非日常は突然に。   作:ライドロル缶

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ルミ「本編の前に、前回のあらすじぃ!」

ユウ「 いえ ~ い?」

ルミ 「 ごく平凡な男子高校生の園崎ユウ君は 、アルバイトを探しに難航していた!」

ユウ 「 ごく平凡って …まぁ、そーだけど! 」

ルミ 「 そこで偶然! 何でも屋 ”LOVE&Peace ” という もう名付けたもののネーミングセンスが輝いている店舗を見掛ける! 」

ルミ 「 好奇心が刺激され入店するユウ 。その奥には超絶美人なお姉さんこと、燈田坂ルミが座っていた!」

ユウ「 自分で超絶美人とか、輝くネーミングセンスとか痛いだろ! ただの 〇〇歳のおばさんでしょ?」

ルミ 「 うるっさい! まぁ、そこでユウにすぐさま合格を突きつける!」

ユウ「 ってか、なんで即合格にしたの?」

ルミ 「 そりゃ人手が足りないのと、アタシが目がキミを逸材だと言ってたからかな。」

ユウ「 逸材…。 」

ルミ 「 お?褒められちゃって照れちゃってる?かわいいねぇ?っと、そこでなんとどす黒い化物…魔怪に遭遇してしまう!」

ユウ 「 てれてねぇ!!」

ルミ 「 足腰かぐブル震わせて、全力疾走を決めるユウだが ついに行き止まりに追い詰められる! 」

ユウ 「 …。(それは本当だからなんにも言えない‥。)」

ルミ 「 そんな絶対絶命のピンチに訪れたのが、我らが姐さん! 燈田坂ルミ !!」

ルミ 「 いや ~ 、天井ぶっ壊しての登場なんてね〜 。かっちょい〜!!」

ユウ 「 俺も少し危なかったんですけど!? 」

ルミ 「 ごめんな! ってことで 、化け物をちょちょいっと殴り倒したアタシは改めてユウくんに名前を聞いたんだよね〜! 」

ユウ 「 同じ店で働くのにお互いに名前知り合ってないなんてやばくね?」

ルミ 「 ま ~ そんなこんなで 晴れて ──」

?? 「 店長 に園崎くん … ! 忙しいんですから、早く仕事をしてください !」

ルミ 「 むぅ … 、仕方ね〜な! おし! ユウも仕事だ!行くぞ!」

ユウ 「 ちょっ、引っ張んないでくださいよっ!」

ルミ 「 さて、どうなる第2話!」





第2話 特別研修って言うけど、何でも屋の研修って何すんの?

 

 第2話 特別研修って言うけど、何でも屋の研修って何すんの? 

 

 

 

 朝5時。まだ街は眠りの中で、薄い夜明けの光がアスファルトに淡く反射している。ユウは「何でも屋 LOVE&Peace」の店先に立ち、昨日の非日常が過ぎる出来事に未だに頭の整理が追いつかずにいた。

 

 湿った空気が肌をべたつかせ、夏の夜明け特有の高温多湿な空気が肺に詰まる。

 

 

 

 ユウ「……ふわぁ ~ 。5時はさすがにキツいなぁ……」

 

 

 昨日、非日常なことが色々と自分の周りで起きすぎて、まともに寝れておらず寝不足気味で欠伸が漏れる。

 寝る前は全然眠くないのに、朝起きると眠くなるのはやめて欲しいものだけど、こればっかりはどうしようもない。

 

 

 

 なんて事を考えていたら、背後から軽やかな足音が響く。

 

 

 コツ、コツ、コツ──。

 

 

 振り返れば、赤髪の彼女 ── ルミ店長がまるで朝の散歩でもするかのように、涼やかな笑みと共に現れた。

 

 ルミ「おはよ、ユウくん! ちゃんと来て偉いね!」

 

 ユウ「そりゃ来ますよ! 気になることがめっちゃあるし!?」

 

