ブラック・ブレット9 Träume 開幕、北陸奪還戦 作:鏡之翡翠
東京エリア第一区には、国家元首たる
そして、さらにその下――地下シェルターの中には、
司令室の扉を開け、
「どこまで進んでいますか」と短く問う。
「すでに自衛隊上層部と警視庁には通達済みです。自衛隊については、すでに陸海空の精鋭部隊が北陸に現地入りし、他エリアの軍や自衛隊と共に拠点の整備に当たっております。警察については、新設された
「民警各社への通達に関しては?」
「ただいま準備中です」と菊之丞は低い声で答える。「こちらにつきましては、各報道機関との擦り合わせが完了次第、大手企業から順に情報を共有していく予定でございます。今回はモノリスの倒壊危機とは違い、情報の拡散と共にパニックが起きる事はないと思いますが、念のための措置です」
「分かりました」聖天子は一つ頷くと、「民警への通達と同時に、大手運送会社及び航空会社にも連絡を」と指示を飛ばす。早急に人員と物資の輸送手段も確保してください」
「かしこまりました。国土交通省にも連絡を取り、防衛省と協力の
菊之丞が司令室にいた
指標ができた事で、司令室が一斉に動き始める。
「奪還作戦に用いるモノリスの材料の調達はどうなっていますか?」
聖天子からの問いに、「問題ありません」と菊之丞が答える。「すでに全エリアの工場が稼働を始めております。作戦決行日までに、全体の八割のバラニウムブロックが完成予定です。残りについても
「という事は――」
「ええ、先ほど聖天子様がおっしゃられた通り、あとは輸送手段の確保だけです。とはいえ、これについては北海道エリアがかなり大規模な動きを見せております。元首の
「……ずいぶんと
「当然、親切心による
菊之丞の
「『北陸エリア』の樹立を見据えてのイニシアチブ確保に
「言い換えれば、大阪エリアの
「だからこそ、
「……そうですね」聖天子は口許を引き結ぶ。菊之丞の言わんとしている事は、改めて説明されずとも分かる。
――大阪エリアは間違いなく、取り戻したあとのロジスティクスを
――独占権益を失う事はマイナスになりますが、それが増える事は確かなプラスになります。
この領土奪還作戦が成功する確かな保証はない。作戦が上手く運び、モノリスの
だが、それを踏まえた上で、各エリアの上層部達は、『その先』を見据えて動いている。
遠い未来に、築き上げられた新たな国家の運営の主導権を握るため、各々が異なる思惑を胸に、
それを
それに――東京エリアとて、例外ではない。
――今回の大規模侵攻は、人類からガストレアに対する宣戦布告でもあり……誰が新たな時代の
――後の世代に、適切な
自らの胸に当てた
国家のトップは、時代を切り
その全てを実現するために必要なのは、圧倒的な力だ。
それを自らの
「――聖天子様」菊之丞が、何かを案じるかのように、聖天子の瞳を覗き込んでくる。
「ええ、分かっています」と聖天子は
「……ご無理だけはなさらぬように。あなた様を
「……ありがとうございます、菊之丞さん」聖天子は柔らかく微笑むと、
「
補佐官や閣僚に見送られながら、聖天子は司令室をあとにする。
彼女の脳裏には、黒衣に身を包む一人の少年の姿が浮かんでいた。