非日常は突然に。   作:ライドロル缶

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── 前回のあらすじ!


ユウ 「 よし …… あのバカは居ないな。」

ルイ 「 コホン! 前回のあらすじ!」

ユウ「 うぉ!? って...ルイ?なんで?」

ルイ「なんか、燈田坂店長が行けって」

ユウ「お…おう? まぁルイなら大丈夫だけど。」

ルイ「 まぁ、取り敢えず! あらすじやっちゃお?」

ユウ「 だな! 」

ルイ「 前回はたしか、園崎くんの歓迎会だったよね!」

ユウ「 そこで、皆と初顔合わせでそのままピザ食ったりしたんだよな〜! あれ美味かったぁ〜!また食いたいな〜!」

ルイ「だよね ~ 。でも、警報が鳴って途中で切り上げちゃったんだしまた食べれるんじゃない?」

ユウ「 おっ! それなら初仕事頑張って、歓迎会に戻らないとな!」

ルイ 「うん! それじゃぁ 第5話!どうぞ〜!」




第5話 折角皆での初仕事だから、見学するんじゃなくて戦いたくね!?

 

第4話折角皆での初仕事だから、見学するんじゃなくて戦いたくね!? 

 

 

 

 

──東京第5区・6番地「LOVE&Peace」前

 

 

 

 

 午後7時過ぎ。

 

 曇った空は薄暗く、ビルの隙間を吹き抜ける風がぴゅうっと鳴った。

 古びた雑居ビルの前に、五人の影が横一列に立っている。

 

 新人──園崎ユウは、胸の前で力強く拳を握っていた。

 

 ユウ「ふぅ …… 、おし!」

 

 隣では蓮咲ガロウが、すでに戦闘モードでブーツをドンドン地面に鳴らしていた。

 

 ガロウ「チッ、さっさとこうぜぇ?」

 

 靴底から火花が散りそうな勢いだ。

 

 神崎ルイは深呼吸をして両手を胸の前で静かに組む。

 指先には小さな光の粒がほろりと弾け、星砂のように消えた。

 

 ルイ「落ち着け、私……大丈夫、大丈夫、深呼吸……!」

 

 ソウはというと、一人だけ“静寂”をまとったように真剣な表情で鞘の上から愛刀の手入れをしている。

 

 

 ルミは巨大な大剣の柄をポンポン叩き、肩をならしながら

 ルイ「ん~~~、よしっ、今日は肩の調子いいねぇ」

 

 と微笑む。

 

 

 ルミ「じゃ、みんな。出動するよ」

 

 ソウが目を開き、淡々と告げる。

 

 ソウ「向かうは東京第6区・3番。魔怪が9体出現した」

 

 ルイ「9体って……けっこう多くないですか!?」

 

 ソウ「うん。もっと気になるのは……そのうち4体がC級以上ってところかな」

 

 ルイ「し、C級が4体っ!? 」

 

 ガロウ「まぁC級だろうがB級だろうが、まとめて吹っ飛ばしゃ一緒だろ!」

 

 ルミ「ガロウくんはいつもそう言うけどさぁ……

 吹っ飛ばした後の後片付け、誰がやってると思ってる?」

 

 ガロウ「知らねぇ!!」

 

 ルミ「このガキ……!」

 

 小さな小競り合いの横で、ユウはソウの横顔をちらりと見た。

 

 ソウ「にしてもC級が4体というのは、少し変だね」

 

 ユウ「そんなにおかしいの? C級4体って」

 

 ソウ「いつもの仕事ならまず出ないよ。出たとしても一体。だから……少し不自然なんだ」

 

 ルミ「だからねぇ、今まではユウの世話しながら任せてたけど……これからはそうもいかないかもねぇ~」

 

 ルミがあっけらかんと笑う。

 

 ユウ「……そういやさ、なんで場所とか数とか分かったの? ソウさん」

 

 ユウの疑問に、ソウは微笑み、声を落とした。

 

 ソウ「僕は“異力の情報を読む”能力があるんだよ。魔怪の数、質、位置……放たれてる異圧から離れていても大体わかるんだ」

 

 ユウ「……すげぇ」

 

 ソウ「だから“嫌な予感がする”って言ったらね……だいたい当たるんだよ」

 

 にこっと笑うけど、その内容は全然笑えなかった。

 

 ルミ「ま、そんなわけで向かうよ。ユウくんは私とソウの近くにいな」

 

 ユウ「お、おう!」

 

 曇り空の下、5人はビル前の道路に歩き出す。

 緊張とワクワクと不安と妙なテンションが入り交じる中……

 