 ルミ「なら今日の特別研修でその疑問たちも晴らせてあげよう!」

 

 ユウ「よろしくお願いしま〜す 」

 

 

 そのまま、店長に誘われるように店内に入ると、ルミはカウンター奥の部屋。つまるところ倉庫へとユウを案内する。

 

 

──何でも屋『LOVE&Peace』倉庫内

 

 

 扉を開けると、夏だからなのか異様に冷房の効いた広間があり 、壁際にはホワイトボードと異能者用装備(なんかの道具)が整然と並び、まるで秘密基地のようだ。

 天井から吊るされた蛍光灯が淡く部屋を照らし、より秘密基地という雰囲気が出されている

 

 

 ユウ「お~ 、なんかワクワクする部屋~ 」

 

 ルミ「でしょ ~ ? 結構アタシもお気に入りなんだよね〜 」

 

 ユウ「 ……で、特別研修ってなにすんの?」

 

 ルミ「ん ~ まぁ基本的なところはちょちょいっと座学して、後は実践かな ~ 」

 

 ユウ「座学はまだわかるけど、実践って?」

 

 ルミ「ん ~ ? 魔怪…… っていっともわからないか。 昨日ユウくんが遭遇した化け物の討伐だよ」

 

 ユウ「 え゛ ッ !?」

 

 

 いやいやいや 、まだバイト初めて1日も経ってないんですけど!? 

 それに、格闘技やら武術やらってもの出来る訳じゃないし……、なんなら運動部でもないから動けるかどうかも心配なんだけど!? なんて、サラッと言われた衝撃的な内容に心中で突っ込む。

 

 

 

 

 ルミ「うん! そのツッコミも当然だね! …… まぁ、実践と言っても~ 実際に戦うのはアタシでキミには其れを診てもらう形だよ 」

 

 ユウ「平然と心読まないで!?」

 

 ルミ「まっ、異力を扱えるようになれば心を読むなんて簡単なのだ〜!」

 

 ユウ「え、そーなの?」

 

 ルミ「うん、嘘に決まってるじゃん☆」

 

 ユウ「何がうん、なんだよ!?」

 

 ルミ「ってことで〜! 右も左もわかんない新人君のために、天才美女異能力者である、燈田坂ルミ大先生が授業してあげましょ〜!」

 

 しゅばっ、とスーツとメガネで女教師となるルミ。

 

 ユウ「……天才美女異能力者……って、その衣装どこから出した!?」

 

 ルミ「まずは昨日キミが遭遇したどす黒くてこんわい化け物! 魔怪についての授業だ!」

 

 ユウ「無視かい…… 」

 

 むすぅとなるユウを置いて、ルミはホワイトボードの前に立ち、黒いマーカーで人型の影を描いた。その人型ははぐにゃりと歪んみ、あの化け物の姿を彷彿とさせる。

 

 ルミ「まず、魔怪はさっきも言った通り君が昨日見たあの化け物みたいな存在だ。 まず、一般人には見えない。異能力者や特定の装置を持つ者だけが認識できる異力で形成された怪物だよ」

 

 ユウ「……は ~ い ! ルミ大先生 ~、俺無能力者なのに見えたんすけど?」

 

 ルミ「いい質問ですねぇ?」

 

 ユウ「当然の疑問だろ!?」

 

 ルミ「その理由はただ1つ ! キミが異能力者へと覚醒しかけているからなのである! 」

 

 ユウ「ほ〜ん ……って、へ?」

 

 ルミ「多分、あの魔怪に遭遇したことで脳みそが 絶体絶命の危機! って感知して覚醒したって感じじゃないかな〜? たまにあるんだよね~、そういうの。 」

 

 ユウ「じゃあ ! 俺も昨日店長がやったみたいな、半端ないパンチ出来るってこと? 」

 

 ルミ「あれはただぶん殴っただけだから異能は関係ないよ〜。 」

 

