交流する恋太郎ファミリーとウマ娘たち   作:サイセンサイ

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好本静はオルフェーヴルの『■■■』


金色の暴君と最弱の文学系

 

 

王は歩く

老若男女の視線を受けながら道の真ん中を歩く

誰よりも前を向いて誰よりも綺羅びやかに何よりも堂々と

その姿だけで民草は目と胸に光を宿す

この人が蠢く世界でありながら大きな流れに身を任せず自らの歩みこそこの世の流れであり摂理であり必然であると何も語らずとも人々の心に刻みつける

誰よりも輝いて誰よりも孤独な王は血筋にも故郷にも絶対にも興味はない

ただ己の歩みを続けるのみ 己に従うのは己のみ

誰よりも輝いて誰よりも孤独な王は今この時も人々の目と胸に光を宿し続けるのだ

家族もいない友もいない縁もないそれでもたった一人で王の道を阻むものを屈服させ自らの脚に頭を垂れさせるのだ

 

「生憎、家族はいるぞ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?!?!?!?」

 

書き続けていた原稿用紙に鉛筆をミシリと押し付けたまま『好本静』は固まった

 

一体何が起きているのかそれは少し前に遡る

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

静は少し前にいスクランブル交差点で『王』を見た

 

その衝撃が忘れられずいつの間にか鉛筆を取って原稿用紙に物語を綴っていた

『王』の物語を書いてみたいと心の底から思ったのだ

自宅で学校の図書室で屋上で暇さえされば書いていた

だが本格的な物を書いてみたいと好本静は休日にとある場所に向かった

そこは2階建ての古びた図書館でその名の通り古い本が大量にあった

人の少なさと資料の多さからここなら集中して創作出来ると鉛筆を走らせて

 

先程の題名すら決めていない『王』の物語を綴っていた

 

 

すごく集中していた

時間を忘れて身体に触れられても気づかないレベルで集中していた

 

【声で止まるはずなんてなかった】

 

 

 

 

 

 

【その声がモデルのウマ娘でなかったら】

 

 

 

 

 

「自作の書き物か、、、それも余の」

 

(な!!何で!!!?)

 

理由がわからなかった

小説を書くのに熱中していたらその小説の主人公のモデルのウマ娘が目の前にいて話しかけてきた

やっぱり理由がわからなかった

 

 

そして冷静になって現実を理解し始めると好本静は恐怖で震えた

何故なら勝手にモデルにして勝手に主人公にして勝手に自作小説を書いていたのだから

目の前の存在感がエベレストなウマ娘が怒り狂ってなにかしてくるのでは!?と最悪な想像をしてしまう

何よりここは古びた図書館。学校ではない、いつも守ってくれる彼氏も親友も戦闘特化の彼女仲間もいない

 

涙目で震えていた好本静をそのウマ娘はじっと見ていた

 

そしてそのウマ娘は見た目通りの存在感のある声で

 

「余が蛮族にでも見えているのか?」

 

顔を一切変えずポーカーフェイスでそういった

 

ブンブンブン!!!と好本静は首を振った

そして急いでスマホに手をかけて文字を探して音声に出した

 

 

『そんな事ありません・そんな事ありえません・貴方は王です』

 

そう音声で返事をした後そのウマ娘は再びじっと見つめてきて

 

「ならば良い」

 

と簡潔な返事をした

 

ふぅ~〜と深い息を吐いて好本静は一安心をした

 

 

 

 

 

 

 

 

そして目の前に座られた

 

(何で!!?!!?)

 

何故目の前に座るのかわからないまるで不発弾が眼前にあるような気持ちになった

心臓がバックンバックンと音を立てている

やはり怒っているのだろうか!?そんな事を思っていると

 

ふと、冷静になって考えてそして疑問に思った

 

何で目の前のウマ娘は主人公の『王』のモデルが自分だと気づいたんだろう?と

 

 

『いつから気づいた自らの正体を』

 

王冠恋物語の一文を使ってつい質問してしまった

 

「貴様の書き物は『王』をモデルにしているのだろう?ならば唯一絶対の『王』である余であることは必定のこと考えるまでもない」

 

その言葉には一切の迷いがなくまさしく『王』の言葉だった

 

