中古ショップで初音ミク売ってて草w 作:すとろー
テト:かわいい
ウナ:かわいい
マスター:やさしい
「はい、ミクさん。パスワードは3456です」
朝ご飯を食べて片付けているときに、ウナがミクちゃんに自分のスマホを渡していた。
俺がウナに買ったが、画面が小さいのは引きこもり的にはメリットが無いとのことで、タブレットをメインで使っているため日の目を浴びない悲しき電子機器だ。
そういえば、ずっと通信料を払っているのか。たまにお出かけで使うから、必要経費だと思おう。ないと困る場面は思ったよりもある。
『ありがとう』
「ますたーとはぐれることは無いと思いますが、一応持っておいてください」
ちょっと教えますねと、隣に座って覗き込みながら教えている。ミクちゃんは……結構スマホになれているっぽい? フリック入力が板についている。
そんなことを思っていると、スマホに通知が来た。ウナから……いや、今使っているのはミクちゃんか。
【マスター、今日はよろしくお願いします】
めちゃくちゃ、硬いな~。いや、ウナっぽさを出してみたのか? チラッとキッチンからダイニングを覗くと、2人がこっちを見て笑っていた。
【よろしくね】
どう返すのが正解か分からないので、無難に軽く返信しておいた。するとすぐに入力中になる。来るのか? 来るのか? と思うもなかなか来ない。
しばらくしてから、親指を立てた絵文字が返ってきた。あぁ、絵文字って選択肢多くて選ぶの時間かかるよね。
そんなテトはというと、準備が終わったようでソファーで横になりながらテレビを見ていた。ちなみに出発に決めた時刻まで、あと1時間半はある。
楽しみにしていたのか、朝起きてきた時点でもう着替え終わっていた。ミクちゃんが来てからは、本当に子どもっぽくてかわいいやつだ。なんか初めて会ったころに似ている気がして、ちょっと懐かしい気分だ。
そんなテトの服装といえば、妙に整っていた。あのセンス壊滅の象徴のテトが、どうしてそんなにオシャレに……!? と思ったが、いつの日かにウナにコーディネートしてもらったやつだった気がする。
ミクちゃんも昨日届いていた、音街コーディネーターによるものだ。激かわ。テトが買ったというベースボールキャップも被ると、なんか活発な子のおしとやかモードみたいな感じで、静と動がコーデの中にあって良い。
……もしかしてだけど、常にかわいいパジャマ姿しか披露しないウナだが、いつの間にか我が家のファッションを牛耳っている?
ウナちゃは知識欲が結構あって、いつもたくさん学んでいて博識だ。本人は、それを人間っぽくなるために色々学んだ方が良いと思ってやっているらしいが、ウナっぽさはもうあるのでどうしてそこまで人間にこだわるのか、俺はまだよくわかっていない。
ただひとつだけ言えることがあるとするならば、どんなウナちゃんでも我が家の音街ウナはウナちゃんだろう。
「あれ、思ったよりも人少ないんだね」
「ま、平日だしな。社会人は働いているでしょ」
ショッピングモールに着いた。
商店街という商店街を喰らいつくして、完全に田舎の中の都会の方の町の生命線となっている最強の複合施設だ。駐車場もマジで広いし、公共交通機関のアクセスも良い。というかそうしてもらわないと困る所はかなりある。
俺たちはバスで来た。最寄りのバス停まで、8分ほど歩いてバスで20分ほど揺られたら到着だ。本数は30分に1本あるので、結構使いやすい。
ミクちゃんが外の景色をずっと眺めていたのが特徴的だった。懐かしい景色として見ていたのか、新しい景色として見ていたのかを判断はできなかった。
「ねぇ、どこに行こうか?」
「うーん、ひとまずはベッドとか見に行こうか。どうせ家にまで送ってもらうことになるだろうから」
今朝、ミクちゃんにベッドを買うか聞いたところ、オッケーが出た。理由は、テトがソファーで寝てるのが申し訳ないからだそうだ。なんか、そういう作戦みたいになってしまって、申し訳ないので謝っておいた。
でも、実際これは元々抱えていた問題だ。ウナだって一緒に寝たいとか思っていた時期があった。その時は、ウナが小柄だからテトと一緒にシングルベッドで寝ていたが、正直そのときに新しく買っていても良かった。
4つ横に並べられる広さはないが、3つ並べたら4人で寝れるかもしれない。
今は正面の入り口にいるのだが、インテリアが売っている店は確か同じフロアの奥の方だったはず。マップを見ながらゆっくり行こう。
それにしても、ミクちゃんはめちゃくちゃ目をキラキラとさせて、きょろきょろしている気がする。帽子が目線の方向を示してくれているので、色々なところに視線を向けていることが丸わかりだ。
「ミクちゃん、こういうところは初めて?」
聞いてからしまったと思ったが、ミクちゃんは特に気にせず、持ってきたトートバッグからホワイトボードとペンを取り出して書き始めた。
『はじめてです』
「そっか。行ってみたいところとかあったら、いつでも言ってね」
ぐっ、と親指を立てていた。なんかテトに似てフランクになってきている?
