伝説のTS美少女ポケモン吟遊詩人はサトシストッパーになるようです   作:GT(EW版)

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 急に初代アニポケが見たくなったので


伝説厨(伝説じゃない)

 伝説の話をしよう。

 

 不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター……縮めてポケモン。

 私が二度目の生を受けたのは、彼らと人類が共存している夢のような世界だった。

 

 そうだね、ポケモン世界転生だね。

 

「子供たちに聞いてみた憧れの世界ランキング」でもおそらく最上位に君臨するであろう、日常にポケモンがいるという楽園。もちろんポケモンがいるからこそ起きる事件や世知辛い問題も色々あるのだが、それを差し引いてもなお「ポケモンがいる」というのはあらゆる問題を差し引いて余り有る爆アドだったのだ。

 それは人並み程度にはポケモンシリーズのことが好きだった私にとってもそう。

 

 

 子供の頃、ボクはポケモンマスターになりたかった──。

 

 

 あれは前世の私が「早く大人になりたいな」と口ずさんでいたジャリボーイの頃、私は他の同級生たちの例に漏れず「ポケットモンスター」というコンテンツにハマっていた。

 

 きっかけは確か、コンビニに売っていた指を入れて遊ぶ玩具人形の類いだったか。もちろん原作のゲームもプレイしていたが、入り口としてはゲームから入ったわけではなかった気がする。

 あの頃は初めて見たピカチュウやヒトカゲの玩具に心を奪われ、彼ら151匹のユニークな姿に引き込まれていった。周りの子たちも概ね似たようなものだろう。

 それが151の思い出。151の夢。151の業……はちょっと違うか。

 ともかく「ポケモン」というコンテンツに熱狂していた楽しい過去のある私は、そういった前世の記憶を都合良く引き継いだ上でこの世界に生まれ変わったわけだ。

 

 

 そんな私の名前はヒイカ。歳は17で職業はポケモン吟遊詩人である。

 

 

 ポケモン吟遊詩人である! 

 

 前世の価値観から言ったら少し面妖に思うかもしれないが、この世界ではれっきとした仕事の一つである。

 世界各地を放浪しながら訪れた町で公演を開き、外の世界で見聞きしたポケモンにまつわる冒険譚や英雄伝説を歌曲を以て語り聞かせていく。意外にもこれが中々評判が良くて、結構な人々が私の歌を聴いては景気よくお金を落としてくれたものだ。

 

 自画自賛になるが、今の私は控えめに言って美少女だからね。

 それに加えて声も綺麗でそこそこ上手にリュートを弾けるのもあってか、客引きの才能にはまあまあ恵まれていた。

 

 それを抜きにしても真面目な話、この世界における吟遊詩人の需要は馬鹿にならないものがある。

 転送システムをはじめ特定の分野では前世よりも遥かにハイテクな技術が一般化されているこの世界だが、情報面ではまだまだ発展途上な印象だ。

 特にこの世界では町ごとにコミュニティの独自性が強く、距離として見れば大したことのない範囲の間にも外界の情報から隔絶されている町や村が多かった。

 極端な例を挙げると、未来都市のようなビル群に覆われ常にネオンライトの光が絶えない大都会からほんの数10キロ離れた先には大自然に溢れた町があったり、鳴り響くサイレンやエンジン音とは無縁な牧歌的景色が広がっていることもままあった。ここまで違うと、本当に同じ国の同じ地方の中なのかと疑ったほどだ。

 

 寧ろ、世界観すら疑わしくなることもある。

 

 例えばある西部劇風の町では2つのマフィア(非ロケット団。どちらも全く知らない組)によって支配されており、夕暮れ時になるとバトルタイムとして互いのマフィアに雇われたポケモントレーナー同士でポケモンバトルを行い、負けた方が鉱山での強制労働を強いられる──というイカれた風習があったものだ。

 

 流石にこの世界基準でも時代錯誤かつ非人道的すぎていたがためにその町の問題は色々あって勢揃いした「伝説の四天王」によって解決したものだが、この世界で旅をしていると時折そういったエキセントリックな体験に満足させてもらえるから本当に堪らない。

 

 ……で、そういう話を土産話として全国各地にお届けし、楽曲を以て優雅に語り聞かせていくのが私たちポケモン吟遊詩人の仕事である。

 

 公演は町の有力者から高い依頼料を貰って行うこともあるが、基本的には私の気分でゲリラ的にやっている。

 傍らに手持ちのポケモンを侍らせ、即興で作った曲をリュートで掻き鳴らしながら自由気ままに彼らの伝説を歌うその時間が、私は好きだったのだ。ポケモンたちも皆行儀良く聴いてくれるから気分がいい。

 

 因みにお金を稼ぎたい時には、演奏する横にでんせつポケモンウインディを置くのがポイントである。

 

 同じゲリラ公演でも得体の知れない旅人が語るのとウインディのトレーナーが語るのとでは人々からのウケは天と地ほどの差があるのだ。

 やはりポケモンが中心に回っているこの世界で旅をするには、学歴や資格証よりも偉大なポケモンを持つことが重要であるように感じる。まあ、学歴は学歴で大事なんだけどね。

 

 そんなわけで私のように頼もしいパートナーポケモンに恵まれた人間であれば、うら若き女の一人旅でもそう危険すぎることはない。何ならポケモンのゲットが許される10歳になったら即旅に出るのが、海外も含めたこの世界の一般常識だった。

 私が二度目の10歳を迎え、意気揚々とマサラタウンを旅立った頃もまた、町には私の他に2人の同期がいたものである。ナナミ、ブルー……君たちは今どこで戦っている……? 

