果てしなきスカーレット re:imagined 作:うそだよなまもる
解放軍へといっても連携は取れておらず、スカーレットはほぼ単身でエルシノア帝国軍へ立ち向かっていく……
山を下ってまず、スカーレットは解放軍のテントへ向かった。
いつの間にかオオカミたちの姿は見えなくなっていた。根拠はないが、煉獄で会うことは二度とないような気がした。
「軍へ参加したい」
「好きにしろ」
「決まりは?」
「帝国の連中が目の前にいる間は、互いに手出しをしない。以上だ」
ヴァイキングの兜を被った無精ひげのセイウチに尋ねると、ぶっきらぼうに返された。解放軍といっても、特別な連帯はないようだ。敵の敵は味方という発想なのだろう。
武具も点在しているテントにあるものを自由に使っていいと言われた。出処を尋ねると、死んだ者の遺品を回収しているらしかった。
なので、スカーレットは短剣のみでテントを出て、戦地へ赴く獣人たちの群れに混ざった。
***
リヴァイアサンがもたらした膠着はすでに破られ、解放軍と帝国軍の衝突は激しさを増していた。
ターバンを巻いたコブラの獣人は、牙に仕込んだ毒で帝国軍を数人ほど殺した後、脳天を銃弾に貫かれた。
剣闘士のような腰巻をした象の獣人は、巨体のせいで帝国軍から矢と銃弾の雨を浴びながら、最後は体当たりで敵の小隊を圧殺した。
カウボーイのような衣服とリボルバーを携えた水牛の獣人は、帝国軍と一対一の銃撃戦を繰り広げ、相打ちとなって塵と化した。
「見果てぬ場所へ!」
「エルシノア帝国に栄光を!」
「死んだのに、また顔も知らん奴に支配されるなんてごめんだ!」
「獣に堕ちた愚かな人間が、見果てぬ場所を望むなどおぞましい!」
互いの大義を掲げて殺し合い、まるで命が紙屑同然に吹き飛んでいく。
戦場から浴びせられる狂気に、スカーレットの心臓がきつく締め付けられる。同時に
「帝国をぶっ殺せ!」
「クローディアス様へ仇なす者に粛清を!」
今から、自分の周りの狂人と同じ所まで堕ちる。スカーレットはそんな確信があった。
どうしても躊躇ってしまう良心とは裏腹に、手は短剣を握り、全身から溢れる電流を吐き出すように叫んだ。
「待っていろ、クローディアス!!!!」
スカーレットは帝国軍へ一直線に突貫した。
放たれた矢よりも早く鶏の獣人に肉薄すると、短剣で首を刎ねる。その周囲にいた羊の遊牧民族を尻尾で一掃し、続けて七本槍を持った馬を鎧ごと持ち上げ、地面に叩きつけた。
「AAAAAAAAAAA!!!!」
全身がうずき、熱を帯び、快感で脳が溶けていく。
鎖鎌で襲ってくる虎は、鎖ごと胴体を噛みちぎった。マスケット銃を向けてくるペンギンは塵になる前の虎を盾にし、接近して頭蓋骨をかち割った。投石器で発射された岩石を受け止め、その岩石で操作していたカモシカの小隊を一匹残らず撲殺した。
「KOROSU、KOROSUUUUUUUUU!!!!」
なんの意味もなかったが、スカーレットは殺した獣人の数を覚えておこうとした。しかし二十を越えたあたりで分からなくなったので、早々に諦めた。
諦めがついてからの方が、圧倒的に帝国軍を殺していることは確かだった。
「KUROOOOOOOODIASUUUUUUUUUU!!!!!」
倒しても倒しても行く手を塞がれ、塞がれるたびに薙ぎ倒して進む。クローディアスの首に手が届けようと、スカーレットは叫びながら殺し続けた。
***
気が付くと、スカーレットは気絶していた。
頭にずきんと痛みが走る。どうやら何かしらの攻撃で脳震とうになり、気を失っていたようだ。幸い傷から血は出ていないようだった。
身体を起こすと、そこはテントの中で。他の獣人たちから感動と尊敬の眼差しを向けられていた。
獅子奮迅の大立ち回りをしたことで、解放軍の中で英雄扱いをされているのだという。「解放軍の救世主」、「煉獄のジャンヌ・ダルク」などという二つ名まで与えられているようだった。
「あなたがいれば、帝国軍に勝てる!」
「見果てぬ場所を占領する汚い奴らの鼻を明かしてください!」
「今後はお供させてください!」
矢継ぎ早に告げられる言葉に、スカーレットは困惑を隠せなかった。
***
二度目の出陣でも数多の獣人を討ち取った。
スカーレットに便乗した獣人たちの群れが形成されていった。帝国軍からの「煉獄のジャンル・ダルク」という名で呼ばれ、注がれる敵意が何倍にも膨れ上がった。
その敵意が
***
三度目の出陣。すでにスカーレットは解放軍の象徴になってしまった。
味方からの期待も、敵からの憎悪も、
解放軍の攻勢は凄まじく、帝国軍の本拠地――クローディアス城へ着実に近づいていた。
次は週末にでも