もしかしたら、素は結構こういう感じのところがあるのかもしれない。
「マスター、買い物ってもうちょっと時間がかかるものなんじゃない?」
「そうか?」
フードコートでくつろぎながら、そんな話をする。午前のうちに今回の買い物で欲しいものは、もうほとんど買った。4人席のテーブルの誰も座っていない椅子にある大量の紙袋がその証拠だ。
今は昼休憩中。テトが食べたいというので、みんなでラーメンを食べていた。ミクちゃんは最初は上手くすすれていなかったのが、ちょっとずつ慣れてきて美味しそうに食べていた。
「悩んでも結局同じものを買いそうな気がするから、すぐ決めてるだけだけど」
「服とかはもっと頭を悩ませるものだと、思うんだけどね~」
テトの普通はドラマの知識なので、信用できるのだろうか。
俺は悩んでる時間が勿体ないからとりあえず行動してみよう派なので、悩むことがあまり得意ではない。だからすぐに決める。いや、すぐに決まってしまう。
「もう、マスターは女心をあんまり理解してないな~。たくさん悩んでもらって真剣に決めて欲しいんだよ。というか、自分のために悩んで欲しいの」
「ま、それはそうかも。もうちょっと悩んだ方が良い?」
「いや、マスターは良いよ。ドラマとかで男がうじうじ悩んでるの見ると、ボクのマスターなら……とか考えちゃうし」
「なんじゃそりゃ」
「結局、ボクはアンドロイドだからね~。マスターが指標なんだよね」
なるほどね。
まぁ、この理由のない愛をちゃんと絶やさないように、関わっていってあげないとね。どんな愛情だって冷めもするから、いつまでもあると思うな親と金と愛だよ、と母の教えだ。
おっと、そんな話をしている間にミクちゃんが食べ終わっていた。手を合わせてからホワイトボードを書き始めている。
『ごちそうさま』
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま~。ねぇ、マスター次何買いに行く?」
「うーん……。あっ、そういえばミクちゃん、なんか欲しいものとかある?」
「確かに。ミクの買い物とはいえ、ボクたちが選んでばっかりだからね」
食べ終わったミクに対して聞いてみる。正直、あと買いたいものは、長時間持ち運ぶのが怖いからまだ買っていない食器と、明後日ぐらいまでの分の食材だ。
スマホの契約も服も靴もベッドも済ませちゃっている。だから、午後一番は個々の欲しいものを買っていくターンだ。
ミクちゃんは20秒ほど悩んで、スマホではなく気に入っているホワイトボードの方にこう書いた。
『ポテトチップス』
「わかった。じゃあ、後で買おうね」
「いっぱい買おうね、マスター!」
「うーん、家にもあったから持って帰れる程度ね」
どうにもミクちゃんは、食べるのが好きらしい。たくさん食べてね……。食べても大きくはならないけど。
アンドロイドはたくさん食べさせても別に変わらない。一応、体内の一時保管所──人間でいうところの消化器官に当たる部分に限界があるので、満腹は感じられるようになっている。たくさん咀嚼するとたくさん入るから、よく嚙むとたくさん食べれてお得と、この前ウナちゃんが言っていた。人間はよく嚙むと満腹中枢が刺激されるので、なんか真逆で面白い。
「じゃあ、早速行こう!」
『レッツゴー!』
「はいはい、まずは食器買ってからにしようね」
荷物を持ち立ち上がる。ちなみにほとんどは俺が持つことになる。
ボーカロイドは荷物を持つために設計されているわけではないので、力は人間と大して変わらない。ミクちゃんが両手が埋まるとコミュニケーションを取れないので、テトもそこそこ持ってくれてはいる。
まぁ、ほとんどは服だから重くないから良いんだけどね。
「いや~、思ったより買っちゃったね……」
「重すぎる……。無計画すぎた」
「マスターがポンポン買っていくのが悪いんだよ」
「いや、どうせ悩んでも買うんだし、ミクちゃんが欲しそうにしてたし……」
両手が大量の食材で埋まって、コミュニケーションが表情と動きだけになったミクちゃんがペコペコしている。すごく申し訳なさそうだ。
しかし、本当に買いすぎちゃったな。今夜からしばらく豪勢な食卓になりそうだ。ちょっとだけ、来月の請求が心配だ……。まだカードは止まってないから大丈夫のはず。この前の曲もなんだかんだ伸びてたし。
「やっぱ車欲しいな~~」
「あれ、マスター免許持ってるの?」
「とってたじゃん。ほら、こっちに引っ越しするすぐ前に」
「あぁ、あれってそうだったんだ。マスターが自分探しの旅に出たのかと思ってたよ」
なわけ。合宿免許に連れていけないので、実家で待っててもらっただけだ。……説明してたよな?
それに自分探しの旅なんかするタイプに見えるのか? 俺が。インドア系ボーカロイドたちのマスターもインドア系でしょ。
まぁ、とにかく車は欲しいかもしれない。4人になったし。
駐車場とか探すのめんどくさそうだな~。うちのマンションって駐車場借りれたっけ? 余裕があるときに探してみよう。
「ミク、見ててよ。これ2週間後ぐらいに車買う気だよ」
マジか、みたいな顔で見つめてくるミクちゃん。
「流石にお金が無いから厳しいかな~」
「でも、3か月後とかはどう?」
う~~~~~ん……。財布と相談ですかね。