 ユウ「はぁ!? ゴリラかよ!」

 

 ルミ「さてさて(後でビンタな?)~、それじゃぁ講義に戻ろうか」

 

 ユウ「ヒッ…… はい」

 

 ルミ「魔怪には等級があってね〜 」

 

 キュッキュッキュッ 、とホワイトボードに等級表を書き込むルミ。

 

 

 E級:一般人でも対処可能

 

 D級:プロの格闘家でも危険

 

 C級:銃火器でギリ

 

 B級:重機関銃で対処可

 

 A級:クラスター爆撃でトントン

 

 S級:国家軍隊でも撃破が困難

 

 

 ルミは表に指を走らせながら、説明を重ねる。

 

 ルミ「E級は日常生活で出会っても命に関わらない。でもD級以上になると、普通の人間では殆ど魔怪に対抗できないね 。C級以上は銃とかの一般兵器ではほぼ無力、B級以上は重装備や爆弾が必要だしそれでもやれるか怪しい。A級は都市規模の軍事力でもトントン、S級は国家レベルの軍隊とかでも危険かも?」

 

 ユウ「……クラスター爆撃とか 、国家レベルとかって言われても……イメージつかねぇ〜 」

 

 ルミ「簡単に言えば 都市一つが吹き飛んだり、国1つ無くなったりしちゃうかもってことだ!」

 

 ユウ「やっば …… 、そんなん出たら終わりじゃん 」

 

 ルミ「まぁ等級はあくまでも最悪の危険性でつけられるから、あくまでも目安程度に覚えとくといいよ 」

 

 ユウ「は〜い! ルミ大先生 ~ 」

 

 ルミ「はい! ユウくん!」

 

 ユウ「ちなみに可能俺を襲った魔怪は何級なんですか〜?」

 

 ルミ「その疑問、ハイパージーニアスティーチャー燈田坂ルミ大先生がお答えしましょ〜!」

 

 ユウ「お …… おう?」

 

 ルミ「結論からいえば、昨日の魔怪はC級位だよ~ 」

 

 ユウ「はぁ!? それって……」

 

 ルミ「そう! 正真正銘の人外級化け物です! 」

 

 ユウ「俺…… 、そんなのから逃げてたのか…… よく生き延びたなそれ 」

 

 ルミ「まぁ、普通の無能力者なら出会った時点で死んでるよ 。だけど、君の場合は異能力が覚醒しかけているおかげで、火事場の馬鹿力とかなんとかで異力を扱い何とか逃げれていた。って考えるのが妥当だろうね ~ 」

 

 ユウ「ラッキーだったってことか」

 

 ルミ「うん、そゆこと〜 」

 

 

 言われてみれば、最近運動も何も全くしてないのに全然息切れしなかったな 。

 

 

 ルミ「さてと…… いい加減異能やら異力やらを教えろ! って顔をしてるそこの諸君ら!」

 

 ビシッ! と何処か謎の方向へと指を指し。

 

 ユウ「うぇッ !? っていきなりどこに何言ってんの!?」

 

 ルミ「もう、全身疼きまくって我慢できない君たちのために、このハイパージー(以下略)大先生が異能と異力について説明しよう!」

 

 ルミは次に異能力者の体の図を描き込む。人間の体に異力の流れが色分けされた線で示されている。

 

 ルミ「異能とは、異能力者の体内にある異核(いかく)から分泌されるエネルギー、異力を操作や消費して発動する特殊能力のことである! つまり ~」

 

 

 異力:異能発現のエネルギー源! 

 

 異能力者:異力を操作できる者! 

 

 能力の種類:火、氷、電撃、速度増強、武器強化など無限! 

