場所はロドス本艦。
レム・ビリトンの騒ぎが一応一段落ついた後だ。
あの後何があったかと言えば...
「...」
天災が「晴れた」後。
危機契約機関に連絡がなんとか及んだのか、他の組織の小隊が援護に来た。
おかげで物資はなんとか足りて、死亡はゼロ。
本当だったら孤立無援だったところを、上手くかみ合ってこうなった。こんな事は、二度と起こらないだろう。天災に通信は妨害され、海からは謎の怪物。...これは、本当になんだったんだろう。結果的に、潰されてはいた。
でも、天災が過ぎ去った翌日、その方向に行くと、そこにはなんの生物の姿もなかった。
移動区画が違う場所に行っただけなのか?と考えてみたが、座標は確かに合っていた。
夢だったのか?とすら思えてしまう程、綺麗さっぱりと何もなくなっていたのだ。
私は本来の目的...壺の職人の所在を確かめた。
目的は終わった。
正直、不思議な事が多くあった遠征だった。
1週間にも満たない遠征だったけど、はっきり言って人生でも10本の指に入る大イベントだろう。
これは問い詰めなくては。
「...ただいま...」
正直、まだ不安感が拭えない。
あれはなんだったんだろう。
トン。考え事をしていたら、誰かと肩をぶつけてしまった。
「...あ、すみません。」
「気にしないで。」
「それと、ドクターってどこにいらっしゃるかわかりますか?聞きたい事が...」
「この時間なら執務室にいるはずよ。」
「あ、ありがとうございます...」
冷たい...
どなたかな。多分、見た事ない人な気がする...最近来た人なのかな...
とは言っても、私も新参者だからわからないけど。
ロドスにはいろんな人がいる。そんなのわかりきってるけど。
サルカズ、サンクタ、クランタ、私のようなリーベリ。
人種のるつぼ、なんて言葉があるが、そんな比ではないくらい、ここには多くの種族がいる。
それでも、あの青い怪物は見た事が無かった。
すれ違った人の言う通りなら、ドクターは執務室にいるはずだ。
ノック。
「どうぞ...ああ、ファイアフライか。」
「...お邪魔します...?」
「...」
さっきすれ違った人がいた。
なんで...?歩いて行った方向違ったよね...?
「...私が呼んだんだ。」
「は、はぁ...」
「こんにちは。さっきぶりね。」
真顔じゃん...
「まあ、ファイアフライがここに来た理由はわかる。先日のレム・ビリトンの騒動だろう...」
「まあ、そうですけど...」
「彼女はスカジ。アビサルハンターだ。」
「...」
「アビサル...ハンター?」
「ああいう海の化け物を狩るのが仕事よ。」
「...もしかして、グレイディーアって方がいらっしゃいます...?」
「グレイディーアと会ったの?」
「えっと、助けてもらったというか...」
「ああ、スカジ。この前の任務、近くに移動区画があっただろう。ファイアフライはそこにいたんだ。...まあ、つまるところ、目撃者って感じだ。」
「わかったわ。じゃあ、シーボーンについて知りたいってわけ?」
「シーボー...ン?」
「あの青い奴らよ。」
「はあ。」
「恐魚との違いは...端末に送っておくわ。今はどうでもいいから。」
「今大事なのは、何故海の怪物がレム・ビリトンにいたか、だ。」
「君から報告書を貰った...街中に怪物がいたって。」
「はい。子供が飼っていたみたいで...」
「シーボーンを飼うのは不可能よ。」
「え?」
「それは飼っていたのではなくて、シーボーンが寄生...もしくは、共生してただけ。」
「都合よく利用されてたってわけね。」
「なんで、子供を?」
「さあ。」
「餌をくれるからじゃないかしら。」
「それで、なんでそのシーボーン?が、レム・ビリトンに...」
「大方、呼び寄せたんだろう。ここに餌がある、と。」
「その移動都市は海の方に移動していたらしいからな...イベリアの方から逃げて来たか、深海教会の奴らに手引きされたか...」
「は、はあ...」
よくわからない話ばっかりだ。
「とりあえず、ファイアフライ。お疲れ様。」
「この仕事はイベリアとエーギルとロドスで引き継げるから、ゆっくり休んでくれ。」
「またね。」
「わかりました...ありがとうございます。」
全く持ってよくわからない。
エーギルとイベリアはこんなのを相手に戦ってたって事?
...