 

 私はTS転生者だが、私の代のマサラの同期は3人とも女の子だった。

 懐かしいな……私がヒトカゲを、ナナミがフシギダネを、ブルーがゼニガメを選んだ日のことを今でも覚えているよ。

 幼き日の青春も、二度目となれば特別な感慨も湧かないかと斜に構えていたものだが……もちろんそんなことはなく、何度目の人生であろうと幼き日の思い出は掛け替えのない財産となった。

 

 

 ──そう、私ことヒイカはマサラタウン出身である。

 

 公式のポケモンバトルではマサラタウンのヒイカとよく呼ばれたね。決してマサラタウンノという名字ではないのだが。

 

 

 説明するまでもないだろうが「マサラタウン」と言えば初代ポケットモンスターが始まりの町だ。前世の記憶を憶えていたことといい、生まれも主人公の故郷になるとは因果なものである。

 前世の記憶をいい感じに呑み込むことができた5歳の頃には、すわ「ボクがポケモンの主人公に!?」と思い上がっていたこともあったが……しかしどうにも私の生まれたマサラタウンは、私の知るマサラタウンとは少し毛色が違っていた。

 町はイメージ通りの大自然に包まれた田舎だったがゲームのマサラタウンほど限界集落ではなかったし、かのオーキドポケモン研究所も立派な敷地を構えて健在だった。

 

 もちろん、オーキド博士もいたのだが……少しばかりゲームとは年代がズレていたのだ。

 

 私の同期の一人には「ナナミ」という少女がいたのだが、彼女のフルネームはオーキド・ナナミ。ゲームでは主人公にタウンマップを与えてくれた優しいお姉さんにしてオーキド博士の孫娘である。

 そして、やがてセキエイリーグのラスボスとなるライバルの姉でもある。

 私が旅立った頃、そのナナミさんはまだ10歳で、私の同級生だったのだ。

 

 すなわち、私はゲームで言うところの初代ポケットモンスターよりも数年前の世界に転生したことになる。

 

 その「年代のズレ」というのがまた面白いことに、私の知っているカントー地方とは随所に変化をもたらしていた。

 例えばニビシティのジムリーダーはタケシではなかったし、ハナダシティのジムリーダーもカスミではなくカスミのお姉さんが務めていた。

 ヤマブキはまだ格闘ジムで、クチバもマチスとは違う謎のおっさんがやっており、タマムシのジムリーダーもエリカとは違う知らない和服美人だった。ゲームと同じだったのはセキチクとグレン、トキワジムぐらいなものだった。

 

 だけど、それがまた新鮮で楽しかったんだよね。「ポケットモンスターZERO」って感じで。……私は知らないけど、前世でもやってそうだね。私が死んだ頃のアニメ業界、本編の外伝エピソードとして前日譚作るの流行ってたし。

 

 元々ポケモンをはじめ色々と常識も違うこの世界では、うろ覚えな前世のにわか知識が役に立った実感はあまり無い。

 仮に私が廃人と呼ばれるほどゲームをやり込んでいたのならば、「原作知識で無双しますぞwwwwwwパートナーにボカチュウはありえないwwwwww」とでも大立ち回りを演じていたのかもしれない。しかし前世の私はライトユーザーの範疇で、そこまで詳しいわけではなかったのだ。

 プレイ時間にしても小学生時代に直撃した金銀クリスタルの世代が抜けていて、中学時代に一度離れた後はダイヤモンドパールでリターンして後はそれなりというあやふやな知識力である。

 

 だからこの世界を旅回った中で、ポケモンが全部で1000種類以上いる可能性に気付いた時には「えっポケモンって今そんなに増えてたの?」と驚きに震えたものである。

 あの時の衝撃は、私が原作にわかだったからこそ味わうことができた感動だったように思う。

 

 

 そして1000種類を超えるポケモンの中には、その力の強大さ故に、人々から畏怖され、神の如き存在として語り継がれているポケモンたちがいる。

 

 人はそれを「伝説のポケモン」と呼んだ。

 

 

 言葉の通り、伝説のポケモンとはこの世界に伝わる神話や伝説に出て来るポケモンたちのことを指し、それぞれが世界に何百もいない希少な存在である。

 