 

 ルミ「LOVE&Peace、出動!!」

 

 五人「「「「おうっ!! (はいっ!!)」」」」

 

 

 こうしてLOVE&Peace全員での初任務が始まった。

 

 

 

 ── 東京第6区・3番

 

 

 LOVE&Peaceカーがガタガタと揺れながら6区へ突入していく。

 

 5区からわずか十五分。それなのに──

 

 景色が、いきなり“腐って”いった。

 

 ビルの壁は、まるで墨汁を垂らしたように黒ずみ、

 看板の文字はねじ曲がり、鉄骨は真っ赤に錆びている。

 道路にはどろりと粘つく黒い液体が広がり、

 タイヤが踏むたびに“べちゃ……ぐちゅ……”と嫌な音が鳴った。

 

 霧が漂う……いや、あれは霧というより“瘴気”のように思え。白くぼやけた視界の奥が脈打つように揺れる。

 

 ユウ「……なんだ、この空気……前の路地裏と全然ちげぇ……」

 

 肌の表面に、ざらざらと細かな“棘”が刺さるような感覚。

 呼吸するたびに、胸の奥が“ざりッ”とこすれるようだった。

 

 ソウ「着いたね……。間違いない、ここだ」

 

 ルミ「ど〜やら、一般市民の皆さんは入れないように規制してるっぽいね〜」

 

 ぱんッ! とルミが手を叩く。

 

 ルミ「さてと! ユウくんを含めての初仕事だ! 先輩として、かっこいいところ見せてやれ!」

 

 ガロウ「当ったりめぇだぁ!!!」

 

 ルイ「は、はいっ!」

 

 ソウ「もちろん。新人の前で格好悪い姿は見せられないからね」

 

 

 そんなことを言っている間に──

 

 

 ガロウ「しゃぁぁ!!! 先手必勝だぁぁぁ!! ごらぁぁぁぁッ!!」

 

 ガロウの両脚に異力が込められ、

 バチバチバチッ!! 

 と紅い火花が散る。

 

 ルミ「おい! ガロ──」

 

 止める暇など無い。

 

 BONッ!! 

 小爆発と共に踏み込み。

 ガロウは、車から飛び降りると同時に霧の中へ一直線に消えた。

 

 ユウ「は、速ッ!!」

 

 ルミ「あのバカ……ッ! また突っ走りやがったよ」

 

 ルイ「ま、まぁ……ガロウくんなら大丈夫だと思いますけど……」

 

 ソウ「さてと。蓮咲くんが終わらせる前に僕たちも行こうか」

 ルミ「ユウくん、あたしとソウから離れないこと! この霧の中じゃ敵も地形も見えなくなるよ!」

 

 ユウ「お、おっす!!」

 

 LOVE&Peaceの面々は車から飛び降り、どろりとした霧へと足を踏み入れた──。

 

 

 

ガロウ VS C級魔怪

 

 

 

 ガロウが踏み込んだ先──

 湿気を吸ったアスファルトが、ぬるりと靴裏に絡みつく。

 空気は重く、呼吸のたびに肺がざらざらと擦れる。

 そして異様な波動が霧の奥から押し寄せた。

 次の瞬間、路地の中央の黒い粘液が、生き物のように脈動した。

 

 

ドクン……ドクン……

 

 

 地面の下に巨大な心臓があるかのように震え、

 その中心が膨れ上がっていく。

 水風船が破裂しないまま何倍にも膨らむような、

 あり得ない形の変形。

 

 膨れた球体の表面に、

 “ひび割れのような皺”が走る。

 そして……裂けた。

 

 裂け目からどろりと黒い粘液が垂れ、

 そこから“腕らしきもの”がずるりと生え出した。

 

 一本、

 

 二本、

 

 三本、

 

 四本。

 

 どれも人間の腕に似ているが、

 皮膚が無く、筋肉の繊維が剥き出しにねじれ、

 滴る粘液がアスファルトに落ちるたび、

ジュウッ…… と音を立てて溶かした。

 

 さらに頭部にあたるであろう場所に“縦一文字の裂け目”が開いていく。

 目はない。

 眼窩すら存在しない。

 ただ、口のように開いた深い裂け目の奥で、

 紫色の核が心臓のように脈打っている。

 

 魔怪「……ァ゛……ァァァァァァァァ……」

 

 耳鳴りのような鳴き声が響き、

 ガロウの鼓膜がビリビリと震えた。

 背筋が一瞬だけ凍るほどの“殺意”。

 普通の人間ならば足がすくむ。

 