 

 

 ルミ「ってこと! 異能者ごとに力は違うし、同じ系統タイプの異力でも、発動方法や制御の精度で戦闘効率はめっちゃ変わる。まぁ~単純な力とか火力だけじゃなく、実践経験と観察が大事になるね」

 

 ユウ「へぇ ~異能をただ使えばいいって訳じゃないんだ?」

 

 ルミ「そう。自分の力を理解し、敵の特性(パターン)を読み、状況に応じた戦術を組み立てる。これができなきゃ、この先きっついぞ〜?」

 

 

 ユウはゆっくり頷き、昨日のあの出来事を思い出す。化け物に追われた恐怖、鉄パイプで反撃した緊張感、そしてルミのあの半端じゃない一撃。

 

 

 ルミ「さてと、考えるのはストップして、次は討伐の仕方だよ! っと、思ったけどそろそろ座学も飽きてきちゃったし~ 、実践も一緒にやっちゃお〜!」

 

 

 ルミはホワイトボードに書いていたあれこれをそのままに、女教師の衣装を しゅばっ! と脱いで いつもの服装に。

 

 

 ユウ「もうツッコまねぇ…… 」

 

 

 

 ──廃工場

 

 

 

 座学を終わらせると、ルミはユウを昨日の廃工場へと移動する。

 薄暗い空間に、なにかドス黒い何かが漂っていた 。

 

 

 

 

 

 ユウ「……これ、昨日とは違うけど……気配が昨日のやつと似てる……」

 

 ルミ「いい勘してるね〜! 。ユウくんの言う通り魔怪の出現する場所だよ」

 

 ユウ「でも、店長があの魔怪ぶっ飛ばしてたろ〜? そもそも、俺道路であったんだけどなんで?」

 

 ルミ「 ここは廃工場で人が全く立ち寄らない。 来たとしても肝試しぐらいかな? 魔怪はね、こういう所に巣を張るんだ。 」

 

 ユウ「巣?」

 

 ルミ「そう、巣。君の遭遇した 魔怪はここに巣を貼ってたってことだね ~ 。だからいつのまか君がここに来させられて、行き止まりに追い詰められちゃったってわけ」

 

 ユウ「 こっわ …… 、追い込み漁みたいな事されてたってわけか」

 

 ルミ「まぁ、簡単に言えばそ〜だね。ってことで──おでましだよ」

 

 ルミ「見たところ〜……D級が三体くらい?うん、お手本には丁度いいね」

 

 ユウ「……(……D級。プロ格闘家が束になってもギリギリな奴らが……3体も)」

 

 

けりゃ……くひゅ……ぎちぎちぎち……るぐりゅぅうう……!! 

 

 

 三体の魔怪が、

 地面を蹴って高速で突っ込んでくる。

 鋭利な爪がアスファルトをえぐる度、

 火花が雨のように飛び散り、

 

 バキッ バギィッ! 

 

 足跡のたびに亀裂が走り、

 床全体が波打つように震えた。

 

 ユウ「……ほんとにこれでD級なのかよ……」

 

 三体がほぼ同時にルミへ襲いかかる

 

 だが、

 ルミは一歩も動かない。

 

 魔怪の爪々がルミの眼前に迫った

 次の瞬間、彼女の姿が“僅かにブレた”。

 

 いや──

 

 動いたのではない。

 “魔怪が勝手に外れた”のだ。

 

 ヒュッ……! 

 

 ルミが肩と腰の“わずかな角度”だけで軌道を流すと、

 

 一体目の突進が真横へ滑り抜け、

 二体目の爪が風だけを裂き、

 三体目の牙はルミの髪すら掠れない。

 

 

 すり抜けた魔怪の一体が振り返り、

 喉を裂くような咆哮を上げながら噛みつこうと飛び込む。

 だが。

 

 ルミの足が──

 オーラのようなものを纏い、光始める。

 異力が足先に凝縮し、

 周囲の空気がユラ……と歪む。

 

 ルミ「──まずがこれが、異力を“身体に纏う”強化攻撃」

 

 

ドギャアアアアアッ!!!! 