 ポケモン吟遊詩人の仕事を語る上では、そんな「伝説のポケモン」たちの存在は避けては通れないものだ。

 

 私が雪山で遭難した時、先導する羽ばたきで麓まで導いてくれたフリーザー。

 ロケット団幹部とのいざこざの最中、トレーナーへのダイレクトアタックを受けた私がマスター・クワイガンの如く火山の噴火口へ落下してしまった時、上から引っ張り上げてくれたファイヤー。

 そしてとある発電所の横を通った時、何故か所在なさげにその場に佇んでいたサンダーとの遭遇エピソードは私の定番の持ちネタだった。

 

 伝説のポケモンはその希少性故に、町の人々に生の情報が出回ることはほとんど無いからね。

 私のような若輩者の吟遊詩人でも、その話を聴きたがる人は老若男女問わず多いのである。

 

 ……ああ、旅をしている中で、「あの辺りに伝説のポケモンがいそう」と漠然と当たりをつけることができるのは初代、金銀、ダイヤモンドパールとそれなりに原作をプレイした恩恵があるのかもしれない。

 おかげで私は旅を続けたこの七年間、運良く出会うことができた伝説のポケモンの数は既に二桁に上っていた。

 

 そんな私の手持ちポケモンたちもまた、全員が伝説である。聞いて驚くといい。

 

 

 イカした仲間を紹介するぜ! 

 

 言わずと知れたでんせつポケモン! ウインディッ!! 

 

 1000年を超える寿命と9人の聖者が合体して誕生したという伝説を持つ九尾のポケモン! キュウコンッ!! 

 

 災いあるところに姿を現すという伝説、何よりこの風格で通常のポケモンはあり得ない! アブソルッ!! 

 

 ゲームの登場BGMが伝説だったから多分コイツも伝説だろ! ロトムッ!! 

 

 太陽神を祀る祭壇の奥地にて、挑戦者の来訪を静かに待ち構えていた偉大なる太陽の化身! ウルガモスッ!! 

 

 メタ的な意味ではコイツ以上の伝説はピカチュウしかおるまい! まさしく「ポケットモンスター」というシリーズの伝説そのものを創り上げた張本人と言えるマイベストパートナー! リザードンッ!! 

 

 

 

 ……以上だ。

 

 全員伝説のポケモンじゃないじゃねぇかって? 

 

 違うもん。みんな伝説だもん。私がそう判断した。

 

 確かに6匹とも、世界的にはカントーの三神鳥やジョウトの三聖獣のように扱われているわけではないが、そも伝説というのはその地域によって異なるものなのだ。

 

 たとえばウインディは中国では紛れもなく伝説のポケモンとして扱われているし、キュウコンもその神秘的な姿や人知を超えた寿命から偉大なる神の遣いとして扱われている地域がある。

 アブソルもその伝説感ある風格だけでなく、人々に災いを運ぶ災厄の化身として扱われてきた伝説的エピソードには枚挙にいとまがない。

 ロトムはなんだかここ最近、カロスやアローラあたりからすっごい勢いで増えてきているみたいだけど……生態が周知される前は謎のポルターガイスト現象を引き起こす幻のポケモンとして語られることがあった。

 ウルガモスは言わずもがな。見た目もその能力も通常の虫ポケモンには収まらない規格外さ、海外の田舎の方では実際に太陽の神として崇められている地域が多かった。

 リザードンは子供たち共通の憧れだから存在そのものが伝説と言っていいだろう。証明終了。

 

 他には私は持っていないがこのカントー地方でも、一部の地域ではミニリュウやハクリュー、カイリューが伝説のポケモンとして扱われていることもあったね。おかげでミニリュウがいると噂されたサファリゾーンに大量のトレーナーが押し寄せ、以来サファリゾーンでは30個のボールしか使えない制限を設けられることになったと聞く。

 そのように、実際のところ何を以って「伝説のポケモン」と定義するかは、今はまだナナカマド博士のようなエラい人たちも研究中なのだそうだ。

 

 

 話が脱線したね。

 つまり何が言いたいかと言うと、伝説のポケモンとはロマンであり、その伝説を語り継いでいくことは二度目の生を受けた私が生涯全うするべき使命だということだ。

 ポケモンリーグを目指す旅をしていた10歳の頃、私の脳を鮮烈に焼いたホウオウの姿を見て思った。私がやるしかない。私にしかできないと。

 

 ……動機についてはかつてこの世界で伝説のポケモンに心を救われた過去があるとだけ気に留めてもらえればいい。

 その日以来、色々あってポケモントレーナーからポケモン吟遊詩人にジョブチェンジした私は、それから7年の間こうして彼らの伝説を歌う伝説の旅を続けていた。

 思えば10歳になったら旅に出ることが推奨されるこの世界の風習にも、旅の中で自分自身の夢を見つけてほしいという願いが込められていたのだろう。子供は役割持てますからな。

