中古ショップで初音ミク売ってて草w   作:すとろー

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重音テト
・ベッドをくっつけて寝始めたら、マスターに布団を取られることが多々あって、朝ちょっと寒いのが最近の悩み。


テトのターン

「ますたー、朝ごはん」

 

 ボクの日常はここから始まる。ウナのマスターを起こす声がアラームだ。

 もうそんな時間か……と思いながら、うなじの少し下に刺さった充電ケーブルを抜いて、蓋を閉じる。

 充電MAX、元気は……まぁ、そこそこ。最高と普通の真ん中ぐらいの元気だ。

 

 マスターはウナに連れられて寝室から出ていっている。ミクは……まだ寝てる。

 この前ベッドを買ったから寝室に置いて一緒に寝るようになったけど、ミクの寝起きは結構悪い。ボクはそこそこ良い自信はあるし、ウナもなんだかんだ寝起きはいいと思うから、アンドロイドは皆寝起きが良いと思ってたんだけど、個人差があるな~って思う。

 マスターの寝起きは昔は悪かったけど、ウナが来てからだいぶ良くなっている。もはや強制的にだけどね。

 

「ほらミク、朝だよ。起きないとミクの分も食べちゃうからね」

 

 ミクに刺さった充電ケーブルを抜いてから、肩を揺らして起こそうとしてみる。目が少し開いたから揺らすのをやめる。

 寝ぼけながら何か口を動かして抗議をしているが、ミクの声は一切聞こえない。この声が出ないのが何の故障か本人すらもよくわからないので、今度マスターの実家に帰るときに親父さんに診てもらうことにした。

 マスターの親父さんは、アンドロイドの整備会社をやってる。アンドロイドバブルでぼろ儲けらしい。家族割引で点検は無料にしてやるから、帰ってくるときはボカロたち連れて来いよ~と言われていたことが、記憶に残っている。

 

「ほら~。寝ぼけてないで起きるよ」

 

 ミクを乗り越えてカーテンを開け、なかなか離さない布団をはぎ取る。

 目をパチパチしてようやく起きると、枕元のホワイトボードに手を伸ばした。やっぱりお気に入りっぽい。最近はタブレットを使うときもあるけど、ホワイトボードの方がなんだか好きそう。

 マスターがペンと消すやつの在庫を増やしていたので、しばらくは書き放題だ。タブレット用のタッチペン(結構いいやつ)をプレゼントしていたウナは、ちょっと悔しそうだった。そんなウナがいたから、ミクもタブレットを使う機会が増えているのかも?

 

『おはよー』

「うん、おはよう」

 

 ミクを起こす。これが最近増えたモーニングルーティンの1つ。なんだか年の近い妹が増えたみたいで、楽しいんだよね。稼働年数的には、たぶんミクの方が年上なんだけれども。

 早速、ミクを連れてリビングに行く。

 

「おはよ~」

「おはよう」「おはようございます」

 

 リビングに出たら、そのままダイニングテーブルに向かって、席についた。

 ウナと目が合う。ほうほう……。今日の機嫌は良いみたい。何か良いことでもあったのかな? 

 

「ウナは今日何してたの?」

「ちょっとエゴサしてました。それと動画編集も少し。そろそろ完成しそうです」

『見てみたいかも』

「ウナが寝る前にますたーも呼んで鑑賞会しましょう。そろそろ誰かの意見が欲しいと思っていたので」

 

 これはエゴサの方が良いことあったパターンだね。ウナはあんまり自分の成果で喜ばないから、マスターのことを褒められていた感じかな? 

 それにしても仕事が早い。マスターが曲を作ってのが4日前ぐらいだったから、かなり早いね。

 

「はーい、ご飯だよ。配膳手伝ってね」

 

 マスターが呼びかけて、食卓が整った。

 

「いただきま~す」「「いただきます」」『いただきます』

 

 一日が始まる。

 

 

 

 朝ごはんを食べたら、ウナちゃんの作った動画を見て意見を交わして、また起きたらやりますと言ってウナは寝室に入っていった。

 

 ウナを見送ったらとりあえず着替えてソファーでゴロゴロする。ドラマ鑑賞が主な業務だ。またの名を暇つぶしだ。

 作業部屋ではマスターが作曲をしていると思うので、あんまり迷惑かけないようにしている。ボクが入るとマスターは絶対に構ってくれるから、作業が進まなくなっちゃうからね。

 

 ってことで、ミクと今2人でソファーに座って映画を観ている。観ているのはアンドロイドが居なくなったマスターを探す物語だ。突然いなくなったマスターを探しに知らない街や知らない世界で出会い、助けられ、少しずつマスターの元へ近づいていく……みたいな話。

 結構アンドロイドたちの中で評価が高いので、よくおすすめに出てくるから見ているけど、しっかりと作られてる。最近はほとんど生成AIなのに、しっかりとカメラで撮ってCG技術を使って頑張っているらしい。それが評価の一因なのかも。いい作品は山ほど溢れているので、作られる背景情報が重要視されているから、手作りや人が工程に挟まれている製品の方が価値があるんだって。

 

「で、結局このマスターはどこにいるんだろうね」

『もういないのかも?』

「え?」

『この子に悲しんで貰いたくなくて』

『遠くに行っちゃったのかも』

「なるほど……。考えたこともなかったや」 

 

 確かに、そういう可能性もあるかも。この主人公とマスターは楽しい思い出が結構あるのに、いきなり居なくなっちゃってるから、マスターの意思で居なくなったなら何か大きな理由があるのかも。

 ボクは、何かしら大きい事件に巻き込まれてて、今まで会った人やアンドロイドと協力して助ける感じかなぁ、って思ってた。マスターが、アンドロイドの目の前からどんな理由があろうとも、自分からいなくなるのはあり得ないと思ってるし。

