第二次南号作戦が成功に終わる一方、将和はあえて踏み込まなかった米高速機動部隊を考えていた。
(史実のジャンボリー作戦すらしなかった……第二次台湾沖航空戦で俺達が思っていた以上に奴等は損失していたのか?)
将和はそう考えていたが実際にはニミッツの出撃を禁ずる命令を出していたからでありその予想は外れである。だからこそ将和はある作戦を思いつくのである。
「東京空襲を阻止するためサイパンとテニアン島を攻撃する」
「……長官、それはB-29を撃破する……という認識かしら?」
「あぁ。機動部隊の航空攻撃後、戦艦部隊を二島に突撃させて艦砲射撃して飛行場を破壊する。その前に東京空襲があれば仕方ないが夜間で阻止するしかない」
「そうだね~、不発弾込みを撃ち込めば少なくとも3ヶ月は使用不能にはしないとね」
将和の言葉に隼鷹は日本酒を飲みながらそう答える。ちなみに作戦会議ではあるがそこまでの気分ではない作戦会議であるため酒の持ち込みは許可されていたりする。グラーフも日本酒とワインを交互に飲み比べしていたりもする。なお、将和が持って来てたブランデーはいつの間にか時計回りからの回し飲みをされ、伊勢の番でブランデーは空になったりする。
「とすると……聯合艦隊も投入しての作戦ですか?」
「あぁ。『大和』や『長門』にも手伝って貰わないとな」
第二次南号作戦の成功で横須賀、佐世保、呉等の軍港施設では燃料の供給が可能となり『大和』や『長門』久しぶりに腹を満たせる事に成功するのである。特に徳山にある第三海軍燃料廠のタンクを満たせる事に成功したのが良かったのである。
だが、清はまだ足りないとして3月を基幹に第三次南号作戦を計画中でありこれには淡路島で建造中の1TL型タンカー19隻、1K型20隻、更に『富士山丸』型タンカー(スーパータンカー)12隻が参加し他にも生き残っている『せりあ丸』等のタンカーや貨物船等合計80隻近い輸送船団の予定であった。
ちなみに清や大井中佐らは「まだ輸送船が足りない!!」と増やそうと喚いていたりするが流石に野村大将に止められていた。
「としますと、また海軍省と日吉に行く必要がありますね」
「ハイハイ!! 私が行きマース!!」
加賀の言葉に金剛が素早く反応し手を挙げるが加賀は溜め息を吐いた。
「貴女が変に混乱するから無しね」
「エェーッ!? 何でデスカー!!」
(その片言語ぽいのが原因じゃね?)
加賀に文句を言う金剛に将和は内心でそう思いながらコップに注がれた日本酒を飲むのである。結局、東京と日吉に向かうのは妙高と香取に決まったのである。
「サイパン島とテニアン島を攻撃するとッ!?」
「はい。B-29の本拠地を先に叩いて東京大空襲を防ぎます」
「確かに……我々も過去に丹作戦を実行してはいたが……」
「じゃっどん参謀長、案としては良か案でごわす」
「それは分かっている神参謀。私が言いたいのはパイロットの予備がもう無い事だ。601空は蘇りつつあるが今此処に投入して良いのかどうかだ」
神大佐の言葉に草鹿参謀長はそう慎重論を唱える。確かに草鹿参謀長の言葉も一理はある。
母艦航空隊として再度の編成途中であった第601航空隊では残っている発着艦経験者等で再編成中である。例として挙げるなら戦闘機隊には新郷英城少佐を筆頭に横山保少佐、進藤三郎少佐、藤田怡与蔵少佐、岡嶋清熊少佐、岩井勉飛曹長、岩本徹三少尉等が名を列ねていた。艦爆隊には高橋定少佐、江間保少佐等が参加していた。また、『呂500』と『伊26』がマリアナ諸島のロタ島に派遣され阿部善次大尉等パイロットの収容を任されていたりする。
他にも艦攻隊には病気療養中だったが淡路島に派遣されてからは全快した真珠湾攻撃にも参加した松村平太少佐、田中正臣少佐等も参加しており聯合艦隊の入れ込みは違っていたのである。なお、飛行長には淵田大佐自らが直訴して就任していた程である。
無論、将和もそれを理解していたので代替案を提示したのである。