 

『あ、貴方様は何者でありますの!?』

 

好本静はどうしても知りたかった目の前のウマ娘の正体を

 

 

 

「余はオルフェーヴル、覇道を征く唯一無二の『王』である」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オルフェーヴル

注目されているウマ娘の一人でその尊大な振る舞いから付き従う臣下が大量にいるという

アクや我の強いウマ娘の中でも一際目立つ存在であり周囲からは『金色の暴君』の異名を付けられている

 

それがスマホで検索したオルフェーヴルの情報だった

 

「それで例のものはここか?」

 

オルフェーヴルが目の前の本棚を見ながらそういった

 

今どんな状況かというとオルフェーヴルの案内係をしていた

 

突然オルフェーヴルから

 

「喜べ。貴様は天運に恵まれた。王命を奉ずるがいい。余の欲する書物まで案内せよ。」

 

そういわれた

詳しい話を聞くととある本を探しに来たそうで詳しそうな静を選んだということらしい

 

静はその豊富な本の知識でオルフェーヴルの探している本を見つけた

それは史実の『王』や『英傑』を綴った本だった

 

そして今は図書館2階のテラスでその本を読んでいる

 

「座せ」

 

オルフェーヴルに言われて同じ机に座ることになった静は今だに心臓のバクバクは収まらないがそれと同時に目の前の『王』にしか見えないウマ娘の一挙手一投足にワクワクしていた

 

しばらくオルフェーヴルの読書を眺めていると突然話しかけてきた

 

「貴様、最初にいったこと忘れてはおるまいな?」

 

オルフェーヴルは本に目を向けたまま静に向かって確認をした

 

(?、最初にいったこと?)

 

静は思い出すオルフェーヴルの最初の言葉を

 

【生憎、家族はいるぞ】

 

恐らく自分の書きかけの小説を読んでの発言だったのだろう

確かに普通なら家族はいるが目の前のオルフェーヴルからはどんな家族がいるのかイメージがわかなかったことから孤独な王にしたのだ

 

「余には尊敬する父も母も敬愛する姉上もいる」

 

本に目を向けたままだったが【敬愛する姉上】という言葉に静の本好きの本能が刺激される

こんな存在感のあるウマ娘が敬愛する姉上がどんな人物なのか気になってしまった

 

だがそれと同時にずっと疑問だった事も浮かんできた

 

自分がモデルの小説を書いているのにそこは何も言わないのか?と

 

『あなたの小説を書いているのは良いのですか?』

 

スマホの音声でオルフェーヴルに質問した

 

「現代で幼子すら常識であるという理由で知っていて当然とされる英傑が存在するのは貴様のような存在がいたからだ」

 

オルフェーヴルは相変わらず本から目を離さず言葉を綴る

 

「不遜なる先駆者達が後世の書き物の核にされるのは成し遂げたことの証、故に余の書き物が存在するのも必然である、ただし、あまりにかけ離れていては別物になってしまう余にとって父も母も姉上も余の覇道の一部なのだから」

 

オルフェーヴルから発せられる圧はそのままだがその堂々とした言葉から伝わってくる家族への愛が静の心を更に刺激する

 

「それで、貴様は何をしている?」

 

「!」

 

自分から座らせておいてなぜその発言を?と思ったが恐らく何もしていないことを言っているのだろうと理解した

しかしいくらバレたからといっても本人の前で本人モデルの小説を書くのは静にはハードルが高かった

 

『書いてもよろしいのですか』

 

静は一度オルフェーヴルに確認を取ろうとした

 

「貴様はなぜ余の書き物を書こうと思った」

 

逆に質問を返された

それに驚いたが静は思った事を素直に音声にする

 

『貴方の 振る舞いを見て 書いてみたいと思ったからです』

 

静はそう返信したが

 

「それだけで余の書き物を書こうと本当に思ったのか、、、貴様は己の内を知らぬと見える」

 

「!」

 

オルフェーヴルはこちらも見ずに静の音声を待っていた

そして静はここから先の言葉を入力していいのか迷うがどうしても【そうしたい】と思った

 

『私には大切な人達がいます』

 

それは静が大事にしている恋太郎ファミリー

 