 

 

 轟音とともにルミの蹴りが魔怪の胸へ直撃。

 胸骨が“前から後ろへ”丸ごと押しつぶされ、

 衝撃波が背骨を抜け、

 反対側の皮膚が“風船のように膨らんでから破裂”した。

 魔怪は爆散寸前の勢いで吹き飛び、

 後方のコンテナ群に突っ込み、

 

 コンテナ1「ドンッ!」

 コンテナ2「ゴシャッ!」

 コンテナ3「ミシィッ!」

 コンテナ4「ブチ破壊」

 

 四連続でめり込んだあと、

 そこにめり込んだまま動かなくなった。

 

 ユウ「……。バケモンより‥化け物じみてんじゃねぇかよ……」

 

 流された残りの二体は再び脚を踏み込んだ。

 その瞬間。

 ルミの周囲の空気がズン……と沈んだ。

 音が消え、

 風が止まり、

 アスファルトの大地が一瞬、低い唸り声をあげた。

 

 ルミ「次に……これが“異力を放つ異圧(いあつ)。まぁ、いわゆる威嚇だったり威圧だったりだね」

 

 ユウ「……!(……昨日……!俺の身体を動けなくした……あれ……!!)」

 

 ルミ「強い能力者や魔怪ほど、威嚇どころじゃない。身体の上に、“重力”が乗る」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!! 

 

 

 見えない圧力が衝撃波のように撒き散らされ、

 二体の魔怪の背骨が悲鳴を上げる。

 

 魔怪「グ……ガァア……ア……ア……! 

 

 膝が砕け、

 手足が折れ、

 全身が地面へ押し潰される。

 

 アスファルトが“クレーター”のように沈み込み、

 魔怪の身体はそこへめり込み、

 肉と骨が圧力でひしゃげる音が響いた。

 

 

ミシミシミシミシ…… バキ……ッ!!!! 

 

 

 そして──

 圧殺。

 血飛沫すら上がらず、

 地面にどす黒い染みだけが残る。

 

 ルミ「こんなふうにね」

 

 ユウ「……圧倒されすぎて理解が追いつかねぇんだけど……」

 

 ルミ「これが、異力を使った戦闘だよ。ユウの異能が目覚めてない今、異力の扱い方を覚えてもらうよ」

 

 ユウ「異力の……扱い方」

 

 ルミ「っと〜、こんな話してたら……またまた、おでましおでまし〜」

 

 

 空気がひんやり震えた直後、

 廃工場の鉄骨の影から、どす黒い霧をまとった“何か”がぬるりと出てくる。

 

 

 D級魔怪。

 

 

 先ほどの三体より僅かに小柄だが、

 その爪は鉄板を容易く引き裂く鋭さを持っていた。

 

 

 ユウ「う、うわ……また出た……」

 

 

 ルミは指先を軽く鳴らし、まったく動じていない。

 

 

 ルミ「ん〜、やっぱここで実践もやっちゃおっか!」

 

 

 ユウ「え”っ!? い、さっきやらないって言ってなかったっけ!?」

 

 ルミ「だってお手本はもう見せたじゃん? あとはもう、“やってみよ〜! ”だよ、ほらやってみよ〜!」

 

 ルミ「大丈夫。やり方は教えてあげるし……ちゃんと危なくなったら守ってあげるよ」

 

 ユウ「……わかった。やるよ。どうせいつかはやるんだもんな……なら早い方がいい」

 

 

 ルミ「いいね〜! じゃあ早速!」

 

 

 ルミの声が響いた瞬間──魔怪が動く。

 

 

ギャリィッ!! 