 だが──ガロウは口の端を上げた。

 

 ガロウ「……いいじゃねぇか!」

 

蓮咲ガロウの異能は ──《爆発》

 

 ガロウの異能は単純でありながら極めて危険な代物だ。

 異力を一点に“過剰圧縮”させることで、

 局所的な爆発現象を発生させる異能。

 圧縮された異力は、

 拳の中で“爆発反応の初期段階”に近い熱を生む。

 扱いを誤れば、

 自分の腕が先に吹き飛ぶ。

 

 ゆえに彼の肉体は、

 常人よりも遥かに頑丈で異力適性が高い。

 

 ただし──

 

 大出力の爆発には“痛み”と“体力”という代償がつきまとう。

 

 

 

 

 右腕に意識を向けた瞬間、

 体内の異力が爆発前の爆薬みたいに熱を帯びて膨張する。

 

 筋肉繊維の一本一本に、

 電流のような痛みが走り、

 力が凝縮していく。

 拳の周囲の空気が震え、

 霧が吸い込まれるように巻き込まれ、

 真空の泡が形成される。

 

 ガロウ「行くぞ、クソ魔怪ィ !!」

 

 踏み込んだ瞬間──

 ガロウの足元が“爆ぜた”。

 

 ドンッ!!! 

 

 炸裂音と同時に、

 アスファルトがクレーターのように抉れ、

 砕けた破片が銃弾のように四方へ飛び散る。

 

 反動すら利用した突進。

 身体は地面を蹴ったもこなのではなく、

 撃ち出された弾丸”そのものだった。

 

 霧が一直線に引き裂かれ、

 風圧で建物の窓ガラスがビリビリと震える。

 

 魔怪の四本の腕が、

 迎撃するように同時に振り下ろされた。

 

 ブンッ──!! 

 空気が裂け、

 腕が鞭のようにしなり、

 通過した後の空間が歪む。

 

 だが──

 

 ガロウ「遅ぇぇぇッッ!!」

 

 ガロウは突進を止めない。

 むしろ空中で更に加速する。

 

 右拳に異力が集束し、

 拳の周囲で空気が悲鳴を上げる。

 

 ガロウ「──天地裂破(てんちれっぱ)ァアアアアアア!!!!!!」

 

ズドオオオオオオオン!!!!!!!! 

 

 次の刹那、

 拳から迸った爆発衝撃が“線”となって解き放たれる。

 

 空間を縦に裂く光。

 衝撃が真っ直ぐに走り、

 魔怪の胴体を抵抗ごと真っ二つに引き裂いた。

 

 黒い肉が爆ぜ、

 粘液が蒸気となって舞い上がり、

 霧と混じって空中に溶ける。

 

 しかし──

 

 魔怪「ァァァァアアアアアアアア!!!!」

 

 黒い断面が蠢いた。

 

 裂けた肉が“逆再生”のように引き寄せられ、

 粘液が糸を引き、

 筋繊維が絡まり、

 骨格が音を立てて組み上がる。

 

 瞬き一つ分。

 それだけで再構成。

 

 ガロウ「……ハハッ、いいじゃねぇか!!」

 

 歓喜混じりの笑み。

 ガロウの眼光がギラリと獣のように光る。

 

 魔怪の四本の腕が、

 今度は角度を変え、包囲するように襲いかかった。

 

 ブンッ!!! 

 

 バキィッ!!! 

 

 一本が壁を薙ぎ払い、

 コンクリートが紙屑のように裂ける。

 

 もう一本が地面を叩き、

 衝撃でアスファルトが波打つ。

 

 もし食らっていれば、

 身体は五つに分解され、

 原型すら残らなかっただろう。

 

 だが──

 

 既に、そこにガロウはいなかった。

 

 直前、

 爆発を“足”に集中。

 

 足裏から噴射するように爆風を放ち──

 

 ドガァァァン!!! 

 

 地面が陥没し、

 ガロウの身体は垂直に撃ち上げられた。

 

 腕が叩いたのは、

 ガロウが“いた場所”。

 

 ガロウ「上だよ、クソ雑魚が!!」

 

 空中で身体を捻り、

 腰を軸に回転。

 

 両拳に異力が渦を巻くように集束し、

 拳そのものが白熱する。

 

焔空轟(えんくうごう)ッ!!!!」

 

 空中で爆発。

 

 炸裂音が空を引き裂き、

 爆風が円形に広がる。

 

 火花、衝撃波、熱風──

 すべてが一気に叩き落とされる。

 

 

ボオオオオオオオオォォン!!! 