「それなら淡路島航空隊と交ぜましょう。艦爆、艦攻隊は此方から出しますので戦闘機隊はお任せしたい」
「淡路島がパイロットを出すと?」
「はい。601空の編成完了は機動部隊復活の最後の砦です。それなら淡路島の方でもお手伝いさせてもらいます」
「それは有り難いですが……」
将和の提示に草鹿も賛同したかったが参謀長という役職なので即決には出来ない。チラリと視線を豊田に向けると豊田は判断は自分がしたとばかりに頷いたのである。
「参謀長、責任は俺が取ろう。三好長官、宜しくお頼みします」
「分かりました。それに601空にも此方からも教官達を出しましょう」
「ありがとうございます」
「それと豊田長官、実はこの案を出すに一つ策が……」
かくして作戦は開始される。その電文が米太平洋艦隊司令部に届けられたのは3月4日の事であった。
「何? ジャップがハワイを再度攻撃するだと?」
「はい。日本海軍の暗号電文を傍受し解読した結果ですが……」
米太平洋艦隊司令長官ニミッツ大将の言葉に情報主任参謀のエドウィン・レイトン大佐はそう答える。その電文を傍受したのは3月1日の事であり解読に時間が掛かったが解読すると日本海軍の残存空母で編成された機動部隊がハワイ攻撃の為に択捉島に向かったとの事だ。
「艦隊規模は分かるかね?」
「はい。『ウンリュー』型の『アマギ』『カツラギ』に軽空母『ジュンヨー』『リューホー』の4隻を基幹とした機動部隊との事です」
「ムゥ……確かにジャップに残っている空母はそれくらいだと聞いているが……ジャップの狙いが分からないな」
「……ハワイの軍港施設ではないのですか?」
「開戦初期ならまだ分かる。最も、彼等はナグモは失敗したがね。だが、今回の狙いは分からない……」
ニミッツ大将は日本海軍の狙いが分からない事に頭を悩ませる。だが攻めてくる事には変わりないのでニミッツ大将はハルゼーを呼び出しハワイ周辺での迎撃を発令したのである。
無論、ハルゼーは機動部隊との決戦に眼を輝かせたのは言うまでもない。
「ハッハッハ。黄色い猿め、またハワイを空襲しようってか? そうは問屋がおろさんぞ」
ハルゼーは正規空母8隻、軽空母3隻を基幹とする第三艦隊を編成すると6日にはハワイを出撃しハワイ海域周辺にて日本海軍の機動部隊を待ち構えたのである。
しかし3月9日0700、ニミッツ大将は司令部に駆け込んできた戦闘情報班のジョセフ・ロシュフォート少佐からの電文を受け取る事になる。
「何!? サイパン島とテニアン島が空襲を受けたと!!」
「は、はいッ。日本海軍の機動部隊からの攻撃を受けたとの事です!! 暗号解読を逆手に裏を掛かれました……」
ロシュフォート少佐は悔しそうにそう告げる。日本海軍の狙いはハワイではなくサイパンとテニアン島の二島であったのだ。
「そうかッ奴等の狙いはB-29の破壊だ。本土空襲が断続的に行われている中、破壊するとしたらB-29だ……」
ロシュフォート少佐からの報告にレイトン大佐は合点がいったように力無くそう呟く。そう、初めから日本海軍はハワイを狙ってはいなかった。狙いはサイパン島もテニアン島にいるB-29であったのだ。
「それで、被害はどうなのかね?」
「まだ一報なので詳しくは……ですが、夜明けと同時に二島とも200機以上の攻撃隊に空襲されたと……」
「に、200機以上だとッ!?」
ロシュフォート少佐の言葉にニミッツ大将は眼を見開く。奴等、まだ空母の他にもやはり航空戦力は残っていたというのか……。
時は少し逆行し3月8日、将和と日本海軍の機動部隊は硫黄島沖を航行していた。
「イゼルローン(ハワイ)は陽動、本隊はフェザーン(サイパン島・テニアン島)行きと来たぁぜ」
「何それ長官?」
「いや、気にしないでいいよ」
旗艦となった『伊勢』の艦橋で伊勢にそう返す将和であった。なお、艦隊は前衛に展開する『伊勢』ら他の2個戦艦部隊と後方で展開する『加賀』以下の機動部隊に分かれていた。
聯合機動艦隊
前衛艦隊第一部隊(サイパン島砲撃隊)
