「はぁ……将和、お前さぁ……」
「いや、ほんと済まんって……」
将和は空路にて台湾高雄に停泊する第三次南号作戦の旗艦『龍田』に来て清に頭を下げていた。先のサイパン島、テニアン島の航空攻撃と艦砲射撃は大成功に終わり、二島に展開していたB-29 150機程は完全に破壊され滑走路も不発弾が500発程撃ち込まれたおかげで2ヶ月から3ヶ月程度は使用不能になったのである。それにより日本本土への空襲は暫くは停止されるのであった。
しかし、その代償として第二次南号作戦で本土に還送した燃料の三分の一を消費してしまい作戦終了後、将和は『彩雲』にて台湾に向かい清に頭を下げていたのだ。
「まぁでもぉ、B-29を叩く意味ならサイパンとテニアンを攻撃するのは理解出来るわねぇ。でも報連相はしてほしかったわぁ」
清の後ろにいる龍田はニコニコと笑ってはいたが同じく部屋にいた大井中佐らは顔を引き攣っていたりする。
「まぁ良いさ龍田。裏方は得意だからな」
清はそう言って取り敢えず龍田の鉾を納めるのである。
「取り敢えず、この第三次南号作戦は成功させる。いや、させるッ。成功すれば日本は約一年、南方からの資源に頼らなくても何とかやれる」
この時、『龍田』以下の清艦隊の一部は台湾に停泊していたが輸送船団と第101戦隊と第102戦隊、第103戦隊等の海防艦や軽空母『龍鳳』、それに清艦隊所属の軽空母『飛鷹』『千歳』『千代田』等はシンガポールに向かい錨を降ろしていたのである。なお、編成は以下の通りであった。
第三次南号作戦
旗艦『龍田』
司令長官 長谷川清大将
空母4隻
『飛鷹』
【零戦36機 『天山』18機】
『瑞鳳』
【零戦27機 『天山』3機】
『千歳』
【零戦24機 『天山』6機】
『千代田』
【零戦24機 『天山』6機】
甲巡(航巡)1隻
『筑摩』
【瑞雲7機】
乙巡4隻
『夕張』『鬼怒』『川内』『龍田』(総旗艦)
駆逐艦9隻
『漣』『皐月』『叢雲』『時津風』『松』『竹』『山風』『早潮』『梅』
海防艦18隻
『日振』『大東』『昭南』『択捉』『佐渡』『対馬』『平戸』『松輪』『福江』『御蔵』『倉橋』『屋代』『鵜来』『稲木』『第四号』『第二十二号』『第三◯号』『能美』
第101戦隊
司令官 澁谷少将
旗艦『香椎』
海防艦10隻
『千振』『第1号』『第3号』『第23号』『第27号』『第51号』『第60号』『第76号』『第84号』『第205号』
第102戦隊
司令官 浜田少将
旗艦『鹿島』
海防艦10隻
『第2号』『第14号』『第16号』『第18号』『第33号』『第34号』『第35号』『第63号』『第82号』『第207号』
第103戦隊
司令官 久宗少将
旗艦『若鷹』
海防艦10隻
『久米』『国後』『八丈』『第25号』『第67号』『第112号』『第124号』『第130号』『第132号』『第150号』
第一護衛艦隊附属
軽空母
『龍鳳』
【零戦12機 九七式艦攻改試製三号戊型18機】
『海鷹』
【九七式艦攻改試製三号戊型18機】
駆逐艦
『汐風』『春風』『朝顔』
参加輸送船及びタンカー
『黒潮丸』(戦前タンカー)
1TL型タンカー20隻
1K型貨物船20隻(海南島)
『辰和丸』(貨物船)
1TM型タンカー1隻
1A型貨物船10隻
2A型貨物船12隻
2TL型タンカー10隻
2TM型タンカー1隻
『富士山丸』型(スーパータンカー)タンカー12隻
給油艦
『能登呂』『知床』『神威』『針尾』『早鞆』
給糧艦
『杵埼』『早埼』『白埼』『荒埼』
「海軍も大分力を入れてるよ。まさか給油艦もそうだが給糧艦も出してくるなんてな……」
「ハルゼーの機動部隊はハワイにいるからな。確実に物資を持って帰らせるならそうする。俺もそうするさ」
将和はそう言ってお茶を飲む。
「俺の艦隊は沖縄を拠点に比島に攻撃を仕掛けて輸送船団から眼を逸らせる。ハルゼーが来たら俺に食いつくだろうな」
「成る程。獲物はデカい方が良いからな……頼むぜ将和?」
「任せろ」
清の言葉に将和は頷き、空路で沖縄に向かうのである。なお、輸送船団がシンガポールを出港したのは3月16日であった。本来なら14日に出港予定だったが2TM型タンカーの機関が調子が悪く妖精さんの出動で修理、規定以上の馬力が発揮するのに2日掛かってしまったのだ。