 

 

 魔怪の全身が地面に押し潰され、

 アスファルトが巨大な皿のように沈み込む。

 

 魔怪「ギャアアアアアアア!!」

 

 だが、終わらない。

 

 爆風の異力が、魔怪の体内へと侵入。

 

 内側から異力が膨張し、

 魔怪が悲鳴を上げる。

 

 

ドゴォォォォォン!!! 

 

 

 内側から破裂。

 

 異核ごと粉砕され、

 肉体は完全に崩壊。

 

 肉片すら残らず、

 黒い霧が風に散るように消えていった。

 

 その場に残ったのは、

 焼け焦げた臭いと、

 ひび割れだらけの地面だけ。

 

 ガロウ「……ケッ……C級、こんなもんかよ。つまんねぇな」

 

 拳から立ち上る蒸気を振り払い、

 肩を鳴らす。

 

 そして、霧の奥を睨み──

 

 ガロウ「さてぇ……次はどいつだ?」

 

 

 

 

 

 

ルイ VS D級魔怪

 

 

 

 ガロウが暴風のように突進していく。その背中を追う形で、ルイも地を蹴った。

 足裏が湿った土を踏みしめ、跳ねた泥が制服の裾に散る。しかし彼女は気にする様子もなく前へ駆けた。

 

 ──その瞬間。

 

 ルイの周囲に、まるで空気中の見えない粒子が呼応するように“ピチピチ”と光の欠片が生まれた。

 それらはひとつ、またひとつと形を整え、彼女の腕の横で光を帯びながらゆっくりと弧を描く。

 白金色の光線が絡み合い、最後は柔らかな羽根のようにきらめいて──弓の形を取った。

 

 ルイ「……天使の射手(サギタリウス)

 

 その名を口にした瞬間、光の弓が脈動する。

 心臓と同じリズムで “トン……トン……” と手のひらに震えが返ってくる。

 

 神埼ルイの異能は──《天使の射手(サギタリウス)

 

 ルイの異能は、体内の異力を高純度の聖属性エネルギーへ変換し、

 意志と集中をもって練り上げることで光の弓と矢を形成・射出する能力である。

 

 生成される“聖なる矢”は、魔怪の持つ異力に強く反応し、命中と同時に標的の内部へ侵食し、内側から浄化・焼却する効果があり、

 外傷以上に内部ダメージが深刻となるため、階級に関わらず魔獣に対して非常に高い効果を発揮する。

 

 また、弓形態はルイの精神状態や心拍に密接に影響されており、心が静まれば矢は研ぎ澄まされ、逆に心拍が乱れれば軌道も揺らいでしまう。

 

 

 

 

 霧が薄れると同時に──。

 

 魔怪「ギャアアアアッ!!」

 

 黒紫色の霧を引き裂き、異形が飛び出した。

 ハイエナのような頭部に、腐り落ちた皮膚。

 背中からは蛇の腸のような触腕が八本、ぬらりと揺れている。

 

 D級魔怪。

 低級とはいえ、徒党を組めば人を数十人殺すこともある脅威。

 

 ルイ「来た……ッ!」

 

 恐怖に手が震える

 でも、その奥にあるのは震えるほどの集中そして覚悟。

 

 ルイは弦に光を集め、一本の矢を形成した。

 

 矢じりは白く輝き、空気を焦がすようにジィ……と小さく鳴る。

 

「──聖矢射撃(サギッタ)!」

 

 次の瞬間、空間を切り裂き、光の矢は“閃光”として放たれた。

 残光すら残さぬ速度で一直線に走り──

 一体目の魔怪の頭部を貫いた。

 貫かれた瞬間、頭蓋と脳組織は光の塵へと変換され、霧散する。

 

 だが──。

 

 魔怪「ギィイイイ!!」

 

 もう一体が左側から跳びかかった。

 触腕が鞭のようにしなり、空気を裂く“ヒュッ! ”という音が耳の奥を刺す。

 

 ルイ「っ……!!」

 

 反射だけで光弓を横へと展開した。

 弓の形が一瞬にして広がり、盾のように光の壁となる。

 

 ルイ「天光導(ルクス)!」

 

 光壁が前へ伸び、柱のように魔怪を押し返す。

 触腕が光に触れた部分から“ジュッッ! ”と煙を上げ、焼け落ちた。

 

 魔怪がたたらを踏んだ瞬間。

 ルイはもう次の矢を生成していた。

 呼吸が深くなる。

 