『みんなは私の意思や生き方を尊重してくれます今スマホで会話をしているように貴方のように』

 

オルフェーヴルは一度もスマホで話をすることに対して何も言わなかった

興味がないのかそれとも優しいのか静にはわからなかったがオルフェーヴルが自分に対して一切の嘘偽り無く振る舞っていることに対して自分も嘘偽り無く答えたいと静は思ったのだ

例え、目の前のオルフェーヴルを落とすような言葉だったとしても

 

『その人達は私の命よりも大切などんな輝きよりも輝いている方々です』

 

「それは『王』である余の輝きより上だと?」

 

すぐさま帰ってきた質問に静は

 

『はい』

 

正直に答えた

 

「そうか」

 

オルフェーヴルは結局顔を向けぬまま返事した

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(また来ちゃった)

 

好本静は前よりもたくさんある原稿用紙の束を持ってまた同じ古びた図書館に来ていた

 

(どうしてもオルフェーヴルさんに自分の小説の続きを読んでほしくて)

 

それは先週のことだった

オルフェーヴルと邂逅して別れ際に静はいった『どうか小説の続きを貴方に読んで欲しいだからわたしは来週もここに来ます』と

オルフェーヴルは『余の征くところは余が決める興が向いたら観覧してやろう』それだけいって帰っていった

静はこの一週間オルフェーヴルから言われた家族の設定を物語の中に組み込み寝る間も惜しんで全力で書いた

同じ同士の雪房田夢留から何本もエナドリをもらいクァ〜となりながらも静は書き上げたのだ

 

しかし相手はあの王様ウマ娘 ここに来ないことも十分あり得た

静も心のどこかで来ないだろうと思っていた

図書館の入口前まで来たが人気は感じない

 

(でも仕方ないよね、私が勝手にいったことだし)

 

「何をしている早く上がってこい」

 

「!!?」

 

その声は2階のテラスから聞こえてきた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペラペラと紙をめくる音だけが響いていた

静はドキドキしながらその顔を見続けていた

二人は今2階のテラスの同じ机に向かい合うように座っている

端から見れば圧迫面接の絵面だった

 

やがて残り数枚となり終わりが見えてくる

背筋がピンと立ち息も深くなる

オルフェーヴルの表情はずっと変わらない

 

そして読み終えたオルフェーヴルが最初にいったのは

 

 

 

 

「物語としては拙いな」

顔も声も変えずに目すら合わせずそういった

 

それは予想していた反応だった

 

(あぁそう言われる気はしていた。けど、どうしても見てもらいたかった。)

 

自分の物語を恋太郎ファミリー以外でここまで魅力的だと思えた『王様』にどうしても読んでもらいたかったのだ

好本静は心が沈みこそすれ後悔はない

 

 

「だが余の見解を超えていた部分はあったぞ」

 

「!?」

 

だが彼女の努力の一部が確かに『王』の心に刺さったのだ

 

 

「姉上の描写は見事だった。私のために槍が降ろうが大砲が降ろうが地割れで国が割れようが何よりも余を案じてその魂に至るまで息を吸うように余のために行動するのはのはまさしく『姉上の愛』を再現していた、、、、、、貴様はそんな経験があるのか?」

 

※愛城恋太郎との実体験が混ざっています

 

『はい、私の大切な人がくれたインスピレーションです』

 

好本静は嬉しかったそしてそんな結果を間接的にくれた愛城恋太郎にキュンとした

 

「貴様がいった『王』以上の輝きか、、、、」

 

オルフェーヴルは少し考えた後好本静の目を見て向き合った

目を合わせられ静はドキリと心臓を跳ねさせる

 

「貴様は」

 

 

その時だった

 

『お客様にお知らせします!生きの良いどころか生きのよすぎるスズメバチが図書館に侵入しました!なお当館はハチ被害に一切の責任を取りかねます!いやほんとにマジでだから怪我しないで!!』

 

慌てたような館内放送が流れたのは

 

 

 

そして放送にあった生きのよすぎるスズメバチが2階のテラスの二人に狙いを定め針を向けてすてみタックルをカマしてきたが

 

 

 

オルフェーヴルはハイキックの風圧のみで石像を吹っ飛ばせる

 

