『三好in艦これ1945』   作:零戦

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第十三話 船が七分に海が三分

 

 

 

 

 

 

 

 

 硫黄島に米軍が上陸してから日本軍の対応は早かった。史実より早くに第三航空艦隊司令長官に就任していた山田中将は硫黄島への航空支援として第252空と第752空の一部を小笠原諸島の父島航空基地に派遣し硫黄島への援護を示した。

 第252空は淡路島で生産された零戦54型にて編成されており硫黄島上空ではF6Fやコルセア等と激しい空戦を行い撃退する等の戦果を挙げる事になる。

 また、第752空の『彗星』や『天山』等も敵M4中戦車等の地上攻撃をし米海兵隊を悩ませる事に成功している。この中で栗林らを喜ばせたのは火炎放射器装備のM4中戦車と観測機を多数破壊、撃墜している事であった。

 史実ではこの戦車の投入により摺鉢山の主要陣地を焼き尽くされ僅か2日で摺鉢山が陥落するのだ。観測機も摺鉢山上空に張り付いていた事で正確な支援射撃を行わせていたのだ。

 しかし、それらは第252空と第752空の航空攻撃により破壊され摺鉢山はまだ暫くの陥落は無かったのである。

 

「クソッ!! ジャップの奴等め!!」

 

 第56任務部隊司令官のホーランド・スミス中将は損害の報告を聞く度に舌打ちをするようになっていた。彼等の予想していた以上の損害だったのだ。

 

「海軍の奴等め、イオージマの攻略を急がせたいというのに戦艦と空母を下げてどうする気だ? まさか噂にあったあのアイランドを……?」

 

 海兵隊の中にも流れていたある噂があった。スミス中将も話を聞いた時から鼻を鳴らして否定していた。

 

「海軍は『バシー海峡の悲劇』でパイロットを失うのを恐れているんだ。そんな博打を打つ奴はいない」

 

 そう否定していたスミス中将だが、実際に海軍は空母と戦艦を下げた。但し、代わりに護衛空母13隻が戦線に参加し地上支援を行っていた。戦艦も旧式戦艦である『ニューヨーク』『テキサス』『アーカンソー』の3隻が派遣され地上への艦砲射撃を展開していた。

 しかしながら、それでも硫黄島に張り巡られされた地下坑道を破壊する事は以て不可能であったのだ。硫黄島の地下坑道は淡路島から妖精さんの工兵と設営隊が派遣していた事もあり妖精さん達はブルドーザーやユンボ等を駆使して栗林中将が計画していた全長28キロをあっという間に完成させ、破壊されていた貯水タンク等も復旧した事もあり水問題もある程度は改善されていたのだ。

 その為、妖精さん印の地下坑道は艦砲射撃にも耐えに耐えていたのだ。

 

「流石は妖精さんだ。我々も見習わないといけないな」

 

 地下坑道が頑丈な事に栗林中将も笑みを浮かべるのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし妙だな……」

「どうしました長官?」

「ん? あぁ、奴等が硫黄島に来たのが……ちと腑に落ちない」

 

 妙高の問いに将和は日本周辺の海図を見ながらそう呟く。場所は淡路島鎮守府がある洲本司令部である。

 

「3月30日に硫黄島に攻撃し上陸してきたまでは分かる……だが4月5日の現時点で戦艦も正規空母も下げたという……」

「それではやはり……」

「……沖縄……だろうが、しかし些か性急過ぎる」

 

 妙高の言葉に将和は地図にある沖縄に視線を向けるが首を傾げる。

 

「となると……まさか……(アイツの寿命か……)」

 

 将和は何かを思い出す。日本にとっては疫病神にも等しいフランクリン・D・ルーズベルト大統領の寿命は直ぐ近くまで来ていたのだ。

 

(せめては沖縄に軍を進めておきたい心か……フン、戦後を見据えてもあるだろうな。どうせ、奴が死んだ後の大統領はあのメガネだしな)

 

 将和はメガネからメガネに代わる大統領を思い出すのである。

 

「清、沖縄の状況は分かるか?」

「勿論。沖縄は何があろうと守れる勢いだ」

 

 将和の問いに清はニヤリと笑みを浮かべるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し戻り4月2日の沖縄、第32軍司令官の牛島中将は参謀長の長中将、高級参謀の八原大佐らと共に工事中の洞窟陣地等の視察に来ていた。

 

「工事の進捗状況についてはどうかね?」

「はっ!! 中央からの度重なる配備変更と資材、器具の不足はありましたが淡路島鎮守府からの工兵妖精さん達の応援と昼夜をわかたぬ住民の協力により突貫作業ではありますが何とか間に合わす事が出来そうです」

 

 牛島中将の言葉に八原大佐はそう言って工事を見つめる。

 

「何より、今も栗林中将以下の硫黄島守備隊が奮戦し米軍を足止めしているのが最大の救いとなりました。おかげでタラワやマリアナでは守備隊が全て玉砕をしてしまったので全く不明であった米軍の上陸作戦の全容も判明する事が出来ました。これで抗戦の為の数々の貴重な情報も入手出来ました」

 

 八原大佐は自信を持って牛島中将と長中将に視線を向ける。

 