 

 

 アスファルトを裂く爪音を残し、

 魔怪は四足獣のように跳ね上がり、ユウへ一直線に襲いかかる。

 

 

 

 ルミ「ユウ。まずは異核を意識してみよう。

 異核の位置は異能力者によってぜんっぜん違くてね ~ 、未熟だとブレブレで、アタシでも分かんない」

 

 

 ユウ「……じゃあ、どうすれば……」

 

 

 ルミ「感じ取るんだよ。“自分の中にあるもう一つの重心”を、それが異核」

 

 

 ユウ「……感じ取る……異核の位置……」

 

 

 魔怪の爪が風を裂き、

 ユウの頬にヒヤリと冷たい風圧が触れる。

 

 

 距離は──あと二歩。

 

 

 ユウはその場で、目を閉じた。

 

 

 ルミ「……(いい判断だね……)」

 

 

 世界が遠ざかる。

 雑音が消える。

 

 

 代わりに、腹の奥深くへ“(エネルギー)”が沈んでいく感覚が広がった。

 

 

 ──ここだ。

 

 

 へその下。丹田のあたり。

 まるで小さな心臓が、ひとつ脈打ったような。

 

 

 ユウ「……(……これが……俺の異核……?)」

 

 

 魔怪の爪が眼前に迫る直前──

 

 

 ユウ「……ッッらぁああ!!!」

 

 

 思いっ切り拳を振り抜いた。

 

 

 ドガァァッ!!! 

 

 

 拳が沈んだ場所から、骨の砕ける鈍い音が反響する。

 魔怪の腹部が盛大にへこみ、魔怪の体がボトッ……と崩れ落ち、黒い霧を散らして消滅した。

 

 

 

 ── 沈黙。

 

 

 

 ルミ「……ほんとに打てちゃったよ〜。やっぱり、とんだ逸材だね」

 

 ユウ「っ……ふぅ〜〜……なんだこれ……めっちゃ疲れる……」

 

 

 しゃがみ込み、肩で息をするユウ。

 

 

 そこへ──ひょいっとルイが顔を出した。

 

 

 ルイ「そりゃあ当然だよ〜。まだ産まれたての未熟な異核で、いきなり異力操作なんてやったらね〜」

 

 ユウ「でも……できたんだよな? 俺……」

 

 ルイ「できてるできてる〜。

 ってことで次は、それを疲れなくても打てるように、異核を鍛えよ〜!」

 

 ユウ「こんなの……何発も連発したら……マジで動けなくなる……」

 

 ルミ「だからこそ鍛えるの。これからの一週間の研修期間で、み〜っちりね!」

 

 ユウ「……いや、研修とか聞いてたけど……バイト要素って何処に消えたんだよ……」

 

 ルミ「細かいことは気にしな〜い!」

 

 ユウ「えぇ……」

 

 ルミが手をひらひら振る。

 

 ルミ「じゃ、戻ろっか」

 

 ユウ「はぁ〜〜い……」

 

 廃工場の静けさが戻るなか、

 ユウの胸の奥で新たな鼓動。

 異核のかすかな脈を確かに感じ取っていた。

 

 

 

 

── 何でも屋 LOVE&Peace 店内

 

 

 

 

 カラン……と軽い扉の音が鳴り、店に戻ると同時にルミがくるりと振り返った。

 

 

 ルミ「さてと、今度は“扱き”の時間だよ〜」

 

 ユウ「……え!? 終わりかと思ってたんだけど!?」

 

 ルミ「アタシは“戻ろう”って言っただけで、“終わる”なんて一言も言ってないよ?」

 

 ユウ「性格悪ッ!?」

 

 ルミは楽しそうに手をパンッと叩く。

 

 ルミ「はいっ、それじゃ〜。今度は“打ち出す”んじゃなくて……“維持する”事に慣れよっか!」

 

 ユウ「維持……?」

 

 ルミ「うん。拳なら拳に、足なら足に、腹なら腹に……“異力を一定量だけ込めて維持する”ってこと! これね〜、見た目以上に結構キツいぞ〜?」

 

 そう言うと、ルミはポケットから銀色の腕輪を取り出し、ユウにヒョイと投げて寄越す。

 

 ユウ「これって?」

 

 ルミ「一定の異力を計測する“腕輪型の異力探知機”!」

 

 ユウ「へぇ〜……そんなのあんだ……」

 

 ユウは腕に装着し、恐る恐る異力を身体に巡らせてみる。

 

 

 すると──

 

 

 ルミ「あ、言い忘れてたけど〜! 