 子供は子供でも転生した子供は役割を持てるか長年疑問に感じていた私だったが……彼ら伝説のポケモンの伝説的な姿を見たことで、私も己の役割をようやく見出すことができた。

 

 そんな私、マサラタウンのヒイカは、転生した当初よりも遥かに充実したポケモン世界ライフを満喫していた。

 

 

 それはもう、この5年ぐらい時間を忘れるほどエンジョイしすぎて──サトシ君とシゲル君が数ヶ月前10歳になり、旅に出ていたことをうっかり見過ごしてしまったぐらいである。

 

 

 この世界はポケモンの世界である。

 

 だが7年間世界中を旅回った所感としては、ポケモンの生態や町々の在り方、人物、自然環境から判断したところ、各種媒体の中で一番この世界に似ているのはやはりアニメの「ポケットモンスター」であるように感じていた。

 ゲームの方でもギエピーな方でもSpecialな方でもない、「ポケモンゲットだぜ!」な方のポケットモンスターである。

 

 前々から疑ってはいたのだが、確信に至ったのは今から5年前……私が12歳の頃。

 あれはポケモン吟遊詩人になって1年が経ち、久方ぶりに帰郷したマサラタウンで町の人々に土産話がてら公演を開いた時──私の語る伝説を聴きに来てくれた特徴的な黒髪の少年の姿を見た時のことだった。

 

 

 ──サトシじゃねぇか! 

 

 

 まだトレードマークの帽子を被っておらず、当然ピカチュウもいなかったが……そこにいたのは紛れもなくアニメポケットモンスターの主人公、永遠の10歳(当時は5歳)ことサトシその人だったのである。

 恥ずかしながらその時になって初めて私は、自分の生まれたポケモンの世界が馴染みの時間軸に合流しはじめていることに気づいたわけだ。

 

 オーキド博士も私が初めて会った時はまだ若々しかったから、原作の姿になるまでもう十年は掛かりそうだと思っていたのだが、あの人も少し見ない内にどんどん白髪が増えて馴染み深い姿に変わっていたものである。それでも身体の方は毎日ポケモンの技を喰らいまくっても数分後にはケロッとしている様子を見るにまだまだ老いを感じさせない元気なおじいちゃんだったが。やっぱ強ぇぜ……マサラ人! 

 

 尤も私が年代を読み違えてしまった一番の原因は、サトシのママさんであるハナコさんなんだけどね。

 

 彼女と私は12歳も離れているが、彼女のことは天然で陽気な優しい近所のお姉さんという印象で、マサラタウンで暮らしていた頃は何かと気にかけてもらっていた。

 前世の知識がある私だが、サトシのママは作中で名前を呼ばれていた記憶が無かったから、当時は「ハナコ」という名前を聞いてもサトシのママとは結びつかなかったのである。というより、その見た目も実年齢もあまりに若々しすぎて、数年後には10歳になる子の親だとは思えなかったのだ。私と初めて会った頃にはとっくにサトシを産んでいたというのだから驚きである。

 

 ……とまあそのように、出会った後になって「お前原作キャラだったのか!」となる割と王道な展開をリアルに体験することとなった私だが、その頃になると主人公と会ったところでどうこうなるものではなかった。

 

 流石に10年以上も暮らしていればね……ただでさえうろ覚えだった前世の記憶は、この世界で体験した数々の濃ゆい出来事に上書きされ、今では一人の人間のドキュメンタリー映画を見たぐらいの感覚に収まっている。

 それでも彼が「サトシ」である以上、私があの子に寄せる関心は他の子たちよりかはあったが、それもアニメの視聴者としての思い入れというより、お世話になったハナコさんのご子息に対しての感情だった気がする。こう、親戚のおじさん的な。

 

 自分でも意外なほどフラットな視点で幼き日のサトシ少年との会遇を果たした私だが……印象としては前世の記憶以上に面白い子だった。

 

 ハナコさんに連れられて私の公演にきてくれた彼は、最初こそ「おれ、詩なんてぜんぜんわからないよ……」と興味なさげだったが、私の隣にいたウインディを見ると目の色を変えて駆け寄ってきたものである。

 そんな無垢な姿に私が「この頃からポケモン大好き少年だったんだなぁ」としみじみ思っていると、幼子からの憧れの眼差しをまんざらでもなさそうに受け止めているウインディと目配せした後、サービス精神で触らせてあげることにしたのだった。

 

「いいの!? わーい!」とウインディのもふもふに飛び込んでいった彼の姿を微笑ましげに眺めていると、そんな私の視界の端には彼のことを羨ましそうに見つめているツンツン頭の少年の姿が映った。

 

 サトシがいる以上、名前を聞かなくても一目でわかった。その時は彼の幼馴染にしてライバルであるシゲル少年もまた、私の数少ない友人であるナナミに連れられてきており、ウインディのたてがみに顔を埋めるサトシ君のことを羨ましがっていたので一緒にどうぞともふらせてやったお姉さん心である。

 

 