 ルイ「はぁ……ッ! これで……!」

 

 光の矢が形成され、彼女の指先に触れると同時に、

 それは空間を裂いて魔怪の胸に──正確に心臓部へ命中した。

 

 魔怪「ギャア……ッ……!」

 

 魔怪の体内から光が溢れ、

 心臓部から全身へと亀裂が走るように浄化が広がる。

 最後には、黒い肉体が光の粉へと変わり、夜気に溶けて消えた。

 完全な消滅。

 

 ルイ「……ふぅ。なんとか二体……!」

 

 

 

 

ルミ VS C級2体 + D級1体

 

 

 

 ルミが踏み込んだ霧は、普通の霧ではなかった。

 嗅覚を刺す鉄臭さと腐敗臭。

 肌にまとわりつくざらつき。

 まるで粘膜の上を指でこすっているような不快感。

 

 そんな中、黒い影が三つ、

 まるで霧の“裏側”から滲むように浮き上がってきた。

 前方の二体は、どす黒い粘液で全身を覆われた“人型の塊(魔怪)”。

 

 肩幅は一般的な人間の約二倍、腕は四本に枝分かれし、

 どの腕も先端は鋭い刃物のように尖っている。

 輪郭は常にブレ、目に当たる部分は闇の空洞。

 

 その後ろで、地を走る影のようにすばしこく動くD級が一体。

 犬にも猿にも見えるが、骨格が崩れており、

 生き物というより形を忘れた残滓といった方が近い。

 

 ルミ「……3体か」

 

 ルミは肩を軽く回し、

 背中に背負った大剣を“ガチャリ”と音を立てて引き抜いた。

 

 その瞬間、ルミから放たれる異圧が変わわった。

 

 刃渡りは人間の身長とほぼ同じ。

 幅は手のひら二つ分。

 重さは常人なら持ち上げるだけで腰を壊す鉄塊。

 

 大剣が露出した瞬間、

 霧の流れさえ止まったかのように感じられる。

 

 魔怪「ゴ……ギャァァァ……ァア!!」

 

 C級の魔怪が、地面に腕を伸ばし、

 一本の腕──いや、伸びた腕が何本もの触手となり、

 四方からルミを囲むように襲いかかる。

 

 ルミ「よっと」

 

 足を半歩引いた。

 そのわずかの動きで地面の粘液が“ビチッ”と爆ぜた。

 そして、

 

 大剣が横一線に走る。

 

 風圧が壁のように押し出され、霧が吹き飛び、

 触腕はまとめて弾き飛ばされ、

 衝撃で魔怪たちの身体が横に跳ねる。

 

 

ドゴオォォォン! 

 

 

 C級二体とD級一体が揃って地面を転がった。

 

 ルミ「ほらほら、立ちなって。まだ終わりじゃないだろ?」

 

 わざと間を作るように挑発的に声をかける。

 D級が最初に反応した。

 四肢を逆関節のように折り曲げ、

 まるで蜘蛛のような姿勢で地面を高速で走る。

 

 魔怪「ギィィイイイ!!」

 

 銃の弾丸を思うほどの速度。

 

 ルミ「……遅い」

 

 D級が跳びかかった瞬間──

 

 踏み込み一つで地面が砕けた。

 

 ルミの足元に放射状の亀裂が走り、

 その踏み込みの力だけで周囲の霧が押し退けられる。

 振り下ろされる大剣。

 

 振りの速度は到底鋼鉄製の大剣だとは思えない。

 

 質量があるからこそ、振り切った際の加速は凄まじく

 

 

ズドォォンッ!! 

 

 

 D級は避ける間もなく押し潰され、

 粘液と骨の破片が飛び散った。

 

 ルミ「まず一体。残りは……」

 

 背後から、C級が跳ぶ。

 

 腕を何本も束ね、巨大な刃のようにして振り下ろす。

 風が裂ける音。

 粘液の滴り落ちる音。

 跳躍の衝撃で霧が渦を巻く。

 

 ルミ「甘いッ!」

 

 振り向きもせず、

 大剣を後ろへ一本背負いのように持ち上げる。

 剣先が魔怪の顎に刺さる。

 そのまま重さで押し上げられ、

 魔怪の身体が宙で硬直する。

 

 右脚を軸に身体を捻らせ、振り返りざまに強烈な横薙ぎ。

 剣の重みが勢いそのままに魔怪を壁へと叩きつける。

 壁が大きくへこみ、崩れ、魔怪がめり込んでいる。

 つけられた傷から粘液が飛び散り、叩きつけられた魔怪は内部から破裂するように消滅した。

 