 “設定した一定量から異力がズレたら電流が流れる”よ〜!」

 

 

 ユウ「…………え?」

 

 次の瞬間。

 

 

 

── バチバチバチバチバチッ!!!  

 

 

 

 ユウ「あばばばばばば!!?!?!?」

 

 

 ルミ「どんなことがあっても異力をブレさせない! そのための装置だからね〜!」

 

 ユウ「それを先に言ってくれよぉ〜〜〜!!」

 

 そんなユウをニコニコ見ながら、

 

 ルミ「じゃっ、アタシはちょっと用事入っちゃったから抜けるね〜。あ、暇になったらテレビ観たりお菓子食べたりしても良いから!」

 

 言い残して、ヒラヒラ手を振りながら店の奥へ消えた。

 

 ユウ「そんな軽いノリで……これ、軽く拷問じゃない……?」

 

 

 

── 1日後

 

 

 

 

 ユウ「ふぅ〜……」

 

 テレビでは刑事ドラマの銃撃戦が始まっている。

 だがユウはその最中でも、腕輪をつけたまま一定の異力を流し続けていた。

 

 呼吸も乱れず、表情も落ち着いている。

 

 

 

 ──すっ……。

 

 

 

 背後から影が落ちる。

 

 ルミ「頑張ってるね〜!」

 

 ユウ「うわっ!?!? い、いつの間に……!」

 

 驚いて集中が途切れたはずなのに──腕輪は無反応。

 

 ルミ「……(へぇ……。ほんっと飲み込みが早いね。普通ならこれだけで五日はかかるのに……)」

 

 

 ルミ「うん、いいね! それじゃあ次は──」

 

 

 

── 5日後

 

 

 

 ルミ「お〜し! じゃあ今度は力試しも兼ねて……もう一回、魔怪と戦いに行こっか!」

 

 ユウ「ん〜……これで、ほんとに強くなってんのか〜?」

 

 ルミ「大丈夫大丈夫〜! ユウくん飲み込み早かったし、この1週間みっちりやったからね〜!」

 

 ユウ「で、またあの廃工場行くの?」

 

 ルミ「んや? 実はちょうど魔怪出現の報告があってさ〜。アタシの部下の異能力者と一緒に行ってもらうよ〜!」

 

 ユウ「え? ルミ店長は一緒じゃないの?」

 

 ルミ「アタシだって色々あるんだよ〜。

 まぁ、店長だから仕方ないんだけどね〜」

 

 ユウ「へぇ〜……まぁ、あんだけ強いしなぁ〜」

 

 ルミ「そゆことっ! ってことで──

 明日は朝7時、店の前に集合ね〜!」

 

 ユウ「はぁ〜い……」

 

 

 

 その時ユウは、まだ知らなかった。

 

 自分が、どれほどの“力”を手にしているのかを。

 

 




ルミ「次回予告のコーナー!」

?ず「「「いえ〜い!」」」

ユウ「は?え?は?」

ルミ「いや〜次回はね〜新キャラが登場するよ〜!」

??「僕だね。」

ルミ「そうそう〜! 他のふたりはまだ出番はないよ!」

??「はぁ!?俺も出させろクソ店長!!」

ルミ「はいはい 其れはまた数話先ね〜!」

ユウ「ってか、こいつら誰なんだよ!?」

ルミ「それは次回までのお楽しみってことで!」

ルミ&?ず「次回!なんかまともそうな大人と初仕事!の巻!!」

ユウ「巻ってなんだよ!?」
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