リンガエン湾沖で将和の艦隊が艦隊決戦をしている中、清の艦隊と第101戦隊に輸送船団は南シナ海を北上していたのである。
「此処までは何とか順調だな」
清は艦隊旗艦『龍田』の艦橋でそう呟く。護衛する輸送船団はタンカー15隻、貨物船8隻であったが航海速力は8ノットでありミ船団で使用する小型船も参加していたからだ。
第101戦隊司令官の澁谷少将もその事を懸念していたが清もそれはやむを得ないとして船団に加入させていた。清も念の為として淡路島から九七式艦攻改 試製三号戊型(空六号電探改装備機)を36機を派遣して貰い『蒼龍』等に搭載して対潜哨戒を行うのである。
なお、船団は以下の通りで構成されていた。
長谷川艦隊
旗艦『龍田』
戦艦1隻
『日向』
空母5隻
『飛鷹』『瑞鳳』『蒼龍』『千歳』『千代田』
(各空母の格納庫等にも高オクタン価ガソリンのドラム缶を多数搭載)
甲巡(航巡)3隻
『衣笠』『筑摩』『熊野』
乙巡4隻
『夕張』『鬼怒』『川内』『龍田』(総旗艦)
駆逐艦3隻
『松』『竹』『梅』
海防艦18隻
『日振』『大東』『昭南』『択捉』『佐渡』『対馬』『平戸』『松輪』『福江』『御蔵』『倉橋』『屋代』『鵜来』『稲木』『第四号』『第二十二号』『第三◯号』『能美』
補助艦艇1隻
『あきつ丸』
第101戦隊
旗艦『香椎』
海防艦5隻
『第23号』『第27号』『第51号』『第60号』『第205号』
第七護衛船団
旗艦『時雨』
軽空母
『龍鳳』
【航空機無し。重油及び高オクタン価ガソリンドラム缶多数】
駆逐艦4隻
『時雨』『旗風』『磯風』『浜風』
海防艦4隻
『第13号』『第17号』『第19号』『第47号』
「でも長官? リンガエン湾に向かった三好長官達は大丈夫なのかしら?」
「将和なら大丈夫だろ。そう簡単に死ぬ奴じゃないし、ウチの子らも無傷で戻すだろ」
傍にいた龍田(改二)の言葉に清はそう言う。清は将和を信頼している。だからこその言葉だろう。
そんな清に龍田は微笑む。
「フフッ、長官がそれなら私も言う事は無いわぁ。内地まで頑張りましょうね?」
「あぁ」
そして輸送船団は海南島南方を北上中にリンガエン湾に突撃した将和の艦隊からの電文を受信する事になる。
「長官、三好長官からの電文よぉ」
「ん、内容は?」
「敵戦艦5隻を筆頭に多数撃沈よ。味方の損害は沈没艦無しで大破が『山城』に『那智』くらいよ。後は中破クラスが数隻ね」
「お、そうか。撃沈艦が無いのは良い事だ」
龍田からの報告に清は笑みを浮かべる。特に将和に貸した駆逐艦達が無傷なら清も言う事は無かった。その後の追加報告で将和の艦隊はリンガエン湾から米軍陣地に艦砲射撃をしつつ石垣島沖に向かう事とし輸送船団を迎える事とした。
しかし、輸送船団の本番は此処からだった。翌日1300頃、輸送船団はバシー海峡を通過中だった時である。
「聴音に反応!! 右2時方向約2000に敵潜!!」
それを探知したのは輸送船団の右翼にいた海防艦『大東』であった。『大東』に搭載された四式水中聴音機が敵潜水艦を捉えたのである。
「『大東』より発光信号!! 敵潜の探知!!」
「対潜戦闘用意ッ」
「対潜戦闘用意ッ」
直ちに『大東』とその後方にいた『日振』が速度を上げて敵潜水艦の掃討を開始する。
「威嚇してやれ!!」
「対潜噴進砲用意!!」
「噴進砲用意宜し!!」
「撃ェ!!」
『大東』の前部から99式6連装対潜噴進砲が一斉に火を噴き対潜噴進弾を発射する。射程距離は700mだったが魚雷を撃たせない威嚇なら十分に有効兵器だった。
「敵潜水艦が退避行動!!」
「追い詰めて爆雷だ!!」