 ルミ「はい、次はあんた」

 

 残ったC級が、

 自分の仲間が一瞬で蹂躙されているのを見て、霧を濃くして姿をぼかしながら後退する。

 

 魔怪「……ァ……アアアア……」

 

 魔怪が地面に溶ける。

 そこから複数の槍状の異力が音もなく伸びた。

 真正面、左右、死角から一斉に突き出される。

 

 ルミ「異能持ちかっ!」

 

 しかしルミは構えを崩さない。

 剣を地面に突き立て、

 次の瞬間、大剣を軸にして身体を回転させた。

 回転と同時に剣をぶん回し、

 全方位へ衝撃波のように斬撃を散ら槍を1本残らず粉々に粉砕する。

 

 霧の向こうで、魔怪が驚いたように身体をのけ反らせ、異力による防壁を作るが

 

 ルミ「防御しても無駄だよ」

 

 ゆっくりと歩きながら大剣を肩に担ぎ、地面を蹴る。

 霧が爆ぜるほどの超加速。

 

 魔怪が反応する前に距離がゼロになる。

 振り下ろす。

 

 

バシュンッ! 

 

 

 空気が悲鳴を上げた。

 魔怪の身体は防壁ごと上下に完全に分断され、

 上半身は霧の中を飛び、

 下半身はその場で崩れ落ちる。

 黒い粘液が地面に噴き出す音だけが響いた。

 霧が薄くなり、ルミが静かに息を吐く。

 

 ルミ「……ほい、いっちょ上がり」

 

 

 

 

ユウ & ソウ VS D級2体+C級1体

 

 

 

 濃霧が揺らぎ、どこか遠くで金属が擦れるような不快な音が響く。

 ユウとソウは後衛気味に背中を合わせて立っていた。

 霧の中を漂う黒い粒子が肌を刺し、呼吸すらざらつく。

 

 ソウ「ユウくん、前方左に二体。右から──C級来るよ」

 ユウ「お──」

 

 言い終える前に、霧を割って 一閃の影 が走る。

 D級魔怪が四肢を折りたたみ、地を舐めるほど低姿勢で疾走してくる。

 足音はない。あるのは、霧の中を引き裂く風圧だけ。

 

 ソウ「右へ!!」

 ユウ「おう ッ !」

 

 ユウは反射的に横へ跳んだ。

 直後──魔怪の鉤爪がユウのいた地面を “ガリッ!! ” と抉り、

 アスファルトが破片になって散弾のように飛び散る。

 

 ユウ「はっ えぇ ~ ……」

 

 興奮よりも恐怖が勝つ速さ。

 だが、その肩にすっとソウの手が触れた。

 

 ソウ「大丈夫。僕がいるよ」

 

 ソウの指先から淡い光が静かに散る。

 その光は糸のように細く、しかし鋭く魔怪に絡みつき、

 異力の流れを“断ち切る”ように魔怪を縛った。

 

 魔怪「ギ……ッ!?」

 

 魔怪の動きが一瞬“止まる”。

 

 ソウ「僕は異力から情報を読み取る能力を持っている。なら、逆に異力から()()()()()()()()()()()()()ということだ」

 

 ソウ「園崎くん 、今だよ」

 

 その隙にユウが地面を蹴る

 

 ユウ「うおおおおッ!! らぁ!!!」

 

 拳を握った腕がしなる──異力を込めた真っ直ぐな軌道。

 

 ユウ「迅滞撃(じんたいげき)ッッッ!!!」

 

 拳撃が魔怪の側頭部へめり込み、

 D級魔怪は 頭を砕け散らせながら霧の中へ吹っ飛んで消滅した。

 

 ユウ「ソウさんサンキュー!」

 ソウ「いいね。今のは綺麗に決まっていたよ」

 

 そう言う直後、霧の奥で“何か”が跳ねた。

 

 ソウ「もう一体、来るよ」

 

 警告と同時に、第二のD級魔怪が背後から襲いかかる。

 今度の魔怪は、筋肉が膨張しており、さっきより一回り速い。

 

 四つ足のままユウの背中へ一直線に迫る。

 

 ユウ「っ……くそっ!!」

 

 振り向く暇がない──

 その瞬間、

 

 ソウ「……」

 

 ソウの腰に掛けられた鞘から刀がたった“数センチ”だけ抜かれた。

 

 

シュッ……! 