「意外……ヒイちゃんって小さい子には優しかったのね」

 

 

 ……とは、そんな私の伝説的な気遣いを見たナナミの発言である。

 普段はお互い故郷を離れることが多いマサラタウン出身者である彼女とは、旅立った同期にして友人関係を結んでいたが、どうにも私は端から見ると何を考えているかわからないマイペースな美少女に見えていたみたいだからね。公演開始直前の大事な時間を子供たちへのもふもふタイムに使ってあげたことが、彼女には意外に見えたようだ。

 

 しかしそれは優しいと言うほどのことではなく、当たり前なことだと思う。どんな世界でも、子供は宝だからね。特にまだ自分のポケモンを持つことができない彼らには、伝説を詩や歌で語り聞かせるよりも実際に触れ合うことの方が遥かに魅力的であることは理解していた。

 

 

「……変わったわね、ヒイちゃん。あの何事にも無関心で氷ポケモンより冷たいロボットみたいだったヒイちゃんが、いつの間にそんな人間らしい表情ができるように……!」

 

 

 あの頃は過剰なまでに感激するナナミの言葉に、私は「えっ私そんな印象だったの」と衝撃の新事実を明かされたものである。

 ……確かに彼女と出会った頃は前世の記憶のせいか、自分でも黒歴史感ある不満足状態だったからね。

 一人称も男だった頃を引きずって「ボク」だったし……容姿だけは良かったから浮くことはなかったと思うが、控えめに言って痛いというか気持ち悪いクソガキだったと思う。

 

 ああでも氷タイプのポケモンは体温は冷たいけど心は温かいんだよね。特にシラユキやまのフリーザーは遭難者を見かけると助けずにはいられない正義感の持ち主で、そのせいで悪者に狙われることもあったほどの人情家だった。それと比べれば私の温かみはカスや。

 

 そして温かいと言えば真っ先に連想するのは炎ポケモンだが、そう言えばシゲルもアニメでウインディ持っていたね。

 

 後に彼がウインディを捕まえた時、この時の記憶を少しでも思い出してくれたらいいなと思っていたのがヒイカお姉さんとしてのささやかな願いだった。

 

 

 ──私が過去にサトシ君、シゲル君と関わったのはそのぐらいである。

 

 

 サトシのママであるハナコさんやシゲル君のお姉さんであるナナミとは今も時々電話でやり取りする仲だが、彼らとの接点はそれっきりだ。マサラタウンに転生した者としてあるまじき関わりの薄さだった。

 

 だが、年齢も性別も違う以上仕方あるまい。私は彼らとは7歳も歳が離れているし、私がマサラタウンに帰郷することもポケモン吟遊詩人になってからは年に一度あるか無いかぐらいの頻度である。これでは彼らの近況など知りようが無かったのである。というかしきりに気にしていたらすごくこう、事案感がある。

 

 ただでさえ、子供の成長は早すぎるのだ。

 

 2人とも私が気づいた頃には10歳になっていて、あれから5年ぶりに会ったその頃には既にカントーのジムバッジを8つ集め終わり、ポケモンリーグへの挑戦権を得ていたのだから驚きである。

 

 尤もそれはこの2人が新人としてはかなり順調に勝ち上がってきたというのが大きいか。彼らの他の同期は皆リタイアしたみたいだし、私もジムバッジを8つ集めるのには丸1年掛かった。途中からリーグ挑戦ではなくポケモン吟遊詩人を目指してリュートの練習をしていたせいもあるが、期間に対する成果として2人は優等生と言っていいだろう。

 

 

「へへっ、そう?」

「ピーカピーカ」

 

 

 そう、私が17歳でサトシ君が10歳と何ヶ月かを迎えたその日──私たちは再びマサラタウンで再会した。

 ジムバッジを8つ集め終わった彼は、最後のジムであるトキワジムを突破した足で故郷に戻っていたのだ。その日は丁度帰郷していた私と偶然スケジュールが合い、ハナコさんへ挨拶回りをしていた際に出会すことになった。

 

 久しぶりに会ったサトシ君に対して私は先輩風を吹かしながらそう褒めてあげると、彼は鼻高々に照れ笑いを浮かべたものだ。隣のカスミちゃんが「私たちがいなかったら絶対途中でのたれ死んでたわよ」と冷ややかに見ていたものだが……何というか初対面ながら、そんな二人の明け透けなやりとりに懐かしさを感じたものだ。

 

 サトシやシゲルと初めて会った5年前は原作キャラのことをフラットに見ていたつもりだけど、サトシとカスミ、そしてタケシの三人が揃っているところを見ると流石に何かこう、魂に刻み込まれた郷愁の感情を蘇らせずにはいられなかったのだ。「くぅ〜これこれ!」という奴である。

 

 ああタケシと言えば、どうやらTS美少女である私も「素敵なお姉さん」の枠に収まっていたらしく、初対面の時は物凄く詩的な言い回しで口説かれた。それには困惑したけど、私自身としてはどこか安心を覚えたものだ。