『大東』『日振』は改良型で22号ディーゼルから25号ディーゼルを搭載しており速度は24ノットにまで向上していた。その為、敵潜水艦が想定した時間よりも早くに頭上に到達したのである。
「馬鹿な!? デストロイヤーだったのか!!」
「探信音!? 爆雷投下されました!! 爆雷……来るッ!!」
ソナー員がヘッドセットを投げる。爆雷の爆発から耳を守るためである。そして一瞬の間を置いて爆雷が爆発する。
「水柱5本!!」
「浮遊物の確認ッ」
「浮遊物確認されず!!」
「再度爆雷投下!!」
「『日振』も爆雷投下中!!」
周辺で多数の水柱が噴き上がる。それらが収まるとやがては重油や米兵の死体、木片等が浮遊物として確認されたのである。
「敵潜水艦の撃沈を確認!!」
「ヨッシャ!!」
見張り員からの報告に大東はガッツポーズをするが、船団からの次の報告に表情が凍りついた。
「『龍田』より電文!! 『船団、雷撃ヲ受ク。輸送船2隻被雷、退船中』以上です!!」
「なッ!? まさか今の囮ってか!!」
通信妖精からの報告に大東は驚く。時は少し前に戻り、『大東』からの警報で『大東』が『日振』を伴って鮫退治に出かけての10数分後、船団右翼にて海防艦『昭南』の見張り員が海面潜望鏡を発見したのである。
「潜望鏡!! 敵潜水艦!!」
「……もう1隻いたのですね。噴進砲、準備出来次第発射して下さい」
「う、右舷に魚雷!!」
「ッ」
その魚雷は『昭南』にではなく2隻が空いた穴目掛けて発射されていた。その穴の中には輸送船が航行していたのである。
「輸送船に回避航行を発令!!」
「駄目です、間に合いません!!」
そして輸送船に水柱が噴き上がったのである。被雷したのは貨物船『建部丸』に屎尿運搬船『優清丸』だった。特に『優清丸』は3本が命中し轟沈に近い形であった。『建部丸』は1本だったが右舷真ん中に命中しており浸水は激しい様子であった。
「……『建部丸』も駄目そうだな」
「資源は勿体無いわねぇ」
「そう嘆く事じゃない。今は人員の救助を最優先だッ」
大傾斜しつつある『建部丸』を見つつ清と龍田はそう話す。なお、2隻を叩いた潜水艦は『御蔵』『倉橋』に爆雷攻撃にて追い詰められ撃沈されたのである。
「取り敢えずは石垣島沖までは厳重警戒だッ」
「そうねぇ」
輸送船団は何とか輸送船2隻の被害だけで乗り切る石垣島沖まで到着すると待機していた将和の艦隊と合流、1月24日には内地に到着するのである。
「三好大将、長谷川大将。此度は真にありがとうございますッ」
横須賀軍港の桟橋にて将和と清を出迎えたのは海上護衛総隊司令長官の野村大将であった。その表情は輸送船団が内地に辿り着けたようで安堵の表情だった。
「いえ……ですが、2隻を喪失したのは我々にも責任はあります」
「いえそんな。確かに2隻は喪失してますが残りは無事に内地に戻れました。これで何とか半年分の燃料は確保する事が出来ます」
「しかしながら半年分だけです。今は戦時なので更に減るのは間違いありません。直ぐにでも第二次南号作戦を立案実行する必要があります」
「そうですな」
清の言葉に野村大将も頷くのである。それは兎も角、日本にも久しぶりに資源と石油が還送され石油は各軍港の燃料施設等に貯蔵され、資源は八幡製鐵所等に送られるのである。
「取り敢えず一旦は淡路島に戻るか」
「そうだな。残している朝日とかも心配しているだろうしな」
かくして将和、清の2個艦隊は淡路島基地に帰還するのであった。
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