今度、イベリアに行ってみようっと。
ロドス本艦、食堂。
今は休憩時間で、私はご飯を食べてる。
今回の騒動は疲れた。
普段、カズデルと他の都市やらと飛び回ってるけど、それより余程疲れた。
ちょっと休暇を取ろうかな。それこそ、ちょっとカズデルに先に遊びに行こう。
...遊ぶところ、あんまりないけど。
なら、シエスタとかドッソレスもいいな...
でも、わいわい騒ぐ気分にもなれないなあ...
なら、やっぱりカズデルだろう。
私の第二の故郷。
よぉし、こうなったら「すまない、少しいいか?」
「え?」
「あ、Mon3trさん。どうかしました?」
「検査を少し受けてもらいたいんだが..,今、時間はあるか?」
「それくらいならいいですけど...」
カズデルに行く前に医療部に行くはめになるとは。
ベッドで寝かせられている。
ついでに、両腕をMon3trさんの爪で拘束されている。なんで?
「...その、これ、どういう状況...?」
「大丈夫だ、ちょっとチクっとするだけだからな...」
「なんで!」
「シーボーンの組織が付着しているかもしれないだろ?」
「ちゃんと風呂入ってます!!」
「万が一だ、万が一。」
「まあ納得...」
「...ふむ...」
「?」
「...ああ、もういいぞ。すまないな、時間を取ってしまって。」
「はーい。」
細胞の付着をチェックするのに、あんなに仰々しい感じでやる必要あったのかな?
「...Mon3tr。」
「ああ、ワルファリン。適当に誤魔化したけど、取れたぞ。」
「ほう。...検査に協力的っていうのは、やはり素晴らしい事じゃな。」
「して、どうであった。」
「やっぱりだ。病状は、数か月前から一切として変化していない。」
「ふむ...」
「ワクチンが作れるかも、とも思ったんだけど、どうやらそうじゃないみたいだ。」
「というと?」
「鉱石病や体表に出ている源石に、他の感染者との違いは一切ない。」
「...」
「いたって正常の...鉱石病はそもそも正常ではないが、鉱石病の症状としては、普通だ。突然変異、みたいなのも恐らくない。」
「どうなっとるんじゃろうの...」
「正直、要観察、としか言いようがないんだ。どうなるかは、ケルシーの知識にもめぼしい物はない。」
「そうか...すまんの。」
ロドス本艦でいくらか休暇を取った後、私はカズデルに着いた。
いつも通り、イネスさんとヘドリーさんの店によってもいいかもしれないし、適当にぶらついてもいいかもしれない。
「...だいぶ、良くなってるような。」
カズデルに、天災は発生しない。
...正確には、天災雲はずっとある。カズデルの周りをぐるりと囲むように。
これは、抑止力だ。
自由に操れる、というのはやはり大きく、カズデルはそのお陰で色々な恩恵を得ている。
カズデル出身だ、と名乗っても取引ができる大きな理由はそこにある。
ある意味悪目立ちかもしれないが、カズデルという都市はとても有名になった。
だから、サルカズに偏見のない人や、どうでもいいと感じる人。利益だけを追求する商人達は交渉の余地が生まれている。
私がカズデルに商品を搬入できるのも、これのおかげだ。
まあ、物流トランスポーターの役目はどちらかといえば、ルートの確立なわけで搬入だけをしているわけではないが。
「こんにちは~」
「いらっしゃい。」
「あれ、今日はヘドリーさんはいらっしゃらないんですね?」
「ええ。ヘドリーなら今は識字教室の方にいるわ。」
「アルバイトならそこにいるけど。」
「バイト?...あ、」
イネスさんが指を指して示した方には、議長が何故かエプロンをして働いている。
「わぁ...働いてる姿も素敵...」
「暇そうにしてたから呼んだの。」
「暇じゃないわよ!」
「街をプラプラ歩いてた癖に?」
「あたしは議長よ?見回りくらいやるに決まってるでしょ。」
「暇ならヘドリーの識字教室にでも行けばよかったのに。」
「あっちはもっと退屈よ。」
犬猿だけど、そうじゃないみたいな。
いつ見てもある意味息ピッタリだよなあ...って思う。
「あ、いつもので。」
「そう。ウィシャデル、そこからサイダーとペンとノート持ってきて。」
「人使いが乱暴よねえ。本当にリーダーやれてたのかしら?」
「できないならできないって言ってくれていいのよ。」
「...チッ。」
ドン、とテーブルの上にいつものが置かれる。
「...あら、アンタ。前に本部で会った子じゃない。」
「あ...!覚えてくださってたんですね!」