 

 

 空気が切り裂かれる。霧が左右へ分かれるほど薄く鋭い斬撃。

 音すら立てずに放たれたその刃は、

 ユウを襲おうとした魔怪の前脚を根元から断ち切った。

 

 魔怪「ガァァァ!!」

 

 床に崩れ落ちた魔怪へ、ソウは静かに一歩踏み込む。

 彼の刀はまだ半分ほど鞘の中。

 だがそこから漏れ出す異圧に、霧が“波打つ”。

 

 ソウ「終わりだよ」

 

 

チャキッ──

 

 

 刀が完全に抜かれ、一筋の白い軌跡を描いた。

 刹那、魔怪の体が斜めに“スパッ”と割れ、

 黒い液体を撒き散らすこともなく、粒子となって消滅する。

 

 

 ソウ「ユウくん、下がって。最後の一体……C級が来る」

 

 霧の奥で、巨体が“ぬるり”と姿を現した。

 四つん這い。何倍にも膨れた異力。

 黒い触手が背中から何本も揺らめき、

 目の代わりに裂けた穴がこちらを睨む。

 

 C級「……ァァァァァァ……」

 

 先ほどのD級とは“格”が違う。

 空気が重く、肌が粟立つ。

 あの日を思い出す異圧。

 

 ソウ「大丈夫かい?」

 ユウ「正直、怖ぇよ。でもさ──」

 

 拳を、握り締める。

 

 ユウ「逃げ続けるのは、男らしくねぇだろ?」

 

 ソウは、ほんのわずかに微笑った。

 

 ソウ「それが聞けて、安心した」

 

 静かに刀を構え直すソウ。

 震えを抑え、拳を構えるユウ。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 大剣を漆黒の霧の中で振り抜きながら、ルミは深く、肺の底まで使うような長い息を吐いた。

 吐息は白くならず、代わりに黒い霧を押し退け、ゆっくりと歪ませる。

 

 割れた路面の破片が衝撃で宙へ跳ね上がる。

 コンクリート片が互いにぶつかり合い、乾いた金属音にも似た鈍い音を立てる。

 その隙間を縫うように、斬り裂かれた魔怪の黒い粘液が弧を描いて飛散した。

 

 粘液は地面へ落ちる前から熱を帯び、

 着地と同時に──

 

 ジュッ……ッ。

 

 肉を焼くような音を立て、瞬時に蒸発する。

 鼻を刺す焦げ臭さが、遅れて漂ってきた。

 

 ルミ「……ふぅ……」

 

 大剣を片手で軽く振り、刃についた残滓を払う。

 鉄塊のような質量が空を切るたび、空気が低く唸った。

 

 ルミ「残りは……2体、かな」

 

 独り言のように呟きながら、彼女は大剣を肩へ担ぎ直す。

 視線は正面から一切動かさない。

 だが意識は、全周へ開かれていた。

 

 周囲の建物の位置。

 霧の濃淡。

 仲間たちの足音と呼吸のリズム。

 魔怪の異力が残す“圧”の揺らぎ。

 

 それらが、異圧感知によって自動的に脳内へ流れ込んでくる。

 

 ルミ「……それにしても」

 

 口元が、ほんのわずかに緩む。

 

 ルミ「あいつ、異力操作上手くなってんじゃん。いや ~若いって良いねぇ 」

 

 だが──

 その直後。

 

 ルミの眉が、ほんの一ミリだけ動いた。

 

 ルミ「……(……ん?)」

 

 胸の奥に、細い棘が刺さるような感覚。

 

 ルミ「……(今……アタシ……“残りは2体”って……数えた?)」

 

 自分が斬った3体。

 ガロウが圧殺した1体。

 ルイが処理した2体。

 ソウとユウが連携で倒した2体。

 

 合計―─8体。

 残数は、本来なら。

 一体のはずだ。

 その違和感を“認識”した瞬間。

 空気が、ひしゃげた。

 

 ドッ……!! 

 

 全身の内側を殴られるような異圧。

 

 まるで、この場所の“重力”だけが一瞬で増したかのように、

 地面が、建物が、空気そのものが押し潰されそうな程の異圧が、波紋のように四方へ走る。

 

 四方一町に散っていた異能力者たち全員が、理由も分からぬまま、反射的に動きを止めた。

 

 ガロウ「……ッ!?」

 

 言葉にならない声。

 全身の筋肉が強張る。

 

 ルイ「息が……重い……ッ……!」

 

 肺が圧迫され、呼吸が浅くなる。

 

 ソウ「…………」

 ソウだけは声を出さずに、ユウを見据えている。

 

 この異圧は──

 これまでの魔怪のどれとも違う。

 