 実際、この世界がアニメポケットモンスターのままであるのならば、彼ほどの優良物件はいないぐらい実力、人格共に優れたイイ男なんだけどね。綺麗なお姉さんには目が無いけど決してスケベなわけではないし、美人でもムサシのような危険人物には反応しない分別もある。欠点らしい欠点と言えば、持ち歌があまりにもパラダイスなことぐらいだろう。

 

 そんなタケシ君には「キミならいつか必ず、私なんかよりずっと素敵な女性と結ばれる筈だよ」とやんわり断った次第だが、その言葉に決して嘘は無かった。

 それはそうと、リアルでカスミに耳を引き摺り回される姿を見れたことには実家のような感動を覚えたものだ。

 

 

 ──それから私は5年ぶりにマサラで公演を開いたり、私のウインディとサトシ君のピカチュウを攫いに来たロケット団を撃退したり、その際に繰り出した私のリザードンに対してサトシ君のリザードンが対抗心を燃やしたりという一幕があった。

 

 

 いや、サトシ君の一日激動すぎるわ。本人はもちろん、周りの人物も。

 

 流石はやがて伝説となるポケモントレーナー。弾き語りの最中、突如として「なんだかんだと聞かれたら!」とラブリーチャーミーな敵役が現れた時は、彼らが商売敵じゃなくて良かったと心から思ったものだ。

 と言うのも物語の語り手としての才覚が、あの2人と1匹は私などよりも遥かに格上だと感じたからだ。前世以来ぶりに聞いたロケット団の名乗り口上だったが私は心から思った。「アイツらの詩的な言い回し、秀逸すぎるだろ!」と。

 

 風車の上で踊りながら、ミュージカル調の登場シーンを演出してきたのはポケモン吟遊詩人である私に対抗してのことか。そのプロ意識には敬意を表し、私も思わず前世の記憶から再現した彼らの登場BGMをリュートで弾き鳴らしてしまったものである。

 その際は「あっ、どうもありがとうございます」「いつもより豪華な演出になったニャ」「あら何だか妙に馴染む曲ね……アンタわかってるじゃない!」とコジロウとニャース、ムサシからそれぞれお褒めの言葉を貰えて私もにっこりだった。

「言ってる場合!?」というカスミちゃんからのツッコミさえ心地良い。

 

 

 まあ、それはそれとして私のウインディとサトシ君のピカチュウを奪われるわけにはいかなかったので、私の相棒であるリザードンにお願いしてサクッとやな感じに退場していただいた。

 

 公演を聴きに来てくれた町の人たちを怖がらせたくなかったので、リザードンにはこれから歌う伝説の一幕という体で無駄に詩的な演出で吹っ飛ばしてもらうことになったが、こういう回も当時のアニメで何度かやってそうだなと思ったのはここだけの話である。

 

 

 さて……そんなこんなで予定通り始まったポケモン吟遊詩人ヒイカの弾き語り公演「虹色の翼の章」は無事終わったわけだが、ここでまた一つ、予定外なことが起こった。

 

 

「ヒイカさん! 俺とバトルしようぜ!」

 

 

「ほえるはねるそらをとぶ」──はもう少し先のOPだったか。この時はまだ「たとえ火の中水の中草の中そんな世の中でいいのか!」だったかな? いや、これはバカヤロイドのネタMADだったか。これだから前世の記憶はカオスで困る。

 それはさておき耳に馴染んだフレーズで対戦を申し込んできたのは、もちろんサトシ君だった。

 

 確かにウインディにリザードンと見るからに強そうなポケモンを見て、バトルを挑まない彼ではなかったか。昔からポケモンが大好きな彼だが、それと同じぐらいポケモンバトルにも興味を持っていた子だからね。

 

 私自身も今はポケモン吟遊詩人だが、トレーナーの端くれとしてそれなり以上にポケモンたちのことを鍛えてきた。ジムリーダーや四天王のように何10匹もたくさん育てられるほどの度量は無いから、捕まえたポケモンは手持ちの6匹が全員だがそれでもみんな伝説の名に恥じない実力者たちだと太鼓判を押している。

 

 故に──そんな伝説の主人として私自身も恥じないように、一応の研鑽は積んできた。

 だからこそ、私は快く彼の挑戦を受けた……わけだが。

 

 

 

 ──今、私はポケモンリーグのセキエイ大会にて、コロシアムの舞台でサトシ君と対峙していた。

 

 

 

 

 どうしてこうなったんだっけ……? 