「覚えてるわよ、そりゃあ。いきなり写真撮らせろだなんて、随分珍しいご挨拶だものね?」
「...うっ。」
「ファイアフライ、だっけ?」
「そ、そうです!」
「へぇ...ふぅん...」
「なんでその名前にしたの?」
「えーと、アーツが光のアーツで...蛍みたいだな、と...」
「へえ。ちょっとアンタ、ついてきなさい。」
私は議長に腕を掴まれて、連れてかれている。
正直今とても幸せ。
店の方をふと見ると、イネスさんが手を振っている...あ、違う。
あれ、商品忘れてるよのサインだ。...まあ、後で取りに行こう。
「よし。どんなアーツなのか、ちょっと見せてもらおうかしら。」
「は、はい!」
パチン、と指を鳴らし、ちょっとした光を出す。
「これ、どこまでできるの?」
「えーと、割と広範囲に...限界は、実は試したことなくて...」
「後は眩しさと熱さ、後は持続時間と範囲をなんというか...どれくらいにするか割り振る感じで撃つので、範囲だけだと他のパラメーターが恐らく弱くなっちゃうかな、と...」
「ふーん。」
「あんた、ちょっと協力しなさい。」
「...任せてください!」
「まだ内容も言ってないわよ?」
「他ならぬ議長の為ですから!」
「あたしにそんな忠誠心あるのも珍しいわね。」
「カズデルに救われたので...今のカズデルを率いてる議長は私の恩師みたいな物です!」
「ハッ、そう。」
案内されるがままについていけば、街の外に出る。
「その、街の外に行くんですか?」
「見てみなさい、あれ。」
街の外には何かのキャラバン...というか、車列のような物がある。
「車列...ですか?」
「そうよ。アイツら、カズデルに来た商人達なの。」
「傭兵に依頼が来たの。奪われた商品を取り返してほしいってね。」
「へぇ...ん?」
「えと、つまりそれを受けるんですか?議長自ら?」
「そうよ。」
「で、アンタはその手伝い。」
「へ...」
「ちゃっちゃと行くわよ。」
「わ、わ...」
商人にずかずかと近づいていき、貼られたテントの中に入る。
議長は真面目な顔で商人達から話されるガイダンスを聞き、何か地図に書き込んでいる。
ある程度カタがつき、
「場所はわかったでしょ?」
「は、はい。こんなに近いんですか?」
「意外とね。どうせ、せいぜいそこらの野盗かバウンティハンターあたりに懸賞金でもかけられてたんじゃないかしら?」
「カズデルに入ろうとする奴の邪魔するのは、なんとなくムカつくし。」
「で、直々に、と...わかりました。できる限りお手伝いします!」
私が運転をする車の中。
「アンタが目眩ましをして、爆破。簡単な作戦でしょ?」
「...至極単純ですね。」
「わかりやすいのが一番よ。変に複雑にしても、かえって混乱しちゃうわ。」
「ま、統率の取れてるところなら複雑なのが一番なんでしょうけど。」
「わ、私はなんだってやりますよ!難しい作戦でも理解してやってみせます!」
「へぇ、そう。今度、何かある時はアンタを呼ぼうかしら?」
「任せてください!」
「ほら、あそこ。」
「...洞窟、ですか?」
「でしょうね。その近くで襲われたってんだから、だいたいああいう所に居座ってるモンなのよ。」
「今頃は皮算用かしらねえ?」
手に入っているから皮算用じゃないのでは?と思ったけど、言うのはやめた。
「さ、始めるわよ。」
「は、はい!」
「入り口から奥に向かって、とーーっても眩しくやってちょうだい。」
「...ハァっ!」
パチン、と音が鳴る。同時に、キィィン、と閃光手榴弾のような音が響く。
光と半径に重きを置けば、必然的にこうなる。
しかし、音も調整ができるため、洞窟の外にいる私達に影響が及ばないようにする。
「やるじゃない。」
「ありがとうございます!」
洞窟の中からは、悲鳴と怒声が聞こえる。どうやらビンゴだったらしい。
「じゃ、後は任せなさい。」
議長はどこから取り出したのかすらわからない、巨大なランチャーのような物を取り出し、発射...?した。
赤黒い弾が発射され、大爆発が起きる。
...しかし、その爆発は見た目だけだ。
私がよくやる、目くらまし程度の物。到底人を殺すには程遠い威力。せいぜい気絶が関の山だろう。
「...議長?」
「なぁに?」
「その弾って、調整できるんですね...」
「ああ。レヴァナントがいんのよ、こんなか。」
「............」
あんぐりだ。
レヴァナントなんて、まず聞く事自体が珍しい。
それが、しかも超身近にいるなんて...