 荒々しさも、凶暴さもない。

 あるのは、臓腑を冷やすほどの静寂。

 

 ルミは瞬き一つせず、

 異圧の“中心点”を探り当てる。

 

 視界が、そこへ吸い寄せられる。

 

 ──それは。

 

 ユウの足元だった。

 

 ルミ「…………ユウの……足元……?」

 

 背筋を、冷たいものが走る。

 

 経験が、本能が、

 同時に悲鳴を上げた。

 

 ルミ「ユウッ!! 逃げろ!! 今すぐ!!」

 

 だが。

 

 その声が、届くよりも速く。

 

 ユウは、自分の足元に落ちた“影”が揺らぐのを感じていた。

 

 ユウ「……え?」

 

 街灯のせいじゃない。

 霧のせいでもない。

 

 影そのものが、液体のように波打っている。

 

 ぬるり。

 

 黒い液体が影から立ち上がる。

 

 床と影の境界が溶け、

 そこから人型の“何か”が這い出してきた。

 

 異様に細長い四肢。

 関節の位置がおかしい。

 捩じれた体幹。

 

 首は存在せず、

 顔の位置には、ただ黒い穴だけがぽっかりと空いている。

 

 ユウ「な……なんだ……!? こいつ……!」

 

 穴の奥から、音にならない“震え”だけが漏れた。

 

 次の瞬間。

 

 魔怪の腕が、

 槍のように──伸びた。

 

 距離の概念を無視した一撃。

 風を裂く音すら、後から追いかけてくるほどの速度。

 

 ソウ「園崎くんッ!!」

 

 刀が鞘を離れる。

 踏み込み。

 だが──

 

 間に合わない。

 

 ズバァッ!! 

 

 黒い腕が音速のごとく伸び、

 ユウの腹部を真正面から貫いた。

 

 ユウ「……っ……あ……?」

 

 衝撃で、体が半歩後ろへ押し出される。

 

 痛みは、まだ来ない。

 それより先に、視界の端が崩れ落ちていく感覚。

 

 腹部が、内側から焼かれるように熱い。

 次の瞬間、背中側へ──

 温かい液体が、ぬるりと流れ落ちる。

 

 影の魔怪は、ただ無言で。

 無表情の“穴”で、ユウを見つめ続けていた。

 

 世界が、止まった。

 

 ルミ「ユウッッ!!」

 

 ルイ「そんな……そんなのって……

 ユウくん!!」

 

 ガロウ「クソ新人ッ!!」

 

 怒号と悲鳴が、歪んだ空気の中で交錯する。

 

 だが──

 無情にもユウの腹からは、真っ赤な血が絶え間なく溢れ、アスファルトへ落ちて、小さな水音を立て続けていた。

 

 

 

 

 

 

 





主「は〜いどうも!ライドロル缶でございます〜!いや〜ようやくちゃんとした戦闘が書けて大満足ですよ〜!」

主「ずっと書きたかったけど、いくらガバ設定とはいえいきなり戦闘にぶち込むと急展開がすぎると思って書けてませんでした!」

主「まぁ。まだまだ序の口なんですけどね☆」

主「というわけで次回!なんかすごそうな魔怪のせいで初仕事どころじゃなくなった件!」


主「そして、見てくださってる皆様ありがとうございます〜!何かあれば是非ご指摘を下さい〜!では!またいつかお会いしましょ〜! 」


以下備考?


┊︎蓮咲 ガロウ┊︎

・性別
バカ

・年齢
16歳

・等級
C級異能力者

・異能
爆発

・技

天地裂破(てんちれっぱ)

空間を裂くような一点集中爆発、爆風で周囲を吹き飛ばす

焔空轟(えんくうごう)

空中で炸裂、火花と衝撃波が舞い散る範囲攻撃


・その他
何でも屋 「LOVE&Peace」のバイト

C級の相手なら全然余裕レベルに強い!

でもそのかわりに本当におばか!


┊︎神崎 ルイ ┊︎

・性別
女の子

・年齢
16歳

・等級
D級異能力者

・異能
天使の射手(サギタリウス)

・技

聖矢射撃(サギッタ)

聖なる光の矢を放つ。直線的に敵を貫き、邪悪を焼き尽くす。


天光導(ルクス)

弓矢を光の柱として展開。仲間を守る防護壁



・その他

何でも屋LOVE&Peaceのバイトであり女神。

戦闘はそんなに好きじゃないけど戦えないわけではない子!

D級相手なら一人でもなんとかなる!

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