 アレか、やっぱりあの時のバトルで彼のリザードンをボコボコに打ちのめしてしまったのがきっかけか。

 

 

 あの時、野良試合として行った私とサトシ君のバトル。

 ルールは3対3と設定したが先鋒に私はリザードンを出し、サトシ君は相棒のピカチュウを──出そうとしたところで、彼のモンスターボールからリザードンが勝手に出てきたのである。

 

 どうやら同種族ということで彼のリザードンはロケット団を一撃で吹っ飛ばした私のリザードンに対抗心を燃やしていたらしい。やる気満々なその姿を見て、私は前世のポケモンファンとしての部分がとても光栄に思ったものだ。

 

 なんたってサトシのリザードンだからね……サトシのリザードンの活躍と言えば、前世の記憶に残るうろ覚えなアニメの記憶でも鮮烈に焼き付いている。数々の名勝負を生み出し、エンテイの映画でも大活躍していたその姿を今の私はしっかりと覚えていた。

 

 そんな彼の切り札にして最強のエースの登場に年甲斐もなくワクワクしていた私だが……サトシの指示も待たず勝手にかえんほうしゃを放ってきた姿を見て、私は「あ」と彼のリザードンを語る上では欠かせない事実を思い出した。

 

 

 ──そう、セキエイリーグへの挑戦を2ヶ月後に控えるこの時点、リザードンはサトシの言うことを全く聞かないのである。

 

 

 まともに言うことを聞くようになるのは、確かリーグ編が終わった後に始まったアニメオリジナルの章「オレンジ諸島編」の後半エピソードだったか。

 ヒトカゲの頃は礼儀正しく真面目な性格だったのだが、リザード、リザードンに進化して以降増長し、しばらくの間長い反抗期に入ったんだったね。言うことを聞くようになってからはまさにエースオブエースという働きぶりだったのだが、今はほとんどチンピラ状態である。

 

 それを思い出した私は「ああ、そんなこともあったねー……」とどこか親目線の感情になりながらサトシに向かって火を吐く彼の姿を微笑ましげに眺めていたのだが──そんな彼の無茶苦茶な行動には、どうも私のリザードンが同じ種族としてカチンと来てしまったみたいで……かなりキツめにやってしまったのである。

 

 サトシ君のリザードンも今は傍若無人だけど、私のリザードンも大概気難しい性格なのである。

 ヒトカゲの頃から尊大で王様気質で……バトルの時は一応言うことを聞いてくれたが、それでもトレーナーのせいで結果を出せなかったらすぐにでもそっぽを向くタイプだった。

 そんな彼だからこそ、自分がポケモンバトルの体を為していない小僧の喧嘩に付き合わされたことに憤っていた。

 

 2匹の戦いは私のリザードンがサトシ君のリザードンを上から叩き落とした後、足蹴にしながらブラストバーンを発射。至近距離からの容赦ない攻撃で手痛い敗北を与えてしまう結果となった。

 それを止めなかった私も私だけど、お詫びにかいふくのくすり(この世界ではあまり手に入らない高級品)をあげたので許してほしい。

 

 私のリザードンのオーバーキルにみんながドン引きし、これはもうバトルを続ける空気じゃないなとなったことで、私とサトシ君の野良試合はやむなく中止となった。サトシ君もリザードンの容態が気になってバトルどころじゃなさそうだったからね……とどめを刺したのは炎タイプに半減される炎タイプの技なので、後遺症が残るようなことは無いと思うが。

 

 

 ……で、問題はその後だ。

 

 

 完膚なきまでに倒されたリザードンにショックを受けるサトシ君の姿を見て、下手な同情心でも湧いてしまったのだろうか? 我ながらこの時何を考えていたのやら、私はうつむく彼に向かって、無責任にもこんなことを言ってしまったのだ。

 

 

「2ヶ月後……私もセキエイリーグに出よう。そのリザードンがキミにとって本当の仲間になった時……この続きをやろうよ、サトシくん」

「……!」

 

 

 はい。

 

 思わず再戦の約束をしてしまったのである。しかも、あろうことかポケモンリーグで。

 

 あの時の私は多分調子に乗っていたんだと思うけど、それも仕方あるまい。

 だってよ……サトシのリザードンなんだぜ? こんな形でちゃんとバトルできないのは、あまりにもあんまりである。

 心は既にポケモン吟遊詩人になっているつもりだったのだが、どうやら私にもまだポケモントレーナーとしてくすぶる感情があったらしい。それとも、サトシ君の熱いトレーナー魂に私も感化されたのか。

 

 

 実は私、バッジを8つ集めたはいいが一度もリーグに挑戦したことはないのである。私も7年前は旅の目的として目指していたのだが、心に伝説を受けてしまってな……

 

 

 そんな私だが、今から2ヶ月後にセキエイ大会が開かれると聞いた時、本業の宣伝目的で出場してみるのもいいかなぁ……と漠然的に考えていた。ポケモン吟遊詩人としての収入にはネームバリューも大事なのである。それが歌や詩には何ら関係ないポケモンバトルの実績であろうと、経済効果は段違いだった。

 

 そんな前々から考えていた思いつきの計画とこの時の不完全燃焼な感情が、何かこう上手い具合に噛み合ってしまった結果、私はサトシ君に挑戦状を叩きつけてしまったわけだ。

 しかし我ながら何とも酷い詩人のお姉さんである。

 