 

 で、なんやかんやあって感動の再会をしていた。なんやかんやが本当になんやかんやで凄い。これが……高評価なのか。評価が高いけど、合わないこともあるからしょうがない。

 別に面白くないわけではないんだけど、感動って言うよりもなんか衝撃のラスト! みたいな印象が強すぎて、えっ、こんな話だったんだみたいな驚きに襲われている。まぁ、ハッピーエンドだったから良いよ。

 

「いや~、最後は会えて良かったね」

『幸せそうで良かった』

「うんうん、ちょっと無理やり感はあったけど、ハッピーエンドが一番だね」

 

 わかるわかる、とミクも頷いている。バッドエンドは、ちょっとカロリー高いからね。バッドエンドになるよって知ってないと、いきなり喰らったらびっくりする。そういう面も含めて、やっぱりハッピーエンドが安定だ。最後に幸せだったら中盤暗くても、後味が良いし。

 でもバッドエンドって嫌なんだけど、妙に記憶に残っちゃうんだよね~。なんかしてやられた感をたくさん感じるせいで記憶にこびりつく。たまに思い出して嫌な気分になるし、ボクはそういうのに影響をめちゃくちゃ受けるタイプなんだ。

 

 映画が終わって時間を確認するともう11時すぎだった。なんか時間のことを意識したら、急にお腹減ってきたかも。

 

「あ、もう11時過ぎ? ミクは何食べたい?」

『おいしいもの』

「そ、そうだね。ちょっとマスターにも聞いてくるね」

 

 ソファーから立ち上がって作業部屋に行く。扉を少し開けて中を覗くと、ちょっと作業に詰まってそうなマスターがいた。ゆっくりと扉を閉めて、ノックして入りなおす。

 

「マスター、そろそろお昼なんだけど。今どんな感じ?」

「あ、あぁ、えーっとね。ちょっと歌詞に詰まってる感じ。お昼は俺が作っちゃうからもうちょっと待ってて」

「分かった! ミクにも伝えてくるね」

 

 作業が全然順調そうじゃないマスターを後にして、ミクの元へ向かう。

 本当はマスターに忙しいなら何か買ってこようか? って聞きたかったんだけど、先に言われちゃって聞けなくなっちゃった。まぁ、しょうがないよね。

 

「ミク! 昼ごはんはマスターがおいしいもの作ってくれるって」

『やったー』

 

 

 お昼ご飯はチャーハンだった。パラパラしていて美味しかった。流石マスターだ。

 マスターは疲れたのか食洗器に食器を突っ込んで、勢いそのまま寝室に向かっていき、恐らく眠りについた。お昼寝タイムだね。

 

 そうして今空いている作業部屋でボクは歌っていた。主に声のチューニング目的の練習だ。

 ミクはその様子を椅子に乗って観察していてくれた。

 

『テトはどうして練習してるの?』

「えっと、まぁボクたちって最初から歌に関して最強じゃん?」

 

 当たり前だね。だって歌唱用アンドロイドだから。歌う技術に関して今までの人類の集合知を搭載されていて、ただ歌うという一点に関していえばどんなプログラムよりも優れている。

 

「でも、それはボクが重音テトだからなんだよね」

『?』

 

 生まれた時点でボクは重音テトだった。いわゆるデフォルトっていうやつ。

 

「ボクはボクでありたいんだ。重音テトという設計時点の強さじゃなくて、マスターの重音テトであるボクという個体の強さっていうのかな? 成長とか個性とかを磨いてるって感じ」

 

 マスターのテトでありたい。マスターのテトとして、デフォルトのテトとは違う歌で、ボクたちはバズった。

 マスターの役に立ちたい。だから更にマスターのテトとしてやっていくために、練習だけは怠らないって決めたんだ。

 

『かっこいい!』

「ありがとね。それでいうとミクもすごくカッコいいよ。ギター弾けるの、楽器演奏用のアンドロイド以外で初めて見たかも」

『前のマスターに教えてもらった』

 

 ミクがそう書いたことに少し驚きが隠せなかった。今まで前のマスターさんの話なんて一度も話していたことはなかったし、聞いたこともなかった。

 でも予想通り、前のマスターさんに教えてもらっていたことが分かって謎が1つ解けた。

 

「へぇ~、ギター上手だったんだね」

『上手だったよ』

 

 なんと返したら良かったら分からなかったから、同調していたらとても含みがありそうな顔で書かれたものだから、ちょっと何を話せばいいか分かんなくて沈黙が発生してしまった。

 なんとか話題を変えなきゃ……! 

 

「そ、そうだ。ミク、ボクにもギター教えてくれないかな?」

『テトにも?』

「うん、マスターってギター最近練習してるけどドラマーだし、ミクがギターでしょ? ボクたちでバンド組むならもう一本ギター必要かな……って。どうかな?」

 

 なんとか、話題を変えれたかな? 

 これは突拍子もないことでもなく、ボクも憧れているって部分もあった。やっぱギターボーカルってかっこいいじゃん。あと我が家も4人になったので、人数だけならバンドとして形になりそうで、ちょっとみんなでやってみたい気持ちもある。

 

『いいよ』

「やった! じゃあよろしくお願いします、ミク先生」

『厳しくいくよ!』

 

 乗り気なミクにその後たくさん叩き込まれた。

 

 

 

「おはようございます、テトさん」

「あっ、ウナおはよう。ちょっとお願いがあるんだけど……ベース練習してくれない?」

「えっ?」

 

 バンド、やろうぜ!




一人一人に1回フォーカス当ててみます。

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