ハチは王直々のハイキックでコナゴナに輪廻転生した

 

「蟲風情が余の言葉を遮るな」

 

そして再び静の方を見ると

 

 

 

 

そこには誰もいなかった

オルフェーヴルの頭にハテナマークが浮かび周りをキョロキョロしてみるがいない

好本静が突然消えたと思ったその時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイキックした方角の空に好本静が見えた

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?」

 

Q・風圧で石像を吹っ飛ばすレベルのハイキックが体重がバグってる好本静の近くで繰り出されましたさてどうなるでしょう

 

A・その風圧でハイキックの方角に吹っ飛ばされます

 

 

オルフェーヴルは『本気』で疾走った

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『オラまだ死にたくねぇ』

 

いつしか使った言葉を音声で発しながら地面へと落下していく静

ここには我が騎士の栄逢凪乃も大大大大大好きな愛城恋太郎もいない

終わったと諦めかけたその時

 

『王様』にキャッチされた

 

本気で疾走ってきたオルフェーヴルに地面に激突する前にキャッチされたのだ

吹っ飛んだのもオルフェーヴルが理由だが

 

静が状況を理解してお礼を言おうと顔を向けると

 

 

 

 

 

 

 

オルフェーヴルは笑っていた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ある日の模擬レース前

 

「お前ら〜ピラミッドパワー全開か〜☆」

 

錚々たるメンツが今回は集まっていた

 

ゴールドシップ・ジェンティルドンナ・ウインバリアシオン・ドリームジャーニー

そしてオルフェーヴルが参加していた

 

そのメンツの豪華さに模擬レースにも関わらず大勢の記者が集まっていた

 

そしてインタビューを受けていると

 

「強さこそ全てだと証明するまで」

 

ジェンティルドンナがいつものように自分の理論を言葉にしていると

 

「そうでもなかったぞ」

 

「「「「!?」」」」

 

突如オルフェーヴルがジェンティルドンナのインタビューに割り込んできた

 

「時に最弱が王を動かすこともある」

 

普段のオルフェーヴルからは口に出ない発言にジェンティルドンナも周りのウマ娘も驚いた顔をしている

 

「おいおいなんだよ~ミジンコに張りてでもされたか〜」

 

ゴールドシップがいつもの調子で絡んでくる

 

だが今回はありがたかった何かあったのではとウインバリアシオンもドリームジャーニーもオルフェーヴルの言葉を待つ

 

「似たようなものだ」

 

「え?マジ?」

 

オルフェーヴルの返答にゴルシは真顔で驚く

 

「ミジンコのように最弱の種でありながら余に不敬な発言をした挙げ句余に『本気』の脚を使わせた者がいる」

 

「「「「「え!!?」」」」」

 

周りの記者が驚きをユニゾンさせる

 

「最弱が貴方の本気を?」

 

ジェンティルが目を鋭くして疑問を口にする

 

「だ!だれなんすか!?何したんすか!!?」

 

シオンが動揺する

 

「オル、詳しく聞かせてもらっていいかな」

 

ジャーニーが目の奥に黒い物を滲ませながら質問する

 

「おいおい面白くなってきたな〜☆」

 

ゴルシがワクワクしながら話の続きをねだる

 

 

 

そしてオルフェーヴルは話し始めた

 

「そのものは何者よりも弱い身でありながら『王』の先見を越えて余の心を確かに動かしたそして余の想像を超える行いに私は笑った、、、故に余は奴に特別な王命を命じた」

 

「特別な王命?」

 

ジャーニーが眼鏡をカチャリと直しながら聞き直した

 

「余の物語を後世に伝える役目、、、そう」

 

 

 

      王の語り部である

 

 

 

 

 

 

その後、しばらくニュースとなった

 

『王の語り部現る!?正体はいかに!』

 

有名どころの作家ややり手の記者が候補に上がりアレヤコレヤと考察されるが真実はオルフェーヴルしか知らない

ライバルたちも気になってこぞって聞きだろうとしたがオルフェーヴル本人はどこ吹く風だった

 

 

そして割と大きな騒ぎになっていることも知らずに王の語り部は今日も彼氏と友達とイチャイチャしながらカリカリと小説を書き綴るのであった

 

 

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