だがそれでも輸送船団は順調な航海を続けた。比島の米軍も大規模船団が出港したのは掴んでおり航空攻撃を仕掛ける前提で動いていた。しかし、台湾に展開している日本軍の航空隊(主力が淡路島航空隊)の航空攻撃により逆に仕掛ける暇は無かった。
無論、海中からも『ガトー』級や『バラオ』級、『テンチ』級等が輸送船団を目指したがバシー海峡を通過しようとした米潜水艦は沈められるか退却を余儀なくされた。これは台湾に展開していた対潜哨戒機『東海』の対潜哨戒に撃沈又は損傷して退却していたからである。
しかしながらセレベス海〜スールー海から抜けてきた数隻の潜水艦は存在していたのである。
それらの潜水艦は船団を追い掛け、側面から雷撃しようとするも上空を飛行しているのは爆雷を搭載した『天山』か、九七式艦攻改試製三号戊型であり潜水艦側が気付いた時には爆雷を投下され居場所が突き止められた後であった。
だが米潜水艦もイタチの最後っ屁とばかりに魚雷を放ち輸送船団に襲い掛かるのである。
「左舷より雷跡3本!!」
「輸送船に割り込め!! 総員退艦だ!!」
「『第35号』被雷!! 左舷に3本命中!! 『第35号』は轟沈!!」
「乗組員の救助を急げ!!」
魚雷3本を受けた『第35号』は船体が三つに割れての轟沈だった。更に4本が船団に迫り海防艦『第2号』と『第112号』が輸送船の間に入り命中、これも2隻とも撃沈だった。だが攻撃はそれだけだった。艦攻と海防艦が米潜水艦を追い詰め襲撃してきた2隻を撃沈するのであった。輸送船への被害は無かったのである。
「牧羊犬は羊の群れを狼から守り通せる事は出来たか……」
海南島からの輸送船団と共に合流した清は報告を聞いて安堵の息を吐いたのである。その後、輸送船団は無事に内地へ到着するのであるが……将和の艦隊はハルゼー機動部隊から航空攻撃を受けていたのである。
「敵攻撃隊接近!! 凡そ200機余り!!」
「上空警戒の戦闘機隊はどうした?」
「既に敵攻撃隊に向かっています。程なく接敵するでしょう」
将和の問いに加賀はそう答える。上空警戒していた零戦隊36機は更に追加発艦してきた『烈風』96機、零戦68機に合流しそのまま敵攻撃隊に向かっていたのである。
「しかし……決断が速いなハルゼー……」
「ですね……もしかしたら索敵攻撃をしていたのではないですか?」
「あー……有り得るな……」
輸送船団がシンガポールを出港する前日の15日に沖縄を出撃した将和の艦隊は比島北方沖合まで進出すると比島への支援として攻撃隊を出した。
リンガエン湾に拠点を構える米軍への攻撃は成功していたが偵察飛行のカタリナに発見されていた。将和も基地航空が来るという認識だったがたまたま東方方面に出した『彩雲』が接近して来る米機動部隊——ハルゼーの第38任務部隊を発見したのである。
将和も流石に米機動部隊がいたのには驚きつつも上空警戒機を増やしつつ警戒していたがまさかの対空電探が反応したのである。
「掛かれェ!! 艦隊には近づけさせるな!!」
米攻撃隊を発見したノウトミ大尉は無線に叫びつつ操縦桿を倒し急降下を開始するのである。
「それで……敵艦隊は攻撃出来ず敵の空母は無傷ってワケか……ふざけるな!!」
報告を受けたハルゼーは怒りのあまり野球帽を床に叩きつけた。第三艦隊旗艦『ニュージャージー』の艦橋である。第三艦隊は都合二波の攻撃隊を出したが敵艦隊の上空で待ち構えていたのは大量の戦闘機隊であった。
「ジークは確認されましたが改良型で『バシー海峡の悲劇』にも出てきたジークと思われます。更にジークの後継機である戦闘機も確認されていますが……」
「……此処で隠し球ってわけか」
「ハルゼー長官、此処は引くべきです。まだ航空機は500機は残っていますがパイロットの損耗が激しく負担が大きすぎます」
第三艦隊参謀長のカーニー少将はそうハルゼーに告げる。ハルゼーは思わずカーニー少将を睨み返すがハルゼーはカーニー少将の具申が正しい事を十分に理解していた。
「……仕方ねぇ。カーニー、全艦に反転を指示しろ」
「アイ・サー」
仕事に取り掛かる幕僚達を他所にハルゼーは新しい葉巻を取り出して火を付けて吸う。
「……なぁカーニー……」
「はい?」
「……いや、何でもない……(……まさか……有り得るか……?)」
呼び止められたカーニーだったがハルゼーは被りを振る。何か引っ掛かる思いを隠しつつ第三艦隊は反転、ウルシー環礁に向かうのであった。
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