司令長官 三好将和大将
旗艦『伊勢』
戦艦
『伊勢』『武蔵』『長門』『山城』
甲巡
『高雄』『妙高』
乙巡(雷巡)
『大井』
駆逐艦(清からの駆逐艦も有り)
『長波』『沖波』『秋雲』『白露』『朝潮』
前衛艦隊第二部隊(テニアン島砲撃隊)
司令長官 伊藤整一中将
旗艦『大和』
『大和』『陸奥』『金剛』『榛名』『霧島』
甲巡
『那智』『鈴谷』『羽黒』『足柄』
乙巡
第二水雷戦隊
『矢矧』
第七駆逐隊
『潮』『響』
第二十一駆逐隊
『朝霜』『初霜』『霞』
第三十一戦隊
『花月』『榧』『槇』
三好機動部隊
正規空母4隻
『加賀』(旗艦)
【烈風36機 彗星36機 流星36機 彩雲6機】
『雲龍』
【烈風27機 彗星18機 流星18機 彩雲3機】
『グラーフ・ツェッペリン』
【Fw190T改27機 Ju87C改36機】
『蒼龍』
【烈風18機 彗星36機 流星27機 彩雲3機】
軽空母1隻
『隼鷹』
【零戦54機 彩雲6機】
甲巡
『摩耶』
乙巡
『五十鈴』『香取』
日本海軍第一航空戦隊
『天城』
【零戦27機 彗星18機 流星18機】
『葛城』
【同上】
甲巡
『青葉』『利根』『羽黒』『足柄』
乙巡
『大淀』
第十七駆逐隊
『磯風』『浜風』『雪風』
第四十一駆逐隊
『冬月』『涼月』『春月』『宵月』
第四十三駆逐隊
『桐』『杉』『樫』『楢』
第五十三駆逐隊
『櫻』『柳』『椿』『楓』
全体の指揮は将和が行っていたが機動部隊の指揮は加賀が将和から直接任命され行っていた。大林少将らは驚いたが空母運用の事を理解しているなら問題無しと素直に従ったのである。
「先に噴進弾を搭載した『烈風』を先行させて滑走路や滑走路脇に待機している航空機を噴進弾等で攻撃し離陸させないようにしてから本命の攻撃隊投入にします」
第一次攻撃隊として加賀は両翼に噴進弾を搭載した『烈風』54機を二島に半数ずつの27機ずつを差し向けた。これが3月9日0430の事である。
そして『烈風』隊が発艦すると第二次攻撃隊として『烈風』27機、零戦54機、彗星90機、Ju87C改36機、流星54機を二島に発艦させたのである。
「こんなに日の丸を付けた航空機を見るのは久しぶりだな……」
飛行中、第601空所属の岩井飛曹長は思わずそう呟く程であった。そして先行する第一次攻撃隊は低空飛行でサイパン島とテニアン島まで飛行しそのまま両島の滑走路に雪崩込んだのである。
「お、いやがるいやがる」
サイパン島攻撃を命じられた『烈風』隊のパイロット妖精であるミヤノ大尉は滑走路脇に待機するB-29群を見てニヤリと笑みを浮かべる。
『全軍突撃せよ!!』
無線機からは『烈風』隊隊長のイイダ少佐の声が聞こえ、ミヤノ大尉は赤ブーストまで速度を上げて緩降下しつつ噴進弾を発射する。
一回の発射につき両翼から1発ずつ発射される噴進弾は照準を合わせたB-29に突き刺さり瞬く間に爆発する。それは他のB-29もそうでありサイパン島のアスリート飛行場とコブラー飛行場は噴進弾攻撃で炎上したのである。『烈風』隊が噴進弾と銃撃を終わらせて帰還すると入れ替わりで第二次攻撃隊が到着、攻撃隊指揮官のイリキイン少佐は炎上する飛行場を見て直ぐ様ト連送を発した。
「全軍突撃せよ!!」
対空砲火は疎らであった。『烈風』隊の噴進弾等で対空火器が破壊された事も幸いしていた。攻撃隊は思う存分に飛行場を攻撃し蹂躙したのである。
「よしッ!! 存分にやれェ!!」
二島から悲痛な電文が発信されたのもこの頃の事であったのである。更に加賀はダメ出しの第三次攻撃隊を二島に繰り出し二島の航空戦力——B-29部隊は完全に撃滅されたのであった。
なお、夜半には将和と伊藤中将の各部隊が二島に突撃し艦砲射撃を敢行。両島に500発余りの不発弾も撃ち込んで両島の飛行場の再建を遅らせるのであった。
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