「お話しできるんですか?」
「できるわよ?ま、口を開けば昔はなんだって懐古厨みたいな事しか言わないけど。」
「へぇ...」
駄弁りながら、洞窟に入場する。
作戦にしては、あんまりに穏やかな雰囲気すぎる。
「ほら、完璧でしょ?」
中には、5人くらいの男女が伸びていた。そばには貴重品が入った木箱がある。
「これですかね。」
「さっさと持って帰るわよ。」
「この人達は...?」
「...商人たちにお任せしましょ。捕縛、手伝ってちょうだい。」
「はい!」
最初、爆破、と聞いた時には殺すのか?と思っていたが、どうやらそうではないらしい。
それが一番だ。平和的解決だ。
やっぱり、議長は良い人だ。
そんなことを考えていると、
「...アンタ、どうしたの?」
「...んぇっ、何かありましたか?」
「いや、頬がとっても緩んでるわよ。」
「...恥ずかしい...」
どうやら顔に出ていたらしい。
「はい。盗賊とその集団。」
商人に身柄を引き渡し、私達はカズデルに戻る。
「アンタ、なかなかアーツ使えるじゃない。」
「はい!練習しましたから!」
「ロドスの試験、受けたわよね?」
「はい!!」
「アンタ、成績どんなもんだったのよ。」
「えーと...」
私は成績を伝えた。
ほとんど標準止まりで、戦場機動だけが優秀。戦術立案に関しては、普通であった、と。
「...嘘よね?」
「ええと...本当です。」
「ロドスも目が濁ったのかしらね?あのフード野郎はなんか言ってた?」
「多分、ご覧になられてないかな...?見せた覚えがないので...」
「今度、見せてみなさい。それで標準だって言うなら、ロドスのオペレーターは眼が腐ったみたいだから。」
「わ、わかりました...」
「私のアーツ、そんなに変でしたか?」
「変...ってわけじゃないけど。詳細に操作できるんでしょ?」
「えと...まあそれに気づいたのは最近なんですけど。」
「思ったより自由にできるなあ、と。」
「そう。まあ、戦力が増すに越したことは無いわ。」
「アンタ、カズデルにどれくらいの頻度で来るの?」
「仕入れと仕事の時以外は、基本ロドスのカズデル支部に。後は、ロドス本艦のどちらかにいます。」
「へぇ...出身は?」
「えーと...シラクーザです。」
「そ。今後、色々お世話になるかもね。じゃあね。」
そういうと、手を振り、軍事委員会の方に議長は帰って行ってしまった。
私はと言えば、カズデル支部の、割り当てられた部屋...まず、カズデル支部にいる人は他の支部に比べて少な目だ。リーダーと、その部隊員。だいたい、小隊1個分くらいだろう。
私はその小隊の別動隊...ってわけでもないけど、そんな感じだ。
小隊に直々に所属しているわけではないが、小隊の人達とは仲が良い。
全員サルカズで、感染者だ。
それで、隊員には部屋が割り当てられている。私もその恩恵にあずかり、自身の部屋で枕に顔を埋めてバタバタしていた。
「議長に色々聞かれちゃった...!覚えてもらえるかも!」
「次はなんて話してみようかな...また写真撮らせてもらえるかな!!」
「お、ファイアフライ。帰ってたのか。」
「わぁ~~っ!!!」
「わ、ちょ、なんだ、押すなって...」
「勝手に入ってこないで!!」
「ごめんって...」
第四資料
ファイアフライは基本、カズデル支部に停泊している。
トランスポーターとしての仕事をしている時以外は本艦と支部にいる予定だ、と動向を聞いた時に本人から聞いた。
本来の故郷であるシラクーザに帰るつもりはないのか、と遠回しに聞いてみたが、全く持ってないらしい。
もう十分だと言わんばかりに嫌だ、と突っぱねて来た。
どちらかと言えば、関わりたくないのかもしれない。
偶然本艦に居合わせたラップランドとすれ違った時、ラップランド曰く、「アンニェーゼとザーロがおもしろい反応をしてたよ。不思議がってた。本人達もよくわかってないんだけど、同じ匂いがしたんだってさ!ハハハ!」
だそうだ。
調査を続ける。
スキル2
細い光芒 SP 15▶35 持続時間 30s
攻撃速度が50%低下する。代わりに攻撃力が固定値100上昇し、攻撃した時に二回ダメージを与え、二回目のダメージが発生した敵に灼熱損傷を自身の攻撃力の50%分与える。
敵を倒すたび自身の攻撃力が30ずつ上昇していく(最大10回まで)。
素質によりスタンが無効化されている場合、その敵に足止めを2秒付与する。