「……策は立ちました。栗林中将の採用された持久作戦を徹底させて抗戦すれば必ず敵に一泡噴かせる事が出来ましょうッ」

「フム……八原、それは我等にも勝機が見えたという事か?」

 

 八原大佐の言葉に長中将はジロリと視線を向けるが八原大佐は言いにくそうではあったが口を開いた。

 

「いえ……米軍の底力は軍首脳部が考えている程甘いモノではありませんッ。この八原、自らの留学経験からも骨身に染みて知らされております」

「………………」

 

 八原大佐の言葉に牛島中将と長中将は無言ではあるが「やはりか」という表情をしていた。

 

「やはり今の我々の戦力では硫黄島守備隊同様、最後の一兵まで戦い抜き米軍の本土侵攻を一ヶ月でも二ヶ月でも遅らせるのが精一杯かと思われます」

「ムッ。それは増援が来ていると計算してかね?」

「はい。少なくとも今の戦力で半年は持ち堪えられるでしょう」

 

 八原大佐はそう言う。第32軍は史実に比べて増強は成されていた。

 

 

 第32軍

 司令官 牛島満中将

 参謀長 長勇中将

 高級参謀 八原博通大佐

 

 第三師団

 第24師団

 第28師団(宮古島・石垣島)

 第62師団

 第65師団

 独立混成第5旅団

 独立混成第8旅団

 独立混成第44旅団

 独立混成第45旅団(石垣島)

 独立混成第59旅団(宮古島)

 独立混成第60旅団(宮古島)

 独立混成第64旅団(徳之島)

 独立混成第86旅団

 第5砲兵団

 戦車第5連隊

 戦車第27連隊

 

 

 史実より2個師団に3個独立混成旅団、1個戦車連隊が増強されている第32軍である。特に最精鋭とも謳われる第三師団が配備されたのは第32軍司令部内でも期待は大きかった。

 

「米軍の本質とは強大な火力と無限に近い補給力と考えております。もし、その補給力を絶つ事が出来れば……」

「ッ。海軍の太田少将が言っておられた『艦娘』の事を言っておるのか?」

「は、伝え聞いただけなので確かな事は分かりかねますが……先の第二次台湾沖航空戦や南号作戦におけるリンガエン湾沖での艦隊決戦の勝利……米軍の硫黄島侵攻にも影響を与えたとか……。もし、『艦娘』を始めとする連合艦隊が敵の背後を脅かし補給ラインを遮断する事が出来ますれば陸上に孤立しても敵上陸部隊は恐るるに足りません。この八原、持てる策の全てを尽くしてでも洞窟陣地を以て敵上陸部隊を漸減し続ける所存であります!!」

「ムゥッ!!」

 

 八原の宣言に長参謀長は唸る程であった。

 

「この沖縄戦の勝敗が海軍の……しかもあるか無いかも分からぬ艦娘任せと言いおるか!?」

「はッ!! ですが参謀長、この戦は少なくとも『艦娘』を抜きにしてでも充分に意義のあるものであります。少なくともッこれは、帝国陸軍をして今戦争中初めて米侵攻部隊に大打撃を加える本格的かつ系統立った一大反攻作戦であります!! もしこの作戦が成功すれば必ずや無敵を誇り破竹の進撃を続けてくる米侵攻部隊の勢いを挫き、手痛い打撃を与える事が出来ましょう。そしてこの作戦により米国世論を動かし厭戦気運を高める程の大打撃を敵侵攻部隊に与える事が出来れば……その後の戦局を打開する道も開けましょう。いずれにせよこの一戦に命を捨て最後の一兵に至るまで米侵攻部隊に最大限の出血を強いる事が出来ますれば我等の使命は果たせたと言えるのではないかと……どうです参謀長!! 我等が長く米軍史に語り継がれるような戦いを見せてやろうではありませんか!!」

「ッ………」

 

 八原大佐の言葉に長中将にも通じる何かはあった。眼を閉じていた長中将だがやがては見開きニヤリと笑みを浮かべた。

 

「……面白いッ。そういう事なら話は別だ。良かろう八原!! ひとつ、米軍どもに我等帝国陸軍軍人の心意気を見せてやろうぞ!!」

「はッ!!」

「……八原高級参謀、くれぐれも非戦闘員が戦闘に巻き込まれる事のないよう島民の疎開は徹底させるように」

「承知しました!!」

 

 敬礼をする八原に牛島中将は空を見あげる。

 

(徹底抗戦か……これで我等の腹は決まったな。だが……我等は良い。我等軍人はいつでも死ぬ覚悟は出来ている。だが沖縄の人々は……? 絶対必死の我等に彼等を守る余力はそこまであるまい………………『艦娘』達か……)

 

 そう思う牛島中将であったが時は残酷であり4月7日、守備の薄い本島中西部で、第7・第96歩兵師団と第1・第6海兵師団による上陸を開始したのである。日本側が中西部沿岸地域に置いたのは賀谷支隊と独立混成第5旅団であった。

 

「来たぞ来たぞ……通信!! 司令部に打電!! 本島西海岸一帯は米艦艇のため海の色が見えない!! 『船が七分に海が三分』だ!! もう一度言うぞ、『船が七分に海が三分』だ、分かったか!!」

 

 双眼鏡で嘉手納の海岸を見ていた賀屋支隊の賀屋中佐はそう叫ぶのである。

 

 

 

 

 

 




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