 リザードンがサトシ君の言うことを聞くようになるのはオレンジ諸島編に入った後、つまりセキエイリーグでは依然聞かん坊のままだ。

 

 しかも、確かアニメではリザードンが言うことを聞かなかったために敗退してしまったんだったね。それとその回に限って妙にしぶといロケット団の妨害。リアルタイムで見ていたその回は、子供ながらに「そりゃないよ!」と思った記憶である。

 

 そこまで覚えていたくせに、「リザードンを手懐けられたらまた戦おう」とか言い出したのが私である。うーんこの畜生……これにはタケシ君にも幻滅されそう。

 

 まあ、実際のところポケモンリーグはこんな私が軽い気持ちで勝ち上がれるほど甘い場所ではない。

 ウインディたち伝説の力を以てすればいいところまで勝ち上がれるとは確信しているが、それでも大会の中でサトシ君と運良くかち合う可能性は極めて低いと思っていた。

 

 特にセキエイ大会は、自信満々に挑んだ天才トレーナーのシゲルすらどことも知れない誰かに負けてしまうほどの魔境なのである。トーナメント制の恐ろしいところでもあるが。

 

 

 ──そう、思っていたんだけどね……まさか私もサトシ君も、お互いここまで勝ち上がるとは。

 

 

『さあセキエイリーグ準々決勝! 勝てばベスト4進出が決まるこの一戦! 試合は一方的な展開になってきました!』

 

 

 準々決勝……準々決勝かぁ……

 準々決勝と言ったら、私たちは今大会ベスト8に残っているということです。

 ここまで勝ち上がってきた栄えあるベスト8の顔ぶれには、私と──マサラタウンのサトシの姿があった。

 

 

 ……あれ? 確かサトシってこの大会ベスト16で終わってなかったっけ? それを思い出したのが彼の前の試合。原作では敗北を喫したヒロシ君に対して、見事な逆転勝利を飾った時のことだった。

 まさかクラブに続いて、ピジョンまでも試合の中でピジョットに進化するとは……! 読めなかったわ、このTS美少女ポケモン吟遊詩人の目を以てしても! 

 

 

 ……どうやらあの時の私のリザードンによるサトシ君のリザードンのわからせ事案は、私が思っていた以上の影響を彼に与えていたらしい。

 確かにこの世界はアニメに似ているとは言え現実そのものだ。バタフライエフェクト的に考えて、私というTS美少女ポケモン吟遊詩人がいる時点で何かしらの変化はあって然るべきだろう。

 

 これはお互いに望んでいた試合……ポケモンリーグの舞台で、いずれ伝説となる未来のポケモンマスターと本気のバトルができたのは万々歳の状況である。

 

 

 それはそれとして、私は今、この状況で気づいてはならない1つの事実に辿り着いてしまった。

 

 

「ッ……ピカチュウ!」

「ピ……カ……」

『つ、強い! 強すぎるぞポケモン吟遊詩人! マサラタウン出身者同士が相対するこの準々決勝、サトシが残すポケモンは残り1体! 対するヒイカは先ほど引っ込めたウインディを含め、まだ5体も残しているぞ! さあここからどう立ち向かう!? マサラタウンのサトシ──!!』

 

 

 なんだか私、サトシストッパーになりそうです。

 

 

 私のリザードンによって転がされたポケモン界の真の神──ピカチュウの姿を見下ろしながら、私はポロロンとリュートを弾いて内なる気まずい感情を誤魔化した。

 

 

 サトシストッパー、それはポケモンリーグのシーズンに颯爽と現れ、サトシを打ち破った後で忽然と姿を消す伝説の存在……! 

 

 

 嗚呼、これも伝説のポケモンを持つ者の宿命か。

 そう言えばアニメでも、白熱のライバル対決を制したサトシの前にサプライズニンジャの如く現れた伝説のポケモン使いがひたすら大暴れして終わった回があったような……アレもしかして私か? 私だったのか? 

 いや私はダークライ持ってないしちゃうか……と思いながら、私はポケモンシリーズにおけるメタ的な伝説を作り出したレジェンドポケモン、リザードンと共に彼の出方を窺った。

 

 

「……頼むぞ……リザードン、キミに決めた!」

 

 

 この試合は6対6のフルバトル。状況は5対1で、私が圧倒的にリード。

 最後の1匹に追い詰められたサトシはこの時期まだ言うことを聞かなかった筈のポケモン、リザードンに望みを託したのだった。

 しかしその瞳は彼の尻尾の炎のように熱く燃え盛っており、逆転を信じていた。誰がどう見ても、トレーナーと想いが通じ合っている様子がわかる。

 

 

 あれ……? もしかしてリザードンもう言うこと聞く? 馬鹿な……早すぎる……! 

 

 

 彼らの以前とは全く違う眼差しを見て、私は新たな伝説の幕開けを予感したのだった──。




 この後意地を見せた後サトシは負けた。
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