

「ますたー、これがボーカロイドシナジーです」

 

 えへんと冗談のようにウナちゃんが言っているが、割とあり得ることだ。

 マスター抜きでアンドロイド同士が仲良くなることは、日本で市販されるようなアンドロイドなら誰でも共通だ。

 ウナちゃんとテトも仲いいし。よく俺が寝た後に、一緒にゲームで遊んだりしているらしい。最初はテトが教えていたはずが、最近聞くところによるとウナちゃんの方が上手いとのこと。

 

 そもそもの話、ボーカロイドは設計上ボーカロイドが好きらしい。ミクのファンのミクとかも結構いたりするし。俺の曲の視聴者の中にもボーカロイドはたくさんいる。

 たぶん、一緒に買ってもらいやすくするためだと思う。ほら、2人買って仲悪くてデュエットしてくれませんとか悲しいじゃん。仲良しの方がマスターも安心できるからね。

 

 何はともあれよかったよかった。

 昨日の様子を見てたらあんまり心配してなかったけどね。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきま~す」「いただきます」

 

 口パクでいただきますとしながら、ミクちゃんは手を合わせて軽く礼をしていた。

 眠そうな顔をしていたが、ご飯を一口食べるたび、味噌汁を口にするたびにちょっとずつ目が開いていく様子は面白かった。

 

 みんな食事よりもミクちゃんに気を使いながら、手を動かしていく。

 会話はいつもに比べてちょっと控えめだ。いつもはテレビを見ながらやいのやいの言っているが、それだと食事中にミクちゃんが会話に参加しにくそうという理由だろう。

 少なくとも俺はそうだ。二人も一緒だと思う。一番喋るのはテトだし。

 

 穏やかな朝ごはんも悪くない。

 みんなミクちゃんの食べる速度に合わせていたので、今日は食べ終わるタイミングが一緒だった。

 だいたい、いつもはウナちゃん、テト、俺の順番だ。ウナちゃんは口のサイズが小さい割に、食べるのがテキパキで早い。小動物的なかわいさがある。

 

「ごちそうさまでした」

「ごちそーさまでした」「ごちそうさまです」

『ごちそうさまでした』

 

 そんなこんなで、我が家の朝は今日も朝食から始まるのだ。メンバーが増えても変わらない……はずだ。

 

「マスター、今日の予定は?」

「えっと、授業が三限だけあるから昼から大学かな。あとは作曲と……」

 

 チラッとミクちゃんの方を見る。

 さっきの眠そうな顔はどこへやら。ちょっと期待しているような表情だったと思う。だから、

 

「ギターの練習もしようかな」

『一緒に頑張ろう』

 

 ウキウキでボードに書き込んでいる様子を見るに、正解だったっぽい。

 たぶん今後の予定について触れたい会話の切り出し方だったと思うので、明日以降の話に繋げるか。

 

「今日は大学あるから動けないけど、明日は買い物行こうか。服とかスマホとか……」

「タブレットは、ウナが昨日注文しました」

「服はちょっとウナとボクで選んだよ。ほんのちょっとだけど」

 

 はぁ~。面倒見が良いというか、俺の出番を減らすのが得意というか……。

 まぁ、それでも足りてないものはいろいろある。食器の数とかベッドをどうするかとか、あとは服も2人が買ったとはいえ発言的には足りてなさそうだし、思ったよりも買うべきものは色々とある。

 

「ま、他にも買うものあるし、買い物には出かけるよ」

「いいね~。ミクもいく?」

「付いてきてくれると嬉しいけど……」

 

 テトと俺は、ちょっと控えめにしたつもりの期待の眼差しを向けた。

 一緒にお買い物というのは、ちょっと激アツイベントすぎる。

 

『いきます』

「良かった~、ボクも行っても良いよね?」

「もちろん」

「あっ、ますたー。ウナはお留守番してますよ」

「もちろん、分かってるって」

 

 というわけで、明日の予定は決まった。よーし、台所片付けてギター練習、やっちゃいますか。

 

「そういえば、どんな服買ったの?」

「今日たぶん届くんで、それまで楽しみにしておいてください」

『かわいいやつです』

「ふーん、かわいいやつなんだ」

「あっ、ミクさん!」

 

 そんな会話を意識して大学から帰ってきた俺をお出迎えしてくれたのは、かわいいやつを着たミクちゃんではなく、超絶スーパーかわいいやつを着たミクちゃんだった。




 次回、お出かけです。

ミクちゃんの過去の話いりますか?(少しほのぼのではない)

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